部署別 / 国保年金課
国保年金課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
国保年金課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「国民健康保険および国民年金に関する窓口業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「保険証を出していた人」という像しか作れません。実際には、保険者として、資格を確定し、保険料を算定し、収納し、給付の可否を判断し、他人の行為による事故は相手方に求償していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは国保年金課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は国保年金課からの転職先に書いています。
「特別の理由がある者に対し」——ここに判断があります
書き方に入る前に、この部署の判断の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
国民健康保険法第77条は、こう定めています。
市町村及び組合は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる。
短い条文ですが、判断の要素が3つ入っています。
1. 「条例又は規約の定めるところにより」。基準は、それぞれの団体が条例で定めます。全国一律ではありません。
2. 「特別の理由がある者」。何が特別の理由に当たるかを、個別に判断します。
3. 「できる」。減免しなければならない、ではありません。判断の余地が残されています。
つまり、減免と徴収猶予は、この部署の中でいちばん判断が要る仕事です。
失業したのか、事業が不振なのか、災害に遭ったのか。収入がどれだけ落ちたのか。回復の見込みはあるのか。
これは、民間の債権管理で「支払条件を変更するかどうか」を決める判断と、まったく同じ構造です。
そして、この判断をしてきたことは、職務経歴書に書けます。個別の事案は書けませんが、どういう基準で、どういう手順で判断していたかは書けます。
ここを書いている書類と、書いていない書類では、読まれ方がまったく違います。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では国保年金課に所属。国民健康保険および国民年金に関する窓口業務を担当しました。
規模も、立場も、判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(被保険者数約◯万人、年間の保険料調定額約◯億円、保険給付費約◯億円)の国保年金課で◯年間、保険者としての実務を担当しました。被保険者の資格管理(年約◯件の取得喪失処理)、保険料の賦課と更正、収納および滞納整理、減免・徴収猶予の審査(年約◯件)、高額療養費等の給付の支給審査(年約◯件)、第三者行為求償を担当しています。国民年金については、資格の届出、免除・納付猶予の申請の受付と要件確認を担当しました。
入っているもの
- 規模(被保険者数、調定額、給付費、各工程の件数)
- 立場(保険者としての実務)
- 工程の広さ(資格・賦課・収納・減免・給付・求償)
「窓口業務」という語を一度も使っていません。これが要点です。
担当業務
制度名を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・国民健康保険の資格取得・喪失の手続> ・保険料の賦課、収納> ・高額療養費等の給付> ・国民年金の各種届出の受付
良い例
> 【被保険者の資格管理(年約◯件)】> 取得・喪失の処理、他の医療保険との重複の解消、遡及による資格の訂正。届出の遅延により遡及が生じた場合、対象期間の保険料の再計算と、他制度で受けた給付との調整までを一件ごとに整合させる手順を担当。>> 【保険料の賦課と更正(調定額約◯億円)】> 所得の確定に伴う本算定、世帯の異動に伴う更正、軽減判定。年度途中の更正が多数発生するため、更正の起点と反映の順序を定型化して運用。>> 【収納・滞納整理】> 納付書の発送、口座振替、納付相談、督促、分割の設定。支払能力と生活状況を聞き取ったうえで納付計画を設定し、履行状況を継続して管理。>> 【減免・徴収猶予の審査(年約◯件)】> 条例に定める基準への適合を審査。失業・廃業・災害など事由の区分ごとに、確認する資料と判定の順序を整理した審査手順を運用。>> 【給付の支給審査(年約◯件)】> 高額療養費、療養費、出産育児一時金、葬祭費の支給審査。請求内容と資格の整合、給付割合、限度額の適用を確認したうえで支給の可否と額を決定。>> 【第三者行為求償】> 交通事故等による給付について、届出の受理、損害保険会社との連絡調整、求償事務。>> 【国民年金】> 資格の届出、免除・納付猶予・学生納付特例の申請の受付と要件確認、裁定請求の受付。決定は日本年金機構が行うため、受付と要件確認、制度の説明までを担当。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。制度名ではなく、そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、制度の運営が回っていたこととして現れるからです。
悪い例
> 丁寧な窓口対応に努め、収納率の向上に貢献しました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:仕組みを作った
> 減免・徴収猶予の審査について、事由の区分ごとに確認する資料と判定の順序を整理した審査手順を文書化。担当者が交代しても同じ基準で判定でき、申請から決定までの期間を平均◯日から◯日に短縮した。
型2:数字を動かした
> 滞納の初期段階での納付相談を強化し、現年度分の収納率を◯%から◯%に改善。あわせて、分割の設定について履行状況を月次で確認する運用を導入し、計画の不履行による再滞納を◯件から◯件に減らした。
