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部署別 / 下水道課

下水道課の経験は民間で何と呼ばれるか

下水道課の経験を、職務経歴書にどう書けばよいか。ここでつまずく方が多いのは、「下水道」と書いた瞬間に、読む側の想像が「汚水」で止まるからです。

「下水道事業に従事」と書くと、役所で下水の手続きをしていた人に読まれます。実際には、区域の全戸から水を集め、微生物で処理し、基準を満たして川や海に返し、雨水から街を守り、使用料でその全部を回していたわけですが、それが伝わりません。

この記事では、民間での訳語と、中核スキルの分解を並べます。

「遅滞なく排水設備を設置しなければならない」と書かれています

まず、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。下水道法第10条です。

> 公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従つて、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなければならない。

ここが、水道と逆になっています。

水道は、申込みを拒めない側でした。下水道は、相手に接続を義務づけている側です。区域の中の土地は、供用が始まれば、遅滞なく排水設備を付けて、公共下水道に流さなければならない。

つまり、この経歴の方は、「来た人を断らない」のではなく、「区域の全員に来てもらう」という条件で、設備と使用料を回してきたことになります。

そして、第20条は、使用料について「能率的な管理の下における適正な原価をこえないものであること」と定めています。全員をつなぎ、処理して、原価の範囲で回す。この3つが、仕事の骨です。

民間で人を採る側から見ると、これは「区域の全戸を相手に、水処理のプラントと地下の管路を、独立採算で運営してきた人」です。水処理、環境の設備、プラントの運転、インフラの保全——同じ骨の仕事は、民間にいくつもあります。

民間での訳語

行政での言い方民間での言い方
下水道事業の運営公益事業の運営、インフラ事業の運営
処理場の運転管理水処理プラントの運転管理、設備の保全
管きょの維持管理管路の保全、地下インフラの維持管理
管きょのカメラ調査設備の診断、劣化の調査
管更生・改築設備の更新、更新工事の管理
排水設備の確認と検査施工の審査、技術基準の適合の確認
指定工事店の指定協力会社の認定と管理
水洗化の促進、接続の勧奨加入の促進、顧客の獲得
使用料の賦課と徴収請求の管理、債権の管理
放流水質の管理品質管理、環境の測定、法令の遵守
除害施設の指導取引先への技術の指導、受入れの基準の管理
雨水対策・浸水対策リスクの管理、事業の継続計画
ストックマネジメント計画資産の管理、設備の投資の計画
汚泥の処理と有効利用副産物の処理、資源化、廃棄物の管理

この表を職務経歴書にそのまま貼る必要はありません。ただ、自分がやっていたことに、民間で通じる名前が付いていることは、知っておいてください。

中核スキルを5つの工程に分ける

この経歴の中核は、「選べないものを、全部受け入れて、基準まで戻す」ことです。5つの工程に分けます。

工程1:集める

管きょ、マンホール、ポンプ場。区域の全戸から、自然の勾配で流し、必要なところはポンプで上げて、処理場まで運びます。

この工程に固有の制約があります。設備が地下にあって、しかも中を流れているのは、こちらで選べない水だということです。雨の日には、本来入らないはずの水が入ってきます。油や異物も流れてくる。見えない設備の中で、何が起きているかを、マンホールの水位とカメラの映像から推定する技術です。これは、地下の設備を保全する会社で、直接に評価される部分です。

工程2:処理する

沈殿、生物処理、消毒。微生物の力で、汚れを取ります。

この工程に固有の制約があります。生き物を扱っているということです。機械は止めれば止まりますが、微生物は止められません。流入の量と質が変われば、微生物の状態も変わる。それを、水温、送る空気の量、返送する汚泥の量で、毎日調整し続けます。この形の運転は、化学のプラント、食品の工場、民間の排水処理と共通しています。

工程3:返す

放流の水質を測り、基準を満たしていることを確かめて、川や海に戻します。汚泥は、脱水して、処分するか、資源として使います。

この工程に固有の制約があります。出口の基準を外したときの影響が、自分の組織の外に出るという点です。川の下流には、他の自治体の取水口があります。だから、測って終わりではなく、外れそうなときに誰が何をするかまで、手順にしてあります。この形の品質の管理は、環境の測定、工場の排水処理、廃棄物の管理の分野と共通しています。

工程4:回す

使用料の賦課、徴収、水洗化の促進。多くの自治体では、水道の料金と併せて請求します。

この工程に固有の制約があります。原価をこえてはならないと、法律に書かれているということです。しかも、接続してもらわなければ、使用料は入りません。だから、下水道課には、「つないでください」と戸別に働きかける仕事があります。水洗化率、接続率。これは、民間でいえば、加入の促進です。行政の中でこの仕事をしている部署は、そう多くありません。

工程5:守る

雨水の排除、浸水の対策、ポンプ場の運転。大雨のときに、街を水から守ります。

この工程に固有の制約があります。いつ来るかを、こちらで決められないということです。しかも、来たときには、判断の時間が数十分しかない。ポンプをいつ動かすか、ゲートをいつ操作するか。平常時に、手順を作り込んでおくしかない仕事です。この形の備えは、事業の継続計画、危機の対応の設計として、民間でそのまま求められます。

