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業界研究 / 総合コンサルティング

総合コンサルティングは公務員のどの経験を評価するか

総合コンサルティングは、財政課の方が「戦略コンサル」「外資系」の印象で、最初から候補から外しがちな業界です。ただ、総合コンサルの公共部門が受託しているのは、自治体の総合計画・総合戦略の策定支援、業務改革、PPP/PFIの導入支援、公共施設マネジメント、行政評価、DX計画——財政課が発注者側で予算を査定し、財政フレームを付け、議会に説明してきた業務そのものです。「総合」と付くのは、戦略・業務・IT・人事・財務の領域を横断して支援するからで、公共部門ではその横断が「計画と財源と実行をつなぐ」形で現れます。

ITコンサル(IT中心)、シンクタンク(調べる側)、建設コンサル(施設の技術側)と比べたとき、総合コンサルの特徴は「計画を作って終わりではなく、財源を付け、調達し、実行に落とすところまで横断して支援する」ことです。財政課の経験がこの業界で評価されるのは、その横断の中で最も抜けやすい「財源の裏付け」を、自治体の作法で組めるからです。

この記事では、総合コンサルティングの業界構造(横断的な支援、公共部門と民間部門の違い、受託の仕組み)を法律と公式資料で押さえたうえで、財政課の経験のうちどこが評価され、どこが評価されないかを、職種ごとに整理します。近い業界との境目は、ITコンサル、シンクタンク、建設コンサルの記事とあわせて読むと見えます。

業界構造——「計画・財源・実行」を横断する支援

総合コンサルの公共部門が支援する自治体の計画には、法律や国の政策に根拠があるものが多くあります。まち・ひと・しごと創生法第10条に基づく市町村の総合戦略(策定は努力義務)、総務省が2014年に指針を示した公共施設等総合管理計画、官民データ活用推進基本法第9条に基づく官民データ活用推進計画(都道府県は義務、市町村は努力義務)。PPP/PFIは、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律が道路、公園、水道、庁舎、教育文化施設など幅広い施設を「公共施設等」と定義し(第2条第1項)、民間の資金と経営能力を活用した整備の枠組みを設けています。財政の側では、地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条により毎年度公表される健全化判断比率が、計画の財政フレームの前提になります。

部門主な業務発注者財政課の経験
公共部門(自治体向け)総合計画・総合戦略の策定支援、業務改革、PPP/PFI、公共施設マネジメント、行政評価、DX計画、これらの財源と実行への落とし込み自治体(プロポーザルが多い)直接効く
公共部門(国向け)国の政策の立案支援、制度の効果検証、自治体の実態調査、実証事業の運営各府省効く。「自治体側の実態と財源」を知っている人が少ない
民間向け(戦略・業務・IT・人事)企業の戦略、業務改革、システム導入、組織・人事企業直接には効かない

受託の仕組みは、自治体側から見れば財政課がよく知るものです。地方自治法第234条により、契約は一般競争入札、指名競争入札、随意契約のいずれかで、コンサルティング業務は施行令第167条の2第1項第2号の「性質又は目的が競争入札に適しない」契約としてプロポーザル方式で選ばれることが多く、複数年度の支援は債務負担行為(同法第214条)で予算を組みます。

この構造で押さえるべきことは、総合コンサルの中で「公共部門の枠を持つ会社か」「その枠の中で自治体向けの比重はどのくらいか」を先に見ることです。総合コンサルは民間向けの比重が大きい会社が多く、公共部門は会社によって規模も内容も大きく違います。

財政課の経験が効く領域——4つ

1. 計画の財源の裏付け。総合計画、総合戦略、公共施設マネジメント、DX計画——これらの「施策」の部分はコンサルタントが書けても、「どの年度に、どの財源で、どの契約の形で実行するか」を自治体の作法で書ける人は限られます。起債の対象になるか、補助金・交付金が使えるか、基金をどう使うか、債務負担行為をどう設定するか。財政課はこの計算を内側で組んできました。

