部署別 / 住宅課
住宅課出身者が面接で必ず聞かれること
住宅課から民間に移るとき、面接でよく来るのはこの形の質問です。
「断るのは、得意なほうですか」
これは、性格を聞いているのではありません。
基準に沿って人を選び、選ばれなかった相手にも説明してきた経験があるかを聞いています。そして、この経歴の方は、その経験を制度として持っている側です。
この記事では、実際に来る質問を7つ挙げて、避けたい答え方と組み立て方を並べます。
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「公正な方法で選考して」決めていました
質問に入る前に、答え方の芯を1つ作っておきます。公営住宅法第25条です。
> 事業主体の長は、入居の申込みをした者の数が入居させるべき公営住宅の戸数を超える場合においては、住宅に困窮する実情を調査して、政令で定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、当該公営住宅の入居者を決定しなければならない。
ここが、答え方の芯になります。
申込みが戸数を超えたら、選ばなければなりません。しかも、実情を調査して、基準に従い、公正な方法で。
つまり、この経歴の方は、「全員には渡せないものを、基準を作って配ってきた」わけです。選ばれなかった人に、なぜ選ばれなかったかを説明する場面も、繰り返し経験しています。
民間の面接で来る質問の多くは、「基準を持って判断できるか」と、「断ったあとに関係を保てるか」を聞いています。入居の審査も、滞納の対応も、構図は同じです。
この形で答えられると、7つの質問はほとんど同じ骨で答えられます。
実際に来る質問7つ
1. 「公営住宅の経験は、うちのどこで使えると思いますか」
避けたい答え方
> 民間の賃貸とは仕組みが違うので、そのままでは使えないかもしれませんが。
組み立て方
> 3つあると考えています。1つ目は、入居の審査です。基準に沿って資格を確かめ、応募が枠を超えれば選考していました。2つ目は、家賃の運用です。入居世帯約◯世帯について、毎年、収入の申告をもとに家賃を決め直していました。3つ目は、滞納への対応です。年間約◯件を担当し、督促から分割の相談、法的手続きの準備までを扱っていました。
3つに割って、それぞれに数字を添える。この形が通りやすい形です。
2. 「断らなければならない場面は、どうしていましたか」
避けたい答え方
> 制度で決まっていることなので、そのように説明していました。
組み立て方
> 断ることより、先に基準を示すようにしていました。入居の相談では、最初に収入の基準と、必要な書類を伝えます。そのうえで、要件に届かない場合は、どの制度なら使えるかを案内していました。選考で入れなかった方には、選考の方法が公表されていることを説明し、次回の案内をします。断る場面をつくらないようにするというより、断った後に相手が次に動ける形にする。そこを意識していました。
「断った後に、次の道を示していた」という言い方が、民間の窓口を持つ職種で、いちばん届きます。
3. 「滞納の相手に、どこまで踏み込みますか」
避けたい答え方
> 事情がある方も多いので、無理な督促はしないようにしていました。
組み立て方
> 踏み込む深さより、段階を決めることを重視していました。発生から何か月で文書、何か月で訪問、どこから分割の相談、どこから法的手続きの準備、という段階を運用していました。事情を聞くのは、判断のためです。病気や離職で一時的に払えないのか、収入の構造そのものが変わったのか。前者なら分割で立て直せますが、後者は、住み替えや別の制度の検討が要ります。事情に流されず、事情で分ける。そこは意識していました。
「優しさ」ではなく、「段階と分類」で答える。これで、実務ができる人として読まれます。
この質問に固有の事情もあります。公営住宅の滞納は、出ていただく判断が、そのまま住まいを失うことに直結します。だから、行政の側は、法的な手続きに入るまでの段階を長く取っていました。民間では、その期間がもっと短い。ここは、移った後に合わせる部分です。ただし、早く動くこと自体は、相手のためになる場合もあります。金額が膨らむ前に手を打てば、立て直せる幅が残るからです。遅らせることが優しさではない——この見方は、在職中にも経験している方が多い部分です。
4. 「数字で成果を出した経験はありますか」
避けたい答え方
> 行政なので、売上のような数字はありません。
組み立て方
> 売上の数字はありませんが、扱っていた量と、変えた前後はあります。約◯戸、入居世帯約◯世帯を担当し、毎年度の家賃の決定を年度内に完了させていました。滞納については、対応の段階を文書化して担当者ごとの差をなくした結果、初期の連絡までの日数が短くなりました。
「ありません」で終わらせない。量と、変えた前後を出す。これで足ります。
5. 「民間は、埋めて稼ぐ仕事ですが、できますか」
避けたい答え方
> 行政では空室に困ることがなかったので、営業の経験はありません。
組み立て方
> 空室を埋めるための募集の工夫は、経験がありません。そこは学ぶ部分だと考えています。ただ、入居が決まった後に、長く住んでいただくための部分は経験しています。滞納を早い段階で止める、修繕の依頼に早く返す、住み方のルールを整える。退去を減らすほうの経験は持っています。募集と、定着。両方が要ることは分かっているつもりです。
