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会計課・出納室の職務経歴書|書き方と、そのまま使える記述例
会計課・出納室の職務経歴書で、いちばん多い1行目はこれです。
「出納事務を担当。年間約◯万件の支出命令を処理。」
事実です。ただ、読んだ側には何も残りません。件数は自治体の規模で決まる数字ですし、「処理した」という言葉には判断が含まれていないからです。
この記事では、会計課の仕事を職務経歴書にどう落とすかを、悪い例と良い例を並べて整理します。
言い換えの一覧は会計課・出納室の経験は民間で何と呼ばれるかに、行き先の選び方は会計課・出納室からの転職先に分けて書いています。この記事は、書類そのものの話です。
審査には、照らす先が決まっています
書き方の前に、一つだけ押さえます。ここを取り違えると、書類全体の方向がずれます。
地方自治法第232条の3は、普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(これを支出負担行為という。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならないと定めています。
そして第232条の4第2項は、会計管理者は支出命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができないとしています。
ここに、審査の基準が書かれています。
照らす先は「法令又は予算」。確認するのは「違反していないこと」と「債務が確定していること」。
つまり会計課の審査は、担当者の感覚で厳しくしたり緩めたりするものではありません。照らす先が決まっていて、そこに合わなければ通せないという構造です。
だから職務経歴書に書くべきなのは、処理した件数ではありません。何を基準に、何を確認し、合わないものをどう扱ったかです。
書類全体の形を決める
会計課の場合、応募先が変わっても共通する組み立てがあります。
- 職務要約(5〜8行)
- 担当業務(箇条書き。制度の説明は最小限に)
- 実績(3〜4件。1件あたり5〜8行)
- 活かせる経験・スキル(応募先に合わせて並べ替える)
読まれるのは職務要約と実績です。担当業務の箇条書きは確認のために目を通される程度なので、時間は実績に使ってください。
担当業務を丁寧に書いて実績が2行で終わっている書類が、非常に多いです。配分が逆です。
職務要約の書き方
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、市民課を経て会計課に配属。支出命令の審査、現金の出納、決算の調製等を担当。現在は会計課主査として、年間約◯万件の支出事務に従事している。
事実だけです。どこにでもある書類になります。
良い例
> 市役所に入庁後、市民課で窓口業務を5年、会計課で支出審査と決算を6年担当。会計課では全◯課から上がる支出命令について、契約書・検収記録・予算費目の3点を照らして審査する立場にあり、年間およそ◯件を扱った。うち要件を満たさないものを◯件差し戻している。毎月の例月出納検査と年1回の決算審査に対応する立場でもあり、証拠書類を第三者が確認できる形で整えることが業務の前提だった。出納整理期間を含む決算の一巡を6回経験している。
違いは4つです。
1. 何を照らして審査していたかが書いてある(契約書・検収記録・予算費目)2. 差し戻した件数が書いてある3. 第三者が見る前提だったことが書いてある(例月出納検査)4. 決算を通した回数が書いてある(年数ではなく)
4つ目は会計課ならではです。出納整理期間を含む決算の一巡を何回通ったかは、年数より正確に経験量を表します。
担当業務の書き方
箇条書きにします。制度の説明は入れません。
悪い例
> ・支出事務> 地方自治法第232条の4の規定により、会計管理者は長の命令がなければ支出できず、また支出負担行為が法令又は予算に違反していないことを確認しなければならない。本市においては、各課から支出命令書が回付され、会計課で審査のうえ支払を行っている。
制度の解説になっています。読み手は制度を知りたいのではありません。
良い例
> ・支出審査(年間およそ◯件/全◯課/審査項目:契約の根拠、検収の記録、債務の確定、予算費目と残額)> ・支払の実行(月◯回の定例支払、金融機関へのデータ送信、緊急払の処理)> ・収入の調定と収納の処理、収納状況の把握> ・指定金融機関との定例協議、公金の残高管理> ・物品の出納と台帳の整備> ・例月出納検査(毎月)、決算審査(年1回)への対応> ・決算の調製と長への提出(出納閉鎖後3か月以内)> ・公会計の財務書類の作成(貸借対照表、行政コスト計算書ほか)
制度は畳み、自分が何をどれだけ扱ったかだけを残します。審査項目を具体的に書いておくと、内部統制の求人で直接読まれます。
実績の書き方――ここに時間を使う
実績は3〜4件に絞ります。書く形は状況 → 論点 → 自分の判断 → 結果です。
悪い例
> 支出審査において、年間◯件の誤りを発見し、差し戻しを行った。
件数しかありません。言われたとおりに照合する人に見えます。
良い例
> 【差し戻しの基準を文書化し、審査の往復を減らした】> 支出命令の差し戻しが繰り返し発生していたが、差し戻す理由が担当者ごとに口頭で伝えられており、同じ課から同じ不備が毎月上がってくる状態が続いていた。担当課からは「言われる内容が人によって違う」という指摘も出ていた。> そこで、過去1年分の差し戻し事例を◯件集め、理由を分類したところ、上位3つ(契約書の添付漏れ、検収日と請求日の前後、予算費目の誤り)で全体の約◯割を占めていることが分かった。この3点をチェックリストにして各課へ配布し、あわせて会計課内の審査基準として共有した。> 結果として、上位3つに該当する差し戻しが翌年度は◯割減った。担当課からの問い合わせも減り、審査の往復にかかる時間が短くなっている。
