財政課転職PUBLIC → PRIVATE 無料で相談する

業界研究 / 保育

保育は公務員のどの経験を評価するか

保育は、財政課の方が「保育士の資格がなければ関係のない世界」と感じて候補から外しがちな業界です。この感覚は、保育そのものについては正しく、業界全体については違います。保育の事業者と社会福祉法人には、法人本部の経営管理、施設の事務、新規開設の企画、市町村との調整、給付と補助の申請と実績報告といった、資格を前提としない領域があり、そのうち自治体と接点を持つ領域では、財政課の経験が直接効きます。

自治体の側から見ると、財政課は保育の給付費と委託費を査定し、施設整備の補助を審査し、公立保育所の民営化と指定管理の財政面を検討し、子ども・子育て支援事業計画の財政面を確認してきた部署です。市町村は保育を必要とする児童を保育所などで保育する義務を負い(児童福祉法第24条)、市町村は届出で、国・都道府県・市町村以外の者は都道府県知事の認可を得て児童福祉施設を設置し(第35条)、保育所は利用定員20人以上の施設で(第39条)、設備と運営の基準は都道府県の条例で定められます(第45条)。市町村は施設型給付費を支給し(子ども・子育て支援法第27条)、5年を一期とする子ども・子育て支援事業計画を定めます(第61条)。保育の財政を「給付と補助を出す側」「計画を組む側」から見てきた人は、事業者と法人の側では少数です。

この記事では、保育の業界構造(保育の実施の仕組み、認可と基準、給付と計画、自治体との接点)を法律で押さえたうえで、財政課の経験のうちどこが評価され、どこが評価されないかを、職種ごとに整理します。介護と福祉の法人の構造は介護・福祉は公務員のどの経験を評価するかに書いており、保育と重なる部分があります。

業界構造——保育の実施の仕組み、認可と基準、給付と計画

市町村は、保護者の労働や疾病などにより保育を必要とする児童を、保育所などで保育しなければなりません(児童福祉法第24条)。保育所は利用定員20人以上の施設で(第39条)、市町村は都道府県知事への届出で、それ以外の者は都道府県知事の認可を得て設置します(第35条)。設備と運営の基準は都道府県の条例で定められ(第45条)、認定こども園は幼稚園と保育所などの設置者が認定を受けます(認定こども園法第3条)。保育所の経営は社会福祉事業で(社会福祉法第2条)、社会福祉法人(第22条)には経営基盤の強化と経営の透明性が求められます(第24条)。事業者の収入は、市町村が支給する施設型給付費(子ども・子育て支援法第27条)と利用者の負担で決まり、市町村の事業計画(第61条)の中で事業が組まれます。

自治体との接点は、次の形で現れます。

接点の形内容法律上の前提財政課の関わり
給付と委託施設型給付費、委託費、加算の申請と実績報告子ども・子育て支援法第27条、児童福祉法第24条給付費と委託費の査定、加算の財政面の確認
認可と基準設置の認可、設備と運営の基準への適合、監査児童福祉法第35条、第45条直接の関わりは薄いが、基準に伴う経費の査定
事業計画と新規開設事業計画への位置づけ、施設整備の補助子ども・子育て支援法第61条、補助の要綱事業計画の財政面の確認、施設整備の補助の審査
公立保育所の民営化・指定管理公立保育所の民営化、移譲、指定管理地方自治法第244条の2民営化の財政面の検討、指定管理料の査定、移譲の条件
契約と法人の会計委託契約、法人の決算と経営の透明性地方自治法第234条、社会福祉法第24条契約の財政面の審査、法人の経営状況の確認

財政課は、事業者と法人が「外から申請し、提案する」案件のほとんどで、内側にいた部署です。この位置が評価の土台になります。

財政課の経験が効く領域——4つ

1. 給付と委託の財政の見え方。施設型給付費と委託費、加算の仕組みで、市町村がどう見込み、どう査定し、実績報告のどこで戻すか——財政課は給付と委託を出す側として、保育の財政を見てきました。事業者と法人にとって、市町村が何を見て給付と委託を判断するかは、外から学びにくい情報です。

