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危機管理・防災課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
危機管理・防災課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「地域防災計画の改定、防災訓練の実施、備蓄物資の管理、避難所の運営に関する業務」
担当した事務が並んでいるだけで、何をどこまで設計したかが1行も入っていません。
読む側は、ここから「防災の担当をしていた人」という像しか作れません。実際には、被害を想定し、誰が動くかを分掌として決め、指揮権のない相手と協定を結び、訓練で検証して計画を直していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは危機管理・防災課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は危機管理・防災課からの転職先に書いています。
「把握に努める」と「名簿を作る」の間に、実務があります
書き方に入る前に、この部署がどういう種類の仕事を扱ってきたかを条文で押さえます。書類の芯にもなり、同時に制約にもなる部分です。
災害対策基本法第49条の10第1項は、こう定めています。
市町村長は、当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)の把握に努めるとともに、地域防災計画の定めるところにより、避難行動要支援者について避難の支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置を実施するための基礎とする名簿を作成しておかなければならない。
読み解くと、実務の形が見えます。
1. 「把握に努める」。対象は自動的には分かりません。福祉部門の情報、申請、民生委員からの情報。複数の経路を組み合わせて、誰が対象かを特定する作業があります。
2. 「地域防災計画の定めるところにより」。名簿の作り方そのものを、計画で定めておく必要があります。
3. 「作成しておかなければならない」。平時に作っておくことが義務です。起きてからでは間に合いません。
そして、この名簿は、極めて機微な個人情報の集合です。誰が支援を必要としているかという情報を、地域の支援者と共有する仕組みまで含みます。
つまり、この経歴は「個人情報を扱う設計をしてきた」経験でもあります。
そして同時に、職務経歴書に書ける範囲を強く縛ります。名簿の内容、対象者の属性、共有先の具体。どれも書けません。
書けるのは、仕組みと件数までです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では危機管理課に所属。地域防災計画の改定、防災訓練の実施、備蓄物資の管理などを担当しました。
事務が並んでいるだけで、規模も設計も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人、想定される最大震度◯、浸水想定区域内人口約◯万人)の危機管理・防災課で◯年間、市全体の危機管理体制の設計と運用を担当しました。地域防災計画および業務継続計画の改定、指定避難所◯か所の運営体制の整備、備蓄物資◯品目の調達・更新計画、民間事業者等との応援協定◯件の締結と更新、年◯回の訓練の企画・運営を担当しています。◯年の◯◯への対応では災害対策本部に入り、情報の集約と記録を担当しました。
入っているもの
- 規模(人口、被害想定、避難所数、協定件数)
- 設計の範囲(計画、体制、備蓄、協定、訓練)
- 実際に動かした経験(本部に入ったこと)
1つ目が特に大事です。「人口◯万人」だけでなく、被害想定の数字を入れてください。何をどの規模で守る前提だったかが、一言で伝わります。
担当業務
事務の名前を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・地域防災計画の改定> ・防災訓練の実施> ・備蓄物資の管理> ・避難所の運営> ・防災行政無線の管理
良い例
> 【計画の策定・改定】> 地域防災計画および業務継続計画の改定を担当。被害想定をもとに、応急対策の各業務について担当部署と実施順序を分掌として整理。担当者が不在でも、その場にいる職員が動ける形にするため、役職ではなく役割で記述する方式に変更。>> 【体制と受援】> 災害対策本部の設営手順、職員の参集基準、班編成の整備。外部からの応援を受け入れる受援計画を策定し、応援職員の受入れ窓口と業務の切り出し方を事前に定義。>> 【協定の締結・更新(◯件)】> 物資供給、燃料、輸送、要配慮者の受入れ、情報提供などについて民間事業者・団体と協定を締結。締結後、訓練で一度動かして実効性を確認する運用を導入。>> 【避難行動要支援者名簿】> 福祉部門との連携による対象者の把握、名簿の作成と更新の手順の整備、地域の支援者との共有に関する同意取得の仕組みづくり。個人情報の取扱いについて、共有の範囲と管理方法を文書で定義。>> 【訓練(年◯回・参加者延べ◯人)】> 住民参加の訓練、職員参集訓練、図上訓練の企画・運営。訓練後に課題を整理し、計画とマニュアルの該当箇所を改定する工程まで担当。>> 【発災時対応】> 災害対策本部における情報の集約、記録、関係機関との連絡調整。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。事務名ではなく、そこで何を設計したかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。危機管理の成果は、何も起きなかったこととして現れるからです。
悪い例
> 防災意識の向上に努め、地域の防災力の強化に貢献しました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:仕組みを作った
> 地域防災計画の記述を、役職ベースから役割ベースに改めた。夜間・休日に担当者が参集できない場合でも、最初に到着した職員が本部の設営に着手できるよう、手順を◯項目のチェックリストとして整理。参集訓練で所要時間が従来の◯分から◯分に短縮した。
型2:外部を巻き込んだ
> 民間事業者・団体との応援協定を◯件から◯件に拡大。うち◯件について、訓練で発動手順を実際に確認し、連絡先と発動条件の不一致◯件を是正した。
