部署別 / 市民課・戸籍住民課
市民課・戸籍住民課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
市民課・戸籍住民課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「窓口業務全般。住民票・戸籍謄本等の交付、各種届出の受付」
この2行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「受付をしていた人」という像しか作れません。実際には、要件に当てはめて受理・不受理を判断し、記録に反映し、誰に何を出してよいかを毎回判断していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは市民課・戸籍住民課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は市民課・戸籍住民課からの転職先に書いています。
「出してよい相手か」を、条文の要件で判断しています
書き方に入る前に、この部署の判断の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
住民基本台帳法第12条の3第1項は、本人等以外の者から住民票の写し等の交付の申出があった場合について定めています。
市町村長は、前二条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで基礎証明事項のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をした者に対し、これを交付することができる。
読み解くと、第三者への交付には、3つの関門があることが分かります。
1. 「次に掲げる者」に当たること。誰でも請求できるわけではありません。
2. 「必要である旨の申出」があること。なぜ必要かを明らかにさせます。
3. 「当該申出を相当と認めるとき」。最後は、市町村長が相当と認めるかどうかの判断です。
3つ目が要点です。
要件を形式的に満たしていても、相当と認められなければ交付しません。つまり、窓口には判断があります。
そして、交付されるのも「基礎証明事項のみが表示されたもの」に限られます。全部を出すのではなく、出す範囲も決まっています。
この「出してよい相手か」「どこまで出すか」を毎回判断してきた経験が、職務経歴書に書くべきものです。
企業でいえば、個人情報の第三者提供の可否判断そのものです。同じ判断を、毎日、件数をこなしながらやってきた人は、民間側に多くありません。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では市民課に所属。窓口業務全般として、住民票・戸籍謄本等の交付、各種届出の受付などを担当しました。
事務が並んでいるだけで、規模も判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人)の市民課で◯年間、法令に基づく審査と記録管理、証明書の交付判断を担当しました。戸籍の届出(年約◯件)の受理審査、住民異動(年約◯件)の処理、各種証明書の交付(年約◯件)を扱い、第三者からの請求については交付の可否と交付範囲を法令の要件に照らして判断しています。繁忙期の3〜4月は一日あたり約◯人の来庁があり、応援体制の編成と待ち時間の管理も担当しました。
入っているもの
- 規模(人口、年間の件数、繁忙期の来庁者数)
- 判断の中身(受理審査、交付の可否と範囲)
- 運営の経験(応援体制、待ち時間の管理)
「窓口業務」という語を一度も使っていません。これが要点です。
担当業務
事務の名前を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・住民票、戸籍謄本等の交付> ・転入、転出、転居の届出の受付> ・戸籍の届出の受付> ・マイナンバーカードの交付> ・窓口の運営
良い例
> 【戸籍の届出の受理審査(年約◯件)】> 出生、婚姻、離婚、死亡、養子縁組等の届出について、法令の要件への適合を審査し、受理・不受理を判断。要件を満たさない届出について、補正の案内と、受理できない理由の説明を担当。出頭者に対する本人確認の運用も担当。>> 【住民異動の処理(年約◯件)】> 転入・転出・転居等の届出の受付と審査、住民基本台帳への記録、関係課への連絡。届出期限を過ぎた届出の取扱いや、居住実態の確認が必要な案件の処理手順の整備。>> 【証明書の交付と交付範囲の判断(年約◯件)】> 本人・同一世帯の者からの請求のほか、第三者からの請求について、請求権の有無、請求理由の相当性、交付できる記載事項の範囲を法令の要件に照らして判断。支援措置の対象者に係る請求の制限の運用も担当。>> 【窓口の運営】> 繁忙期(3〜4月)の応援体制の編成、待ち時間の管理、受付の導線の見直し。一日あたり約◯人の来庁を、通常期の約◯倍の体制で処理。>> 【手順と品質の管理】> 審査の手引きの整備と更新、新任職員への研修、誤交付・誤記載を防ぐための確認手順の設計。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。事務名ではなく、そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。窓口の成果は、「間違えなかったこと」として現れるからです。
悪い例
> 丁寧な対応を心がけ、市民サービスの向上に努めました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:仕組みを作った
> 証明書の交付について、請求者の区分(本人・同一世帯・代理人・第三者)ごとに確認事項を整理したチェックシートを作成。新任職員でも同じ基準で判断できる形にし、交付に関する誤りを◯年間ゼロで維持した。
型2:処理量と繁忙期を示した
> 繁忙期(3〜4月)は一日あたり約◯人の来庁があり、通常期の約◯倍。他課からの応援◯人を含む体制を編成し、受付から交付までの動線を分けることで、待ち時間の最大値を◯分から◯分に短縮した。
