部署別 / 河川・砂防課
河川・砂防課から転職しやすい業界と職種
河川・砂防課からの転職では、自分がどちらをやってきたかで行き先が分かれます。
計画を作る側か、現場で備える側か。
そして、この分野は、いまどちらの需要も増えています。
この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。
言い換えは河川・砂防課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
計画を定めておくことが、義務になっています
行き先を考える前に、この仕事の構造を条文で押さえます。
河川法第16条の2第1項は、こう定めています。
河川管理者は、河川整備基本方針に沿つて計画的に河川の整備を実施すべき区間について、当該河川の整備に関する計画(以下「河川整備計画」という。)を定めておかなければならない。
「定めておかなければならない」。
ここが要点です。
その場しのぎで直すのではなく、計画を持っておくことが義務になっています。
そして、この計画は、長い時間軸で書かれます。
どの区間を、どういう順番で、どれくらいの規模で整備するか。十年、二十年先までを見て決めます。
つまり、この分野の仕事は、2つの層に分かれています。
| 層 | 中身 | 行き先 |
|---|---|---|
| 計画を作る層 | 整備の計画、点検の計画、ハザードマップ、避難の計画 | 建設コンサル・自治体を顧客とする企業 |
| 現場で備える層 | 点検、補修の発注、水防の体制、災害時の対応 | 建設会社・設備の保全・企業の防災 |
どちらを長くやってきたかで、書類の作り方が変わります。
そして、両方を経験しているなら、それは強みです。民間では、計画を作る人と、現場を回す人は、別の会社にいることが多いからです。
向いている5つの方向
1. 建設コンサルタント(河川・砂防・防災の計画)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 整備の計画、点検の委託の仕様、成果の確認、住民への説明 |
| 求められる形 | 自治体からの受託、調査、計画の策定、住民説明会の運営 |
| 入りやすさ | 高い。豪雨の災害が続き、業務量が増えている分野 |
書くときの注意。住民への説明に関わったなら、必ず書いてください。この分野の計画は、説明会で意見を聞いて作ります。そして、その運営ができる人が、受託の側では足りていません。
この方向に固有の制約もあります。受託の側は、計画を決める立場ではありません。決めるのは河川管理者で、受託者は案を作り、説明の材料を整えるところまでです。在職中は「最後は自分の課が決める」側にいたはずですが、移った後は、決める側の判断を待つ時間が仕事の工程に入ってきます。案を複数用意して、どれが選ばれても説明できる形にしておく。この進め方に慣れているかどうかが、最初の半年の負荷を分けます。
2. 建設会社(河川の工事、法面、防災の施設)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 発注の仕様、施工できる時期の制約、上下流の関係、検査の視点 |
| 求められる形 | 自治体からの受注、施工の管理、災害時の復旧 |
| 入りやすさ | 高い。発注者が何を見るかを知っている |
書くときの注意。「施工できる時期が限られること」を書いてください。出水の時期を避け、渇水の時期に集中させる。この工程の組み方を知っている人は、受注の側でも計画を立てられます。
この方向に固有の制約もあります。受注の側に回ると、工期の遅れがそのまま自社の損益になります。発注する側にいたときは、天候で工程が延びれば変更の手続きを検討する立場でしたが、受注の側は、その手続きが認められるまでの間も現場を動かし続けなければなりません。出水の時期を避けて工程を前に詰める判断が、以前より重くなる。そこを理解したうえで工程を組める人が、発注者の側から来る人に期待されている点です。
3. 企業の防災・事業継続の部門
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | ハザードマップの読み方、水防の体制、避難の情報の判断、被害の想定 |
| 求められる形 | 自社の拠点の水害の備え、事業継続の計画、訓練の設計 |
| 入りやすさ | 中〜高。検討を始めた会社が増えているが、分かる人がいない |
書くときの注意。「自分の市の川しか分からない」と考えないでください。水の来方の読み方は、どこでも同じです。上流でどれだけ降ったら、いつ、どこから溢れるか。この読み方を持っていることを書いてください。
この方向に固有の制約もあります。企業の防災の部門は、平時は目立ちません。そして、予算を確保する説明を、毎年することになります。行政でも同じでしたが、民間では「その費用で何が防げるのか」をより直接に問われます。空振りの体制を説明し続けてきた経験が、そのまま効く場面です。
4. 損害保険・リスクの調査
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 被害の調査と算定、浸水の想定区域の読み方、現地の確認 |
| 求められる形 | 引受けの判断の材料づくり、事故の調査、損害の査定 |
| 入りやすさ | 中。求人は限られるが、経験の一致度は高い |
書くときの注意。災害の後の被害の調査を書いてください。何を測り、何を記録し、どう算定したか。これは、損害の査定とほぼ同じ工程です。
この方向に固有の制約もあります。行政の被害の調査は、支援の制度につなげるための調査でした。基準に当てはまるかどうかを見て、当てはまれば支援が動きます。保険の側の調査は、契約の条項に当てはまるかどうかを見ます。似た工程でも、当てはめる先が制度から契約に変わる。この違いを分かっていないと、最初のうちは「なぜここで線を引くのか」が腑に落ちません。条文と基準に当てはめて判断してきた経験そのものは、そのまま使えます。
