部署別 / 保健所・衛生課
保健所・衛生課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
保健所や衛生課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「保健所において衛生行政に関する業務に従事」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「役所の健康相談の担当だった人」という像しか作れません。実際には、飲食店や工場に立ち入って検査し、営業の許可を審査し、食中毒が出れば原因を追い、感染症が出れば患者と接触者を調べ、相談を受け、医療機関と市町村の間を調整していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは保健所・衛生課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は保健所・衛生課から転職しやすい業界と職種に書いています。
「原因を明らかにするため」の調査が、法律に書かれています
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
感染症法第15条です。
> 都道府県知事は、感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者又は感染症を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の所有者若しくは管理者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。
ここが、書類の芯です。
「発生の状況、動向及び原因を明らかにするため」の調査。
つまり、この仕事は「起きたことの原因を、調査で突き止める」仕事です。患者に質問し、接触者をたどり、共通する食事や場所を探し、原因を絞る。食中毒の調査も、同じ骨です。誰が、いつ、何を食べて、いつ発症したか。その表を作って、原因の食品と施設を特定する。
民間で人を採る側から見ると、これは「原因の究明ができる人」です。品質の不良、事故、クレーム。原因を突き止めて、再発を防ぐ。この形の仕事は、製造でも、食品でも、医療でも、同じ構造で存在します。
職務経歴書には、この「調査して原因を特定した」範囲が見えるように書いてください。
職務要約
悪い例
> 保健所において、衛生行政に関する業務に従事。食品衛生、環境衛生、感染症対策等を担当。
これでは、規模も、判断の範囲も読めません。
良い例(食品衛生・環境衛生が長い方)
> 管内人口約◯万人の保健所において、食品営業施設約◯施設を対象とした食品衛生監視を担当。年間約◯件の立入検査、約◯件の営業許可の審査、食中毒の調査◯件を実施。施設の基準と衛生管理の記録の確認、不備への改善の指導と再確認、収去検査の計画を担当。
良い例(保健師・相談が長い方)
> 管内人口約◯万人の保健所において、精神保健と難病の相談を担当。年間約◯件の相談に対応し、医療機関、市町村、福祉の事業所と連携して支援の形を構築。感染症の発生時には、患者と接触者の調査を◯事案担当し、健康観察の体制を設計。人口動態統計と相談の記録から地域の健康課題を分析し、事業の優先順位を提案。
太字にしなくても、数字が入っているだけで読み方が変わります。管内の人口、施設の数、立入の件数、相談の件数、調査した事案の数。この5つのうち、分かるものから埋めてください。
担当業務
「衛生行政」で丸めず、6つに分けてください。
| 機能 | 書き方の例 |
|---|---|
| 食品衛生 | 食品営業施設約◯施設の監視、年間約◯件の立入検査、営業許可の審査、収去検査、食中毒の調査 |
| 環境衛生 | 旅館、公衆浴場、理美容、クリーニングなど約◯施設の監視、許可と届出、水質の検査 |
| 医事・薬事 | 医療機関と薬局の立入検査、開設の許可と届出、医療に関する相談と苦情への対応 |
| 感染症 | 届出の受理、患者と接触者の調査、健康観察、医療機関との調整、発生時の事務局 |
| 保健指導と相談 | 精神保健、難病、母子の相談、年間約◯件、関係機関との連携、支援の形の構築 |
| 企画と調整 | 人口動態統計と地域診断、事業の計画、市町村への助言と研修、予算と契約 |
この6つのうち、自分がやっていないものは書かなくて構いません。むしろ、やっていない機能を空欄にしたほうが、やった機能の密度が読まれます。
とくに、6番目の「企画と調整」は、書き落とされやすい部分です。統計から地域の課題を出して、事業の優先順位を決め、市町村に助言する。これは、データの分析と、権限のない相手を動かす調整で、民間の管理部門でそのまま求められる経験です。
もう1つ、4番目の「感染症」も、書き方に注意が要る部分です。発生時の対応は、その時だけの仕事ではありません。平常時に、届出の経路、医療機関との連絡、健康観察の様式を整えておく。発生したら、その体制で動く。書くなら、「感染症の発生時の連絡の経路と健康観察の様式を平常時に整備し、◯事案の発生時に運用」という形です。民間の危機の対応でも、平常時の準備と発生時の運用を分けて書くと、伝わります。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、何も起きなかったこと、広がらなかったこととして現れるからです。
悪い例
> 適切な監視指導に努め、食中毒の予防と公衆衛生の向上に貢献した。
これは、姿勢の話であって、実績ではありません。
良い例——3つの型
型1:基準と手順を作った
> 立入検査の確認の項目を、施設の業種ごとに整理して様式化。監視員ごとに指摘の内容がばらつく状態を、同じ項目で確認する形に変更。指摘の内容を営業者に文書で渡す運用を導入。
型2:原因を突き止めた
> 食中毒の疑いの事案について、喫食の調査と発症の分布から原因の食品を推定し、施設の立入と検体の検査で原因を特定。営業の停止から再開までの判断と、再発の防止の指導を担当。
型3:関係者を動かした
> 感染症の発生時に、医療機関、学校、市町村との連絡の会議を設け、健康観察の分担と情報の集約の方法を決定。関係機関ごとに違っていた報告の様式を統一。
3つとも、「対応した」ではなく、「自分が設計した」で書かれています。
