部署別 / 情報政策課・DX推進
情報政策課・DX推進からの転職先|経験が値になる5つの方向
情報政策課やDX推進から動こうとすると、たいてい「情報系の求人」で探し始めます。
そこで開発経験を求められて止まる。よくある流れです。
実際には、この部署の経験が値になる方向は5つあります。分かれ道になるのは、自分が持ち出すのが「調達と管理」なのか「業務の設計」なのかという点です。
この記事では5方向を並べ、合いにくい方向も同じだけ書きます。言い換えの一覧は情報政策課・DX推進の経験は民間で何と呼ばれるかに整理しているので、そちらと合わせて読んでください。
デジタル化は、目的ではなく手段だと法律が書いています
先に、この経験の値がどこにあるかをはっきりさせます。
デジタル社会形成基本法第1条は、この法律が、デジタル社会の形成が、我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資するとともに、急速な少子高齢化の進展への対応その他の我が国が直面する課題を解決する上で極めて重要であることに鑑み、デジタル社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務を明らかにし、並びにデジタル庁の設置及び重点計画の作成について定めることにより、施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とすると定めています。
読み取ってほしいのは2つです。
1つ目は、デジタル化そのものが目的として書かれていないこと。書かれているのは、競争力の強化、利便性の向上、少子高齢化への対応。課題を解決する上で重要だから、という順番です。
2つ目は、理念と体制を定めていること。基本方針、責務、デジタル庁の設置、重点計画。動かす仕組みのほうを先に作っています。
転職の場面でも、この順番がそのまま効きます。
「システムを入れた」経験より、「何の課題を、どう解決したか」を説明できる人が読まれます。技術の話だけで応募すると、開発経験のある人と比べられて負けます。課題と体制の話で応募すると、比べられる相手が変わります。
方向1:事業会社の情報システム部門
いちばん自然な接続先です。開発は外部に出し、社内では企画と管理を持つ。構造がそのまま重なります。
効くのは3点です。
要件をまとめる力。各課から上がる要望を、優先順位をつけて改修につなげてきた経験です。企業でも、利用部門の要望は際限なく上がってきます。
事業者を選び、管理する力。仕様書を書き、選定し、契約し、検収し、動かなかったときに直させる。この一連を通した経験は、民間でも持っている人が限られます。
あとから直せない前提で要件を詰める力。行政の調達は、契約と予算の枠があるぶん、仕様の変更が難しくなります。この制約下で決め切ってきた進め方は、基幹システムの入替えを控えている企業に響きます。
方向2:自治体を顧客にするシステム会社
自治体向けの基幹システム、クラウドサービス、業務支援の会社です。
ここでは、発注者側にいた経験そのものが値になります。
- どういう仕様書が書かれ、何が評価されるのか
- 検収の基準はどこにあるのか
- 稼働後にどこで現場が止まるのか
- 予算がいつ確定し、いつ提案すれば間に合うのか
外からは見えません。導入で失敗する案件の多くは、この理解の欠落から来ます。
職種としては、導入支援、カスタマーサクセス、提案企画、プリセールスといった名前になります。営業そのものより、技術と業務の橋渡しをする役回りに置かれることが多くなります。
方向3:業務改革・オペレーション改善
オンライン申請の導入や窓口業務の見直しを担当していた方の接続先です。
企業側では、業務プロセス改革、オペレーション改善、業務設計といった職種になります。
ここで効くのは、「置き換えられなかったもの」を説明できることです。オンライン化を進めると、必ず残る手続が出てきます。本人確認が要るもの、原本でなければならないもの、対面でなければ聞き取れないもの。なぜ残したのかを説明できると、机上の改善しか知らない人と差が付きます。
もう一つ、現場の抵抗を含めて経験していることも強みです。紙をやめると言えば、必ず反対が出ます。押し切るのではなく、残すものを決めて進めた経験は、そのまま企業の業務改革に使えます。
方向4:情報セキュリティ・データガバナンス
セキュリティポリシーの策定と運用、個人情報の取扱いの審査を担当していた方の接続先です。
企業側では、情報セキュリティ管理、データガバナンス、内部統制といった職種になります。
自治体は、個人情報の取扱いについて条例と審査の手続を持っています。目的外利用の可否を、規程に照らして判断する。この「使ってよいかを判断する」経験は、技術が分かる人より少ないため、企業のデータ利活用の場面で重宝されます。
ただし、この方向は求人の数が限られ、資格や実務年数が要件になることもあります。方向1と並行して見ておくのが現実的です。
方向5:公共分野のコンサルティング
自治体のデジタル化を支援するコンサルティング会社、シンクタンク、標準化への移行支援を行う企業です。
計画の策定、現状の調査、移行の工程管理といった仕事が中心になります。発注者側にいた経験と、業務の中身を知っていることの両方が使えます。
注意点は2つあります。1つは、受託の仕事は納期と品質の管理が中心になること。庁内での進め方とは時間の使い方が変わります。もう1つは、案件が重なる時期の働き方が変わること。複数の自治体を並行して担当することになります。
合いにくい方向も書いておきます
