自治体別 / 都道府県
埼玉県職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
埼玉県庁で働いてきた方の転職は、地方県庁とは条件がまったく違います。都内の求人に、転居せずに応募できるからです。
その一方で、選択肢が広いことが判断を難しくもします。県内で探すのか、都内まで含めるのか。そして多くの方が、その線引きを通勤時間だけで決めてしまい、職種の選択肢を狭めています。
この記事では、まず公表されている数字で自分の位置を確認し、そのうえで県庁の経験が民間のどの言葉に置き換わるのかを整理します。
埼玉県庁の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、埼玉県の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 埼玉県 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 100.3 |
| 平均年齢 | 41.8歳 |
| 平均給料月額 | 319,400円 |
| 諸手当月額 | 92,168円 |
| 平均給与月額 | 411,568円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 367,419円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 8.3% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 約10.51% |
地域手当が、国の指定基準を2ポイント以上上回っている
読みどころはここです。国が指定する基準は8.3%なのに、実際の支給割合は約10.51%。2.2ポイントほど上回っています。
首都圏で並べると構造が見えます。
| 都県 | 国の指定基準 | 実際の支給割合 |
|---|---|---|
| 東京都 | 約19.63% | 約18.72%(基準を下回る) |
| 神奈川県 | 約12.21% | 約14.24% |
| 千葉県 | 9.2% | 約10.89% |
| 埼玉県 | 8.3% | 約10.51% |
東京都だけが基準を下回り、他の3県は上回っています。地域手当は民間賃金の高い地域に支給される手当で、国の指定基準は市町村単位で決まっていますが、都道府県が独自の判断で支給割合を設定する余地があります。
なお、上の平均は自分の給与ではありません。全年齢の平均です。民間の求人票と比べるときは、自分の源泉徴収票の支払金額を使ってください。
県庁の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 県庁での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 市町村への助言・支援・調整 | パートナー支援、カスタマーサクセス |
| 企業誘致・立地支援 | 事業開発、用地開発、アライアンス |
| 都市計画・住宅政策 | 都市開発、不動産企画 |
| 交通・物流の計画と補助 | モビリティ事業企画、物流ネットワーク設計 |
| 農林部門の産地形成・6次産業化 | 事業開発、産地開発 |
| 県土整備の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 保健医療・福祉の許認可・指導 | 規制対応、コンプライアンス |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
埼玉で、どの経験が値になるか
1. 市町村を相手にしてきた経験の密度
埼玉県は市町村の数が多く、しかも規模の幅が大きい県です。政令指定都市、中核市、施行時特例市から、人口数千人の町村まで並んでいます。
つまり、市町村支援の経験の密度が、他県より濃いということです。担当が1人で何役も兼ねている町村と、専門部署がある政令市とでは、同じ制度でも進め方がまったく違う。この幅を実際に相手にしてきた経験は、自治体を顧客にする企業から見て、そのまま実務能力です。
売る側からいちばん見えないのが、この規模ごとの違いです。同じ提案が通る自治体と通らない自治体があり、その理由が分からない。県の立場で全域を回ってきた方は、この地図を頭の中に持っています。
2. 都市の課題を扱った経験
人口が集中する地域と、減少が進む地域が同じ県内に併存しています。都市計画、住宅政策、交通の再編、施設の老朽化。どちらの課題も扱ってきたことになります。
デベロッパー、まちづくり、インフラ運営の企業から見れば、両方の文脈を理解している人材は貴重です。
3. 物流と近郊型の産業
高速道路網の結節点として物流施設の立地が進み、近郊農業と製造業も集積しています。用地、環境影響、地元調整、他の管理者との協議。物流施設の開発が全国で進むなか、立地に伴う行政手続きを知っている人は事業者側にほとんどいません。
