部署別 / 下水道課
下水道課出身者が面接で必ず聞かれること
下水道課から民間に移るとき、面接でよく来るのはこの形の質問です。
「マニュアルにない事態が起きたら、どうしますか」
これは、下水の話を聞いているのではありません。
手順を作る側だったのか、手順に従う側だったのかを聞いています。そして、この経歴の方は、判断の時間がない場面の手順を、平常時に作っていた側です。
この記事では、実際に来る質問を7つ挙げて、避けたい答え方と組み立て方を並べます。
書類の書き方は下水道課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで、行き先は下水道課から転職しやすい業界と職種に書いています。
「操作に従事する者の安全の確保」と書かれています
質問に入る前に、答え方の芯を1つ作っておきます。下水道法第7条の2です。
> 公共下水道管理者は、その管理する排水施設を補完する施設のうち、河川その他の公共の水域又は海域から当該排水施設への逆流を防止するために設けられる樋門又は樋管(操作を伴うものに限る。次項において「操作施設」という。)については、国土交通省令で定めるところにより、操作規則を定めなければならない。> 2 前項の操作規則は、洪水、津波又は高潮の発生時における操作施設の操作に従事する者の安全の確保が図られるように配慮されたものでなければならない。
「操作規則を定めなければならない」です。
そして、その規則には、操作する人の安全の確保が書かれていなければならない。
ここが、答え方の芯になります。
洪水、津波、高潮。いずれも、来たときには判断の時間がありません。だから、いつ、誰が、何をするかを、平常時に規則にしておく。しかも、「操作する人をいつ引き揚げるか」まで、先に書いておく。
つまり、この経歴の方は、「時間のない判断は平常時に決めておき、しかも動く人の安全を先に書く」ことを求められる環境にいました。
民間の面接で来る質問の多くは、「手順を作る側に回れる人かどうか」を確かめています。安全でも、品質でも、納期でも、構図は同じです。
この形で答えられると、7つの質問はほとんど同じ骨で答えられます。
実際に来る質問7つ
1. 「下水道の経験は、うちのどこで使えると思いますか」
避けたい答え方
> 下水道に特化した経験なので、直接は関係ないかもしれませんが。
組み立て方
> 3つあると考えています。1つ目は、入口を選べない設備の運転です。処理区域内人口約◯万人、日量約◯万立方メートルの処理場で、流入に合わせて微生物の状態を毎日調整していました。2つ目は、受け入れる側の品質の管理です。工場や事業場の排水を検査し、基準に合わなければ改善を求める仕事をしていました。3つ目は、独立採算の数字です。公営企業会計で損益と資金を見ながら、改築の計画を組んでいました。
3つに割って、それぞれに数字を添える。この形が通りやすい形です。
2. 「マニュアルにない事態が起きたら、どうしていましたか」
避けたい答え方
> まず上司に報告して、指示を仰いでいました。
組み立て方
> 報告はしますが、報告を待つ形にはしていませんでした。大雨のときのポンプ場の操作は、来てから考える時間がありません。だから、水位がどこまで来たら誰が何をするか、どの段階で操作する人を引き揚げるかを、平常時に規則として決めていました。マニュアルにない事態が起きたときに現場が動けるのは、マニュアルに「ここから先は現場の判断」と書いてあるときだけだと考えています。その線を引くのが、平常時の仕事でした。
「先に決める部分と、現場に残す部分を、平常時に分けていた」——この言い方が、安全や品質を扱う会社でいちばん届きます。
3. 「夜間や休日の呼び出しがありますが、大丈夫ですか」
避けたい答え方
> 下水道でも夜間の対応はあったので、慣れています。
組み立て方
> その形は経験しています。大雨は時間を選ばないので、警報の段階ごとに誰が出るかを決めていました。確認しておきたいのは、頻度と、体制の組み方です。一人で抱える形なのか、当番で回す形なのか。回す形であれば、こちらから合わせられますし、体制の設計の経験もお出しできます。
受け入れる姿勢だけを見せるより、体制の話で返すほうが、長く続く前提の人として読まれます。