自社で開発している企業の技術職
コードを書く求人は、開発経験が前提になります。「学びながら」で通る規模の求人は多くありません。方向を変えるか、開発経験を積める形の求人を探すほうが現実的です。
製品の知識が前提になる職種
特定の製品やクラウドサービスの構築を担当する職種は、その製品の実務経験が問われます。自治体向けの製品を扱ってきた経験は、同じ製品を扱う会社以外では直接使えません。
手続が未整備で、その場で判断を求められる環境
情報政策課の強みは、規程と手続に沿って決めることです。規程がまだ無い環境では力が出にくくなります。逆に言えば、規程を作る側に回る前提なら合います。面接で「情報セキュリティの規程はどの段階か」を確かめてください。
資格は、方向を決めてから考える
順番を間違えないでください。方向を決めてから、必要かどうかを判断します。
プロジェクトマネージャ・システム監査
方向1と方向5で、経歴を補強する形で効く場面があります。ただし基幹システムの更改を通した経験があるなら、そちらのほうが直接読まれます。
情報処理安全確保支援士
方向4を本格的に狙うなら検討の余地があります。募集要項に挙げられていることもあります。
取る前に考えること
情報政策課の繁忙は、システムの更改や標準化への対応の時期に重なります。この時期に学習を始めて中断する例が多いので、始めるなら山を越えてからにしてください。そして、資格を取ってから動こうとすると、動くのが1年以上先になります。いま応募できる方向があるなら、先に受けてから必要性を判断するほうが早く終わります。
探すときに使う言葉
| 持ち出すもの | 検索に使う言葉 |
|---|---|
| システムの調達、仕様書の作成 | 要件定義、RFP、ベンダー選定、社内SE |
| 事業者の選定と管理 | ベンダーマネジメント、調達、購買 |
| システムの更改、データ移行 | システム移行、リプレース、基幹システム |
| 各課の要望のとりまとめ | 要件管理、業務要件定義、情報システム企画 |
| オンライン申請の導入 | 業務のデジタル化、業務改革、プロセス改善 |
| セキュリティポリシー | 情報セキュリティ、データガバナンス |
| 個人情報の取扱いの審査 | 個人情報保護、プライバシー、内部統制 |
| 標準化への対応 | システム統合、標準仕様への適合 |
部署ごとの対応は自治体の部署別 仕事ガイドにもまとめています。
つまずきやすい点
1. 「開発経験がない」で応募先を狭める
上の表のとおり、開発を前提としない職種が複数あります。先に方向を決めてください。
2. 技術の話だけで応募する
開発経験のある人と比べられます。課題と体制の話で応募すると、比べられる相手が変わります。
3. 製品名を並べる
読み手が知らない自治体向け製品の名前を並べても伝わりません。機能で書いてください。
4. 方向2(自治体向け企業)を安全な選択肢だと考える
行政を知っているぶん入りやすい面はありますが、受注の目標や納期の管理が入ります。庁内での進め方とは時間の使い方が変わるので、面接で確認してください。
5. 応募先を1方向に絞りすぎる
方向4(セキュリティ)と方向5(公共コンサル)は求人の数が限られます。方向1を並行して見ておくと、選択肢が減りません。
自分の経歴がどの方向に向いているかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- デジタル社会形成基本法第1条は、デジタル化を課題を解決する上で重要だからという順番で位置づけ、理念と体制(基本方針・責務・デジタル庁・重点計画)を定めています
- だから転職でも、「システムを入れた」より「何の課題を、どう解決したか」を説明できる人が読まれます
- 5方向は、事業会社の情報システム部門/自治体を顧客にするシステム会社/業務改革・オペレーション改善/情報セキュリティ・データガバナンス/公共分野のコンサルティングです
- 分かれ道は、調達と管理を持ち出すか、業務の設計を持ち出すかです
- 合いにくいのは、自社開発の技術職、製品の知識が前提の職種、規程が未整備の環境です
- 「調達から稼働まで通した案件が何件あるか」で、現実的な方向が変わります
よくある質問
情報政策課にいたのが数年でも、転職先はありますか
あります。とくに方向3(業務改革)は、在籍年数より何をどう変えたかが問われます。オンライン申請を1つ導入した経験でも、残した手続とその理由まで説明できれば材料になります。一方、方向1(情報システム部門)と方向2(自治体向け企業)は、調達から稼働まで通したかが効くので、そこが薄いなら方向3を先に見てください。
技術職として採用されるのか、事務職として採用されるのか、どちらですか
求人によります。社内SEや情報システム企画は技術職の枠で募集されることが多く、業務改革や情報セキュリティ管理は管理部門の枠になることがあります。枠が違うと評価の軸も変わるので、面接では「この職種はどの部門に属するのか」を確認してください。技術部門に属するなら技術の深さが、管理部門に属するなら業務の理解が見られます。
標準化への対応が終わってから動いたほうがいいですか
通せるなら通したほうが、書ける材料は確実に厚くなります。国が定めた共通仕様に既存のシステムと業務を合わせる作業は、民間でいえばグループ共通システムへの統合に近く、経験者が少ない領域です。ただし、事業の期間が長いので「終わるまで待つ」と数年動けないこともあります。仕様の確定まで通したなら、その時点で書ける材料は十分にあります。どこまで通したかで判断してください。