制度とお金 / 退職の手続き
引き継ぎ書の作り方
退職時の引き継ぎ書は、仕事の説明を長く書くより、次の担当者が期限と判断事項、資料の所在を確認できる形にします。後任が未定でも、業務一覧や進行中の案件の整理は進められます。まず所属の規程と様式を確認し、共有先と担当の割当てを所属長に相談してください。
本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。自治体職員の退職時を中心とする一般的な説明です。引継ぎの期限、様式、確認者、保存先は本人の所属規程に従います。本文の施設点検の例は記入方法を示す架空案件で、実在の自治体の事務や内部情報ではありません。
最初に所属の様式と確認者を決める
引継ぎに関する定めは、服務規程、事務引継規程、文書管理規程などに置かれている場合があります。指定様式の有無だけでなく、誰へ引き継ぐか、所属長などの確認が必要か、何を記録として保存するかを確かめます。一般向けのひな形が、所属の様式に優先するわけではありません。
大東市職員服務規程第24条は、退職者の事務引継ぎに第22条第2項を準用しています。そこには後任者または上司の指定する者への引継ぎに関する規定があります。同規程第2条の対象職員についての例であり、他の自治体に同じ期限や対象があるという意味ではありません。本人の実際の日程は所属に確認します。
後任が決まらない場合も、渡す相手を自分で推測しません。所属長に暫定の受取担当や、案件ごとの担当割を決めてもらいます。資料を共有フォルダへ置くことと、担当者が内容を確認して引き受けたことは別です。保存と説明、担当の確認を一つずつ進めます。
全体の一覧を先に作る
最初の表には、業務名、目的と根拠、実施時期、直近の期限、現在の状態、次の行動、引継先を置きます。すべての手順を同じ表へ書き込まず、詳しい案件票や既存のマニュアルへつなぐ索引として使います。読み手が最初に見る資料を明確にすると、資料を探す順番が分かります。
年度ごとの定例業務だけでなく、照会への回答、契約の更新、報告、支払、システム権限の申請なども一覧に含めます。本人が作業をしていない待機中の案件も、相手の回答期限や次の確認日があるなら記載します。手が止まっていることと、完了していることを区別してください。
優先順位は資料の完成度だけで決めません。期限が近いもの、安全や住民対応に関係するもの、決裁や外部への回答が必要なものを先に所属長と確認します。期限が決まっていない案件にも、次に状態を見直す日を置くと、未処理のまま忘れることを避けやすくなります。
案件票は事実と判断を分けて書く
案件ごとの資料には、現在地と次の行動を書きます。「調整中」とだけ書かず、誰から何の回答を待ち、回答がなければいつ誰が確認するかを明らかにします。結論が出ていない事項は未決定と記載し、本人の見通しを正式決定のように残さないようにします。
判断の根拠は、適用した規程、決裁文書、照会回答など、所属で参照できる資料につなげます。過去の担当者の記憶だけに基づく説明なら、その点を明示して確認先を記載します。「前も同じだった」だけを、今後の処理を決める根拠にしないことが大切です。
例外案件は、何が標準と違うのか、現時点で決まっていること、決める必要があること、判断する権限を持つ人を分けます。後任へ判断を丸投げすることとも、退職前に権限外の判断を済ませてしまうこととも異なります。未解決事項を組織で把握できる状態にします。
架空の施設点検案件のひな形
次の例は、書く項目を示すための架空の施設点検です。日付、施設、担当表記は説明用であり、実在の制度の期限ではありません。実務では所属様式に合わせ、実際の根拠資料と権限に置き換えてください。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 業務名・目的 | 架空施設Aの年度内点検結果の取りまとめ |
| 現在の状態 | 点検報告案を受領。写真台帳との照合が未完了 |
| 直近の期限 | 例として3月18日に内部確認。正式な期限は担当表で照合 |
| 次の行動 | 記載漏れを一覧化し、確認担当へ照会案を渡す |
| 未決定の事項 | 再点検の必要性。担当者だけでは確定せず所属長へ確認 |
| 根拠・関連資料 | 所属で管理する実施要領、決裁済み文書、報告案の保存先 |
| 引継先 | 所属長が指定する受取担当。未定なら未定と記載 |
| 確認記録 | 説明日、受取担当、残る質問、次の確認日 |
