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自治体別 / 都道府県

東京都職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方

東京都職員の転職は、他の自治体とは条件が根本的に違います。転居を伴わずに、国内で最も求人の多い市場にアクセスできるからです。

そのぶん、判断は難しくなります。選択肢が多すぎて、何を基準に絞ればよいのか分からない。そして多くの方が、現在の額面を基準に絞り込んでしまい、比べ方を間違えています。

この記事では、まず公表されている数字を正しく読み解き、そのうえで都庁の経験が民間のどの言葉に置き換わるのかを整理します。

東京都の給与水準を、数字で確認する

総務省の調査によると、東京都の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。

項目東京都
ラスパイレス指数100.5
平均年齢42.5歳
平均給料月額318,100円
諸手当月額140,450円
平均給与月額458,550円
平均給与月額(国ベース)400,180円
地域手当(国の指定基準)約19.63%
地域手当(実際の支給割合)約18.72%

地域手当が、国の指定基準を「下回って」いる

読みどころはここです。国が指定する基準は約19.63%なのに、実際の支給割合は約18.72%。約0.9ポイント下回っています。

首都圏で並べると、この特異さが分かります。

都県国の指定基準実際の支給割合差
東京都約19.63%約18.72%下回る
神奈川県約12.21%約14.24%上回る
千葉県9.2%約10.89%上回る
埼玉県8.3%約10.51%上回る

首都圏で基準を下回っているのは東京都だけです。地域手当は民間賃金の高い地域に支給される手当で、国の指定基準は市町村単位で決まっていますが、都道府県が独自の判断で支給割合を設定する余地があります。

なお、平均給料月額318,100円は、埼玉県319,400円とほぼ同じ水準です。平均給与月額458,550円という額を作っているのは、諸手当140,450円のほうだということになります。

なお、上の平均は自分の給与ではありません。全年齢の平均です。

都庁の経験は、民間で何と呼ばれるか

都庁での仕事求人票での言い方
予算の要求・査定、財政計画予実管理、投資判断、経営企画
大規模事業の進行管理プロジェクトマネジメント、PMO
都市計画・再開発の協議都市開発、不動産企画
交通・インフラの計画と補助インフラ企画、モビリティ事業企画
産業労働の企業支援・スタートアップ支援事業開発、アクセラレーション
環境・エネルギー政策サステナビリティ、GX事業企画
福祉保健の許認可・指導規制対応、コンプライアンス
区市町村への助言・調整パートナー支援、カスタマーサクセス
内部管理(人事・財務・総務)コーポレート、管理部門
議会対応、条例・規則の改正渉外、法務、規程整備

部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。

都庁の経験で、外での値段がつきやすいもの

1. 規模そのものが説明になる

都の事業は、規模の面で他の自治体と桁が違います。予算の単位、関係する事業者の数、影響を受ける住民の数。この規模を扱った経験は、それ自体が説明になります。

書くときのこつは、金額を前面に出さないことです。扱った金額は組織の規模で決まるもので、自分の裁量とは比例しません。関係者の数、同時に動いていた案件の数、判断が割れたときの決着のさせ方で書いてください。

2. 制度を「作る側」にいた経験

都は、国の制度をそのまま運用するだけでなく、独自の制度を設計する立場にあります。条例、要綱、補助制度。制度の枠組みそのものを作った経験は、規制の多い業界で新規事業を立ち上げる企業から見ると、非常に読みやすい経験です。

3. 大都市制度と区市町村との関係

都区制度は他に例のない仕組みです。都と特別区の役割分担、財政調整、区市町村との協議。この構造を実務として理解している人は、都庁の外にほとんどいません。

自治体を顧客にする企業にとって、東京の意思決定構造は最も分かりにくい部分です。ここを説明できることは、そのまま実務能力になります。

4. 産業政策とスタートアップ支援

企業支援、スタートアップの育成、産学連携。行政の立場で支援する側にいた経験は、ベンチャーキャピタル、アクセラレーター、事業会社の新規事業部門から見て、公的資金や制度の使い方を知る人材として読まれます。

