部署別 / 高齢福祉・介護保険課
高齢福祉・介護保険課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
高齢福祉・介護保険課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「介護保険に関する業務。要介護認定、給付、事業者指導など」
制度の名前が並んでいるだけで、何をどこまで判断していたかが1行も入っていません。
読む側は、ここから「介護保険の窓口をしていた人」という像しか作れません。実際には、判定の仕組みを回し、請求を点検し、事業者を監督し、3年先の需要を推計していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは高齢福祉・介護保険課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は高齢福祉・介護保険課からの転職先に書いています。
「文書その他の物件の提出を求めることができる」
書き方に入る前に、この部署の判断の性格を条文で押さえます。書類の芯にもなり、同時に制約にもなる部分です。
介護保険法第23条は、こう定めています。
市町村は、保険給付に関して必要があると認めるときは、当該保険給付を受ける者若しくは当該保険給付に係る居宅サービス等を担当する者若しくは保険給付に係る第四十五条第一項に規定する住宅改修を行う者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を求め、又は当該職員に質問若しくは照会をさせることができる。
読み解くと、3つのことが分かります。
1. 求める相手が2方向にある。給付を受ける利用者と、サービスを担当する事業者の両方です。
2. 目的が限定されている。「保険給付に関して必要があると認めるとき」に限られます。
3. 手段が具体的。文書の提出、提示、質問、照会。
つまり、この部署は、利用者側と事業者側の両方に対して、給付の適正さを確認する権限を持っていました。
これは、民間でいう「支払の適正性を確認する調査」そのものです。保険会社の支払査定でも、事業者への確認と、受け取る側への確認の両方が行われます。
そして、これは職務経歴書の書ける範囲を決めます。
確認して得た情報は、極めて機微です。利用者の状態、疾病、家族の状況、事業者の個別の請求の内容。どれも書けません。
書けるのは、「どういう手順で確認し、何を基準に判断したか」と「件数」までです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では介護保険課に所属。要介護認定、保険給付、事業者指導などの業務を担当しました。
制度名が並んでいるだけで、規模も判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(第1号被保険者数約◯万人、要介護認定者数約◯千人、年間の保険給付費約◯億円)の介護保険課で◯年間、制度の運営側の実務を担当しました。要介護認定(年約◯件の申請)について、認定調査の管理から介護認定審査会の運営までを担当し、判定のばらつきを抑えるための調査員研修と点検を運用。保険給付では請求内容の点検と過誤の調整、指定事業者◯か所の指定・変更と実地指導を担当しています。第◯期の介護保険事業計画では、認定者数の推計とサービス見込量の算定を担当しました。
入っているもの
- 規模(被保険者数、認定者数、給付費、事業者数)
- 立場(制度の運営側の実務)
- 判断の中身(ばらつきを抑える運用、点検、推計)
1つ目がいちばん効きます。「介護保険を担当していた」ではなく、どの規模の制度を扱っていたかが一言で伝わります。
担当業務
制度名を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・要介護認定に関する業務> ・保険給付に関する業務> ・事業者の指定、指導> ・介護保険事業計画の策定
良い例
> 【要介護認定(年約◯件)】> 申請の受付、認定調査の委託先の管理、主治医意見書の取りまとめ、介護認定審査会(年◯回・◯合議体)の運営、認定の決定と通知。調査員による判定のばらつきを抑えるため、特記事項の記載基準を整理し、抽出による点検と年◯回の研修を運用。>> 【保険給付の管理】> 給付費の請求内容の点検、認定の有効期間・区分支給限度基準額との整合の確認、過誤の調整と返還の処理。住宅改修・福祉用具については、必要性の確認手順を定めて要否を判断。>> 【事業者の指定・指導(指定事業者◯か所)】> 新規指定・変更・更新の審査、運営基準への適合の確認、実地指導(年約◯件)。指摘事項を「基準への不適合」と「運用上の改善」に区分し、改善報告の提出と確認までを追跡。>> 【介護保険事業計画(第◯期)】> 将来の高齢者数と要介護認定率の推計、サービス見込量の算定、必要な給付費の見積もり、保険料の算定の基礎資料の作成。>> 【第1号被保険者の保険料】> 賦課と収納の管理、減免の審査、滞納に伴う給付制限の運用。>> 【相談・地域の体制】> 高齢者からの相談、地域包括支援センターの委託と運営の確認、介護予防・総合事業の企画。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。制度名ではなく、そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、制度が適正に回っていたこととして現れるからです。
悪い例
> 適正な認定と給付に努め、事業者との信頼関係を築きました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:ばらつきを減らした
> 認定調査の特記事項について、記載が不足しやすい項目を洗い出し、記載の基準と例を整理したうえで研修に組み込んだ。あわせて抽出による点検を導入し、審査会で調査内容の確認のために差し戻しとなる件数を年◯件から◯件に減らした。
型2:処理の期間を短くした
> 申請から認定までの工程を、受付・調査・意見書・審査会の4区分に分けて滞留の要因を特定。意見書の督促の時期を前倒しし、調査の委託先への割り振りを見直すことで、申請から決定までの平均日数を◯日から◯日に短縮した。
