部署別 / 危機管理・防災課
危機管理・防災課の面接|聞かれることと、答え方の型
危機管理・防災課の面接で、評価がいちばん分かれる質問はこれです。
「結果的に何も起きなかった判断について、どう整理していましたか」
企業の危機管理でも、まったく同じことが起きるからです。
台風が来そうだから全社を早退させた。結果、何も起きなかった。「やりすぎだった」と言われます。では次回は様子を見るか——そこで被害が出れば、今度は「なぜ動かなかった」と言われます。
この問いに、手続で答えられるかどうかが分かれ目です。
そして、自治体の危機管理・防災課ほど、この問いに正面から向き合ってきた職場はありません。
この記事では、実際に出てくる質問を並べ、それぞれをどう答えるかを整理します。
言い換えは危機管理・防災課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は危機管理・防災課からの転職先、書類は職務経歴書に分けています。
「まさに発生しようとしている場合」に、権限を行使します
答え方の前に、この部署が支えてきた判断の重さを条文で確認します。
災害対策基本法第63条第1項は、こう定めています。
災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずることができる。
読み解くと、3つの要素があります。
1. 「まさに発生しようとしている場合」。起きる前に行使できます。
2. 「立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずる」。お願いではなく、命令です。
3. 「特に必要があると認めるとき」。必要かどうかを判断するのは、その場の行政の側です。
つまり、情報が確定していない段階で、人の行動を制限する判断を支えてきたことになります。
そして、この判断は、事後に必ず検証されます。なぜあの区域を設定したのか。なぜあの時刻だったのか。なぜ設定しなかったのか。
だから、この部署では「判断の根拠と、判断した時刻を記録に残す」ことが徹底されます。
面接では、ここを前に出してください。
> 判断した内容だけでなく、判断した時点で何が分かっていて、何が分かっていなかったかを記録に残す運用をしていました。事後に検証されるためです。
企業の危機管理で、まさに求められているものです。
質問1:「危機管理・防災課では、どういうことをされていたんですか」
避けたい答え方
「地域防災計画の改定や、防災訓練、備蓄の管理などを担当していました」。
事務が並んでいるだけで、防災の担当をしていた人という像で固定されます。
組み立て方
枠 → 規模 → 設計の順です。
> 御社でいうと危機管理・事業継続にあたる仕事です。人口約◯万人、想定避難者数約◯万人という被害想定のもとで、市全体の危機管理体制を設計していました。計画の改定、指定避難所◯か所の運営体制、民間事業者との応援協定◯件、年◯回の訓練の企画と、実際の対応時の本部運営です。設計で中心に置いていたのは、担当者が不在でも、その場にいる人が動ける形にすることでした。
最後の一文が効きます。「人がそろう前提の計画は動かない」という認識は、実務をやった人にしか出てこない言葉です。
質問2:「実際の災害対応の経験はありますか」
必ず出ます。経験がある場合とない場合で、答え方が変わります。
経験がある場合
個別の被災状況ではなく、自分が担った機能で話してください。
> 災害対策本部に入り、情報の集約と記録を担当しました。入ってくる情報が断片的で、しかも同じ事象について複数の経路から少しずつ違う内容が来ます。そこで、情報を「確認済み」「未確認」「対応済み」に分けて掲示し、本部の全員が同じ画面を見て判断できる状態を作ることに注力しました。対応後は、初動の連絡経路と本部の設営について課題を整理し、計画とマニュアルの該当箇所を改定しています。
「同じ事象について複数の経路から少しずつ違う内容が来る」は、経験した人しか言えない具体です。個別の被害の話をしなくても、経験があることは伝わります。
経験がない場合
曖昧にしないでください。
> 実際の発災対応は経験していません。訓練では、本部の設営から情報の整理までを担当し、図上訓練では意思決定の分岐を設計する側にいました。訓練後に課題を整理して計画に反映する工程まで担当しています。
正確に言ったうえで、担当した範囲を全部言う。これで十分に読まれます。
質問3:「結果的に何も起きなかった判断は、どう整理していましたか」
この経歴でいちばん強く答えられる質問です。
避けたい答え方
「安全側に立って判断していました」。
間違いではありませんが、手続が見えません。「毎回最大限に動く」と読まれると、企業ではコストの懸念になります。
組み立て方
基準 → 記録 → 検証の3段で話します。
> まず、判断の基準を事前に決めておきます。どの指標が、どの値になったら、どの段階の体制に移るか。その場の感覚で決めないための仕組みです。次に、判断した時点で何が分かっていて、何が分かっていなかったかを記録に残します。結果ではなく、判断時点の情報で妥当だったかを後から検証できるようにするためです。そのうえで、事後に基準そのものを見直します。基準に照らして動いた結果、過剰だったのであれば、基準の値を変える。判断した個人の是非ではなく、基準の妥当性の問題として扱うという整理にしていました。
「判断した個人の是非ではなく、基準の妥当性の問題として扱う」という一言が効きます。企業の危機管理で、担当者がいちばん困っている部分だからです。
質問4:「指揮権のない相手を、どう動かしていましたか」
グループ会社や委託先を持つ企業で出ます。
組み立て方