長く見えますが、9行です。ここに書かれているのは差し戻しの件数ではありません。属人化していたという問題の発見、事例を分類したという手段、文書化という解決、そして往復が減ったという結果です。
会計課を知らない読み手にも「何ができる人か」が伝わります。
実績に使える題材
会計課なら、次のような題材が使えます。
- 差し戻しの基準を作った/共有した話(上の例)
- 押し切られそうになった支出を止めた話(何を根拠にしたか)
- 例月出納検査や監査で指摘を受けて、運用を変えた話
- 決算の締めを早めた話(どの工程を前倒ししたか)
- 公会計の財務書類を初めて作った/作り方を整えた話
- 収納の消込や未収の管理を改善した話
- 物品の台帳と現物が合わなくなっていたのを合わせた話
- 会計規則や要領を改正した話
数字の出し方
会計課の書類では、件数と割合の両方を使います。
| 使える数字 | 使いにくい数字 |
|---|---|
| 審査した件数(年間) | 自治体の予算総額 |
| 差し戻した件数と割合 | 支払総額だけ |
| 審査項目の数と内容 | 在籍年数だけ |
| 決算を通した回数 | 職員数 |
| 締めにかかった日数の変化 | ― |
| 物品の台帳の件数 | ― |
支払総額を書いてはいけない、という話ではありません。それを実績の中心に置かないということです。読み手は、自治体の規模と個人の裁量が比例しないことを知っています。
求人票の言葉に合わせて並べ替える
「活かせる経験・スキル」の欄は、応募先ごとに並べ替えます。
| 応募先の方向 | 先頭に置くもの |
|---|---|
| 経理・財務 | 決算の調製、公会計の財務書類、支払の実行、資金管理 |
| 内部統制・内部監査 | 審査の基準、差し戻しの実績、例月出納検査への対応 |
| 購買・調達の管理 | 支出負担行為の確認、契約と検収の照合、物品の台帳 |
| 自治体を顧客にする企業 | 支出命令が回る流れ、必要な書類、止まる場所 |
| 監査法人・会計コンサル | 決算、公会計、監査対応、指標の分析 |
同じ経歴でも、先頭を変えるだけで読まれ方が変わります。方向ごとの詳細は会計課・出納室からの転職先に整理しています。
つまずきやすい点
1. 「正確に処理した」で終わる
正確さは前提なので、書いても差になりません。何を照らして、何件返したかに置き換えてください。
2. 在籍した部署を時系列で全部書く
入庁からの全部署を同じ密度で書くと、会計課の記述が埋もれます。応募先に関係する部署だけを厚く書き、残りは1行にしてください。税務課や契約検査課は会計課と接続するので残す、という判断で構いません。
3. 主語が消える
「差し戻しを実施した」では、課としてなのか自分なのかが分かりません。課の成果と自分の関与を分けて書いてください。「課として基準を作り、自分は事例の分類とチェックリストの作成を担当した」で十分です。
4. 制度名と様式名が多すぎる
「支出負担行為決議書」「支出命令書」「調定決議書」が並ぶと、読み手は追えません。一般名詞に置き換えられるなら置き換えてください。「発注の決裁書類」「支払の指示書」で通じます。
5. 数字に期間が付いていない
「◯件を審査」だけでは、年間なのか在籍期間の合計なのか分かりません。必ず期間を添えてください。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第232条の3と第232条の4第2項が、審査の照らす先(法令又は予算)と確認する内容(違反していないこと・債務が確定していること)を定めています
- だから書類に書くのは処理した件数ではなく、何を基準に、何を確認し、合わないものをどう扱ったかです
- 時間は職務要約と実績に使います。担当業務の箇条書きは確認用です
- 実績は状況 → 論点 → 自分の判断 → 結果の順に、3〜4件だけ書きます
- 数字は、審査した件数、差し戻した件数と割合、審査項目、決算を通した回数を使います
- 「押し切られそうになったが止めた」話を1件入れてください。制度上止める立場にあり、実際に止めた経験がある人は、外から採用しようとしても簡単には見つかりません
よくある質問
差し戻しの件数を書くと、担当課と対立していたように見えませんか
見えません。むしろ、基準に照らして返すのが職務だと理解している人として読まれます。注意点は1つで、特定の課や案件が分かる書き方をしないことです。「契約書の添付漏れ」「検収日と請求日の前後」のように、不備の類型で書いてください。どの自治体のどの事業かが分かる必要はありません。
支払の総額は書いたほうがいいですか
書いても構いませんが、実績の中心に置かないでください。支払総額は自治体の規模で決まるもので、担当者の裁量とは比例しません。書くなら、審査した件数と審査項目を必ず添えてください。「年間◯億円」だけより、「全◯課からの◯件、審査項目4点、差し戻し◯件」のほうが、同じ行数で情報量が多くなります。
公会計の財務書類を作っていない場合、経理の求人は難しいですか
難しくはなりますが、外す必要はありません。作っていないなら、支払審査と決算の調製を前に出してください。それでも、経理・財務より内部統制や購買統制の方向のほうが説明しやすくなるのは事実です。方向の選び方は会計課・出納室からの転職先に整理しています。