2. 調達と実行への落とし込み。計画を実行に移す段階で、調達の仕様、予定価格の考え方、プロポーザルの評価基準、契約の形を組む支援があります。財政課はこれらを査定する側で毎年見てきました。「この仕様なら財政課は何を聞くか」「この積算は査定で通るか」を知っていることは、実行支援の精度に直結します。

3. PPP/PFIと公共施設マネジメント。従来方式との比較(財政負担の総額と年度ごとの支出)、起債との関係、債務負担行為の設定、施設の更新費用と基金・起債の年度計画。財政の側から施設の計画を組む部分は、財政課の実務そのものです。建設コンサルが施設の技術側を担うのに対し、総合コンサルは財源と事業の枠組みの側を担うことが多く、財政課の経験はこちらに近い。

4. 庁内の合意形成と議会説明。総合コンサルの支援は、企画部門、財政課、各業務課、議会を巻き込みます。財政課は査定を通じて庁内のどこで何が引っかかり、議会がどこを聞くかを見てきました。合意を取り、議会に説明できる形に成果物を整える場面で、この経験は直接効きます。

職種ごとの評価——財政課の経験はどこで効くか

職種業務財政課の経験の評価評価される部分評価されない部分
公共部門コンサルタント(計画・財政・実行支援)計画策定支援、財政フレーム、PPP/PFI、公共施設マネジメント、調達支援高い財源の仕組み、起債・補助金・基金・債務負担行為、査定の視点、議会説明コンサルティングの型(仮説、構造化、提案書の作法)は学習が要る
業務改革コンサルタント(公共)自治体の業務フローの分析、改善案の設計、実行支援中〜高財務会計・予算編成の業務フローの実務、庁内の意思決定の作法業務系以外の業務は別の経験。分析の型は学習が要る
PMO・実行支援計画の実行、進捗・課題の管理、庁内調整高い庁内の合意形成、年度の周期、意思決定の作法プロジェクト管理の手法
戦略コンサルタント(民間向け)企業の戦略、事業計画低い行政の制度を知っていることが企業側の案件で補助的に効くことはある企業の経営の視点、市場の分析は別の経験
IT・デジタル(テクノロジー系)システム構成、クラウド、データ基盤低い業務の理解が設計の評価を助ける程度技術が前提。財政課の経験は代替にならない

財政課の経験が最も評価されるのは、公共部門コンサルタント(計画・財政・実行支援)とPMO・実行支援です。ただし、どちらもコンサルティングの型は入社後に学ぶ前提で、財政課の資料(査定資料、議会向けの説明書)と、コンサルの成果物(提案書、報告書)は、目的も型も違います。

評価されない経験——3つの落とし穴

1つ目は、「査定していたからコンサルができる」という一般化。査定は「出てきたものを判断する」仕事で、コンサルは「まだないものを仮説として作り、提案する」仕事です。面接で「あなたの自治体の課題は何で、どうすべきか」と聞かれて、査定の話で終わると、「コンサルには向かない」と見られます。仮説と提案まで言う練習が要ります。

2つ目は、自分の自治体の運用の一般化。財政課の権限の強さ、庁内の意思決定の流れ、議会との関係は自治体ごとに違います。総合コンサルは複数の自治体と国を相手にするので、「私の自治体ではこうだった」を「自治体一般はこうだ」と語ると、面接で修正されます。共通する制度(地方自治法、地方財政法、健全化法)と、自治体ごとの運用を分けて話すのが型です。

3つ目は、「発注者側に立つ」立場への誤解。総合コンサルは自治体の側に立って助言しますが、契約で選ばれた受注者であり、決める権限はありません。提案して自治体が決め、契約の期間が終われば離れる。財政課で「決める側」にいた方が、この二重性を理解せずに入ると、入社後にストレスになります。

自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

入り方——職種の選び方と、準備

1. 「公共部門」の枠があり、自治体向けの計画・財政・実行支援を受託している会社を探す。求人票で「自治体」「公共」「官公庁」「総合計画」「PPP/PFI」「公共施設マネジメント」「行政評価」「財政」といった言葉が業務内容にある職種を探してください。民間向けの戦略・業務・ITだけの会社では、財政課の経験が効く枠がない可能性が高いです。

