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保育課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
保育課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「保育施設の指導監査、認可に関する事務、保育所の運営に関する業務」
制度の名前が並んでいるだけで、何か所を、どういう観点で見ていたのかが分かりません。
読む側は、ここから「保育の事務をしていた人」という像しか作れません。実際には、数十から百を超える施設を所管し、基準に照らして審査し、実地で確認し、改善を追跡していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは保育課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は保育課からの転職先に書いています。
「基準を維持するため」に、立入りの権限があります
書き方に入る前に、この部署の権限の性格を条文で押さえます。書類の芯にもなり、同時に制約にもなる部分です。
児童福祉法第46条第1項は、こう定めています。
都道府県知事は、第四十五条第一項及び前条第一項の基準を維持するため、児童福祉施設の設置者、児童福祉施設の長及び里親に対して、必要な報告を求め、児童の福祉に関する事務に従事する職員に、関係者に対して質問させ、若しくはその施設に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
読み解くと、3つのことが分かります。
1. 目的が明記されている。「基準を維持するため」です。罰するためでも、探すためでもありません。
2. 手段が具体的。報告を求める、質問させる、立ち入る、設備と帳簿書類を検査させる。
3. 相手が明記されている。設置者、施設の長、里親。組織の外の相手です。
つまり、この部署は、外部の事業者に対して、基準の維持を目的として、立ち入って検査する権限を持っていました。
これは、民間でいう委託先の監査や、加盟店の実地の確認と同じ構造です。ただし、行政の立入検査は、法律に根拠があるぶん重いという違いがあります。
そして、これは書類の書ける範囲を決めます。
立入りで見たものは、極めて具体的です。帳簿、記録、人員の配置、施設の状態、職員の勤務の実態。どれも書けません。
書けるのは、「どういう観点で、どういう手順で確認したか」と「件数」までです。
この線を守ったまま厚く書けている書類は、それだけで信用されます。外部の事業者の情報を扱ってきた人かどうかは、書き方から読めるためです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では保育課に所属。保育施設の指導監査、認可に関する事務などを担当しました。
件数も、観点も、判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(就学前児童数約◯万人)の保育課で◯年間、保育施設の許認可と品質管理にあたる実務を担当しました。所管する施設◯か所(認可保育所◯、認定こども園◯、地域型保育◯、認可外◯)について、設置の認可・確認の審査(年約◯件)と、運営基準への適合を確認する実地の指導(年約◯件)を担当しています。指摘事項は「基準への不適合」と「運用上の改善」に区分し、改善報告の提出と確認まで追跡する運用を担当しました。あわせて、保育士の確保に関する施策と、施設の整備に対する補助の審査も担当しています。
入っているもの
- 規模(所管する施設数と、種類の内訳)
- 工程の広さ(審査から改善の追跡まで)
- 判断の中身(指摘の区分と、追跡の運用)
1つ目がいちばん効きます。種類の内訳まで書くことで、複数の類型を横断して見てきたことが伝わります。
担当業務
制度名を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・保育所の認可に関する事務> ・施設の指導監査> ・保育士確保に関する業務> ・施設整備に関する補助金の事務> ・公立保育所の運営に関すること
良い例
> 【設置の認可・確認の審査(年約◯件)】> 類型の判定、設備の基準(面積、採光、避難の経路、調理の設備)と運営の基準(職員の資格と人数、運営規程、給食の体制)への適合の審査。図面の段階からの確認を含み、開設までの工程と確認の項目を一覧として整理して運用。>> 【実地の指導(年約◯件・所管◯か所)】> 年間の計画の作成、事前の書類の確認、実地での確認、結果の通知。指摘事項を「基準への不適合」と「運用上の改善」に区分し、前者は改善報告の提出を求めて確認まで追跡。結果は公表される前提で作成。>> 【人員配置の確認】> 資格を持つ職員の人数、配置の基準への適合、加算に関わる人員の要件の確認。年度途中の職員の異動に伴う配置の変動を、どの時点で確認するかの運用を整理。>> 【安全・衛生の管理】> 事故とヒヤリハットの報告の受理、原因の確認、再発の防止に関する助言。給食とアレルギーへの対応の確認。>> 【保育士の確保(施策◯件)】> 就職に関する相談会、資格を持ちながら働いていない方への働きかけ、処遇の改善に関する周知、修学資金などの支援。>> 【施設の整備に対する補助】> 補助の要件の審査、交付の決定、実績報告の確認、完了の検査。>> 【公立保育所の運営】> 職員の配置、予算の管理、施設の修繕、給食の管理、保護者への対応。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。制度名ではなく、そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、事故が起きなかったこととして現れるからです。
悪い例
> 施設との信頼関係を築き、保育の質の向上に努めました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:確認の仕組みを作った
> 実地の指導について、類型ごとに確認する項目と根拠となる基準を対応させた一覧を整理。担当が交代しても同じ観点で確認できる形にし、事前の書類の確認で把握できる項目と、実地でしか確認できない項目を分けることで、当日の確認の時間を◯割短縮した。
