部署別 / 住宅課
住宅課から転職しやすい業界と職種
住宅課から民間に移るとき、行き先は1つではありません。
むしろ、この経歴は、行き先が分かれやすい経歴です。公営住宅の管理を回してきたのか、住宅の政策や制度の側にいたのか、どちらを長くやってきたかで、通る求人が変わります。
この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。資格と検索語も最後に付けます。
言い換えは住宅課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
民間の住宅を、制度に乗せる仕組みがあります
行き先の話に入る前に、この分野の立ち位置を条文で押さえます。住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律第8条です。
> 住宅確保要配慮者の入居を受け入れることとしている賃貸住宅を賃貸する事業を行う者は、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業に係る賃貸住宅を構成する建築物ごとに、都道府県知事の登録を受けることができる。
ここが、行き先を分ける線です。
住まいに困っている人に住宅を用意する方法が、2つあるということです。
- 自前で持つ——公営住宅を建て、管理し、入居者を選ぶ
- 民間の空きを使う——民間の賃貸住宅を登録し、受け入れてもらう
後者は、行政と民間の事業者が、同じ仕組みの中で動きます。つまり、この分野では、行政の側にいた人と、不動産の側にいた人が、同じ会議に出ています。
移る先が想像しやすい分野だということです。自分がどちらの層を長くやってきたかで、通りやすい方向が変わります。両方を経験しているなら、それは強みです。
向いている5つの方向
1. 賃貸住宅の管理の会社(プロパティマネジメント)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 募集、入居の審査、家賃の収納、滞納の整理、修繕、退去 |
| 求められる形 | 管理する物件の運営、オーナーへの報告、入居者の対応 |
| 入りやすさ | 高い。扱う工程がほぼ一致する |
書くときの注意。扱っていた戸数を書いてください。この業界では、戸数が経験の規模の目安として読まれます。「約◯戸を担当」という一行が、いちばん早く伝わります。
この方向に固有の制約もあります。民間の管理では、空室が収益の損失になります。行政では、応募が枠を超えるのが通例だったので、「埋める」ことに時間を使ってきていない方が多い。ここは、移った後に学ぶ部分です。逆に、滞納と退去の実務は、こちらのほうが厚い。得意な工程を先に出して、空室の対策は学ぶ姿勢で書く——この組み合わせが、この方向ではよく通ります。
2. 不動産の開発・建替えの事業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 建替えに伴う移転の調整、住みながらの工事、住民説明 |
| 求められる形 | 事業の計画、権利者との調整、工程の管理 |
| 入りやすさ | 中〜高。移転の調整ができる人は多くない |
書くときの注意。「住んでいる方がいる建物を動かした経験」を書いてください。何世帯に、どのくらいの期間で、どういう順番で移っていただいたか。この工程は、民間の建替えでもほぼ同じです。
この方向に固有の制約もあります。民間の建替えでは、期限が資金の計画で決まります。行政の建替えも工程はありましたが、同意が取れなければ、年度をまたいで待つという選択が取れました。民間では、待つほど費用が増えます。だから、説明の回数を増やしてでも、期限の中で合意を作る進め方になります。在職中に、時間をかけて納得を作ってきた方ほど、この速度差に最初は戸惑います。ただし、丁寧に説明できることは、この分野では減点になりません。
3. 居住の支援・高齢者向け住宅の運営
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 入居の相談、福祉部門との連携、見守りの仕組み、家賃の滞納の背景の把握 |
| 求められる形 | 入居の相談と受入れ、支援の調整、行政との連携 |
| 入りやすさ | 中〜高。住宅と福祉の両方が分かる人が足りない |
書くときの注意。福祉の部署と連携した場面を書いてください。滞納の背景に生活の事情があったとき、どこにつないだか。この「つなぎ方」を知っている人は、この分野では貴重です。
この方向に固有の制約もあります。支援の側に回ると、相手の生活に、より深く関わることになります。行政では、制度の線があり、その外は別の窓口に渡していました。民間の支援の事業では、線の引き方を自分たちで決める場面が出てきます。どこまで関わるかを、組織として決めているかは、入る前に確かめておいたほうがよい点です。
4. 家賃債務の保証・住宅に関わる金融
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 入居の審査、滞納の整理、督促の段階の設計、法的手続きの準備 |
| 求められる形 | 審査、債権の管理、回収の実務、制度の設計 |
| 入りやすさ | 中。求人は限られるが、経験の一致度は高い |
