部署別 / 生涯学習・社会教育課
生涯学習・社会教育課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
生涯学習・社会教育課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「各種講座の企画・運営、生涯学習施設の管理に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「講座の受付をしていた人」という像しか作れません。実際には、何をやるかを自分たちで決め、講師を口説き、広報を打ち、人を集め、施設を回し、次の年も続くようにしてきたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは生涯学習・社会教育課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は生涯学習・社会教育課からの転職先に書いています。
「命令及び監督をしてはならない」
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
社会教育法第9条の3第1項は、社会教育主事の職務について、こう定めています。
社会教育主事は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える。ただし、命令及び監督をしてはならない。
後半が重要です。
「命令及び監督をしてはならない」と、わざわざ書いてあります。
つまり、この仕事は「権限で人を動かしてはいけない」ことが法律に明示されている仕事です。講座を開くのも、団体が活動するのも、住民が学ぶのも、こちらが命じてやらせることではありません。やるのは、助言と、条件の整備です。
ここが、職務経歴書でいちばん値の付く部分です。
民間で人が動かない場面の多くは、権限がないところで起きます。他部署、取引先、業務委託先、講師、地域の団体、ボランティア。指示系統の外にいる人に、どう動いてもらうか。これができる人は、どの会社でも足りていません。
にもかかわらず、書類では「関係機関との調整」という6文字に丸められます。
書くべきは、「権限がない相手を、何で動かしたか」です。
- 日程を先に押さえて、相手の都合に合わせる余地を作った
- 相手にとっての利点(発表の場、実績、会員の獲得)を先に用意した
- 前年の参加者数と層を示して、話を具体にした
- 準備の負担をこちらが引き取って、相手の作業を減らした
このうちのどれを使ったかを、1つでも書いてください。それだけで、「調整」が「交渉の設計」に変わります。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所の生涯学習課に配属され、各種講座の企画・運営および社会教育施設の管理に関する業務を担当しました。
本数も、人数も、規模も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人)の生涯学習・社会教育の部門において、住民向け講座事業の企画から集客・運営・評価までを一貫して担当しました。年間◯講座(延べ参加者約◯人)の企画と実施、外部講師約◯人との条件交渉と依頼、広報紙・ウェブ・チラシによる募集の設計、公民館◯館(年間利用者約◯万人)の運営管理、地域団体約◯団体との共催事業の設計を扱っています。予算の増額が難しい前提で、参加者数を維持する設計を担当しました。
入っているもの
- 本数と参加者数(年間◯講座、延べ◯人)
- 講師・団体という外部の相手の数
- 施設の規模(館数、年間利用者数)
- 「企画から集客・運営・評価まで一貫して」という一語
1つ目が要点です。数字がないと、「補助的に関わっていた人」に読まれます。
本数と参加者数は、在職中にしか集められません。手元の事業報告と、統計の資料から先に拾ってください。
担当業務
「講座の企画・運営」で丸めず、機能に分けて書いてください。
悪い例
> ・生涯学習講座の企画、運営> ・公民館の管理> ・社会教育関係団体との連絡調整> ・その他庶務
良い例