補助金や助成の審査を担当していた方は、多数の事業計画を短期間で読み比べてきたことになります。どこに無理があるか、どの数字が根拠を欠いているか。この目は、投資や事業評価の職務でそのまま使えます。

行政が相手の求人を見てみる

選択肢が多いときの、絞り方

都庁の方の相談でいちばん多いのが、「どこから見ればよいか分からない」です。手順を3つに分けてください。

1. 職種を先に決める

勤務地は絞る必要がありません(都内であれば全部が候補です)。したがって、先に絞るべきは職種です。いまの経験がそのまま効く職種か、経験を持ち替える職種か。この2つは、準備の量がまったく違います。

2. 業界を2〜3に絞る

同じ職種でも、業界によって評価される経験が変わります。自治体を顧客にする企業、規制の多い業界、まちづくり・不動産。行政経験が効く業界を2〜3に絞ってから、企業を見てください。

3. 比べるのは源泉徴収票

現在の額面を基準にする場合、手当の内訳ではなく、源泉徴収票の支払金額を使ってください。地域手当は民間にはない区分です。

職務経歴書に、都庁の仕事をどう落とすか

制度名ではなく、判断したことを書く

「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。

規模は「金額」ではなく「関係者の数」で書く

前述のとおりです。都の予算規模を書いても、自分の裁量とは読まれません。

異動歴を「立ち上げの回数」に変える

数年ごとの異動を「専門性がない」と書くのは、自分から評価を下げる書き方です。異なる制度領域を短期間で立ち上げてきた経験は、民間ではキャッチアップの速さとして読まれます。編年式で並べ、それぞれの配属で最初の数か月に何を習得したかを1行添えてください。

技術職の場合は、探し方が変わる

発注者側の経験そのものが職種になる

「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。都庁でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。

資格が入口で効く

技術士、施工管理技士、電気主任技術者。事務職では資格より実績が先ですが、技術職では資格が応募の入口になる場面があります。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。

大規模インフラの実務は希少性が高い

地下構造物、大規模改良、輻輳する事業者との協議。この規模の案件を発注者側で扱った技術者は限られており、民間側でも慢性的に不足しています。

面接で必ず詰められる2つのこと

「意思決定のスピードに耐えられるか」

行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。

「数字への意識があるか」

「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。

在職中に進めるときの注意点

服務上の扱いを先に確かめる

在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。

面接の日程は、議会日程から逆算する

地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。都道府県は年度開始前30日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。

在職中に決める

公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

よくある質問

地域手当がなくなると、実質的に給与が下がりませんか

下がる場合はあります。ただし民間企業の給与体系には地域手当という区分がなく、勤務地の物価や相場は基本給や各種手当に織り込まれています。したがって「地域手当の分だけ減る」という比べ方自体が成り立ちません。現在の源泉徴収票の支払金額を基準にして、求人票の想定年収と比べてください。都内勤務の求人であれば、相場はその前提で組まれています。

都庁と特別区では、転職のしやすさが違いますか

経験の翻訳という点では、大きな違いはありません。どちらも制度を回す側の経験です。強いて言えば、都は広域と制度設計の仕事が多く、区は住民と事業者を直接相手にする仕事が多いため、「誰を相手にしてきたか」の説明の仕方が変わります。自治体向けの事業を持つ企業では都の経験が、住民接点のあるサービス業では区の経験が噛み合いやすい傾向があります。

選択肢が多すぎて絞れません

勤務地で絞れない環境なので、職種から絞ってください。そのうえで、行政経験が効く業界を2〜3に限定します。自治体を顧客にする企業、規制の多い業界、まちづくり・不動産あたりが典型です。この2段階を踏むだけで、見るべき求人は現実的な数まで減ります。最初から企業名で探すと、いつまでも絞れません。

出典

  1. 令和6年 給与・定員等の調査結果等(ラスパイレス指数及び平均年齢・平均給与月額等)|総務省
  2. 地方自治法 第211条(予算の調製及び議決)/第233条(決算)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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