部署別 / 危機管理・防災課
危機管理・防災課からの転職先|向いている5方向と、合いにくい方向
危機管理・防災課からの転職で、いちばん多い遠回りはこれです。
求人サイトで「防災」と検索する。
出てくるのは、防災用品の販売職と、施設の設備管理が中心になります。計画を作り、訓練を回し、本部を動かしてきた経験に見合う求人は、この語では出てきません。
探すべき語は、「危機管理」「事業継続」「BCP」です。
この記事では、向いている5方向と、合いにくい方向、それに資格と検索語を並べます。
仕事の言い換えは危機管理・防災課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
「情報がそろう前に決める」訓練を受けています
方向の話に入る前に、この部署の判断の性格を条文で確認します。民間で最も評価される部分です。
災害対策基本法第60条第1項は、こう定めています。
災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の必要と認める居住者等に対し、避難のための立退きを指示することができる。
注目してほしいのは、「発生するおそれがある場合において」という部分です。
起きてからではありません。起きる前に判断します。
そして、「必要と認める地域の必要と認める居住者等に対し」とあります。範囲を決めるのも、判断の一部です。
さらに第2項は、必要があると認めるときは、その立退き先として指定緊急避難場所その他の避難場所を指示することができるとしています。
つまり、この部署が支えてきた判断は、こういう性質のものです。
- 情報が確定する前に決める
- 対象の範囲を自分で決める
- 決めなかったことも、結果として問われる
企業の危機管理も、まったく同じ性質を持っています。
工場を止めるか。出社を見合わせるか。製品を回収するか。どれも、情報が出そろう前に決めなければ手遅れになります。
そして、この判断に慣れている人は、民間側に多くありません。
面接では、ここを前に出してください。「災害対応をしていました」ではなく、「情報が不足している段階で、範囲を決めて判断する仕事を支えてきました」と言えます。
向いている5つの方向
1. 企業の危機管理・事業継続(BCP)部門
いちばん直線的につながる方向です。
計画の策定、訓練の設計、対策本部の運営、事後の検証。工程が同じなので、説明がそのまま通ります。
特に評価されるのが、実際に本部を動かした経験です。訓練しか経験のない担当者と、実際の事象で本部に入った人では、話せる内容の密度が違います。
| 見るべき求人 | 前に出す経験 |
|---|---|
| 危機管理室・リスク管理部の中途採用 | 計画の策定、本部の運営、事後の検証 |
| 事業継続計画の担当 | 被害想定、優先順位のつけ方、受援計画 |
| 訓練・演習の企画担当 | 外部を巻き込んだ訓練の設計 |
「どの機能を先に戻すか」で優先順位をつけてきたことを書いてください。企業の事業継続で、まさに問われる考え方です。
2. 総務・施設のリスク管理、安全管理
事業所の安全管理、防火・防災管理、安否確認の仕組み、備蓄の管理、避難訓練。企業の総務部門が担っている部分です。
防火管理者や防災管理者の資格があると、この方向は明確に通りやすくなります。
規模の大きい会社ほど、事業所ごとの体制を整える仕事になるので、「指揮権のない拠点に、体制を作らせる」という自治体での経験がそのまま使えます。
3. 防災関連のメーカー・コンサルティング会社
防災用品、無線・情報システム、避難所の資機材、ハザードマップの作成支援、計画策定の支援、訓練の運営受託。
発注する側にいた経験に加えて、自治体が何を必要としているかを内側から知っていることが提案の材料になります。
計画策定の支援業務は、まさに自治体が外注している仕事です。受注側に回ると、自分が発注していた仕事をそのまま担うことになります。
4. インフラ・ライフライン企業の保安・防災部門
電力、ガス、水道、鉄道、通信、道路。これらの企業は、災害時に自治体と連携する側です。
自治体側の動き方を知っている人は、連携の設計で重宝されます。協定を結んだ相手の事情を、内側から知っていることになるためです。
応急復旧の優先順位、連絡体制、情報提供のタイミング。自治体が何を求めているかを言語化できる人は、この業界に多くありません。
5. 大規模施設の運営会社
商業施設、ホテル、物流拠点、スタジアム、テーマパーク、病院。
不特定多数の人がいる場所の安全管理が仕事になります。避難誘導の設計、滞留の想定、備蓄、訓練。自治体の避難所運営と、考え方が近い領域です。
対象を選べないという点も共通しています。来場者は選べません。
協定の締結を担当していた方は、それも書いてください。相手方との交渉、内容の調整、更新の管理、そして訓練で一度動かすところまで。企業の相互支援協定や、調達先の複線化とまったく同じ作業です。締結した件数と、相手方の業種の種類を並べると規模が伝わります。
合いにくい方向
正直に書いておきます。
1. 消防・救助の実働職
危機管理・防災課の事務職は、消火や救助そのものを担っていません。計画と体制と情報の仕事です。実働の職種は、別の訓練と適性が求められます。
2. 情報セキュリティのインシデント対応
「危機管理」という語で同じ枠に見えますが、扱う知識がまったく違います。技術の基礎から入る必要があるので、興味があるなら学び直す前提で見てください。