この質問に固有の事情もあります。下水道の緊急の対応は、季節に偏ります。梅雨と台風の時期に集中し、冬はほとんどありません。しかも、呼ばれるのは、雨の予報が出た時点からです。降り始めてからでは遅い。だから、「月に何回」という聞き方では、実態が伝わりません。面接では、「年間の回数は限られますが、時期が集中し、予報の段階から動く形でした」と答えるほうが正確です。相手の会社の緊急の対応も、季節に偏る形なのか、年中一定の形なのか。そこは、逆質問で確かめておくと、入った後の差が小さくなります。
4. 「数字で成果を出した経験はありますか」
避けたい答え方
> 行政なので、売上のような数字はありません。
組み立て方
> 売上の数字はありませんが、扱っていた規模と、動かした数はあります。処理区域内人口約◯万人、管きょ延長約◯キロメートルの事業を担当していました。雨のたびに管に入り込む水の調査について、区域ごとの流量の比較から範囲を絞る方法に変えた結果、同じ調査の延長で特定できる箇所が増えました。水洗化の促進では、未接続の世帯に戸別に働きかけて、年間約◯戸の接続につなげました。
「ありません」で終わらせない。規模と、変えた前後を出す。これで足ります。
5. 「公営企業だと、費用への意識が薄いのでは」
避けたい答え方
> たしかに、民間ほどは厳しくなかったかもしれません。
組み立て方
> 下水道の使用料は、法律で「適正な原価をこえない」と定められています。汚水の処理の費用は使用料でまかない、雨水の処理は税でまかなうという区分があるので、どこまでが使用料で回っているかを毎年確かめていました。改築の計画を作るときは、必要な工事を積み上げるだけでなく、使用料の水準と資金の残高を見ながら、どこまで年次に載せられるかを決めていました。利益を増やすことは目的ではありませんが、費用と収入を突き合わせる作業は、毎年やっていました。
この質問は、公営企業の仕組みを知らない相手から来ます。事実で返せば足ります。
この質問に固有の事情もあります。下水道の費用の見方は、上水道より複雑な部分があります。汚水と雨水で財源が違い、しかも、接続してもらわなければ使用料が入らない。だから、「費用を削る」より前に、「収入の側を増やす」仕事があった。ここは、そのまま話してください。水洗化の促進で接続を増やしてきた経験は、費用への意識が薄いという前提を、収入の側から崩す材料になります。削った経験ではなく、増やした経験として出すと、設備を持つ会社では、そのまま評価されます。
6. 「規制する側から、規制される側に回ることになりますが」
避けたい答え方
> 立場が変わるだけなので、問題ないと思います。
組み立て方
> そこは考えた点です。除害施設の指導で、事業場に立ち入って排水を検査し、改善を求める側にいました。だから、行政が何を見に来るか、どこで指摘が出るかは分かっています。規制される側に入るのであれば、指摘が出る前に直しておく体制を作る提案ができると思っています。指導する側にいたときに、事業場の担当の方が何を負担に感じていたかも見てきました。
工場の排水処理や環境の分析の方向を受けるなら、この質問はほぼ確実に来ます。具体で返してください。
この質問に固有の事情もあります。受託の会社を受ける場合は、「発注する側から、評価される側に回れるか」という形で同じ質問が来ます。答え方の骨は同じです。委託の仕様を書いて、履行を確認する側にいたので、評価される側が何を負担に感じるかも見てきた。報告の様式が実態と合っていないと、現場の時間がそこに取られる。受託の側に入るなら、まずそこを直す提案ができる。——この形で返せば、どちらの方向でも通ります。
7. 「なぜ、今のタイミングで辞めるのですか」
避けたい答え方
> 処理場の統廃合が進んでいて、先行きに不安があるからです。
組み立て方
> 下水道の仕事を続けたいという前提があります。ただ、1つの自治体にいると、その自治体の事情の中でしか考えられません。処理場の統合や広域化、包括的な委託が進む中で、複数の自治体を横に見ながら、仕組みを作る側に関わりたいと考えました。処理場の運転と、計画の両方を見てきた経験は、その方向で使えると思っています。
