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広島県職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
広島県のラスパイレス指数は100.9です。中国地方5県で最も高く、全国で見ても上位にあたります。
地域手当も、国の指定基準約4.99%に対して実際の支給割合が約6.34%。約1.34ポイントの上乗せをしています。中国地方でこの上乗せをしているのは広島県だけです。
ただし、この数字をそのまま自分の水準として使うと判断を誤ります。まず数字を読み解いてください。
広島県庁の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、広島県の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 広島県 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 100.9 |
| 平均年齢 | 43.3歳 |
| 平均給料月額 | 330,100円 |
| 諸手当月額 | 78,397円 |
| 平均給与月額 | 408,497円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 368,666円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 約4.99% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 約6.34% |
中国地方5県で並べる
| 県 | ラスパイレス指数 | 平均給料月額 | 地域手当(実支給) | 諸手当月額 |
|---|---|---|---|---|
| 広島県 | 100.9 | 330,100円 | 約6.34% | 78,397円 |
| 岡山県 | 100.3 | 331,200円 | 約1.73% | 82,195円 |
| 山口県 | 99.3 | 325,700円 | 約0.18% | 70,668円 |
| 島根県 | 98.2 | 316,300円 | 0% | 69,055円 |
| 鳥取県 | 96.6 | 319,500円 | 0% | 69,398円 |
指数では広島県が最も高いのに、平均給料月額では岡山県が上回ります。差は1,100円です。
つまり広島県の指数の高さは、給料月額そのものではなく、学歴と経験年数で補正したときの給料表の位置から来ています。平均年齢は広島・岡山とも43.3歳で同じなので、この差は年齢構成では説明できません。給料表の形が違うということです。
一方で諸手当は78,397円で、岡山県82,195円を下回ります。地域手当の上乗せがあるにもかかわらず、諸手当の総額では岡山県のほうが厚い。手当の内訳は団体ごとに違うので、名目で比べても意味がありません。
地域手当の全国的な位置は愛知県職員の転職に、諸手当の比率は大阪府職員の転職に表で整理しています。
指定都市を抱える県なので、担当範囲を自分で書く必要がある
広島県には指定都市があります。
地方自治法第252条の19は、政令で指定する人口50万以上の市は、都道府県が処理することとされている事務のうち政令で定めるものを処理することができる、と定めています。条文に列挙されているのは、児童福祉、生活保護、社会福祉事業、老人福祉、母子保健、介護保険、障害者の自立支援、食品衛生、医療、精神保健、結核の予防、土地区画整理事業、屋外広告物の規制などです。
つまり県が直接担う仕事の範囲が、指定都市を持たない県とは違います。
ここが職務経歴書で効いてきます。県外の企業の採用担当者は、「県庁ならこの分野を担当していたはずだ」という一般的な理解で読みます。その理解と、実際の担当範囲がずれます。
対処は単純です。
- 担当した事務を、どの区域を対象にしていたかまで書く
- 市が担う部分と県が担う部分の接続点で何をしていたかを書く
- 「調整」で済ませず、誰と誰の間で、何を決めたかを書く
指定都市を抱える県の職員は、規模の大きい自治体を相手にした折衝の経験を持っています。相手が国であれ大企業であれ、そのまま通じる経験です。詳しくは大阪府職員の転職でも同じ論点を整理しています。
県庁の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 県庁での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 環境・水質の規制、監視指導 | 環境管理、EHS、規制対応 |
| 港湾・海域の計画と調整 | インフラ企画、事業開発 |
| 企業誘致・立地支援 | 事業開発、用地開発、アライアンス |
| 産業支援・技術支援の施策 | 産学連携、技術企画、事業開発 |
| 広域の交通・物流の計画 | インフラ企画、SCM企画 |
| 観光・国際交流の実務 | 観光事業企画、インバウンド事業、渉外 |
| 水産資源の管理と利用調整 | 事業開発、調達、サステナビリティ推進 |
| 県土整備の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 市町への助言・支援 | パートナー支援、カスタマーサクセス |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「自分の区域だけでは決められない」計画を回した経験
広島県庁の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
瀬戸内海環境保全特別措置法第4条は、関係府県知事が、基本計画に基づいて府県計画を定めるものとする、と規定しています。そのうえで第2項が特徴的です。府県計画を定めようとするときは、府県計画が関係のある瀬戸内海の湾、灘その他の海域の実情に応じたものとなるようにするため、あらかじめ、当該湾、灘その他の海域を単位として関係者の意見を聴くことを求めています。
行政区域ではなく、海域を単位として考えろ、と法律が書いているということです。
第3条が定める基本計画の対象も、沿岸域の環境の保全・再生・創出、水質の保全及び管理、自然景観及び文化的景観の保全、水産資源の持続的な利用の確保と広く取られています。
この「自分の区域だけでは決められない」という構造は、民間の事業でもそのまま起きます。
- 商圏や流域が、行政区域や支社の担当区域と一致しない
- 自社だけ対策しても、上流や隣接事業者が動かなければ結果が出ない
- 関係者の利害が対立していて、先に合意の枠組みを作る必要がある