2. 事業計画と新規開設の財政面。5年を一期とする事業計画(子ども・子育て支援法第61条)で、保育の量の見込みと施設整備がどう組まれるか——財政課は事業計画の財政面を確認し、施設整備の補助を審査してきました。事業者が新しい施設を計画するとき、事業計画のどこに位置づけられるかは、認可と補助の見込みに直結します。

3. 公立保育所の民営化と指定管理の論点。公立保育所の民営化、移譲、指定管理の検討で、財政面から何が論点になり、どう決まったか——財政課はこの検討に関わってきました。民営化の受け皿として応募する法人にとって、自治体の内側で何が議論されるかは、提案を組むうえで欲しい情報です。

4. 補助と実績報告の審査の視点。施設整備の補助、運営の補助、実績報告の審査で、財政課は要綱と積算を審査し、どこで戻したか——事業者と法人は申請と報告を「作る側」で、財政課は「審査する側」です。「審査する側が何を見るか」を作る側に持ち込めるのが、財政課の方の強みです。

職種ごとの評価——財政課の経験はどこで効くか

職種業務財政課の経験の評価評価される部分評価されない部分
法人本部の経営管理(複数の施設を持つ社会福祉法人・保育事業者)経営計画、予算、資金繰り、施設整備、市町村との調整高い給付と委託の財政の見え方、事業計画の財政面、補助の審査の視点、民営化の論点保育の現場の運営と配置の基準は別の経験
新規開設・事業企画新しい施設の計画、認可と補助の申請、民営化の受け皿の提案高い事業計画への位置づけ、認可と補助の審査の順序、民営化の提案の組み方保育の内容の設計は別の経験
施設の事務職施設の会計、給付の請求、実績報告、行政への報告中予算と決算の管理、実績報告の作り方給付の請求の実務と配置の基準の管理は入職後に学ぶ
保育系コンサル・自治体向け事業事業計画の策定支援、保育の需給の調査、民営化の支援中〜高自治体の内側で事業計画がどう組まれるか総合コンサルティングに近い評価
保育士・園長保育、施設の運営低い—資格と現場の経験が前提

財政課の経験が最も評価されるのは、法人本部の経営管理と新規開設・事業企画です。保育士の資格は要らず、「給付と補助を出す側、計画を組む側にいた」ことが価値になります。

評価されない経験——3つの落とし穴

1つ目は、「給付費を査定していたから保育が分かる」の一般化。財政課が見ていたのは給付と委託の数字と契約の形で、保育の事業は保育の内容、職員の配置と確保、子どもと保護者との関係と結びついています。「保育が分かる」と言うより、「給付と補助を出す側で何を見ていたか」と言うほうが、法人と事業者には伝わります。保育の内容と配置の基準の実務は別の経験として学ぶ前提です。

2つ目は、自分の自治体の運用の一般化。給付と委託の査定の仕方、事業計画の組み方、民営化の考え方は自治体で違います。「うちの市ではこうだった」を「自治体はこうだ」と言うと、複数の自治体で施設を運営してきた法人本部には浅く見えます。「自治体の内側では、この判断をこう見る」と、判断の型で語ってください。

3つ目は、現場への敬意を欠く言い方。「保育は補助金で成り立っている」「配置を減らせば経営は良くなる」といった言い方は、保育の現場を知る面接官には、配置の基準(児童福祉法第45条の条例の基準)と給付の仕組みで経営が縛られている構造を理解していないと見られます。財政課の経験は「出す側の目で、事業者の側の調整を組み立てる」ことで効き、「経費を削る」ことで効くのではありません。

自分の経歴が、法人本部の経営管理と新規開設の企画と保育系コンサルのどこで、どの職種として通るかは、一人で判断するより話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

入り方——職種の選び方と、準備

職種は「自治体との接点」で選びます。財政課の経験が直接効くのは、法人本部の経営管理と新規開設・事業企画です。求人票に「本部」「経営企画」「新規開設」「開設準備」「行政対応」「民営化」の語があるかを確かめ、なければ「会計が分かる」だけの応募になり、評価は下がります。

