自治体別 / 都道府県
神奈川県職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
神奈川県庁で働いてきた方の職務経歴書には、他県には見られない特徴があります。政令指定都市が3つある県なので、県が直接担う仕事の範囲が、他県とは違うのです。
このことは職務経歴書の書き方に影響します。「県の仕事」と書いても、読み手が想定する範囲と実際の範囲がずれるからです。
この記事では、まず公表されている数字で自分の位置を確認し、そのうえで県庁の経験が民間のどの言葉に置き換わるのかを整理します。
神奈川県庁の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、神奈川県の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 神奈川県 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 100.0 |
| 平均年齢 | 42.8歳 |
| 平均給料月額 | 322,800円 |
| 諸手当月額 | 112,415円 |
| 平均給与月額 | 435,215円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 382,894円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 約12.21% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 約14.24% |
地域手当の乖離が、首都圏で最も大きい
読みどころはここです。国が指定する基準は約12.21%なのに、実際の支給割合は約14.24%。2ポイント以上上回っており、これは首都圏で最大の差です。
首都圏で並べると構造が見えます。
| 都県 | 国の指定基準 | 実際の支給割合 | 差 |
|---|---|---|---|
| 神奈川県 | 約12.21% | 約14.24% | +約2.0 |
| 埼玉県 | 8.3% | 約10.51% | +約2.2 |
| 千葉県 | 9.2% | 約10.89% | +約1.7 |
| 東京都 | 約19.63% | 約18.72% | -約0.9 |
東京都だけが基準を下回り、他は上回っています。地域手当は民間賃金の高い地域に支給される手当で、国の指定基準は市町村単位で決まっていますが、都道府県が独自の判断で支給割合を設定する余地があります。
なお、上の平均は自分の給与ではありません。全年齢の平均です。民間の求人票と比べるときは、自分の源泉徴収票の支払金額を使ってください。
県庁の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 県庁での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 産業労働の企業支援・研究開発支援 | 産学連携、技術企画、事業開発 |
| 都市計画・住宅政策 | 都市開発、不動産企画 |
| 港湾・臨海部の計画と調整 | インフラ企画、物流ネットワーク設計 |
| 環境・エネルギー政策 | サステナビリティ、GX事業企画 |
| 観光の誘客・受入環境整備 | 観光事業企画、地域ブランディング |
| 県土整備の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 市町村への助言・調整 | パートナー支援、カスタマーサクセス |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
政令市が3つある県で、県は何をしているか
ここは職務経歴書を書くうえで大事な点なので、丁寧に扱います。
政令指定都市は、都道府県の事務の多くを自ら処理します。したがって、政令市が多い県では、県が直接担う仕事の範囲が他県と違ってきます。神奈川県には横浜市・川崎市・相模原市の3つがあり、さらに中核市もあります。
これが意味するのは2つです。
1. 広域と調整の比重が大きくなる
個別の許認可や現場対応より、大都市を含む複数の自治体をまたぐ調整が仕事の中心になります。これは民間で言えば、大口顧客が複数いる中での全体最適の設計です。
2. 「規模の違う相手」を同時に扱っている
政令市と、人口数千人の町村が同じ県内にあります。同じ制度でも、相手の体制によって進め方をまったく変えなければならない。この経験は、自治体を顧客にする企業から見ると、そのまま実務能力です。
売る側からいちばん見えないのが、この規模ごとの違いです。同じ提案が通る自治体と通らない自治体があり、その理由が分からない。県の立場で全域を回ってきた方は、この地図を頭の中に持っています。
神奈川で、どの経験が値になるか
1. 研究開発と産業支援
企業の研究開発拠点が集中する県として、県庁には産業支援と産学連携の実務があります。補助制度の設計、実証事業の調整、研究機関と企業の橋渡し。ディープテックや新規事業の領域では、この経験が直接読まれます。
2. 港湾・臨海部とエネルギー
