部署別 / 障害福祉課
障害福祉課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
障害福祉課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「障害者手帳の交付、福祉サービスの支給決定、事業所の指導など」
制度の名前が並んでいるだけで、何をどう判断していたかが1行も入っていません。
読む側は、ここから「福祉の窓口をしていた人」という像しか作れません。実際には、条文が列挙する事項を一つずつ勘案して、サービスの種類と量を決めていたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは障害福祉課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は障害福祉課からの転職先に書いています。
勘案すべき事項が、条文に列挙されています
書き方に入る前に、この部署の判断の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
障害者総合支援法第22条第1項は、支給要否決定についてこう定めています。
市町村は、第二十条第一項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の主務省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定を行うものとする。
勘案すべき事項が、条文に並んでいます。
- 障害支援区分
- 介護を行う者の状況
- 置かれている環境
- 利用に関する意向
- その他省令で定める事項
「区分だけで決まらない」ということが、法律に書かれているわけです。
同じ区分でも、介護をする方がいるかどうかで必要な量は違います。住まいの環境が違えば、必要な支援も変わります。そして、本人の意向も勘案の対象です。
つまり、この部署の仕事は、「複数の事項を勘案して、一つの結論を出す」ことでした。
これは、民間の審査業務でいちばん難しい型です。
チェックリストで機械的に決まる審査なら、誰でもできます。複数の要素を見て、重みを判断して、結論と理由を残す。この型の審査を、基準を持ちながら、ばらつかせずにやってきたというのが、この経歴の中心です。
ここを書いている書類と、書いていない書類では、読まれ方がまったく違います。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では障害福祉課に所属。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、事業所の指導などを担当しました。
制度名が並んでいるだけで、規模も判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人、障害福祉サービスの受給者数約◯千人、年間の給付費約◯億円)の障害福祉課で◯年間、制度の運営側の実務を担当しました。障害支援区分の認定(年約◯件)について認定調査の管理と審査会の運営を担当し、支給決定(年約◯件)では、区分・介護を行う方の状況・環境・本人の意向・計画案を勘案して、サービスの種類と量を決定しています。あわせて、指定事業所◯か所の指定・変更と実地指導、相談支援事業の委託管理、第◯期の障害福祉計画の策定に参加しました。
入っているもの
- 規模(受給者数、給付費、件数、事業所数)
- 立場(制度の運営側の実務)
- 判断の中身(勘案する事項を並べている)
3つ目がいちばん効きます。勘案する事項を並べるだけで、「複数の要素を見て決める審査」をしてきた人として読まれます。
担当業務
制度名を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・障害者手帳の交付> ・障害支援区分の認定> ・障害福祉サービスの支給決定> ・事業所の指定、指導> ・障害福祉計画の策定
良い例
> 【障害支援区分の認定(年約◯件)】> 申請の受付、認定調査の実施と委託先の管理、医師の意見書の取りまとめ、市町村審査会(年◯回)の運営、区分の認定と通知。特記事項の記載に差が出やすい項目を整理し、抽出による点検と年◯回の研修を運用。>> 【支給決定(年約◯件)】> 障害支援区分、介護を行う方の状況、住まいの環境、本人の意向、サービス等利用計画案を勘案して、サービスの種類と支給の量を決定。勘案すべき事項を確認の項目として整理し、決定の理由を記録に残す運用を担当。区分だけでは決まらない部分の判断を担う。>> 【給付費の管理】> 事業所からの請求について、支給決定の内容・利用の実績・加算の要件との整合を点検。誤りがあれば過誤の調整を行い、必要に応じて返還の処理。>> 【事業所の指定・指導(指定事業所◯か所)】> 新規指定・変更・更新の審査、運営基準への適合の確認、実地指導(年約◯件)。指摘事項を「基準への不適合」と「運用上の改善」に区分し、改善報告の提出と確認まで追跡。>> 【相談支援事業等の委託管理】> 委託先の選定、委託料の積算、実績の確認、質の確認。>> 【障害福祉計画(第◯期)】> サービスの必要量の見込み、基盤整備の方向、成果目標の設定に関する資料の作成。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。制度名ではなく、そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、制度が適正に回っていたこととして現れるからです。
悪い例
> 利用者に寄り添った支給決定を行い、事業所との連携に努めました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:判断の根拠を残せる形にした
> 支給決定について、勘案すべき事項を確認の項目として整理し、決定の理由を定型の様式に記録する運用を導入。担当が交代した場合や更新の際に、前回の判断の根拠をたどれるようにし、再確認のための調査のやり直しを減らした。
型2:ばらつきを減らした
> 認定調査の特記事項について、記載が不足しやすい項目を洗い出し、記載の基準と例を整理したうえで研修に組み込んだ。抽出による点検を導入し、審査会で内容の確認のために差し戻しとなる件数を年◯件から◯件に減らした。
