選考対策 / 求人の探し方
有価証券報告書の読み方|転職者が見るべき箇所
有価証券報告書は、分量が多い書類です。
全部を読む必要はありません。
転職を検討する立場で見る箇所は、限られています。
この記事では、どこを、どの順で見るかを扱います。
事業年度ごとに提出される書類です
金融商品取引法第24条第1項です。
> 有価証券の発行者である会社は(略)事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、内国会社にあつては当該事業年度経過後三月以内(略)に、内閣総理大臣に提出しなければならない。
「事業の内容に関する重要な事項」が、記載の対象に含まれています。
財務の数字だけの書類ではないということです。
なお、会社法第440条の計算書類の公告は、有価証券報告書を提出する会社には適用されません。
同法第440条第4項に定めがあります。
つまり、上場している会社などは、こちらを見ることになります。
決算公告の見方は応募前の企業調査で見るべき資料に整理しています。
どこで見るか
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 金融庁の電子開示のシステム(EDINET) | 会社名で検索できます |
| 会社のウェブサイト | 投資家向けの情報のページ |
どちらも、誰でも見られます。
登録は不要です。
転職者が見る4か所
| 順 | 項目 | 分かること |
|---|---|---|
| 1 | 従業員の状況 | 人数、平均年齢、平均勤続年数 |
| 2 | 事業等のリスク | 会社が認識している課題 |
| 3 | セグメントの情報 | 事業ごとの規模 |
| 4 | 設備の状況 | 拠点の所在地 |
この4つで足ります。
順に見ていきます。
1——従業員の状況
| 記載 | 見るところ |
|---|---|
| 従業員数 | 規模。セグメント別の内訳があることがあります |
| 平均年齢 | 年齢の構成の目安 |
| 平均勤続年数 | 在籍の傾向の目安 |
| 平均年間給与 | 提出会社の単体の平均です |
2行目と3行目です。
平均勤続年数が短い場合、複数の理由が考えられます。
事業の拡大で採用が増えた、設立からの年数が短い、といった理由もあります。
数字だけで判断せず、沿革や従業員数の推移と併せて見てください。
4行目について。
記載があるのは、提出会社の単体の平均です。
職種、年齢の構成、地域によって実際の条件は異なります。
自分に提示される条件とは別のものとして扱ってください。
2——事業等のリスク
ここが、転職者にとって情報量が多い箇所です。
| 記載の例 | 読み取れること |
|---|---|
| 特定の取引先への依存 | 収益の構成 |
| 法令・制度の改正 | 事業が制度に左右されるか |
| 人材の確保 | 採用の状況 |
| 契約の更新 | 受託や指定の期間 |
| 情報の管理 | 扱う情報の性質 |
4行目です。
行政が相手の事業では、契約や指定に期間があります。
更新されない可能性がリスクとして記載されていることがあります。
これは、事業の性質を示すものであって、会社の問題を意味するものではありません。
むしろ、事業の構造が分かる記載です。
2行目について。
制度の改正が事業に影響する会社では、制度を理解している人の需要があります。
自分の経験が使える理由が、ここに書かれていることがあります。
3——セグメントの情報
| 見るところ | 分かること |
|---|---|
| 事業の区分 | どのような事業を持つか |
| 区分ごとの規模 | どれが中心か |
| 区分ごとの推移 | 伸びている区分、縮んでいる区分 |
2行目です。
応募する職種が、どの区分に属するかを確認してください。
中心の事業なのか、これから育てる事業なのかで、状況が変わります。
求人票の仕事内容と突き合わせると、位置づけが見えます。
4——設備の状況
| 見るところ | 分かること |
|---|---|
| 事業所の所在地 | 拠点の一覧 |
| 従業員数の内訳 | 拠点ごとの規模 |
将来の勤務地の候補として見てください。
転勤の範囲を考えるときの材料になります。扱いは転職にともなう転居と単身赴任に整理しています。
読む順序
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 目次で、企業の概況の位置を確認 |
| 2 | 事業の内容を読む |
| 3 | 事業等のリスクを読む |
| 4 | 従業員の状況を見る |