型3:推計を作った
> 第◯期の事業計画において、将来の高齢者数と認定率を年齢階層別に推計し、サービス見込量と給付費を算定。推計の前提(人口の見通し、認定率の推移、利用率)を明示した資料として整理し、計画の説明に用いた。
型3が、この経歴でいちばん強い形です。個別の事案に一切触れずに、数字を組み立てた仕事として書けます。
数字の出し方
公表されている事業状況の資料から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者数 | 職務要約 | 規模がいちばん伝わる。公表されている |
| 要介護認定者数・認定率 | 職務要約 | 同上 |
| 年間の保険給付費 | 職務要約 | 決算資料から取れる |
| 認定申請の年間件数 | 担当業務 | 事業状況の資料から取れる |
| 審査会の開催回数と合議体の数 | 担当業務 | 運営の規模が伝わる |
| 指定事業者数と、実地指導の年間件数 | 担当業務、実績 | 事業者側への転職でいちばん効く |
| 申請から決定までの平均日数 | 実績 | 自分で控えるしかない |
| 過誤の調整の件数 | 実績 | 件数のみ |
5行目と6行目が見落とされやすい数字です。審査会の合議体の数は運営の規模を、指定事業者数と実地指導の件数は監督してきた範囲を示します。「何十という事業所を横断して見てきた」という事実は、一つの法人しか知らない管理者との違いになります。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 事業者の運営管理・本部 | 実地指導と運営基準の確認 | 指定・変更の審査 | 記録の整備に関する指導 |
| 事業者の請求・報酬管理 | 給付費の点検と過誤の調整 | 限度額・有効期間との整合 | 加算の算定要件の確認 |
| 保険・給付の査定 | 判定のばらつきを抑える運用 | 請求内容の点検 | 調査と審査会の運営 |
| 事業計画・経営企画 | 推計と見込量の算定 | 給付費の見積もり | 特別会計の収支の構造 |
| 自治体向け企業 | 制度の実務の全体 | 発注と委託先の管理 | 現場で起きることの理解 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
第23条の調査で得た情報は、目的の範囲内でしか使えません。書類でも同じです。
- 利用者の状態、疾病、家族の状況
- 個別の認定の結果や、審査会での議論の内容
- 事業者への個別の指摘の内容と、事業者名
- 過誤や返還を求めた個別の事案
- 不正が疑われた事案の経緯(手口が分かる記述はしない)
- 公表前の計画の内容や、保険料の算定の途中の数字
- 委託先の選定に関する未公表の情報
- 庁内の他課との調整の経緯
書けるのは、「工程」と「件数」と「自分が整理した仕組み」までです。
> ✕ 「◯◯という事業所について、人員基準を満たしていない状態が判明し、指定の取消しを検討した」> ○ 「実地指導について、指摘事項を『基準への不適合』と『運用上の改善』に区分し、改善報告の提出と確認までを追跡する手順を運用した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 制度名を並べるだけで終える
そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
2. 「ばらつきを抑える運用」を書かない
基準・点検・研修の3点セットとして書いてください。民間の審査部門でいちばん難しい課題です。
3. 指定事業者数と実地指導の件数を落とす
監督してきた範囲を示す数字です。事業者側への転職でいちばん効きます。
4. 事業計画の推計を書かない
個別の事案に触れずに、数字を組み立てた仕事として書ける唯一の実績です。
5. 個別の事案を書いてしまう
利用者の状態、事業者名、個別の指摘。すべて書けません。工程と件数で書いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 介護保険法第23条は、保険給付に関して必要があると認めるときに、利用者と事業者の両方に文書の提出や提示を求め、質問や照会をさせることができると定めています
- 給付の適正さを、両側から確認する権限を持っていた——だから、得た情報は書類に書けません
- 書けるのは、「工程」と「件数」と「自分が整理した仕組み」までです
- 職務要約には、規模・立場・判断の中身の3つを入れてください
- 実績は、①ばらつきを減らした ②処理の期間を短くした ③推計を作ったの3つの型で書けます。③は個別の事案に一切触れずに書けます
- 審査会の合議体の数と指定事業者数・実地指導の件数は、見落とされやすい重要な数字です
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。介護保険課は扱う工程が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば事業者の運営管理に応募するなら、保険料の賦課は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
認定調査を外部に委託していた場合は、どう書けばよいですか
むしろ、委託管理の経験として書けます。調査員の確保、割り振り、調査内容の点検、研修の実施、委託料の管理。これは民間の委託先管理(品質と納期を担保する仕事)とまったく同じ工程です。書くときは、「認定調査を委託し、調査員◯名への割り振りと、抽出による内容の点検、年◯回の研修を担当」という形で、自分は調査の質を管理する側にいたことが分かるように書いてください。
前の部署が財政や税務だと、有利になりますか
明確に有利です。介護保険は特別会計で運営され、給付費の見込みと保険料の算定が直結します。財政課で予算を扱っていた方は、この収支の構造を深く説明できます。税務課で賦課や滞納整理を経験している方は、第1号被保険者の保険料の賦課・収納にそのままつながります。書類では、前の部署の経験を「収支と賦課の判断の根拠」として接続させて書いてください。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。