できないことは、先に言ってしまう。そのうえで、隣接する経験を出す。この順番が安全です。
この質問に固有の事情もあります。公営住宅でも、近年は応募が少ない住戸が出てきています。立地や、階数や、設備の古さによって、募集しても埋まらない部屋がある。もし、その対応をしたことがあるなら、それは「埋める」側の経験です。募集の方法を変えた、条件を見直した、単身での入居を認める範囲を広げた。こうした経験があれば、そのまま話してください。「行政には空室の発想がない」というのは、今は必ずしも当てはまりません。
6. 「感情的になっている相手には、どう対応しますか」
避けたい答え方
> 相手の話をよく聞いて、落ち着いていただくようにしていました。
組み立て方
> 状況によりますが、基本は、その場で結論を出さないことです。住宅の相談では、生活そのものがかかっているので、感情が出るのは当然だと考えていました。ですので、聞く場と、決める場を分けていました。まず事実を確かめて、持ち帰って、基準に当てはめて、文書で返す。口頭でその場で答えると、後で食い違いが出ます。記録を残す形にしておくことが、結局はお互いの守りになります。
「聞く場と、決める場を分ける」という言い方は、管理の会社でも、支援の事業でも、そのまま通用します。
7. 「なぜ、今のタイミングで辞めるのですか」
避けたい答え方
> 住宅の部署は負担が大きく、続けるのが難しいと感じたからです。
組み立て方
> 住まいに関わる仕事を続けたいという前提があります。ただ、行政の側でできることは、公営住宅という枠と、制度の枠に限られていました。民間の賃貸を含めて、住まいの選択肢を用意する側に回りたいと考えたのが理由です。とくに、住まいを探しにくい方の受け入れは、民間の側でこそ動かせる部分が大きいと感じています。
負担を理由にしない。扱える範囲を広げたい、という組み立てにしてください。
逆質問で確かめておくこと
3つに絞ってください。
1. 受けられない相手を、どう扱っているか
> 審査で受けられない方に対して、御社ではどのような案内をされていますか。
この質問は、そのまま自分の経験の説明にもなります。相手の会社が、そこに答えを持っているかどうかも分かります。
2. 滞納が起きたときの、社内の分担
> 家賃の滞納が発生した場合、どこまでを現場が扱い、どこから別の部署に移りますか。
この経歴の方は、最後まで自分で扱ってきています。移った先でどこまでを持つのかは、先に聞いておくほうが早いです。
3. 入居後の対応に、どれだけ時間を割いているか
> 入居後の相談や修繕の依頼には、どの程度の体制で対応されていますか。
募集に力を入れている会社と、入居後に力を入れている会社では、この経歴の使われ方が変わります。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 公営住宅法第25条は、申込みが戸数を超える場合、実情を調査し、基準に従い、公正な方法で選考すると定めています
- つまり、この経歴の方は「全員には渡せないものを、基準を作って配ってきた」ことになります
- 「断る場面」を聞かれたら、「断った後に、次の道を示していた」と答えてください
- 滞納の質問には、優しさではなく、段階と分類で答えてください
- 募集の経験がないことは、先に言って、定着の経験を出すのが安全です
- 逆質問は、①受けられない相手の扱い ②滞納の分担 ③入居後の体制の3つに絞ってください
よくある質問
事務職で、建物の技術的な話はできません
先に言ってしまって構いません。面接で困るのは、分かるふりをして踏み込んだときです。言い方は、「修繕の技術的な判断は建築の担当が行っていました。私は入居の審査、家賃の決定、収納と滞納、退去の事務を担当していました」で足ります。そのうえで、自分の範囲の中身を具体的に話してください。とくに、入居の審査と滞納の対応は、技術の有無に関わらず、そのまま評価される部分です。線を引いた説明のほうが、聞く側は安心します。
個人情報に関わる話は、面接でどこまで話せますか
類型までです。「高齢の単身の世帯が増えていて、緊急の連絡先が確保できない相談が多かった」という言い方は問題ありません。一方で、特定の団地、特定の世帯、具体的な事情は話せません。面接で「たとえばどんな相談ですか」と聞かれたときに、具体的な事例を話したくなりますが、そこは類型に置き換えてください。「守秘の線を自分で引ける人だ」という評価は、住まいを扱う会社では、それ自体が評価の対象です。無理に話を広げる必要はありません。
公営住宅の経験が短く、住宅の政策が中心でした
その場合は、答え方の芯を変えてください。選考と滞納ではなく、制度を民間に広げる仕事が中心になります。「住宅セーフティネット制度について、貸主や不動産の事業者に説明し、登録を働きかけていました」という形です。面接で来る質問も変わります。「事業者に、どう説明して動かしたか」が中心になる。民間の会社から見ると、これは行政の制度を自社の商品に取り込む話です。制度を知っていて、しかも事業者の側の事情も見てきた人は、そう多くありません。働き方の変化は住宅課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるかに整理しています。