型3:検証して計画に戻した
> ◯年の◯◯への対応後、初動の連絡経路と本部の設営、避難所の開設判断について課題を整理。地域防災計画および職員行動マニュアルの該当箇所を改定し、翌年度の訓練に検証項目として組み込んだ。
型3が、この経歴でいちばん効く形です。訓練や対応を「やった」ではなく、「やって直した」まで書くと、サイクルを回せる人として読まれます。
数字の出し方
公表されている計画から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 対象人口・世帯数 | 職務要約 | 公表されている |
| 被害想定(最大震度、浸水想定区域内人口、想定避難者数) | 職務要約 | 規模がいちばん伝わる。地域防災計画に載っている |
| 指定避難所・指定緊急避難場所の数 | 職務要約、担当業務 | 公表されている |
| 備蓄の品目数・数量 | 担当業務 | 計画に載っている範囲で |
| 協定の締結件数と相手方の業種 | 担当業務、実績 | 相手方の個社名は書かない |
| 訓練の回数・参加者数 | 担当業務、実績 | 延べ人数で可 |
| 参集訓練の所要時間 | 実績 | 自分で控えるしかない |
| 自主防災組織の数・カバー率 | 担当業務 | 公表されている団体が多い |
2行目が最も効きます。「人口◯万人の市」だけでは規模が伝わりませんが、「想定避難者数◯万人」を添えると、扱っていた規模が一言で伝わります。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 企業の危機管理・事業継続 | 計画の策定と改定 | 本部の運営と検証 | 受援計画 |
| 総務・施設のリスク管理 | 避難所・拠点の運営体制 | 備蓄と資機材の管理 | 訓練の設計 |
| 防災関連企業 | 発注と選定の経験 | 自治体が必要とするものの理解 | 計画策定の実務 |
| インフラ企業の保安部門 | 協定と関係機関との連絡調整 | 発災時の情報の流れ | 応急復旧の優先順位 |
| 大規模施設の運営 | 避難誘導と滞留の想定 | 不特定多数を対象とした訓練 | 要配慮者への対応 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
避難行動要支援者名簿を扱ってきた経歴である以上、ここを守れる人かどうかは強く見られています。
- 避難行動要支援者名簿の内容、件数の内訳、対象者の属性
- 名簿の共有先の具体名や、共有の運用の詳細
- 災害時に支援が必要な施設や、その所在と状況
- 被災した個人・世帯の状況
- 公表されていない被害想定の詳細や、脆弱な箇所の特定につながる情報
- 国民保護計画の具体的な想定の内容
- 対応に当たった個人が特定できる記述
- 庁内の部署間の調整の経緯
書けるのは、「仕組みの構造」と「公表されている計画に載っている数字」までです。
> ✕ 「避難行動要支援者名簿◯件のうち、◯地区の◯◯施設の入所者について個別計画を作成した」> ○ 「避難行動要支援者名簿について、対象者の把握、更新の手順、地域の支援者との共有に関する同意取得の仕組みを整備した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の情報ではなく、自分が設計した仕組みが書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 事務の名前を並べるだけで終える
そこで何を設計したかを1つずつ足してください。
2. 被害想定の数字を書かない
規模がいちばん伝わる数字です。地域防災計画に載っています。
3. 協定を「関係機関との連携」で丸める
交渉と契約の経験が消えます。件数、業種、訓練で動かしたかまで書いてください。
4. 訓練を「実施した」で終える
やって直したまで書いてください。これがこの経歴でいちばん効きます。
5. 書ける範囲を絞りすぎる
公表されている地域防災計画に載っている範囲なら書けます。先に一通り開いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 災害対策基本法第49条の10は、避難行動要支援者の把握に努めることと、平時に名簿を作成しておくことを義務づけています
- この経歴は個人情報を扱う設計をしてきた経験であり、同時に書ける範囲を強く縛ります。書けるのは仕組みと件数までです
- 職務要約には、規模(被害想定を含む)・設計の範囲・実際に動かした経験の3つを入れてください
- 担当業務は、事務の一覧ではなく工程として書き、そこで何を設計したかを足します
- 実績は、①仕組みを作った ②外部を巻き込んだ ③検証して計画に戻したの3つの型で書けます。③がいちばん効きます
- 協定は「関係機関との連携」で丸めないでください。件数、業種、訓練で動かしたかまで書きます
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。危機管理・防災課は担当する範囲が広いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば企業の事業継続に応募するなら、備蓄物資の品目管理は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
前の部署の経験も書いたほうがよいですか
応募先によっては強い材料になります。福祉部門にいたなら、要配慮者への対応の理解が深いという説明ができます。土木・建築にいたなら、施設の被害想定や応急復旧の話に入れます。契約や財政にいたなら、協定や予算の話が具体的になります。ただし、時系列で全部並べると焦点がぼやけるので、応募先に関係するものだけを、接続させて書いてください。
訓練の写真や資料を提出してよいですか
公表されているものに限ります。訓練の実施報告として公表されている資料であれば示せますが、参加した住民や職員が写り込んでいるものは使えません。また、施設の内部の構造が分かる資料や、備蓄の保管場所が特定できる資料も避けてください。提出するなら、公表資料のうち、自分が企画した部分を説明できるものを選ぶのが安全です。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。