2. 財政課の業務を「財源と実行」の軸で棚卸しする。総合計画・総合戦略の財政フレーム、公共施設マネジメントの更新費用と基金・起債の計画、PFIの検討、起債の協議、補助事業の査定、債務負担行為の設定、議会での説明。それぞれで自分が「何を判断し、何を作ったか」を書き出すと、そのまま職務経歴書の材料になります。

3. 自分の自治体の計画を、支援者の視点で読み直す。総合計画、総合戦略、総合管理計画、DX推進計画。財政課にいた方は、これらの財政フレームに関わっていることが多いはずです。「支援者がどう作ったか」「財政課としてどこに口を出したか」「財源の裏付けは付いているか」の視点で読み直すと、業務のイメージがつかめます。

4. 「仮説と提案」を言う練習。自分の自治体の計画や財政の課題を、現状→原因→仮説→提案→留保の順で3分で話せるようにしてください。地方自治法第2条第14項の「最少の経費で最大の効果」を、査定する側ではなく、計画と財源を組む側から実現する——この視点で組み立てると、財政課の経験と総合コンサルの業務が1本でつながります。

5. 服務の線を確かめる。在職中に総合コンサルの調達(委託料の査定、プロポーザルの審査)に関わっている場合は、その会社への応募の時期と、退職後の働きかけの規制(地方公務員法第38条の2)を確認してください。自治体の未公表の情報を職務経歴書や面接で使わないこと(第34条)も、この業界では特に確認されます。再就職者による働きかけの規制と守秘義務は退職後も続くかに整理しています。

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まとめ

よくある質問

総合コンサルとITコンサル、シンクタンクは、財政課の経験の効き方がどう違いますか

ITコンサルは自治体のDX計画と調達、標準化移行のPMOが中心で、財政課の経験は「調達と予算」の軸で効きます。シンクタンクは調査と計画策定、財政分析が中心で、「数字と制度」の軸で効きます。総合コンサルは計画から財源、調達、実行までを横断するので、「財源の裏付けを付けて実行に落とす」軸で効きます。どの業界も公共部門の枠は少数なので、自分の経験が最も直接に当たる軸を持つ会社を、求人票の業務内容で見分けてください。

財政課で総合計画の財政フレームを担当していました。どの職種を見ればよいですか

公共部門コンサルタントのうち、総合計画・総合戦略の策定支援、公共施設マネジメント、PPP/PFI、財政シミュレーションを業務内容に挙げている職種が最も近いです。計画の施策に起債・補助金・基金・債務負担行為の年度計画を重ねる作業は、支援する側でそのまま使う知識です。求人票にこれらの言葉がない会社は、公共部門の枠がない可能性が高いので、業務内容で絞ってください。

英語ができないと、総合コンサルには入れませんか

公共部門で自治体向けの支援を担当する枠では、英語が応募の前提になることは一般的ではありません。自治体の計画と財源の仕組みを日本語の公文書の作法で扱えることのほうが重く見られます。外資系の会社では社内の研修や資料に英語が使われることがあるので、求人票の応募要件と、面接で「公共部門の日常の業務で英語を使う場面はあるか」を確かめてください。英語を理由に候補から外す前に、枠ごとの要件を見ることを勧めます。

出典

  1. まち・ひと・しごと創生法 第10条(市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略)|e-Gov法令検索
  2. 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第2条(定義)|e-Gov法令検索
  3. 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 第3条(健全化判断比率の公表等)|e-Gov法令検索
  4. 官民データ活用推進基本法 第9条(都道府県官民データ活用推進計画等)|e-Gov法令検索
  5. 地方自治法 第2条第14項(最少の経費で最大の効果)/第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索
  6. 地方自治法施行令 第167条の2(随意契約)|e-Gov法令検索
  7. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索
  8. 公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進|総務省

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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