型3:誤りを防いだ
> 資格の遡及処理について、賦課と給付の両方への反映漏れが生じやすい箇所を洗い出し、確認項目をチェックリスト化。遡及に伴う更正の誤りを◯年間ゼロで維持した。
型2が、この経歴でいちばん強い形です。収納率は、公表されていることが多く、方向を持つ数字です。ただし、改善の要因が自分の施策だけとは限らないので、他の要因も添えて書いてください。そのほうが信頼されます。
数字の出し方
公表されている事業報告や決算から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 被保険者数(世帯数・人数) | 職務要約 | 規模がいちばん伝わる。事業報告に載っている |
| 保険料の調定額 | 職務要約 | 決算資料から取れる |
| 保険給付費 | 職務要約 | 同上 |
| 収納率(現年度分・滞納繰越分) | 実績 | 公表されている。方向を持つ数字 |
| 資格の取得喪失の年間件数 | 担当業務 | 事業報告に載っていることが多い |
| 給付の支給審査の年間件数 | 担当業務 | 同上 |
| 減免・徴収猶予の年間件数 | 担当業務、実績 | 件数のみ。個別の判断は書かない |
| 求償の年間件数と回収額 | 担当業務 | 同上 |
1行目と4行目が最も効きます。被保険者数は扱っていた規模を、収納率は成果の方向を示します。この2つがない書類は、規模も成果も読み取れません。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 保険の支払査定 | 給付の支給審査 | レセプト・請求内容の点検 | 資格と給付要件の整合 |
| 契約管理・保全 | 資格の取得喪失と遡及処理 | 重複の解消 | 更正の手順 |
| 求償 | 第三者行為求償 | 損害保険会社との調整 | 回収額 |
| 債権管理・回収 | 収納率と納付相談 | 減免・徴収猶予の審査 | 分割の履行管理 |
| 健保組合・医療関連 | 被保険者数と給付費の規模 | 保健事業・特定健診 | 制度改正への対応 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
この部署は、所得・疾病・生活状況という、最も機微な情報を扱います。
- 被保険者個人の所得、疾病、受診の状況
- 減免・徴収猶予の個別の判断と、その事由
- 滞納している方の氏名・世帯・生活状況
- 給付を不支給とした個別の事案
- 求償の相手方や、事故の具体的な内容
- 年金の免除申請に関する個別の事情
- レセプトから読み取れる個人の診療の内容
- 庁内の他課との調整の経緯
書けるのは、「判断の基準と手順」と「公表されている集計」までです。
> ✕ 「廃業により収入が激減した世帯について、保険料を全額減免とした事案がある」> ○ 「減免について、失業・廃業・災害などの事由の区分ごとに、確認する資料と判定の順序を整理した審査手順を運用した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「窓口業務」と書く
「保険者としての実務」と書いてください。一度も「窓口」を使わずに書けます。
2. 減免・徴収猶予の審査を書かない
この経歴の半分を捨てています。判断の手順として書いてください。
3. 被保険者数と収納率を書かない
規模と成果を示す中心の数字です。公表されています。
4. 収納率の改善を、自分の手柄だけにする
他の要因も添えてください。そのほうが信頼されます。
5. 制度名を並べるだけで終える
そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 国民健康保険法第77条は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又は徴収を猶予することができるとしています
- 基準は団体ごと、該当するかは個別の判断、そして「できる」規定——ここにこの部署でいちばん重い判断があります
- 職務要約には、規模・立場(保険者)・工程の広さの3つを入れ、「窓口業務」という語を使わずに書いてください
- 担当業務は、制度名の一覧ではなく工程として書き、そこで何を判断していたかを足します
- 実績は、①仕組みを作った ②数字を動かした ③誤りを防いだの3つの型で書けます。②の収納率が最も強い数字です
- 被保険者数と収納率は、規模と成果を示す中心の数字です。事業報告と決算資料から取れます
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。国保年金課は扱う工程が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば支払査定の方向に応募するなら、国民年金の受付は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
国民年金の業務は、どこまで書いてよいですか
担当範囲を正確に線引きして書いてください。市町村が行うのは、資格の届出の受付、免除・納付猶予・学生納付特例の申請の受付と要件確認、裁定請求の受付、制度の説明までで、決定は日本年金機構が行います。書類に「年金の裁定を行った」と書くと事実と違ってしまうので、「受付と要件確認、制度の説明までを担当」と明記してください。線を引いて書くほうが、役割を理解している人として読まれます。
前の部署が税務や収納だと、有利になりますか
明確に有利です。保険料の賦課は、所得を基礎に算定するという点で税の賦課と構造が同じで、滞納整理の手法も共通する部分があります。税務課で賦課や滞納整理を経験している方は、国保の収納と減免の判断に、より深い根拠を持って臨めます。書類では、前の部署の経験を「賦課と収納の判断の根拠」として接続させて書いてください。時系列で並べるだけでは、この関係が伝わりません。