制度とお金 / 退職の手続き
慰留されたときの向き合い方
退職の意向を伝えて慰留されたときは、その場で残留か退職かの結論を出す前に、提案の内容と自分が求めている条件を整理できます。声を掛けられたことへの受け止め方と、仕事や生活の選択は分けて考えて構いません。異動や負担軽減の提案があれば、決定の権限、実施時期、確定している範囲を確かめます。
本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。一般職の公務員の自己都合退職に関する一般的な説明です。辞職の承認、提出済み書類の変更・撤回、勤務上の制度は所属の人事担当へ確認してください。実際の個別面談事例ではなく、判断項目と説明の例を示します。
慰留の話と辞職手続きの進捗を分ける
上司から残ってほしいと言われたことと、退職願の提出や承認の状態は別です。まだ意向を相談している段階なのか、正式な書面を出した後なのかを確認します。話し合いが続いているから手続きも自動的に止まる、と考えないようにします。
国の人事院規則八―一二第51条は、書面による辞職の申出について、任命権者は特に支障がない限り承認する旨を定めています。地方公務員は所属の服務規程や任免規則を確認します。地方公務員法第6条の任命権者と、普段相談する直属の上司が同じとは限りません。
たとえば大東市職員服務規程第23条は、同規程の対象職員について退職願の提出と許可の手続きを定め、許可までの勤務にも言及しています。これは同市の例であり、全国で同じ様式や期限になるという意味ではありません。提出済みなら、人事担当へ現在の処理状況を確認します。
慰留の返答を待つ間も、在職中の服務や休暇の申請は別に必要です。地方公務員法第35条には職務専念義務が定められています。退職を決めている場合も、残留を検討する場合も、独断で勤務を終えず、必要な手続きを進めてください。
残る条件を仕事内容と生活に分ける
最初に、自分が変えたい条件を具体的にします。仕事の分野、担当範囲、勤務時間、勤務地、健康上の負担、家族との生活、学びたいことなど、理由は一つとは限りません。上司への説明を長くするためではなく、提案を比較できるようにする作業です。
そのうえで、必須の条件と、望ましいが調整できる条件を分けます。「今の職場が合わない」だけでは、異動すれば解決する問題なのか、働く領域自体を変えたいのかが曖昧になります。変えたい事柄を、誰が、どんな手段で変えられるかまで確かめます。
たとえば仕事内容が理由なら、異動先の名称だけでなく、実際の担当業務や職責が希望に合うかを確認します。生活時間が理由なら、異動の可能性だけでなく、勤務制度や配慮の内容を聞きます。これは判断の例であり、所属が特定の異動や配慮を必ず実施できるという意味ではありません。
提案を受けたときは、退職の意思を否定されたと受け取る前に、何を提案されているかを言葉にして確かめることができます。他方、事情をすべて話し直す義務があると感じる必要はありません。説明する範囲と、健康・家庭などの情報を伝える適切な窓口を考えてください。
異動や負担軽減は確定している範囲を聞く
「異動を考える」「担当を見直す」といった提案は、検討の意思なのか、決定済みの内容なのかを確認します。相手が誠実に話していても、その人だけでは決定できないことがあります。誰の確認が必要で、いつ分かるかを聞くと、本人の予定と比較できます。
確認表には、提案内容、担当する窓口、決定に必要な手続き、実施時期、未確定の点、次の確認日を置きます。公式な決定文書があるか、口頭での検討段階かも区別します。書面を求めればすべて確約されるわけではないため、記録の有無と実現可能性も分けて読みます。
条件が将来の人員配置や予算に関係する場合は、現時点で確定できない部分が残ることもあります。その不確実さを自分が受け入れられるかが判断材料です。提案を受けた以上は待たなければならない、あるいは未確定なら無意味、と一律には決めません。
返答する時期は、所属の確認日程、退職手続き、転職先の回答期限を並べて相談します。転職先への回答期限を守るために、所属の未確定な提案を確定事項として扱わないようにします。どちらの組織にも、自分が分かっていることと確認中のことを分けて伝えます。
異動で満たせる希望と、別の仕事で実現したい希望を比べるために、行政に関わる求人の仕事内容を確認することもできます。求人の内容と現職の提案は、同じ項目で見比べます。