民間の水処理プラント・設備の保全と、どこが同じでどこが違うか

同じ点は3つあります。

違う点は4つあります。

違い行政(下水道課)民間(水処理・プラント)
相手を選べるか区域内は接続が義務。相手を選ばない契約の相手を選べる
入口を選べるか何が流れてくるかは選べない。除害施設の指導で近づける原料や受入れの規格を決められる
料金の決め方条例で定める。原価をこえない市場と原価で決める
利益の扱い独立採算だが、利益の最大化は目的ではない利益が事業の目的に含まれる

この4つのうち、移った後にいちばん効くのは、2番目です。入口を選べない設備を回してきた経験は、民間でも希少です。民間の工場の排水処理は、自分の工場の排水だけを扱います。何が来るか分かっている。その環境に移ると、むしろ楽に感じる方が多い部分です。

もう1つ、効き方が大きいのは4番目です。公営企業会計を扱ってきたなら、費用を積み上げて、収入と突き合わせて、資金の残高を見るという作業は、すでにやってきたことです。「利益」という項目が足されるだけで、数字の見方を学び直すわけではありません。

評価が高くなりやすい4つの方向

1. 処理場の運転を受託する会社

運転、水質の管理、委託の仕様の作成、履行の確認。発注の側にいた経験が、そのまま効きます。

2. 管路の調査・更生・工事の会社

カメラ調査の発注、更生の工法の選定、道路の占用の調整、夜間の工事の段取り。供用中の管を、流しながら直すという条件を知っている人は、外から採りにくい。

3. 水処理のプラント・機械のメーカー

設備の更新の判断、機械と電気の更新、試運転。運転してきた側の知識が求められます。

4. 建設コンサルタント・計画の支援

ストックマネジメント計画、全体計画、経営の戦略、浸水対策の計画。計画の側の経験がある方に向きます。

なお、この4方向は、求める経験が違います。1番と3番は、処理場の運転と設備を見ます。2番は、管路と工事を見ます。4番は、計画と経営の数字を見ます。同じ下水道課の経歴でも、処理場か管路か本庁かによって、通りやすい方向が変わるということです。自分がどの工程を長くやってきたかを、先に整理しておいてください。

どの経験に値が付くのかから、相談できます。在職中でも、情報収集だけでも構いません。

つまずきやすい点

1. 「下水道事業に従事」で丸める

集める/処理する/返す/回す/守るの5つに分けてください。

2. 規模の数字を書かない

処理区域内の人口、処理の能力、管きょの延長、水洗化率。桁だけでも入れてください。

3. 水洗化の促進を、事務として書く

加入の促進です。戸数と、動かした数字が伝わる形にしてください。

4. 雨水の対応を、苦労話にする

平常時に手順を作り込み、大雨のときにその手順で動いたと書いてください。

5. 公営企業会計の経験を書き落とす

独立採算の事業の運営です。損益と資金を見ていたなら、そう書いてください。

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まとめ

よくある質問

事務職で、処理場や管きょの技術的なことは分かりません

それでも書けます。下水道課の事務は、使用料の賦課と徴収、受益者負担金の賦課、水洗化の促進、指定工事店の指定、契約と入札、公営企業会計の決算、経営の戦略の策定など、技術以外の部分が広くあります。とくに、水洗化の促進は、行政の中で数少ない「加入を働きかける」仕事で、民間ではそのまま営業の企画や既存顧客の担当に接続します。書くなら、「使用料と受益者負担金の賦課、水洗化の促進、公営企業会計による決算を担当。技術上の判断は技術職が実施」と、自分の範囲を明示してください。

小さな町で、浄化槽や農業集落排水も一緒に担当しています

それは、幅として書けます。公共下水道、農業集落排水、浄化槽は、処理の方式と規模が違う3つの仕組みです。それを同じ担当で見てきたということは、「規模と方式に応じて、処理の仕組みを使い分けてきた」という経験になります。民間の水処理の会社は、大きな処理場から小さな装置まで扱っています。書くなら、「公共下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽の3方式について、維持管理と使用料を一体で担当」という形です。兼務を薄さとして書かず、方式の幅として書いてください。

人口が減って処理場の統廃合が進んでいて、先が不安です

その動きは、むしろ経験の価値を上げる方向に働いています。処理場を統合する、広域で運営する、運転を包括して委託する。いずれも、発注の側の事情と、現場の両方が分かる人が必要になる動きです。受託の会社の側にも、計画を作るコンサルティングの側にも、その両方を持っている人は多くありません。不安の中身が「今の職場が続くか」であれば、それは別の話として考える必要がありますが、経験そのものが古くなるという心配は、この分野では当てはまりにくいと考えています。行き先の分け方は下水道課から転職しやすい業界と職種に整理しています。

出典

  1. 下水道法 第10条(排水設備の設置等)・第20条(使用料)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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