京浜臨海部の産業集積、港湾、エネルギー関連施設。大型の立地に伴う地元調整、安全に関する協議、環境の手続き。脱炭素の投資が進むいま、規制の厳しい業界で行政側の考え方を知る人材の需要は増えています。
3. 都市の課題と地方の課題が同居している
人口が集中する地域と、減少が進む地域が同じ県内にあります。都市計画と施設の再編、その両方の文脈を理解していることになります。デベロッパー、まちづくり、インフラ運営の企業から見れば、これは貴重です。
4. 内部管理部門の経験
人事、財政、総務、会計。県庁の内部管理部門の仕事は、民間企業のコーポレート部門とほぼ同じ構造です。制度の設計と運用、全部署の調整、決裁と記録。転居を伴わずに職種を変えたい場合、この方向は現実的な選択肢になります。
都内の求人を、勤務地で切らない
神奈川県は都内への通勤圏にあり、転居せずに都内の求人に応募できます。判断の誤りは、通勤時間だけで線引きしてしまうことです。
近年はリモート可、週数日出社といった勤務形態の求人が増えています。とくに自治体を顧客にする企業は、担当エリアに出向くことが仕事なので、本社への出社頻度が低い場合があります。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態を確認する。勤務地から検索すると、県内では出会えない職種が最初から視界に入りません。
職務経歴書に、県庁の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
相手にした自治体の数と規模の幅を書く
神奈川県庁の方がいちばん書き落とすのがここです。「市町村との連絡調整」ではなく、何団体を担当し、政令市と町村の違いをどう扱い分けたかを書いてください。複数顧客を持つアカウント業務の経験として読まれます。
異動歴を「立ち上げの回数」に変える
数年ごとの異動を「専門性がない」と書くのは、自分から評価を下げる書き方です。異なる制度領域を短期間で立ち上げてきた経験は、民間ではキャッチアップの速さとして読まれます。編年式で並べ、それぞれの配属で最初の数か月に何を習得したかを1行添えてください。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。県庁でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、電気主任技術者。事務職では資格より実績が先ですが、技術職では資格が応募の入口になる場面があります。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。
港湾・臨海部の実務は特殊な資産になる
港湾施設、護岸、埋立地の管理。この領域を扱える技術者は限られており、民間側でも慢性的に不足しています。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。都道府県は年度開始前30日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 神奈川県の一般行政職はラスパイレス指数100.0、平均給与月額435,215円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 地域手当は国の指定基準約12.21%に対し、実際の支給割合は約14.24%。首都圏では東京都だけが基準を下回っています
- 地域手当は民間にない概念です。源泉徴収票の支払金額と、求人票の想定年収で比べてください
- 政令市が3つある県なので、広域と調整の比重が大きく、規模の違う相手を同時に扱っていることになります
- 経験が効く方向は、研究開発と産業支援/港湾・臨海部とエネルギー/都市と地方の両方の課題/内部管理部門の4つです
- 市町村支援は「連絡調整」ではなく、何団体を担当し、政令市と町村の違いをどう扱い分けたかで書いてください
よくある質問
政令市が多いぶん、県の仕事は評価されにくいのではないですか
そうではありません。むしろ、政令市を含む複数の自治体をまたぐ調整を担ってきたことは、他県では積みにくい経験です。自治体を顧客にする企業にとって、大都市と小規模団体で意思決定の進み方がどう違うかは最も分かりにくい部分です。ここを説明できることは、そのまま実務能力になります。書くときは「県の仕事」ではなく、担当した団体の数と規模の幅を具体的に書いてください。
都内の企業に転職すると、通勤が現実的ではないのですが
毎日通う前提で考えないでください。リモート可、週数日出社の求人が増えています。とくに自治体を顧客にする企業は、担当エリアに出向くことが仕事なので、本社への出社頻度が低い場合があります。募集要項の勤務形態の記載まで確認してから判断してください。
県庁と横浜市役所では、転職のしやすさが違いますか
経験の翻訳という点では、大きな違いはありません。どちらも制度を回す側の経験です。強いて言えば、県は広域と調整の仕事が多く、市は住民と事業者を直接相手にする仕事が多いため、「誰を相手にしてきたか」の説明の仕方が変わります。自治体向けの事業を持つ企業では県の経験が、住民接点のあるサービス業では市の経験が噛み合いやすい傾向があります。