部署別 / 会計課・出納室
会計課・出納室からの転職先|経験が値になる5つの方向
会計課・出納室から動こうとすると、多くの方が「経理」だけを見て探し始めます。
そこから広がらないまま、求人の数が思ったより少ないと感じて止まる。よくある流れです。
実際には、この部署の経験が値になる方向は5つあります。分かれ道になるのは、自分が持ち出すのが「処理の実務」なのか「審査の判断」なのかという点です。
この記事では5方向を並べ、合いにくい方向も同じだけ書きます。言い換えの一覧は会計課・出納室の経験は民間で何と呼ばれるかに整理しているので、そちらと合わせて読んでください。
分かれ道は「払う仕事」と「止める仕事」
まず、会計課の仕事が2つの性格を持っていることを確認します。
地方自治法第232条の4第1項は、会計管理者は、長の命令がなければ、支出をすることができないと定めています。
第2項は、その命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができないとしています。
ここに、2つの仕事が書かれています。
1つは、命令に従って支出を実行すること。もう1つは、実行する前に自分で確認し、要件を満たさなければ実行しないこと。
前者は処理の仕事です。正確さと量をさばく力が問われます。後者は審査の仕事です。独立して止める判断が問われます。
そして重要なのは、後者が法律で義務づけられていることです。長の命令があっても、確認できなければ払ってはいけない。言い換えれば、上司の指示があっても止める権限と責任がある立場です。
民間で同じ構造を持つのは、内部統制や購買統制の部署です。ただしそこでは、止める権限は社内規程で決まっており、力関係で押し切られることがあります。法律で義務づけられた形でこれを運用してきた経験は、外から見ると希少です。
どちらを前に出すかで、行き先が変わります。
方向1:事業会社の経理・財務
いちばん自然な接続先です。決算、支払、資金管理、固定資産の管理がそのまま重なります。
効くのは3点です。
扱った件数。会計課は自治体のすべての支払を通す部署なので、件数が多くなります。締切が動かないこと。年度末と出納整理期間という、交渉で動かない期限のもとで回してきた経験です。公会計の財務書類。作っていたなら、発生主義の考え方を一度通っています。複式簿記への接続を説明しやすくなります。
職種としては、経理、財務、決算、資金管理あたりの求人が対象になります。
方向2:内部統制・内部監査
求人が増えている方向で、会計課の経験がいちばん差別化しやすいのもここです。
企業の内部統制部門は、支払や購買の統制を設計し、運用状況を点検します。発注する人と支払う人を分け、支払う側が独立して確認するという型は、会計課がやってきたことそのものです。
強いのは、実際に止めた経験があることです。仕組みを作った経験がある人は多くても、運用の現場で差し戻してきた人は多くありません。面接では「どういう基準で差し戻したか」「差し戻した相手とどう折り合ったか」が聞かれます。ここは答えられるはずです。
方向3:購買・調達の管理部門
見落とされやすい方向です。
会計課が確認する「支出負担行為」は、民間でいえば発注そのものです。契約書があるか、検収は済んでいるか、予算の枠に収まっているか。購買部門の統制担当が見ているのと同じ点を見ています。
製造業や小売の購買管理、建設会社の原価管理、システム会社の外注管理といった領域で、発注と支払の整合を見る役割として接続できます。物品の出納と台帳の管理をしていたなら、在庫管理や固定資産管理の文脈でも説明できます。
方向4:自治体を顧客にする金融・システム
指定金融機関の公務部、公金収納のサービス、自治体向けの財務会計システムを扱う企業です。
ここでは、会計課の実務を知っていること自体が値になります。
- 支出命令がどう回り、どの書類が必要で、どこで止まるのか
- 出納整理期間に何が起きるのか
- 例月出納検査で何を見られるのか
- 収納の消込がどう処理されているのか
外から見ても分かりません。システムの導入や運用で現場が止まる原因の多くは、この理解の欠落から来ます。導入支援、カスタマーサクセス、提案企画といった職種で、制度面を説明する役回りになります。
方向5:監査法人・会計コンサルティング
監査法人の公会計部門、地方公会計の支援を行うコンサルティング会社などです。
公会計の財務書類を作っていた経験、決算を調製した経験、監査委員の審査に対応した経験が直接使えます。
ただし求人の数は限られ、募集の時期も偏ります。ここだけを狙うと活動が長引くので、方向1と並行して見ておくほうが現実的です。また、案件ごとに常駐先が変わるなど、生活の形が変わる点も織り込んでおいてください。
合いにくい方向も書いておきます
個人の売上目標が明確に立つ職種
会計課の仕事は、要件を満たさないものを止めることに価値があります。営業は取ってくることに価値があります。評価される行動が逆を向いています。合わないという意味ではなく、切り替えが要ることを自覚しているかどうかが面接で見られます。
手続きが未整備で、その場で判断を求められる環境
立ち上げ期の企業などでは、規程そのものがまだ無いことがあります。会計課の強みは決まった要件に照らして判断することなので、照らす先が無い環境では力が出にくくなります。逆に言えば、規程を作る側に回る前提なら合います。面接で「統制の仕組みはどの段階か」を確かめてください。
制度の知識だけで勝負しようとする場合