| 5 | セグメントの情報を見る |
| 6 | 設備の状況で拠点を見る |
| 7 | 求人票と突き合わせる |
3を飛ばさないでください。
7について。
求人票の仕事内容と、有価証券報告書の記載が対応しているかを見ます。
対応していれば、募集の位置づけが分かります。
経験の言い換えから相談することもできます。
時間の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 4か所を見る | 30分程度 |
| 全体を通読する | 必要ありません |
| 複数年を比べる | 余裕があれば |
2行目です。
分量が多いため、通読しようとすると止まります。
4か所に絞ってください。
提出していない会社の場合
| 会社の状況 | 見る資料 |
|---|---|
| 有価証券報告書を提出している | 有価証券報告書 |
| 提出していない株式会社 | 決算公告(会社法第440条) |
| どちらも見つからない | 会社のウェブサイト、自治体の公表資料 |
3行目について。
資料が見つからないこと自体が、問題を意味するものではありません。
確認できる範囲で見るという位置づけにしてください。
よくある失敗
1. 財務の数字から読み始める
事業等のリスクが先です。
2. 通読しようとする
4か所で足ります。
3. 平均勤続年数だけで判断する
沿革や推移と併せて見てください。
4. 平均年間給与を、自分の条件と考える
提出会社の単体の平均です。
5. セグメントを見ない
応募先の位置づけが分かりません。
6. 求人票と突き合わせない
募集の位置づけが見えません。
7. 提出していない会社を候補から外す
提出の義務は会社の状況によります。
まとめ
- 金融商品取引法第24条第1項は、事業年度ごとに、経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項を記載した報告書を、事業年度経過後3月以内に提出することを定めています
- 会社法第440条第4項により、有価証券報告書を提出する会社には、決算公告の規定が適用されません
- 見るのは、①従業員の状況 ②事業等のリスク ③セグメントの情報 ④設備の状況の4か所です
- 事業等のリスクから読んでください。会社が認識している課題が文章で書かれています
- 平均年間給与は、提出会社の単体の平均です。自分の条件とは別です
- 通読は不要です。4か所を30分で足ります
- 質問が3つ作れれば十分です
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
よくある質問
どこから探せばよいか分かりません
会社のウェブサイトの、投資家向けの情報のページを見てください。「IR情報」「株主・投資家の皆さまへ」といった名称で置かれています。その中に、「有価証券報告書」または「四半期報告書」の項目があります。見つからない場合、金融庁の電子開示のシステム(EDINET)で会社名から検索できます。どちらも登録は不要です。なお、提出していない会社もあります。その場合は、決算公告(会社法第440条)を探してください。扱いは応募前の企業調査で見るべき資料に整理しています。
事業等のリスクに不安な記載がありました
記載があること自体は、問題を意味しません。この項目は、投資者の判断に影響する可能性のある事項を記載するものです。認識している課題を挙げることが求められているため、多くの会社が同様の記載をしています。見るべきは、内容が自分の応募に関係するかどうかです。たとえば、「特定の官公庁からの受注に依存している」という記載があれば、行政が相手の事業が中心だということです。経験が重なる可能性があるという読み方になります。不安な点があれば、面接で聞いて差し支えありません。「事業等のリスクに挙げておられた◯◯について、現在の取り組みを伺えますか」という聞き方です。
従業員数が少ない会社は、避けたほうがよいですか
規模だけで判断しないでください。行政が相手の事業では、小規模でも特定の分野で長く事業を続けている会社があります。指定管理、発注者支援、制度の運用の支援。分野が限られるぶん、経験が直接重なることがあります。一方、規模が小さいと、担当の範囲が広くなる傾向があります。これを負担と見るか、関われる範囲が広いと見るかは、人によります。判断の目安は、求人票の仕事内容と、自分が担いたい範囲が合うかです。規模ではなく、業務の中身で見てください。なお、制度の整備の状況は、規模によって差が出ることがあります。就業規則の内容は、応募の段階で確認してください。