3. 営業職
計画と訓練で成り立つ仕事です。目標を持って新規に働きかける仕事とは、求められるものが変わります。防災関連企業でも、提案・コンサル側のポジションかどうかを確認してください。
4. 立ち上げ期の会社の管理部門一人目
危機管理の体制は、組織がある程度の規模になってから必要になります。数十人の会社では、専任の担当を置く段階にないことが多く、経験が使われません。
5. 短期の数字で評価される職種
危機管理の成果は、何も起きない状態として現れます。月次の目標を積み上げる形の職種では、働き方の前提から変わります。
役に立つ資格
必須の資格はありません。ただし、方向によっては書類の通りやすさが変わります。
| 資格 | 効く方向 | 補足 |
|---|---|---|
| 防災士 | 危機管理全般、施設運営 | 共通の語彙を持っていることの証明になる |
| 防火管理者・防災管理者 | 総務・施設のリスク管理 | 実務で必要とされる。優先度が高い |
| 第一種衛生管理者 | 総務、安全衛生 | 安全管理と併せて担当する職場が多い |
| 日商簿記3級 | 事業継続(予算の話に入る) | 補助的だが、計画の費用対効果を語れる |
| 危険物取扱者 | 施設運営、製造業の保安 | 事業所によって前提になることがある |
優先順位をつけるなら、防火管理者・防災管理者です。企業では選任が義務づけられる場面があるため、資格保持者であること自体が採用の理由になります。
求人を探すときの検索語
「防災」だけで探さないでください。
| 見たい方向 | 検索語 |
|---|---|
| 企業の危機管理 | 危機管理/リスクマネジメント/クライシスマネジメント |
| 事業継続 | 事業継続/BCP/BCM/レジリエンス |
| 総務・施設 | 防火管理/安全管理/安否確認/施設管理 |
| 防災関連企業 | 防災コンサル/防災システム/計画策定支援 |
| インフラ企業 | 保安/復旧/防災部門/設備保全 |
| 施設運営 | 避難誘導/来場者安全/施設運営 |
「訓練」「演習」という語が業務内容に入っているかどうかを、必ず確認してください。計画を回す側のポジションかどうかが分かります。
つまずきやすい点
1. 「防災」で検索する
「危機管理」「事業継続」「BCP」「リスクマネジメント」の4語で探してください。
2. 「訓練」の記載を確認しない
計画を回す側のポジションかどうかが、この語で分かります。
3. 本部を動かした経験を書かない
訓練しか経験のない担当者との差が、いちばん出るところです。
4. 優先順位のつけ方を説明しない
「どの機能を先に戻すか」という考え方は、企業の事業継続でそのまま問われます。
5. 方向を1つに絞りすぎる
企業の危機管理と、総務・施設のリスク管理は、説明の型が近いので並行して見られます。
どの方向で値が付くかは、募集の出方で変わります。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 災害対策基本法第60条は、災害が発生するおそれがある場合において、市町村長が必要と認める地域の必要と認める居住者等に避難のための立退きを指示できると定めています
- 情報が確定する前に、対象の範囲を決めて判断するという性質は、企業の危機管理とまったく同じです
- 向いているのは、①企業の危機管理・事業継続 ②総務・施設のリスク管理 ③防災関連のメーカー・コンサル ④インフラ企業の保安部門 ⑤大規模施設の運営会社の5方向です
- 合いにくいのは、消防・救助の実働職/情報セキュリティのインシデント対応/営業職/立ち上げ期の一人目/短期の数字で評価される職種です
- 資格を1つ選ぶなら防火管理者・防災管理者。企業では選任が義務づけられる場面があり、資格そのものが採用の理由になります
- 求人票は、業務内容に「訓練」「演習」が入っているかで見分けてください
よくある質問
実際の災害対応を経験していないと、不利ですか
不利になる場面はありますが、決定的ではありません。評価されるのは、計画を作り、訓練で検証し、計画に戻したサイクルを回せるかどうかです。訓練の設計と事後の検証を担当していれば、そこは説明できます。面接では、「実際の発災対応は経験していないが、訓練では本部の設営から情報の整理までを担当し、検証結果を計画に反映した」と正確に言ってください。経験の有無を曖昧にするほうが、印象が悪くなります。
事務職なのに、企業の危機管理で通用しますか
通用します。企業の危機管理部門も、多くは事務職が担っています。求められるのは、計画を作れること、訓練を設計できること、本部で情報を整理できること、事後に検証して直せることです。技術的な対応は、消防や専門業者、社内の技術部門が担います。面接では、役割の線をはっきり言ってください。分かるふりをするより、そのほうが読まれ方がよくなります。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、この経歴は「計画を回す側」と「物や設備を扱う側」で求められるものが大きく違うため、1方向に絞ると選択肢が少なくなります。企業の危機管理と、総務・施設のリスク管理のように、説明の型が近い2方向を並行して見ておくと、書類の作り直しが少なく済みます。書き方は職務経歴書、聞かれることは面接に整理しています。