このうち、型2はとくに民間で読まれる実績です。原因を突き止めた経験は、業種を問わず求められます。ただし、個別の施設の名前や、患者に関わる情報は書けません。書けるのは、調査の方法と、特定に至った筋道と、その後の判断です。「どの施設で」ではなく「どうやって特定したか」で書くと、守秘の線を守ったまま、原因の究明の経験として伝わります。
数字の出し方
| 数えるもの | 書き方の例 | 注意 |
|---|---|---|
| 管内の規模 | 管内人口約◯万人、食品営業施設約◯施設 | 公表されている数字を使う |
| 立入検査 | 年間約◯件 | 業種の内訳があれば添える |
| 許可と届出 | 年間約◯件の営業許可の審査 | 新規と更新を分けると強い |
| 調査した事案 | 食中毒の調査◯件、感染症の調査◯事案 | 施設名と患者の情報は書かない |
| 相談 | 年間約◯件 | 種別(精神保健・難病・母子)を添える |
| 研修と講習 | 年◯回、対象約◯人 | 営業者向けか職員向けかを分ける |
「約」を付けて構いません。正確な数字が出せないことよりも、桁が分かることのほうが大事です。
応募先で並べ替える
| 応募先の方向 | 上に置く機能 |
|---|---|
| 食品メーカー・外食の品質保証 | 食品衛生/食中毒の調査/基準と様式の設計 |
| 製薬・医療機器・薬局の薬事 | 医事・薬事/許可と届出の審査/行政との折衝 |
| 産業保健・健康経営 | 保健指導と相談/企画と調整/地域診断 |
| 衛生管理のコンサルティング・検査機関 | 食品衛生/環境衛生/研修と講習 |
| 多店舗の施設管理 | 環境衛生/立入検査/基準と様式の設計 |
同じ経歴でも、順番を変えるだけで読まれ方が変わります。中身を作り直す必要はありません。
書いてはいけないこと
| ✕ 書かない | ○ こう書く |
|---|---|
| 特定の施設の名前と、処分の経緯 | 調査の方法と、特定に至った筋道 |
| 患者や相談者に関わる情報 | 事案の数と、支援の形をどう作ったか |
| 医療機関や事業者との個別のやり取り | 連携の仕組みと、統一した様式 |
| 処分の検討の内部の経緯 | 基準と手順を、どういう考え方で整理したか |
| 統計の未公表の数値 | 公表されている範囲の数字 |
1行目と2行目は、とくに注意してください。保健所は、相手の名前が分かる規制と、相手の健康に関わる相談の両方を扱っています。施設の名前と、人の健康の情報は、書類にも面接にも出さない。この線を守ることは、それ自体が評価の対象になります。迷ったら、「どこで」ではなく「どうやって」で書いてください。
つまずきやすい点
1. 「衛生行政」で丸める
食品衛生/環境衛生/医事・薬事/感染症/保健指導と相談/企画と調整の6つに分けてください。
2. 調査した事案の数を書かない
原因を突き止めた経験の量です。差が付く部分です。
3. 監視指導を、事務として書く
基準と記録を確認し、改善を指導し、再確認した。監査です。
4. 発生時の対応を、苦労話にする
平常時に体制を整え、発生時にその体制で運用したと書いてください。
5. 施設の名前や人の情報を書いてしまう
「どこで」ではなく「どうやって」で書いてください。
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まとめ
- 感染症法第15条は、感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため、職員に質問と調査をさせることができると定めています
- つまり、保健所・衛生課は「起きたことの原因を、調査で突き止める」仕事をしています。食中毒の調査も同じ骨です
- 職務要約には、管内の人口・施設の数・立入の件数・相談の件数・調査した事案の数を入れてください
- 実績は、①基準と手順を作った ②原因を突き止めた ③関係者を動かしたの3つの型で書けます
- 書いてはいけないのは、施設の名前、患者や相談者の情報、個別のやり取りです。「どこで」ではなく「どうやって」で書いてください
- 調査した事案の数は、数えていないことが多いので、直近の3年分だけでも数えてください
よくある質問
事務職で、立入や相談の経験はありません
それでも書けます。保健所の事務は、営業許可の申請の受付と審査の事務、届出の処理、統計の集計、医療機関と市町村との連絡調整、予算と契約、発生時の事務局など、免許がなくても担っている部分が広くあります。書くなら、「営業許可の申請約◯件の受付と審査の事務、感染症の発生時の相談窓口と関係機関との連絡の事務局を担当。技術上の判断は監視員と保健師が実施」と、自分の範囲を明示してください。とくに、発生時の事務局を回した経験は、民間でいえば危機の対応の事務局で、免許の有無に関わらず読まれる部分です。線を引いた応募は、読まれます。
保健師で、相談の件数は多いのですが、数字にできる実績がありません
相談の件数の隣に、2つ足してください。1つは、つないだ機関の数と、作った支援の形です。「医療機関、市町村、福祉の事業所と連携し、◯種類の支援の形を構築」という形です。もう1つは、分析です。「相談の記録と人口動態統計から地域の健康課題を分析し、事業の優先順位を提案」という形です。相談の件数は、対応した量です。つないだ数と分析は、設計した量です。民間の産業保健で読まれるのは、後者です。個別の面談ができる人は多くても、会社全体の課題を数字で示して、人事や経営に提案できる人は多くありません。そこを前に出してください。
政令市の衛生課で、保健所とは名前が違います
名前の違いは、問題になりません。保健所、保健センター、衛生課、生活衛生課。自治体によって名前も分かれ方も違います。書くときは、部署の名前ではなく、扱っていた機能で書いてください。「食品営業施設の監視と許可」「感染症の調査」「精神保健の相談」といった形です。民間の読む側は、部署の名前を知りません。機能で書けば、どの自治体のどの部署でも、同じ経験として読まれます。名前が違うことより、機能が明示されていないことのほうが、読みにくさの原因になります。面接で聞かれることは保健所・衛生課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。