不安を理由にしない。横に広げたい、という組み立てにしてください。
なお、この質問では、時期の理由も一緒に聞かれます。下水道の仕事は、大雨の季節と、年度の区切りがはっきりしているので、「台風の時期を越えて、担当している工事が完了する時期を区切りにしたい」という答え方ができます。引き継ぎの見通しを自分から言える人は、入った後の動き方も想像しやすいと受け取られます。とくに、大雨の体制に組み込まれている職では、抜ける時期の説明ができるかどうかを見られます。
逆質問で確かめておくこと
3つに絞ってください。
1. 止める判断と、退避させる判断が、現場にあるか
> 安全や品質に関わる異常が出たとき、現場の判断で作業を止めたり、人を引き揚げたりできる範囲はどこまでですか。
この経歴の方は、退避の基準を先に決める環境にいました。移った先でその権限がどこにあるかは、働き方に直結します。
2. 緊急の対応が、季節に偏るか、年中一定か
> 緊急の対応は、当番で回されていますか。時期による偏りはありますか。
体制の話で聞くと、負担の実態が分かります。
3. 自治体との窓口を、誰が持つか
> 自治体が発注者になる案件では、協議の窓口は現場の担当が持たれますか。
この経歴の方は、行政の側の動き方が読めます。その強みが使われる形になっているかを、先に確かめてください。
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まとめ
- 下水道法第7条の2は、逆流を防ぐ樋門や樋管について操作規則を定め、洪水・津波・高潮の発生時に操作に従事する者の安全の確保が図られるようにすると定めています
- つまり、この経歴の方は「時間のない判断は平常時に決めておき、動く人の安全を先に書く」環境にいました
- マニュアルにない事態の質問には、「先に決める部分と、現場に残す部分を、平常時に分けていた」と答えてください
- 費用への意識を疑われたら、使用料が原価をこえない構造と、接続を増やしてきた経験を事実で返してください
- 工場の排水処理や受託の会社では、「規制される側、評価される側に回れるか」の質問がほぼ確実に来ます
- 逆質問は、①止める判断と退避の権限 ②緊急の対応の季節の偏り ③自治体との窓口の3つに絞ってください
よくある質問
事務職で、処理場や水質の専門の話はできません
先に言ってしまって構いません。面接で困るのは、分かるふりをして踏み込んだときです。言い方は、「技術上の検査は技術職が担当していました。私は使用料と受益者負担金の賦課、水洗化の促進、契約、公営企業会計の決算を担当していました」で足ります。そのうえで、自分の範囲の中身を具体的に話してください。とくに、水洗化の促進で接続を増やしてきた経験は、技術の有無に関わらず、数字を動かした経験として評価される部分です。線を引いた説明のほうが、聞く側は安心します。
施設や事業者のことは、面接でどこまで話せますか
公表されている範囲までです。処理区域内の人口、管きょの延長、処理場の数と能力といった事業の概要は、公表資料に載っています。一方で、処理場やポンプ場の警備、立入りの経路、管きょの弱い箇所、特定の事業者の排水の違反の経緯は、話せません。面接で「たとえばどんな事業者ですか」と聞かれたときも、「業種と件数でお話しすると」と前置きして答えてください。この線を自分で引けることは、インフラを扱う会社でも、規制を受ける工場でも、それ自体が評価の対象になります。話せないことがあるのは、相手も分かっています。
民間の速度についていけるか不安です
下水道の仕事には、速い場面と遅い場面の両方があります。大雨が来れば、その場で数十分単位の判断をしています。時間をかけていたのは、改築の計画や使用料の改定といった、後から直せない判断のほうです。面接では、この区別を言葉にしてください。「後から直せる判断は速く、直せない判断は時間をかける仕事でした」という形です。速い遅いの一般論に乗らず、判断の種類で分ける。この答え方ができると、判断の設計を考えている人だと読まれます。働き方の変化は下水道課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるかに整理しています。