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業界研究 / NPO・公益法人

NPO・公益法人は公務員のどの経験を評価するか

NPO・公益法人への転職を考える方から、遠慮がちにこう伺うことがあります。

「私がやってきたのは、事務です。評価されるものがあるでしょうか」

あります。しかも、ご本人がいちばん軽く見ている部分が評価されます。

理由は、法人の側が何を義務として負っているかを見れば分かります。この記事では、法令上の義務から逆算して、どの経験が評価されるかを整理します。

選考の進み方はNPO・公益法人の選考フローと、面接で見られている観点、志望動機の組み立てはNPO・公益法人の志望動機にあります。

法人は、会計について法令上の原則を負っています

特定非営利活動促進法第27条です。

> (会計の原則)第二十七条 特定非営利活動法人の会計は、この法律に定めるもののほか、次に掲げる原則に従って、行わなければならない。>> 二 会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。>> 三 計算書類(活動計算書及び貸借対照表をいう。次条第一項において同じ。)及び財産目録は、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすること。>> 四 採用する会計処理の基準及び手続については、毎事業年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。

3つとも、「やったほうがよい」ではなく「行わなければならない」と書かれています。

第4号に注目してください。「毎事業年度継続して適用し、みだりにこれを変更しない」です。

これは、役所の会計をやってきた方にとっては、当たり前の作法です。科目の立て方を年度ごとに変えない。前年度と比較できる形で作る。決算のときに、前年度と同じ切り方になっているかを確認する。

その当たり前が、法人の側では担い手の少ない仕事になっています。

公益法人には、収支の均衡を図る義務があります

公益認定法第14条です。

> (公益目的事業の収入及び費用)第十四条 公益法人は、その公益目的事業を行うに当たっては、内閣府令で定めるところにより、当該公益目的事業に係る収入をその実施に要する適正な費用(当該公益目的事業を充実させるため将来において必要となる資金として内閣府令で定める方法により積み立てる資金を含む。)に充てることにより、内閣府令で定める期間において、その収支の均衡が図られるようにしなければならない。

「収支の均衡が図られるようにしなければならない」です。

公益目的事業で、費用を超える収入を溜め込む形にはできないという建て付けです。つまり、収入と費用を対応させて管理し続ける必要があります。

この管理は、役所の予算の執行管理と、やっていることがほとんど同じです。

役所でやっていたこと法人で求められること
予算の執行率を月次で見る事業ごとの収支の進捗を見る
節・細節で支出を分ける事業区分ごとに費用を配賦する
流用・補正の判断期中の計画の修正
決算で不用額を整理する期間内で収支の均衡を図る
前年度と比較できる形で作る継続性の原則(法第27条第4号)

左の列を、当たり前だと思ってきた方が多いです。右の列を担える人を、法人は探しています。

評価される経験は、5つに整理できます

経験法人の側での呼ばれ方なぜ評価されるか
① 予算の編成と執行管理事業予算の管理収支の均衡を図る義務に直結する
② 会計・出納・決算経理、決算正規の簿記の原則と継続性の原則
③ 補助金・助成金の交付事務申請、実績報告審査する側の観点を知っている
④ 要綱・規程の作成内部規程の整備規程が未整備の法人が多い
⑤ 審議会・委員会の事務理事会・評議員会の運営形式が要る会議体を回せる

①と②が、いちばん求められています。

理由は単純で、この業界に会計を担える人が少ないからです。事業の分野に関心を持って入ってくる方が多く、経理は誰かが兼務しているという状態の法人が少なくありません。

「会計しかやっていません」という方は、この業界ではむしろ強いです。

③も効きます。補助金の申請書を書くとき、交付する側が何を見るかを知っているのは大きな差になります。「審査で落ちる書き方」が分かるからです。

④は、意外に思われるかもしれません。法人の規模が小さいと、就業規則・経理規程・旅費規程が整っていないことがあります。要綱を条文の形で書いてきた経験は、そのまま使えます。

⑤は、理事会・評議員会の運営です。招集の手続き、議事録の作成、定足数の確認。審議会の事務をやってきた方には、見慣れた仕事です。

言い換えの表

職務経歴書に書くときは、役所の言葉のままにしないでください。

役所での言い方法人に伝わる言い方
予算の要求と査定の補助年間◯件の事業予算の積算と、査定への対応
予算の執行管理事業ごとの収支の進捗の管理と、期中の計画の修正
歳入歳出の整理収入と費用の対応付け、事業区分ごとの整理
決算統計の作成年度の実績の取りまとめと、前年度との比較の整理
補助金の交付決定申請の審査、要件の確認、実績報告の検査
要綱の制定・改正内部の規程の作成と改正、様式の整備
審議会の庶務会議体の招集、資料の作成、議事録の作成
監査の対応指摘への対応と、再発防止の仕組みの整備