型3:処理の期間を短くした
> 申請から支給決定までの工程を、受付・調査・意見書・審査会・決定の5区分に分けて滞留の要因を特定。意見書の督促の時期を前倒しし、計画案の提出の時期を調整することで、申請から決定までの平均日数を◯日から◯日に短縮した。
型1が、この経歴でいちばん強い形です。個別の事案に一切触れずに、判断の仕組みを作った話として書けます。
数字の出し方
公表されている資料から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 障害福祉サービスの受給者数 | 職務要約 | 規模がいちばん伝わる。公表されている |
| 年間の給付費 | 職務要約 | 決算資料から取れる |
| 障害支援区分の認定の年間件数 | 担当業務 | 事業の概要から取れる |
| 支給決定の年間件数 | 職務要約、担当業務 | 判断の量が伝わる |
| 審査会の開催回数 | 担当業務 | 運営の規模が伝わる |
| 指定事業所数と、実地指導の年間件数 | 担当業務、実績 | 事業者側への転職でいちばん効く |
| 手帳の交付件数 | 担当業務 | 公表されている |
| 申請から決定までの平均日数 | 実績 | 自分で控えるしかない |
4行目と6行目が効きます。支給決定の件数は判断の量を、指定事業所数と実地指導の件数は監督してきた範囲を示します。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 事業者の運営管理・本部 | 実地指導と運営基準の確認 | 指定・変更の審査 | 記録の整備に関する指導 |
| 事業者の請求・報酬管理 | 給付費の点検と過誤の調整 | 支給決定の内容との整合 | 加算の算定要件 |
| 就労支援・人材サービス | 就労系サービスの利用調整 | 支給決定における意向の勘案 | 関係機関との連携 |
| 企業の障害者雇用 | 支援機関の役割の理解 | 制度の全体像 | 配慮の設計に関わる知識 |
| 自治体向け企業 | 制度の実務の全体 | 委託先の選定と管理 | 計画の策定 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
この部署は、最も配慮を要する情報を扱います。
- 本人の障害の内容、状態、疾病、診断の情報
- 個別の認定の結果や、審査会での議論の内容
- 個別の支給決定の内容と、その理由
- 家族の状況、介護をする方の事情
- 事業所への個別の指摘の内容と、事業所名
- 虐待の通報に関する一切の情報
- 公表前の計画の内容や、委託先の選定に関する未公表の情報
- 特定の個人が推測できる記述
書けるのは、「工程」と「件数」と「自分が整理した仕組み」までです。
> ✕ 「重度の方の支給量について、家族の介護力を考慮して増やした事例がある」> ○ 「支給決定について、区分・介護を行う方の状況・環境・本人の意向を確認の項目として整理し、決定の理由を記録に残す運用を整備した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が整理した仕組みが書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 制度名を並べるだけで終える
そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
2. 勘案する事項を書かない
区分だけでは決まらないことが法律に書かれています。並べるだけで読まれ方が変わります。
3. 「決定の理由を記録に残す運用」を書かない
審査をする人ではなく、審査の仕組みを作れる人として読まれる部分です。
4. 支給決定の件数と、指定事業所数を落とす
判断の量と監督してきた範囲を示す数字です。
5. 個別の事案を書いてしまう
障害の内容、家族の状況、事業所名、虐待の通報。すべて書けません。工程と件数で書いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 障害者総合支援法第22条は、支給の要否を、障害支援区分・介護を行う者の状況・置かれている環境・利用に関する意向などを勘案して決めると定めています
- 「区分だけでは決まらない」ことが法律に書かれています。複数の要素を見て、重みを判断して、結論と理由を残す——民間の審査業務でいちばん難しい型です
- 職務要約には、規模・立場・勘案する事項の3つを入れてください
- 担当業務は、制度名の一覧ではなく工程として書き、そこで何を判断していたかを足します
- 実績は、①判断の根拠を残せる形にした ②ばらつきを減らした ③処理の期間を短くしたの3つの型で書けます。①がいちばん強い形です
- 支給決定の件数と指定事業所数・実地指導の件数が、判断の量と監督の範囲を示す数字です
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。障害福祉課は扱う制度と工程が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば事業者の運営管理に応募するなら、手帳の交付は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
手帳の交付や医療の認定しか担当していない場合は
「要件の確認を伴う証明・認定の発行管理」として書けます。申請の受付、診断書の確認、要件への当てはめ、交付と管理、更新と再交付。本人確認と要件確認を伴う発行業務という点で、民間の資格管理や給付の認定と工程が同じです。年間の交付件数を添えてください。そのうえで、支給決定や事業所の指導に担当が広がれば、書ける内容が大きく増えます。
虐待の通報対応の経験は、書いてよいですか
担当していたという事実と、手順までなら書けます。「通報の受理、事実確認の実施、関係機関との連携、必要な措置の検討という手順を担当」。ここまでです。件数、対象者、事実関係、判断の内容。いずれも書けません。なお、この経験は企業の内部通報やハラスメントの相談窓口と構造が近いのですが、扱いが最も慎重を要する情報なので、面接でも自分から線を引いて話してください。