5. 自治体を顧客とする企業(点検・調査・地理情報)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 点検の実務、施設の台帳、危険な区域のデータ、国や県との協議 |
| 求められる形 | 点検の受託、データの整備、システムの導入の支援 |
| 入りやすさ | 中〜高。現場と制度の両方が分かる人が少ない |
書くときの注意。施設の数とデータの扱いを書いてください。水門、ポンプ、樋門、砂防の施設。それぞれの諸元と点検の履歴を管理してきたなら、それは資産のデータの管理です。
合いにくい方向
1. 個人向けの営業
相手が事業者や行政でなくなると、この経歴の技術が使えません。
2. 短期の数字で評価される職種
効果が数十年後に出る仕事をしてきた感覚とは、評価の周期が合いません。
3. 立ち上げ期の一人目
基準も前例もない環境で全部を作る役割です。この経歴は、基準と記録を積み上げることに強いため、それがない環境では時間がかかります。
4. 施工の現場の技能職
監督していたことと、自分で施工できることは別です。
5. 研究職
研究の実績が前提です。行政の実務だけでは届きません。
役に立つ資格
この分野は、資格で入れる範囲が変わります。
| 資格 | 効く方向 | 実際のところ |
|---|---|---|
| 1級・2級土木施工管理技士 | 建設会社、施工の管理 | 実務の経験で受験できる。在職中のほうが要件を満たしやすい |
| 技術士(建設部門) | 建設コンサルタント | 受託の要件になることがある。取得は重いが効果は大きい |
| 防災士 | 企業の防災、自治体向け | 取得しやすい。分野への関心の裏づけになる |
| RCCM | 建設コンサルタント | 技術士と並ぶ実務の資格 |
| 測量士補 | 調査、地理情報 | 現地の実務をしてきた人には近い |
在職中に取れるものは、在職中に取るほうが有利です。とくに、施工管理技士は実務の経験の年数が要件になります。
求人を探すときの検索語
庁内の言葉で検索すると、求人が出てきません。
| 探している仕事 | 検索語 |
|---|---|
| 建設コンサル | 河川 計画/砂防 設計/防災 コンサルタント |
| 建設会社 | 河川 工事 施工管理/法面/災害 復旧 |
| 企業の防災 | BCP/事業継続/防災 企画/リスク 管理 |
| 損害保険 | 損害 調査/リスク エンジニアリング/査定 |
| 自治体向け | インフラ 点検/公共 コンサルタント/GIS |
「河川」「砂防」で検索すると、行政の求人が多く出ます。上の言葉に置き換えてください。
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つまずきやすい点
1. 計画の層と、現場の層を分けずに書く
どちらを長くやってきたかを決めてください。両方なら、それは強みです。
2. 避難の情報に関わった経験を書かない
判断の材料を作っていた——企業の防災の分野で、いちばん求められています。
3. 「自分の市の川しか分からない」と考える
水の来方の読み方は、どこでも同じです。
4. 住民への説明を、実績として数えない
説明会の運営ができる人は、受託の側で足りていません。
5. 資格の要件を確かめずに応募する
施工管理技士や技術士が要件の求人があります。先に確かめてください。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 河川法第16条の2は、河川整備計画を「定めておかなければならない」と定めています
- つまり、その場しのぎではなく、長い時間軸の計画を持つことが義務です
- 仕事は、計画を作る層と、現場で備える層に分かれ、行き先もそこで分かれます
- 向いているのは、①建設コンサル ②建設会社 ③企業の防災 ④損害保険 ⑤自治体を顧客とする企業の5方向です
- 避難の情報に関わった経験は、企業の防災の分野でいちばん求められていて、書かれていません
- 資格は、土木施工管理技士が実務の経験で受験でき、在職中のほうが要件を満たしやすいです
よくある質問
事務職で、技術の判断はしていません
それでも行き先はあります。この分野の仕事は、技術と、手続と、調整に分かれています。事務職が担うのは、委託の契約、予算の管理、占用や許可の受付、住民からの問い合わせ、国や県への報告、災害時の記録です。とくに、災害時の被害の記録と、国への報告は、期限のある算定の実務で、損害保険や、受託する会社でそのまま使えます。書くときは、「技術的な判断は技術職が担当し、契約、予算、記録、報告を担当」と、自分の範囲を明示してください。
河川の担当が短く、大半は他の部署でした
短くても、災害を一度経験していれば、それは書けます。この分野では、「災害のときに何をしたか」が、年数より重く見られます。書くなら、「◯年の豪雨の際、被害の確認と記録、国への報告資料の作成、復旧の工事の発注を担当」という形です。災害は毎年起きるものではありません。だから、経験した人が限られます。逆に、災害を経験していない場合は、平時の点検と計画の話を前に出してください。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、この経歴は、計画の層と現場の層で書類が変わります。現実的なのは、主にするほうで1通作り、説明の型が近い2方向を並行して見る形です。たとえば、建設コンサルタントと、自治体を顧客とする企業は、どちらも「自治体がどう発注し、何を見るか」を聞かれます。あるいは、企業の防災と、損害保険は、どちらも「被害をどう想定し、どう測るか」を聞かれます。書き方は河川・砂防課の職務経歴書に整理しています。