返答は感謝と判断を分けて伝える
慰留を受けて検討する場合の説明例は、「提案していただいた担当変更について、実施時期と決定の見込みを確認してから考えたいです」です。実際の事情に合わせて言い換えてください。結論を保留するなら、何を確認して、いつ返答を相談するかまで示します。
退職を進めると決めた場合の例は、「お話をいただいたことは受け止めています。そのうえで、仕事と生活の条件を考え、退職の希望は変わりません。必要な手続きと引継ぎを確認したいです」です。相手の提案への応答と、自分の結論を分けると、話し合いを具体的な事務へ移しやすくなります。
職場への評価を繰り返すより、希望日、提出状況、引継ぎ計画を明確にします。反対に、まだ結論が出ていないのに、話を終えるためだけに残留を約束することも避けます。言葉にした内容と、正式な書面の状態が食い違わないようにしてください。
人手不足や後任未定という事情が示された場合も、自分だけで解決できることと、組織が決めることを分けます。案件の一覧化や説明資料の作成は本人が進められますが、後任の配置を本人が決定するわけではありません。引継ぎの相手と優先順位を所属長に確認します。
残ると決めたら提出済み書類を確認する
退職願をまだ出していない場合は、意向相談から結論が変わったことを適切な相手へ伝えます。すでに提出している場合は、変更・撤回の扱いを人事担当へ確認します。口頭で上司と合意したから書類も取り消された、と考えないことが大切です。
承認前なら必ず自由に撤回できる、退職日前ならいつでも元に戻せる、といった一般化はしません。提出の経緯、承認や発令の状況、本人の任用により確認が必要です。すでに法的な争いがある場合は、適切な専門家へ相談してください。
転職先に入社の承諾をしている場合には、その関係の確認も必要です。現職に残ることと、入社先との手続きが自動的に解消することは別です。相手への連絡や書類の取扱いを放置せず、個別の事情に応じて確認します。
残留後に実施される変更については、開始時期、担当範囲、相談先を確認します。決まった内容と今後検討する内容を残しておくと、話が違うと感じたときに、何が未実施なのかを整理できます。所属文書や機密情報を私的に持ち出す方法で記録を残さないようにします。
自分の希望を言葉にする段階なら、相談窓口で経験と働き方を整理できます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担)。所属の人事判断や辞職撤回の法的判断を代行するものではありません。
健康の問題は返答の交渉だけで抱えない
体調のために勤務継続が難しい場合は、慰留への返答だけで解決しようとせず、医療機関や所属の健康相談の窓口を利用できます。休暇、休職、業務上の配慮などの可否は、本人の制度と状態に応じて確認します。制度を利用できることと退職するかどうかの判断は分けて考えます。
厚生労働省の「こころの耳」には、公務員向けの相談窓口案内があります。国家公務員と地方公務員で窓口の案内が分かれており、地方職員については人事委員会・公平委員会や人事担当部局など、自治体ごとの相談窓口を確認するよう案内されています。相談の対象と方法を確かめてください。
話し合いが長引いて体調に影響する場合は、人事担当など別の窓口を交えることや、確認事項を文書で整理してやり取りする方法を相談できます。長く説明し続けることだけが誠実な対応ではありません。必要な情報を適切な相手に届けることを優先します。
よくある質問
異動を約束されたら残るべきですか
誰が決定でき、いつ実施され、どこまで確定しているかを確認して判断します。異動先の名称だけでなく、仕事内容や生活の条件が希望に合うかも確かめます。残ることも退職を進めることも、本人の選択です。
慰留されている間は退職手続きが止まりますか
話し合いだけで自動的に止まるとは考えません。提出済み書類、承認や発令の状況、追加の手続きの有無を人事担当へ確認します。希望日や意思が変わった場合も正式な扱いを確かめてください。
残ると上司に伝えれば退職願は取り消せますか
提出や承認の状態によって確認が必要です。口頭の会話だけで撤回が完了したと判断せず、人事担当に必要な書類と手続きを確認してください。入社を承諾した転職先がある場合は、その相手との手続きも別途確認します。
情報収集の段階から、LINEで働き方の整理を短く相談することもできます。