この例で大切なのは、点検済みという事実と、再点検が必要かという未決定事項を分けることです。「問題なし」と書く前に、確認が完了した範囲を限定します。施設に関する安全上の情報を含む実案件では、共有範囲と資料へのアクセス権も確認してください。
一覧表には個別案件の機微な情報を増やさず、必要な担当者が閲覧できる原資料の所在を示す方法を検討します。正式な記録を何度も複製すると、どれが最新か分からなくなることがあります。正本や確定版の管理方法は所属の文書管理ルールに従います。
業務を整理すると、調整、進捗管理、資料作成などの経験も言葉にできます。行政に関わる求人の仕事内容を確認する際は、内部資料を持ち出さず、公開できる職務の範囲で比較してください。
保存先は後任が実際に開けるか確かめる
資料の所在は、共有フォルダの名称だけでなく、文書分類や管理番号など、所属で使う方法に合わせて示します。個人用の作業領域、退職時に削除されるアカウント、本人だけに閲覧権がある場所へ置いたままにしないようにします。
説明の場で受取担当が実際に資料へ到達できるか確認します。権限の申請が必要な場合は、所管の情報システム担当などへ依頼します。パスワードを引継ぎ書に書いて共有したり、自分のアカウントを後任に使わせたりする方法で代用しないでください。
公文書等の管理に関する法律第1条は公文書等の適正な管理などを目的とし、第34条は地方公共団体に文書管理に必要な施策の策定・実施に努めることを定めています。国の文書管理の細部がそのまま全自治体へ適用されるという意味ではありません。本人の自治体の文書管理規程などに従います。
退職に合わせて資料を私物端末へ移し、後から質問に答えられるようにする対応はしません。私用メールへの転送、個人のクラウドへの保存、私物媒体への複製、許可されていない外部サービスへの入力も避けます。職務経歴書を作るためでも、内部資料をそのまま持ち出してよいわけではありません。
個人情報と秘密は共有する相手を限定する
地方公務員法第34条の秘密を守る義務は退職後も続きます。引継ぎのためであっても、職務上知った秘密を関係のない人へ広げてよいわけではありません。必要な情報を必要な権限のある相手へ、所属が認める方法で渡します。
住民の個別情報や職員の健康情報などは、業務一覧へむやみに書き込まず、所管の管理方法に従います。後任が複数人なら、案件ごとに必要な情報と担当を確認してください。全員へ同じ資料を一斉送信することが適切かも判断が必要です。
退職後の照会に備える場合は、所属が認める連絡経路と対応範囲を退職前に確認します。元職員が私的に原資料を保管することを前提にしません。退職後に不足が分かった場合も、現在の担当者が組織内の記録を確認する形を基本にし、秘密情報を私用の連絡へ流さないようにします。
説明と確認を終えて未了事項を残す
資料を渡したら、受取担当に、直近の期限、次にすること、判断が必要な事項を確認してもらいます。質問された内容は、口頭回答だけで終えず、所属の資料に必要な範囲で追記します。更新した日と、どの部分を更新したかも分かるようにします。
後任が全業務を一度に覚えることを完了条件にせず、資料を参照し、適切な相手へ確認できる状態を目指します。未了の業務は一覧に残し、誰が引き受け、どの期限で進めるかを所属長と確認します。本人が全部終えることと、業務を継続できるように渡すことは異なります。
引継ぎの時間が確保しにくい場合は、優先順位と説明の時間を所属長へ相談します。地方公務員法第35条の服務を踏まえ、勤務中の業務として適切に調整し、休暇中や退職後に私的な作業で埋めることを前提にしないようにします。
経験の言い換えや応募書類の整理は、相談窓口で公開できる職務内容をもとに話せます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担)。
よくある質問
後任が決まるまで書き始められませんか
業務一覧、期限、未決定事項、資料所在は先に整理できます。受取担当や案件の割当ては所属長へ確認します。資料を置くだけで済ませず、誰が確認するかを決めてください。
引き継ぎ書は何枚あれば十分ですか
全国共通の適正枚数はありません。所属様式と業務内容に合わせ、一覧から必要な原資料へ到達できる形にします。枚数よりも、期限、次の行動、判断者、保存先が分かることを重視します。
退職後の質問に備えて資料を手元に残せますか
私用端末や個人クラウドへ内部資料を持ち出す方法は取りません。所属の保存先に必要な資料を残し、退職後の連絡方法と対応範囲は事前に確認します。秘密を守る義務は退職後も続きます。
在職中に経験を整理する段階でも、LINEで転職活動の進め方を短く相談できます。内部資料を送らず、公開できる範囲の説明で構いません。