型3:品質を上げた
> 戸籍の届出の審査について、届出の種類ごとに確認事項と根拠条文を対応させた手引きを整備。あわせて、受理後の記載前に二人目が確認する手順を導入し、記載の誤りによる訂正件数が年◯件から◯件に減少した。
型3が、この経歴でいちばん効く形です。誤りを減らした話は、どの審査業務でもそのまま価値になります。
数字の出し方
公表されている統計から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 人口・世帯数 | 職務要約 | 公表されている |
| 戸籍の届出の年間件数 | 職務要約、担当業務 | 統計書に載っていることが多い |
| 住民異動の年間件数 | 職務要約、担当業務 | 同上 |
| 証明書の交付の年間件数 | 職務要約、担当業務 | 同上 |
| 繁忙期の一日あたり来庁者数と、通常期との倍率 | 実績 | 要員計画の経験として最も効く |
| 待ち時間の最大値と改善後の値 | 実績 | 自分で控えるしかない |
| 応援体制の人数 | 実績 | 体制を組んだ規模が伝わる |
| 誤りの件数の推移 | 実績 | ゼロならゼロと書く |
5行目が最も効きます。「窓口を担当していた」ではなく、「通常期の◯倍の来庁を、◯人の体制で捌いた」と書くと、要員計画を任せられる人として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 本人確認・審査 | 戸籍の受理審査と不受理の判断 | 本人確認の運用 | 交付範囲の判断 |
| 事務センター・オペレーション | 年間の処理件数 | 繁忙期の体制編成 | 手引きの整備と研修 |
| 窓口・店舗運営 | 来庁者数と待ち時間の管理 | 動線の見直し | 難しい場面での手続としての対応 |
| 情報管理・個人情報 | 第三者への交付の可否判断 | 支援措置の運用 | 誤交付の防止 |
| 自治体向け企業 | 窓口で実際に起きることの理解 | 委託先の管理 | 手順の設計 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
この部署は、扱う情報の性質上、書ける範囲がはっきり決まっています。
- 個別の届出や請求の内容、請求者や届出人が特定できる記述
- 支援措置の対象者に関すること(件数の内訳も含め、書かない)
- 不受理とした事案の具体的な内容
- 居住実態の確認を行った案件の経緯
- 戸籍の記載の訂正に関わった個別の事案
- 窓口で受けた相談の内容
- 不正な請求として処理した事案の詳細(手口が分かる記述はしない)
- 庁内の他課との調整の経緯
書けるのは、「判断の構造」と「公表されている件数」までです。
> ✕ 「第三者からの請求について、◯◯を目的とした請求を不相当と判断して交付しなかった事例がある」> ○ 「第三者からの請求について、請求権の有無、請求理由の相当性、交付できる記載事項の範囲を要件に照らして判断する手順を運用した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が運用した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「窓口業務」という語を使う
一度も使わずに書けます。審査・処理・判断・運営に分けてください。
2. 不受理の判断を書かない
通さない判断には根拠と説明が要ります。通す判断より重い部分です。
3. 第三者への交付の可否判断を落とす
企業の個人情報の第三者提供の判断と同じです。書かないと気づかれません。
4. 繁忙期の倍率を書かない
要員計画を任せられるかどうかが、ここで分かれます。
5. 書ける範囲を絞りすぎる
統計書に載っている件数なら書けます。先に一通り開いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 住民基本台帳法第12条の3は、第三者への交付について、請求できる者であること・必要である旨の申出があること・市町村長が相当と認めることの3つを求めています
- 交付されるのも基礎証明事項のみに限られます。出す相手と、出す範囲の両方に判断があります
- 職務要約には、規模・判断の中身・運営の経験の3つを入れ、「窓口業務」という語を使わずに書いてください
- 担当業務は、事務の一覧ではなく工程として書き、そこで何を判断していたかを足します
- 実績は、①仕組みを作った ②処理量と繁忙期を示した ③品質を上げたの3つの型で書けます
- 繁忙期の倍率と体制が、要員計画を任せられるかの分かれ目になります
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。市民課は扱う事務の種類が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば審査の方向に応募するなら、窓口の動線の見直しは1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
前の部署の経験も書いたほうがよいですか
応募先によっては強い材料になります。税務にいたなら、賦課の基礎となる情報の扱いを知っていることになります。福祉にいたなら、支援を必要とする方への対応の理解があります。情報政策にいたなら、システムの仕様の話に入れます。ただし、時系列で全部並べると焦点がぼやけるので、応募先に関係するものだけを、接続させて書いてください。
マイナンバーカードの交付の経験は、どう書けばよいですか
「本人確認を伴うカードの発行運用」として書けます。申請の受付、本人確認、暗証番号の設定、交付時の確認。これは民間のカード発行や、口座開設時の本人確認とほぼ同じ工程です。加えて、交付の予約制の導入や、繁忙期の体制に関わっていれば、それも運営の経験として書けます。書くときは、交付件数と、予約制などの運用の工夫を添えてください。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。