> 自主防災組織、消防団、協定を結んだ事業者、他の自治体。どれも指示できる相手ではありません。やっていたのは3つです。1つ目は、協定の段階で発動の条件と連絡先を具体的に決めておくこと。「協力する」だけの協定は、実際には動きません。2つ目は、締結した協定を訓練で一度動かしてみること。連絡先が変わっていた、担当者が知らなかった、という不一致が実際に見つかります。3つ目は、相手方にとっての手順書を作ること。こちらの計画ではなく、相手が読んで動けるものを渡します。
「協定は締結しただけでは動かない」は、実務をやった人の言葉です。企業の相互支援協定でも、まったく同じ問題が起きています。
質問5:「訓練は、どう設計していましたか」
危機管理の求人では、ほぼ必ず出ます。
組み立て方
「何を確かめるための訓練か」から話してください。
> 訓練は、手順を覚えるためのものと、手順の穴を見つけるためのものに分けていました。前者は、参集や避難誘導のように、体で覚える必要があるもの。後者は図上訓練で、あえて想定外の条件を入れて、計画のどこで止まるかを見ます。担当者が参集できない、連絡手段が使えない、避難所が使えない。止まった箇所が、そのまま計画の改定項目になります。訓練後は課題を整理し、計画とマニュアルの該当箇所を直して、翌年の訓練の検証項目に組み込んでいました。
「止まった箇所が、そのまま計画の改定項目になる」という説明は、訓練をやりっぱなしにしていない証拠になります。
質問6:「うちで何ができますか」
応募先の方向によって、答えを完全に変えます。
| 応募先の方向 | 前に出すこと |
|---|---|
| 企業の危機管理・事業継続 | 計画の改定、本部の運営、検証して直す工程 |
| 総務・施設のリスク管理 | 拠点の運営体制、備蓄、避難誘導、訓練 |
| 防災関連企業 | 発注側の視点、自治体が必要とするものの理解 |
| インフラ企業の保安部門 | 自治体との連携の実際、情報提供のタイミング |
| 大規模施設の運営 | 不特定多数を対象とした訓練、要配慮者への対応 |
質問7:希望する条件について
給与や勤務条件の話も出ます。ここで長く話す必要はありません。
「現在の水準を基準に考えています」と伝え、具体的な調整は選考が進んでからにするのが一般的な進め方です。
なお、退職手当や共済の扱いは在職期間で変わる部分があります。手続きの前に、必ず所属の人事担当課と共済組合で確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
逆質問で聞いておくこと
1. 危機管理の体制を発動する基準が、文書で決まっているか
決まっていないと答える会社は、少なくありません。その場合、基準を作る側に回れます。この経歴の強みが最も活きる状況なので、悪い話ではありません。
2. 訓練の結果を、計画に反映する工程があるか
訓練はやっているが、結果を計画に戻していないという会社が実際に多くあります。ここを担える人として入れるかどうかを確認してください。
3. 危機管理の担当は、どの部署に置かれているか
総務部の中なのか、経営企画なのか、独立した部署なのか。置かれている場所で、動かせる範囲が変わります。自治体では独立した課でしたが、企業では他の業務と兼務になることが多いので、兼務の範囲まで聞いておくと入ってからの誤差が減ります。
つまずきやすい点
1. 災害対応の話を具体的にしすぎる
「自分が担った機能」で話してください。個別の被災状況、対応者、施設の状況は話せません。
2. 「安全側に立っていた」で終える
基準 → 記録 → 検証の3段で答えてください。
3. 経験の有無を曖昧にする
発災対応の経験がないなら、正確に言ったうえで担当範囲を全部言うほうが読まれます。
4. 訓練を「実施していた」で終える
何を確かめるための訓練かから話してください。
5. 被害想定の数字を言わない
扱っていた規模が一言で伝わる数字です。地域防災計画に載っています。
答え方の組み立ては、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 災害対策基本法第63条は、まさに発生しようとしている場合に、市町村長が警戒区域を設定し、立入りを制限・禁止し、退去を命ずることができると定めています
- 情報が確定していない段階で、人の行動を制限する判断を支えてきたのが、この部署です
- 面接では、判断した時点で何が分かっていて、何が分かっていなかったかを記録に残す運用を前に出してください
- 「何も起きなかった判断」には、基準 → 記録 → 検証の3段で答えます。「個人の是非ではなく、基準の妥当性の問題として扱う」が決め手です
- 災害対応は、「何が起きたか」ではなく「自分が担った機能」で話してください
- 逆質問では、発動基準が文書であるか/訓練の結果を計画に戻す工程があるか/担当部署の置かれ方の3つを聞いてください
よくある質問
防災の専門知識を、面接でどこまで求められますか
技術的な深さはあまり問われません。企業が求めているのは、計画を作り、訓練で検証し、実際に本部を回し、結果を計画に戻せるかです。地震の発生機構や気象の専門知識が問われる場面は多くありません。むしろ、「技術的な判断は専門機関が担い、自分は体制と情報の設計を担当していた」と正確に言うほうが、役割の線が伝わって評価されます。
前の部署の経験は、面接で話したほうがよいですか
応募先に関係するものだけ話してください。福祉部門にいたなら要配慮者への対応、土木にいたなら施設の被害想定や応急復旧、契約にいたなら協定や調達の話が具体的になります。ただし、時系列で全部話すと焦点がぼやけます。「この経験があるので、◯◯の部分はすぐに入れます」という形で、1つか2つに絞ってつなげてください。
「公務員は危機意識が低いのでは」と言われたらどう答えますか
そういう前提の質問が来ることはあります。答えは、事実で返すのが最も短く済みます。「発動の基準を文書で持ち、年◯回の訓練で実際に動かし、対応後には計画を改定する工程まで回していました」。具体的な運用を並べれば、印象論の応酬になりません。反論するのではなく、やってきたことを並べるのが、この種の質問への最も効率のよい答え方です。