4. 内部管理部門の経験
人事、財政、総務、会計。県庁の内部管理部門の仕事は、民間企業のコーポレート部門とほぼ同じ構造です。制度の設計と運用、全部署の調整、決裁と記録。転居を伴わずに職種を変えたい場合、この方向は現実的な選択肢になります。
とくに人事課で定員管理や給与制度を扱った経験は、規制の多い業界の人事制度企画と噛み合います。動かせる余地が小さい枠の中で配分を組み直してきた経験は、民間の人事が最も苦労するところです。
都内の求人を、勤務地で切らない
埼玉県は都内への通勤圏にあり、転居せずに都内の求人に応募できます。ここでの判断の誤りは、通勤時間だけで線引きしてしまうことです。
近年はリモート可、週数日出社といった勤務形態の求人が増えています。とくに自治体を顧客にする企業は、担当エリアに出向くことが仕事なので、本社への出社頻度が低い場合があります。
募集要項の「勤務地」欄だけでなく、勤務形態の記載まで確認してください。順序としては、まず職種で絞り、そのあとに勤務形態を確認する。勤務地から検索すると、県内では出会えない職種が最初から視界に入りません。
職務経歴書に、県庁の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
相手にした市町村の数と幅を書く
埼玉県庁の方がいちばん書き落とすのがここです。「市町村との連絡調整」ではなく、何団体を担当し、規模の違いをどう扱い分けたかを書いてください。複数顧客を持つアカウント業務の経験として読まれます。
異動歴を「立ち上げの回数」に変える
数年ごとの異動を「専門性がない」と書くのは、自分から評価を下げる書き方です。異なる制度領域を短期間で立ち上げてきた経験は、民間ではキャッチアップの速さとして読まれます。編年式で並べ、それぞれの配属で最初の数か月に何を習得したかを1行添えてください。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。県庁でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、電気主任技術者。事務職では資格より実績が先ですが、技術職では資格が応募の入口になる場面があります。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。
首都圏の案件を担当できる
埼玉からであれば、都内の建設コンサルタントに勤めて首都圏の案件を担当する選択も現実的です。扱う案件の規模が変わるため、経験の積み方そのものが変わります。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。都道府県は年度開始前30日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 埼玉県の一般行政職はラスパイレス指数100.3、平均給与月額411,568円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 地域手当は国の指定基準8.3%に対し、実際の支給割合は約10.51%。首都圏では東京都だけが基準を下回っています
- 地域手当は民間にない概念です。源泉徴収票の支払金額と、求人票の想定年収で比べてください
- 経験が効く方向は、市町村支援の密度/都市の課題/物流と近郊型の産業/内部管理部門の4つです
- 市町村支援は「連絡調整」ではなく、何団体を担当し、規模の違いをどう扱い分けたかで書いてください
- 勤務地から検索しない。職種で絞ってから勤務形態を確認する順序に変えてください
- 首都圏に位置することは、急がなくてよい理由にもなります。残る判断にも理があります
よくある質問
都内の企業に転職すると、通勤が現実的ではないのですが
毎日通う前提で考えないでください。リモート可、週数日出社の求人が増えています。とくに自治体を顧客にする企業は、担当エリアに出向くことが仕事なので、本社への出社頻度が低い場合があります。募集要項の勤務形態の記載まで確認してから判断してください。通えないと判断するのは、その後で十分です。
地域手当がなくなると、実質的に給与が下がりませんか
下がる場合はあります。ただし民間企業の給与体系には地域手当という区分がなく、勤務地の物価や相場は基本給や各種手当に織り込まれています。したがって「地域手当の分だけ減る」という比べ方自体が成り立ちません。現在の源泉徴収票の支払金額を基準にして、求人票の想定年収と比べてください。首都圏勤務の求人であれば、相場はその前提で組まれています。
県庁とさいたま市役所では、転職のしやすさが違いますか
経験の翻訳という点では、大きな違いはありません。どちらも制度を回す側の経験です。強いて言えば、県は市町村を相手にする仕事が多く、市は住民と事業者を直接相手にする仕事が多いため、「誰を相手にしてきたか」の説明の仕方が変わります。自治体向けの事業を持つ企業では県の経験が、住民接点のあるサービス業では市の経験が噛み合いやすい傾向があります。