支出負担行為や調定の知識は、自治体を相手にしない企業では使えません。方向1・2・3を狙うなら、制度の知識ではなく審査の判断のほうを前に出す必要があります。ここを間違えると、職務経歴書が制度の説明書になります。
資格は、方向を決めてから考える
会計課の方から必ず出るのが資格の話です。順番を間違えないでください。方向を決めてから、必要かどうかを判断します。
日商簿記
方向1(経理・財務)と方向5(監査法人)では、書類選考の材料として効く場面があります。とくに2級は、募集要項に「日商簿記2級以上」と書かれていることがあるので、そこで足切りされないという意味があります。ただし「取れば転職できる」という関係ではありません。公会計の財務書類を作っていたなら、発生主義の考え方は通っているので、学習そのものは進みやすいはずです。
方向2(内部統制)と方向4(自治体向け企業)では、簿記より実務の理解が効きます。ここを狙うなら、資格の取得を待つ必要はありません。
内部監査や統制関連の資格
方向2を本格的に狙うなら検討の余地がありますが、実務経験があるほうが先に読まれます。会計課で審査と差し戻しをしてきた経験は、資格より直接的な材料です。資格は、経験を説明したあとの補強として効きます。
取る前に考えること
資格の学習は、繁忙期と重なると止まります。会計課の場合、年度末から出納整理期間、そして決算の調製までが山になります。この時期に学習を始めて中断する例が多いので、始めるなら決算が片付いたあとにしてください。
そして、資格を取ってから動こうとすると、動くのが1年先になります。いま応募できる方向があるなら、先に受けてから必要性を判断するほうが早く終わります。
探すときに使う言葉
| 持ち出すもの | 検索に使う言葉 |
|---|---|
| 支出負担行為の確認 | 支払審査、購買統制、内部統制、経費精算 |
| 支払の実行 | 支払業務、買掛金管理、決済業務 |
| 収入の調定・収納 | 売掛金管理、入金消込、債権管理 |
| 資金の残高管理 | 資金繰り、資金管理、財務 |
| 物品・有価証券の出納 | 在庫管理、固定資産管理、資産管理 |
| 決算の調製 | 決算業務、月次決算、開示 |
| 公会計の財務書類 | 財務諸表作成、連結決算 |
| 監査対応 | 内部監査、監査対応、統制評価 |
部署ごとの対応は自治体の部署別 仕事ガイドにもまとめています。
つまずきやすい点
1. 「経理」だけで探して止まる
いちばん多い形です。上の表のとおり、同じ経験が4つ以上の職種名で募集されています。検索する語を変えるだけで、見える求人が変わります。
2. 処理の量だけを実績にする
「年間◯万件を処理」は規模を示しますが、判断が見えません。何を基準に、何件差し戻したかを添えてください。処理の仕事と審査の仕事のうち、値が付きやすいのは後者です。
3. 会計課を「財政課の下」のように書いてしまう
制度上、会計管理者は長の命令がなければ支出できない一方で、命令があっても確認できなければ支出してはならない立場です。上下ではなく分離です。ここを正確に説明できると、内部統制の理解がある人として読まれます。
4. 応募先によらず同じ書類を出す
方向1と方向4では読まれる箇所が違います。「活かせる経験」の順番を入れ替えるだけでも効きます。
5. 資格の有無で候補を先に狭める
簿記がないから経理は無理、と自分で外してしまう例があります。方向2(内部統制)と方向4(自治体向け企業)では、簿記より実務の理解が効きます。先に方向を決めてください。
自分の経歴がどの方向に向いているかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第232条の4は、会計管理者に「命令に従って支出する仕事」と「確認できなければ支出しない仕事」の2つを課しています
- 持ち出すのが処理の実務か審査の判断かで、行き先が分かれます
- 5方向は、経理・財務/内部統制・内部監査/購買・調達の管理/自治体を顧客にする金融・システム/監査法人・会計コンサルティングです
- いちばん差別化しやすいのは内部統制です。仕組みを作った人は多くても、実際に差し戻した経験がある人は多くありません
- 合いにくいのは、個人の売上目標が立つ職種、規程がまだ無い環境、制度の知識だけで勝負する場合です
- 「経理」だけで探すと求人の幅が狭くなります。支払審査、購買統制、内部統制、資金管理に置き換えてください
よくある質問
出納室に数年いただけでも、転職先はありますか
あります。とくに方向2(内部統制)と方向4(自治体向け企業)は、在籍年数より何を見て、何を差し戻してきたかが問われます。年数が短くても、審査の基準を説明できれば話は組めます。逆に方向1(経理・財務)と方向5(監査法人)は、決算を通した回数が効くので、そこが薄いなら別の方向を先に見てください。
小さい自治体の会計課でも評価されますか
されます。小規模な団体のほうが一人が見る範囲が広いため、支払審査から収納、物品、決算まで通しで見ている場合があります。大きい自治体では担当が細かく分かれます。書類では規模ではなく、自分が通しで見た範囲を書いてください。
財政課と会計課の両方を経験している場合、どちらを前に出しますか
応募先で決めてください。経営企画・財務企画なら財政課を、経理・財務や内部統制なら会計課を前に出します。両方を経験していること自体は強みで、予算を決める側と支払を通す側の両方を知っているという説明は、管理部門の求人でよく効きます。財政課側の整理は財政課からの転職先にあります。