> 【講座事業の企画(年間約◯講座)】> 前年の参加者数と層の分析、実施する講座の決定、回数と定員と日程の設計、予算の割り付け。対象を絞れない(申込みを断れない)前提があるため、幅のある層が同時に成立するよう、回数と難度を設計。>> 【講師・団体との交渉(年間約◯人・約◯団体)】> 講師の選定、依頼、条件の説明、当日の進行の打合せ。謝礼の額に基準があり金額を上げられないため、日程の早期確定、発表の場の提供、準備の負担をこちらが引き取る形で条件を組んで依頼。>> 【募集と集客(媒体◯種)】> 広報紙、ウェブ、チラシ、施設での掲示、報道機関への提供。広報紙の発行日から逆算して企画の確定日を決める運用を担当。媒体ごとの申込みの入り方を記録し、翌年の配分に反映。>> 【実施と運営(年間延べ約◯人)】> 会場の設営、受付、当日の進行、事故と苦情への対応、アンケートの実施と集計。中止の締切と最低の人数を先に決めて運用。>> 【施設の運営管理(公民館◯館、年間利用者約◯万人)】> 利用の受付と調整、使用料の収納、修繕の要望、指定管理者の選定と協定に基づく確認、月次の報告の確認。>> 【計画と統計】> 生涯学習の推進計画の進捗の整理、事業の実績の集計、教育委員会への報告資料の作成。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、参加者数という一つの数字に潰れて見えるからです。
悪い例
> 市民の学習機会の充実に努め、生涯学習の推進に貢献しました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:集客の設計を変えた
> 講座の募集について、媒体ごとの申込みの内訳を1年分記録。反応の薄い媒体への配分を減らし、申込みの多い媒体に前倒しで掲載する形に変更。同じ予算のまま、◯講座の平均の充足率を◯%から◯%に改善した。
型2:続く形にした
> 単発で終わっていた講座について、受講した人が次に関わる先(自主グループ、指導の補助、団体への参加)をあらかじめ設計。講座の最終回に、次の活動の場を案内する回を組み込み、◯件の自主グループの立ち上げにつながった。
型3:やめる基準を先に決めた
> 講座の中止について、申込みの締切日と最低の人数をあらかじめ定め、募集の時点で参加予定者に周知する運用に変更。直前の中止による混乱を減らし、会場と講師の手配の取り消しにかかる負担を軽くした。
型1が、この経歴でいちばん効く形です。「同じ予算で、集客の数字を動かした」という話は、民間の講座事業でもイベントでも、そのまま求められます。
型3も、見た目より強いです。やめる判断を先に設計できる人は、採算の判断に耐えられる人として読まれます。
数字の出し方
公表されている資料と、手元の事業報告から取ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 年間の講座の本数 | 職務要約、担当業務 | 企画の量がいちばん伝わる。事業報告から拾える |
| 延べ参加者数 | 職務要約、実績 | 集客の規模を示す中心の数字 |
| 媒体ごとの申込みの内訳 | 実績 | これがあると集客の設計として読まれる |
| 講座の充足率(定員に対する申込みの割合) | 実績 | 改善を書くならこれ |
| 依頼した講師の人数 | 担当業務 | 外部との折衝の量が伝わる |
| 協働した団体の数 | 担当業務 | 種類(自治会、サークル、学校、商店会)も添える |
| 施設の館数と年間利用者数 | 職務要約 | 公表されている |
| 継続して参加した人の割合 | 実績 | 出せるなら強い。会員事業と同じ指標 |
1行目から3行目が中心です。本数・参加者数・媒体ごとの内訳。この3つが揃うと、「事業を回していた人」として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
自分の数字がどう読まれるかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 民間の講座・スクール事業 | 本数と参加者数 | 媒体ごとの集客の設計 | 講師との条件交渉 |
| 施設の運営管理 | 館数と年間利用者数 | 利用調整と使用料の収納 | 指定管理の協定と確認 |
| イベント・地域連携 | 共催した団体の数と種類 | 当日の運営と事故への備え | 広報の設計 |
| 人材サービス・コミュニティ | 継続して参加した人の割合 | 報酬で動かない人を動かした経験 | 自主グループの立ち上げ |
| 企業の人材開発・研修 | 講座の設計(回数・難度・対象) | 講師の選定と依頼 | アンケートの設計と集計 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
この仕事は、住民と団体と講師が相手です。個別の情報は、すべて書けません。
- 参加者の氏名、属性、申込みの内容に関すること