右の列は、そのまま求人票の言葉に近いです。

この言い換えをしないまま出すと、読む側が「何ができる人か」を判断できません。同じ経験でも、書き方で通過率が変わります。

評価されにくい経験

正直に書いておきます。

経験評価されにくい理由
特定の制度の細かい運用の知識その制度を扱わない法人では使えない
庁内の調整の経験相手も組織の形も違う
前例を踏襲した処理の実績前例の無い場面が多い
在籍年数そのもの年数より、何を担ったか
役職の名称法人の側に対応する段階が無い

「係長を◯年」という書き方は、この業界ではあまり効きません。

書くなら、「◯人の係の事務の進行を管理し、◯件を処理した」です。段階の名前ではなく、担った範囲で書いてください。

それから、制度の細かい知識です。その制度を扱う法人なら強い材料ですが、扱わない法人には響きません。応募先によって、前に出す経験を入れ替えてください。

職務経歴書での並べ方

位置書くもの
冒頭の要約(3〜4行)予算・会計・補助金のうち、担った範囲
職歴の1つ目直近の担当。件数と金額の規模を入れる
職歴の2つ目以降分野の経験。応募先に近いものを前へ
実績の欄制度の改正、システムの更改、計画の策定への対応
資格・研修簿記、会計の研修、その分野の研修

冒頭の要約を必ず付けてください。法人の側は、人事の専任がいないことが多く、読む時間が限られています。

金額や件数は、公表されている範囲で書いて構いません。予算書・決算書は公表されているので、自分が担当した事業の規模は、公表資料の範囲で示せます。

⚠ 内部の事情や、公表されていない数字は書かないでください。守秘の観点もありますし、それを書く人は、次の職場の事情も外で話すと見られます。

経験の言い換えから相談することもできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。

面接で聞かれやすいこと

聞かれること何を確かめられているか
会計の実務は、どこまでご自身で兼務で回せるかどうか
会計のソフトは使えますか役所のシステムとの違いへの構え
事業の計画と実績の差を、どう扱ってきましたか期中の修正ができるか
監査で指摘を受けた経験はありますか指摘への向き合い方
分野の経験が無いが、大丈夫ですか学ぶ構えがあるか

2つ目は、正直に答えて構いません。役所の財務会計システムは独特なので、市販の会計ソフトの経験が無い方がほとんどです。

答え方は、「仕組みは同じなので、操作は覚えます」という形です。仕訳の考え方と、科目の対応が分かっていれば、ソフトは手続きの問題です。

4つ目は、良い材料になります。指摘を受けたこと自体ではなく、そのあと何を変えたかを話してください。チェックの項目を様式にした、確認の担当を分けた。仕組みで直した話は、そのまま法人で使える経験として聞かれます。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

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よくある質問

簿記の資格がありません。会計の経験として書けますか

書けます。資格の有無と、実務を担ったかどうかは別です。公金の出納、支出負担行為の確認、決算統計の作成を担当していたなら、それは会計の実務です。書き方は、「担当した事務の内容」を具体的に並べる形にしてください。「支出負担行為の審査を年間◯件」「決算の資料の作成を◯年」。そのうえで、資格を取るなら簿記が分かりやすいです。役所の会計と企業の会計では記録の考え方が違うので、その違いを説明できるようになると、面接での説得力が上がります。ただし、資格を取ってから応募する必要はありません。実務があるなら、先に応募して構いません。学びながら進めるという伝え方で足ります。

会計以外の部署しか経験がありません。それでも評価されますか

されます。この記事で会計を前に出したのは、需要と供給の差がいちばん大きいからであって、他の経験が評価されないという意味ではありません。窓口で相談を受けた経験、許認可で現場を見た経験、計画を策定した経験は、いずれも材料になります。とくに、その法人が扱う分野と重なる部署にいた方は、分野の理解という点で強いです。整理のしかたは、「誰を相手に、何を確認し、何を決めていたか」で言い換えることです。制度の名前で書くと伝わりませんが、動作で書くと受け皿が見つかります。部署ごとの言い換えは自治体の部署別 仕事ガイドに整理しています。

技術職です。事務の経験がありませんが、応募できますか

応募できます。法人の中には、施設の維持管理、環境の調査、災害の復旧支援など、技術の知識が要る事業を持つところがあります。また、建物や設備を持っている法人では、修繕の計画と発注を担える人が求められます。役所で工事の発注と監督をしていた方なら、仕様書の作成、業者との協議、検査の経験がそのまま使えます。探し方は、分野ではなく、法人が何を持っているかで見ることです。施設を運営している法人、フィールドを持っている法人が候補になります。なお、技術職の方は、会計や規程の経験が無いことを気にされることが多いのですが、技術の側から入って、あとから覚える形で問題ありません。

出典

  1. 特定非営利活動促進法 第27条(会計の原則)|e-Gov法令検索
  2. 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 第14条(公益目的事業の収入及び費用)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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