型2:追跡を仕組みにした
> 指摘事項を「基準への不適合」と「運用上の改善」に区分し、前者について改善報告の提出期限と確認の手順を定めた。未提出のものを翌年度の指導の対象に繰り入れる運用を導入し、改善報告の提出率を◯%から◯%に引き上げた。
型3:開設の工程を整理した
> 設置の認可について、相談から開設までの工程と、各段階で確認する項目を一覧として整理。事業者に事前に示すことで、図面の段階で基準に適合しない点を指摘できるようになり、申請後の修正を減らした。
型3が、事業者側への転職でいちばん効く形です。「何が通り、何で止まるかを知っている」ことの証拠になります。
数字の出し方
公表されている資料から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 所管する施設数と、種類の内訳 | 職務要約 | 規模がいちばん伝わる。公表されている |
| 実地の指導の年間件数 | 職務要約、実績 | 品質管理の経験として直接読まれる |
| 設置の認可・確認の審査の年間件数 | 職務要約、実績 | 新規開設の部署で効く |
| 定員の合計(所管する施設の) | 職務要約 | 公表されている |
| 改善報告の提出率 | 実績 | 自分で控えるしかない |
| 事故等の報告の受理件数 | 担当業務 | 件数のみ。内容は書かない |
| 保育士確保の施策の件数と参加者数 | 実績 | 事業の概要から取れる |
| 補助の交付決定の件数と金額 | 担当業務 | 決算資料から取れる |
1行目と3行目が効きます。施設数と種類の内訳は横断して見てきた範囲を、認可の審査の件数は新規開設の経験を示します。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 事業者の本部・品質管理 | 実地の指導と指摘の区分 | 確認の項目の整理 | 改善の追跡 |
| 事業者の新規開設・開発 | 認可の審査と開設の工程 | 図面の段階からの確認 | 何で止まるかの理解 |
| 他業種の品質管理 | 基準適合の確認の手順 | 人員配置の管理 | 事故と安全の管理 |
| 人材サービス | 人員基準と資格の要件 | 保育士確保の施策 | 事業者の事情の理解 |
| 自治体向け企業 | 監査の実務と基準の理解 | 補助の審査 | 委託先の管理 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
第46条の立入検査で見たものは、目的の範囲内でしか使えません。書類でも同じです。
- 施設名と、個別の指摘の内容
- 帳簿や記録から確認した具体的な内容
- 職員の配置や勤務の実態に関する個別の情報
- 事故やヒヤリハットの個別の事案の詳細
- 園児や保護者に関する一切の情報
- 公表前の指導の結果や、処分を検討している案件
- 補助の申請に関する事業者の経営の情報
- 特定の施設が推測できる記述
書けるのは、「観点」と「手順」と「件数」までです。
> ✕ 「◯◯という施設で、保育士の配置が基準を下回っている状態が判明し、改善を求めた」> ○ 「人員配置について、年度途中の職員の異動に伴う変動を、どの時点で確認するかの運用を整理し、基準への適合を確認する手順として文書化した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 所管する施設数と種類の内訳を書かない
これがないと、多店舗の品質管理として読まれません。
2. 「指導監査を実施」で終える
指摘の区分と、改善の追跡まで書いてください。監査の実務でいちばん難しい部分です。
3. 認可の審査を落とす
新規開設の部署でそのまま使える経験です。件数と、図面から見たかどうかを書いてください。
4. 「公表される前提」に触れない
外に出る前提で指摘を書いてきたという訓練は、開示を扱う部門で効きます。
5. 個別の事案を書いてしまう
施設名、指摘の内容、帳簿の中身、事故の詳細。すべて書けません。観点と手順と件数で書いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 児童福祉法第46条は、「基準を維持するため」に、報告を求め、質問させ、立ち入り、設備と帳簿書類を検査させることができると定めています
- 外部の事業者に対して、法律に根拠のある立入検査をしてきた——だから、見たものは書類に書けません
- 書けるのは、「観点」と「手順」と「件数」までです
- 職務要約には、規模(施設数と種類の内訳)・工程の広さ・判断の中身の3つを入れてください
- 実績は、①確認の仕組みを作った ②追跡を仕組みにした ③開設の工程を整理したの3つの型で書けます。③は事業者側への転職でいちばん効きます
- 「指導監査を実施」ではなく「指摘を区分して追跡した」と書いてください
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。保育課は扱う工程が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば新規開設の部署に応募するなら、保育士確保の施策は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
公立保育所の運営だけを担当していた場合は
「直営拠点の運営管理」として書けます。職員の配置、予算の管理、施設の修繕、給食の管理、保護者への対応、事故への対応。民間でいう直営店舗の運営管理とほぼ同じ工程です。書くときは、所管していた施設の数、園児数の合計、職員数、年間の予算規模を添えてください。そのうえで、指導監査や認可の審査に担当が広がれば、書ける内容が大きく増えます。
認可外施設への指導も、書いてよいですか
書けます。認可外の施設は、認可の施設とは別の基準で運営されているため、基準が違う相手を同じ課で見ていたことになります。これは、「複数の基準を横断して適用してきた」という説明につながり、多店舗で業態が混在する事業者では価値になります。書くときは、認可と認可外を分けて件数を書くと、扱ってきた幅が正確に伝わります。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。