準備は、財政課の業務を「給付と委託」「事業計画と施設整備」「民営化と指定管理」の3つに分けて棚卸しすることから始めます。給付費と委託費の査定で何を見て、加算をどう確認したか。事業計画の財政面でどこを確認し、施設整備の補助をどう審査したか。民営化と指定管理の検討で何が論点になり、受け皿の提案のどこを見たか。それぞれについて、「法律上の根拠」「自分が見た箇所」「直した経験」を並べます。

社会福祉法人の経営状況を確認した経験は、別に取り出してください。法人の決算と経営の透明性(社会福祉法第24条)を、補助と民営化の審査の中でどう見たかを、個別の法人ではなく型として整理します。地方公務員法第34条の秘密を守る義務は退職後も続くので、個別の法人の経営状況は型にとどめます。

自分の自治体から給付や委託を受けている法人、民営化の受け皿になった法人に応募する場合は、接点を隠さないでください。退職後に元の職場へ職務上の依頼をすることには規制があり(地方公務員法第38条の2)、在職中に応募先とやり取りする場合は勤務時間外に行います。接点があること自体は問題ではなく、応募先にも伝えるほうが安全です。

行政が相手の求人は、掲載中のものから「本部の経営管理か現場か」「自治体との接点があるか」が業務内容で見えます。行政が相手の求人を見てみる

まとめ

よくある質問

保育士の資格も現場の経験もありませんが、保育の法人や事業者に入れますか

入れる領域があります。法人本部の経営管理、新規開設の企画、施設の事務は、保育士の資格を前提としません。財政課の経験が効くのは、給付と委託を出す側、事業計画を組む側、民営化と補助を審査する側にいた経験で、それは法人と事業者の側にはない視点です。ただし、保育の内容、職員の配置の基準、子どもと保護者との関係は入職後に学ぶ前提で、「会計が分かる」を売りにするのは避けてください。求人票に「本部」「経営企画」「新規開設」「行政対応」の語があるかを先に確かめ、現場の職種と区別して応募してください。

財政課で保育の給付費に直接関わったことがありません。素材はありますか

あります。保育所の施設整備の補助の査定、公立保育所の民営化や指定管理の財政面の検討、子ども・子育て支援事業計画の財政面の確認、放課後の児童クラブなどの委託料の査定に関わっていれば、それが「事業計画と施設整備」「民営化と指定管理」の素材です。給付費の査定そのものに関わっていなくても、「補助と委託を出す側が何を見て、どこで戻すか」「民営化の検討で何が論点になるか」を知っている人は、法人本部にいません。棚卸しは「給付と委託」「事業計画と施設整備」「民営化と指定管理」の3つに分け、自分が見た箇所と直した経験を並べてください。

自分の自治体の公立保育所の民営化の受け皿になった法人に応募したいのですが、問題になりますか

応募すること自体は問題ありませんが、線があります。退職後に、再就職者が元の職場に職務上の依頼をすることには規制があり(地方公務員法第38条の2)、在職中に応募先とやり取りする場合は勤務時間外に行います。また、その法人は自分の自治体の民営化の相手なので、面接でその選定の個別の内容——他の応募法人との比較、未公表の次の民営化の方向、移譲の条件の交渉の経緯——を話すことは、秘密を守る義務(第34条)に触れます。話してよいのは「自治体の内側では民営化と給付をこう見る」という型です。接点があることは隠さず、応募先にも伝えておくと、法人の側も案件の切り分けを考えられます。

出典

  1. 児童福祉法 第24条(保育の実施)/第35条(児童福祉施設の設置)/第39条(保育所)/第45条(児童福祉施設の設備及び運営の基準)|e-Gov法令検索
  2. 子ども・子育て支援法 第27条(施設型給付費の支給)/第61条(市町村子ども・子育て支援事業計画)|e-Gov法令検索
  3. 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 第3条(認定こども園の認定等)|e-Gov法令検索
  4. 社会福祉法 第2条(定義)/第22条(定義)/第24条(経営の原則等)|e-Gov法令検索
  5. 地方自治法 第234条(契約の締結)/第244条の2(公の施設の設置、管理及び廃止)|e-Gov法令検索
  6. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

「自分の経験に、どこで値段が付くのか」から相談できます

在職中でも、情報収集だけでも構いません。応募する求人が決まっていない段階のほうが、むしろ整理する意味があります。ご利用はすべて無料です。