- 講師の氏名、謝礼の額、依頼を断られた経緯
- 特定の団体との間の調整の経緯や、団体内部の事情
- 指定管理者の選定に関する個別の審査の内容
- 苦情の内容と、相手が特定できる書き方
- 公表前の事業の計画や、施設の整備の計画
- 特定の自治体の内部の状況や、部署の評判に関すること
書けるのは、「何を、どれだけ、どう設計して回したか」と「規模」までです。
> ✕ 「◯◯団体との調整が難航したが、粘り強く交渉して共催にこぎつけた」> ○ 「地域団体との共催事業について、日程の確定を前年度中に行い、準備の分担と当日の役割をあらかじめ文書で確認する形に変更。年間◯件の共催事業を、同じ手順で実施できるようにした」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の経緯ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「各種講座の企画・運営」で丸める
企画/講師との交渉/募集と集客/実施と運営/施設の管理/計画と統計の6つに分けてください。
2. 集客の数字を書かない
本数・参加者数・媒体ごとの内訳。この3つが、この経歴の中心です。
3. 「関係機関との調整」と書く
「権限がない相手を、何で動かしたか」を書いてください。条文が「命令及び監督をしてはならない」と定めている仕事です。そこが値の付く部分です。
4. 教育の専門性で勝負しようとする
評価されるのは、事業を回した実務のほうです。資格や専門性は、あれば添える程度で構いません。
5. 個別の事案を書いてしまう
参加者、講師、団体、苦情、選定の審査。すべて書けません。手順と規模で書いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。掲載中の求人を見てみることもできます。
まとめ
- 社会教育法第9条の3は、「専門的技術的な助言と指導を与える。ただし、命令及び監督をしてはならない」と定めています
- 権限で人を動かせないことが、法律に明示されている仕事です。だから書くべきは、「権限がない相手を、何で動かしたか」です
- 職務要約には、本数と参加者数・外部の相手の数・施設の規模・「一貫して」の4つを入れてください
- 担当業務は、「講座の企画・運営」で丸めず、6つの機能に分けて書きます
- 実績は、①集客の設計を変えた ②続く形にした ③やめる基準を先に決めたの3つの型で書けます。①がいちばん効きます
- 「広報を担当」ではなく「媒体ごとの反応を測って配分を変えた」と書いてください。言葉で扱いが変わります
よくある質問
講座の参加者が少なかった年のことは、書いてよいですか
書けます。むしろ、書いたほうが強くなります。ただし、「少なかった」で終わらせないでください。なぜ少なかったと考え、翌年に何を変えたかまでを1組で書きます。たとえば、「平日の昼に設定していた講座の申込みが伸びず、対象の層と時間帯が合っていないと判断。翌年は同じ内容を土曜の午前に移し、申込みを◯件から◯件に増やした」という形です。うまくいかなかった事業を、原因まで分解して次に反映できる人は、民間の事業側でそのまま必要とされます。成功例だけを並べた書類より、信用されます。
指定管理者の担当をしていた経験は、どう書けばよいですか
「委託先の管理」ではなく「協定に基づく事業の管理」として書いてください。選定の手続(募集、審査、協定の締結)、月次の報告の確認、利用者数と使用料の実績の確認、協定に定めた水準が保たれているかの確認。この4つに分けると、民間でいう委託先の管理・業務品質の管理と同じ形になります。ただし、個別の審査の内容や、事業者ごとの評価は書けません。書けるのは、「◯館について、協定に基づく確認を年◯回行い、月次の報告で利用者数と収支を確認していた」という形までです。それでも、外部に任せた事業を管理してきた事実は十分に伝わります。
社会教育主事の資格を持っていないのですが、不利になりますか
民間への応募では、ほとんど影響しません。この資格は行政の中の職の要件であり、採用する側が知らないことのほうが多いからです。持っているなら「社会教育主事(有資格)」と1行添える程度で十分で、持っていないことを説明する必要はありません。代わりに書くべきは、事業の本数、参加者数、扱った予算、外部の相手の数です。資格ではなく、回してきた量で読まれます。面接で聞かれることは生涯学習・社会教育課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。