- 効果が出るまでの時間が長く、途中で説明を求められる
サステナビリティ推進、ESG企画、環境管理。近年これらの職務で求められているのは、まさにこの型の仕事です。自社の中だけで完結しない目標を、外部の関係者を巻き込んで動かす。経験者がほとんどいません。
書くときのこつは、計画名を並べないことです。単位をどう取ったか、誰の意見を先に聴いたか、利害が割れたところをどう決着させたか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
広島で、どの経験が値になるか
1. 製造業の集積を、行政側から支えてきた経験
自動車、造船、鉄鋼、機械。本社機能を持つ企業がある県なので、県内に事業開発や経営企画の職務があります。企業誘致、用地、インフラの手当て、補助制度の設計を担当していれば、進出や増設を考える企業から見て最も苦労する部分の経験になります。
2. 海域と水産を扱った経験
水質、養殖、資源管理、利用調整。調達の持続可能性は、いま食品と流通の企業が最も詰められている論点です。行政側で資源管理を見てきた経験は、調達やサステナビリティ推進の職務に直接つながります。
3. 国際的な発信と受入の実務
海外からの来訪者や関係機関を継続的に受け入れてきた県です。多数の関係機関を、期限のある枠組みのなかで動かした経験は、民間ではプロジェクトマネジメントや渉外として読まれます。
4. 条件の違う地域を、同時に扱ってきた経験
臨海部の都市と、島しょ部、中山間の地域が同じ県内にあります。同じ制度を、条件の違う地域に当てはめる。この経験は、全国展開する企業がいちばん苦労するところです。
5. 市町を相手にしてきた経験
指定都市から小規模な町まで、体制の幅が大きい県です。相手の体制に応じて支援の仕方を変えた経験は、複数顧客を持つアカウント業務の経験として書けます。
県内に市場がある県なので、絞り方を先に決める
広島県は、県内に製造業の集積と本社機能があります。転居を伴わずに多様な職種にアクセスできる一方、条件から絞ろうとすると候補が決まらないという状態になりやすい環境です。
順序を決めてください。
- 職種で絞る(自分の経験がどこで希少になるか)
- 業界で絞る(行政が顧客か、規制を受ける側か、まったく別か)
- 勤務形態を確認する(出社頻度、担当エリア)
この順序を逆にすると、条件のよい求人が視界から消えます。とくに勤務地から検索を始めると、リモート可や担当エリア型の求人が最初から入ってきません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、県庁の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
区域をまたいだ調整を実績として書く
隣接県、国の機関、複数の市町。自分の区域だけでは決められない案件をどう通したかは、そのまま民間で必要とされる経験です。関係した主体の数を書いてください。
異動歴を「立ち上げの回数」に変える
異なる制度領域を短期間で立ち上げてきた経験は、民間ではキャッチアップの速さとして読まれます。編年式で並べ、それぞれの配属で最初の数か月に何を習得したかを1行添えてください。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。県庁でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、電気主任技術者、環境計量士。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
水質と海域のデータを扱った経験は、特殊な資産になる
採水、分析、データの管理と公表、事業者や住民への説明。この一連の実務は、環境計量やモニタリングを事業とする企業、そして調達の持続可能性を問われる企業にとって、育てるのに時間がかかる経験です。測った経験だけでなく、その数値をどう説明したかまで書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
県内の企業の多くは、県庁と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。都道府県は年度開始前30日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 広島県の一般行政職はラスパイレス指数100.9、平均給与月額408,497円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 指数は中国地方5県で最も高いが、平均給料月額では岡山県が上回ります。平均年齢は両県とも43.3歳なので、差は給料表の形から来ています
- 地域手当は国の指定基準を約1.34ポイント上回ります。中国地方で上乗せをしているのは広島県だけです
- 指定都市を抱えるため、県が直接担う範囲が他県と違います(地方自治法252条の19)。職務経歴書では担当範囲を自分で書いてください
- 自分の区域だけでは決められない計画を回した経験は、企業側に人がいません(瀬戸内海環境保全特別措置法3条・4条)。サステナビリティ推進、ESG企画、環境管理という求人名で出ています
- 経験が効く方向は、製造業の集積支援/海域と水産/国際的な受入/条件の違う地域/市町支援の5つです
よくある質問
中国地方でいちばん指数が高いので、転職すると下がりますか
指数は応募先と比べた数字ではありません。ラスパイレス指数は国家公務員の給料表と比べたものです。広島県には県内に製造業の集積と本社機能があり、職種によっては行政より高い値が付くことも普通に起きます。まず自分の源泉徴収票の支払金額を出し、求人票の想定年収と並べてください。順序としては、経験がどこで希少になるかを決めてから水準の話をするほうが、判断が止まりません。
環境や水質の担当が長いのですが、専門が狭くないですか
探す場所が狭いだけであることが多いです。同じ分野で探すと環境計量やモニタリングの会社に絞られますが、いま人が足りていないのは規制を受ける側の企業です。調達の持続可能性、開示の要求、取引先からの説明要求。外部に説明できる形で数値を扱える人が社内にいない企業が多くあります。測った経験だけでなく、その数値をどう説明したかまで書いてください。
指定都市が担当している分野は、経験として弱くなりますか
弱くなりません。問題は書き方のほうです。県外の採用担当者は「県庁ならこの分野を担当していたはず」という理解で読むため、実際の担当範囲とずれます。担当した事務を、対象区域まで含めて書いてください。あわせて、規模の大きい自治体を相手にした折衝の経験は、相手が国でも大企業でも通じる経験として読まれます。