書くときの注意。督促の段階を設計していたなら、そう書いてください。何日で最初の連絡、何か月で分割の相談、どこから法的な手続き。この段階の設計は、審査や回収の事業で、そのまま使われる知識です。
この方向に固有の制約もあります。保証の事業では、断る判断も仕事のうちです。行政では、基準に当てはまれば、受け入れる方向で考えていました。保証の側は、受けた分の損失の可能性を自社が負うので、受けない判断を自分でしなければなりません。ここは、考え方の切り替えが要る部分です。一方で、断った後に別の選択肢を示せる人——公的な制度や、支援の窓口を知っている人——は、この業界では珍しい存在です。
5. 自治体を顧客とする企業(管理の受託・計画の支援)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 指定管理や委託の仕様、長寿命化計画、住生活基本計画、入居の事務 |
| 求められる形 | 公営住宅の管理の受託、計画の策定支援、システムの導入 |
| 入りやすさ | 中〜高。発注の側の事務を知っている人が求められる |
書くときの注意。委託の仕様を書いた経験があるなら、書いてください。受託の会社がいちばん欲しいのは、「この自治体が何を求めるか」を読める人です。
この方向に固有の制約もあります。受託の側は、数年ごとの公募で現場が入れ替わります。発注する側にいたときは公募は手続きでしたが、受注の側では、負ければその現場が無くなります。しかも、公営住宅の管理の受託は、入居者との関係が長く続く仕事です。担当が変わることの影響が大きい。そこを理解したうえで、引き継ぎの設計に関われる人が求められています。
合いにくい方向
次の5つは、この経歴からは遠い方向です。
| 方向 | 理由 |
|---|---|
| 新築の分譲の販売 | 売る仕事。行政では、選んで渡す仕事だった |
| 投資用の不動産の仲介 | 収益の見込みが判断の中心。目の向き先が違う |
| 短い周期で作り替える仕事 | 住宅の資産は数十年単位。時間の感覚が合わない |
| 企業向けの無形の商材の営業 | 相手を探すところから始まる |
| 完全に数値の分析だけの職 | 現場の事情を読んできた強みが使われない |
「できない」ということではありません。持っている経験が、使われないということです。
役に立つ資格
| 資格 | 効く方向 |
|---|---|
| 宅地建物取引士 | 賃貸管理、開発、仲介を含む不動産の全般 |
| 賃貸不動産経営管理士 | 賃貸住宅の管理の会社 |
| 管理業務主任者・マンション管理士 | 分譲の管理、建物の管理 |
| 社会福祉士・精神保健福祉士 | 居住の支援、高齢者向け住宅 |
| 建築士・建築施工管理技士 | 建替え、修繕、長寿命化 |
| ファイナンシャル・プランニング技能士 | 家賃債務の保証、住宅に関わる金融 |
持っていない資格を、応募のために先に取る必要はありません。ただ、宅地建物取引士は、この分野では話が早くなる資格です。「取得予定」と書くだけでも効きます。
求人を探すときの検索語
| 検索語 | 出てくる求人 |
|---|---|
| 賃貸管理 プロパティマネジメント | 賃貸住宅の管理の会社 |
| 入居審査 家賃 管理 | 管理会社、保証会社 |
| 家賃債務保証 審査 | 保証の会社 |
| 居住支援 高齢者 住宅 | 居住の支援、高齢者向け住宅 |
| 再開発 権利者 調整 | 開発、建替えの事業 |
| 公営住宅 指定管理 | 管理の受託の会社 |
「公営住宅」だけで探すと、求人が少なく見えます。「賃貸管理」「入居審査」「居住支援」に言い換えて探してください。
つまずきやすい点
1. 「公営住宅の仕事は民間にない」と考える
募集、審査、家賃、収納、修繕、退去。工程は、ほぼ同じです。
2. 戸数を書かない
この業界では、戸数が経験の規模の目安として読まれます。
3. 滞納の経験を、伏せてしまう
この経歴でいちばん評価される部分です。
4. 空室の対策の経験がないことを、気にしすぎる
そこは移った後に学べます。得意な工程を先に出してください。
5. 方向を1つに絞ってしまう
管理寄りと、支援寄りで、書類の順番を変えるだけで、両方に出せます。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律第8条は、受け入れる民間の賃貸住宅が、建築物ごとに都道府県知事の登録を受けられると定めています
- つまり、自前で持つ層と、民間の空きを使う層が、同じ仕組みの中で動いています
- 向いているのは、①賃貸管理 ②開発・建替え ③居住の支援 ④家賃債務の保証 ⑤自治体を顧客とする企業の5方向です
- 合いにくいのは、新築の分譲の販売、投資用の仲介、短い周期の仕事、無形の商材の営業、分析だけの職です
- 資格は、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士などが効きます。取得予定でも書けます
- 検索語は、「公営住宅」ではなく「賃貸管理」「入居審査」「居住支援」に言い換えてください
よくある質問
事務職で、建物の技術的な判断はしていません
それでも、5つの方向のうち4つは残ります。1番の賃貸管理、3番の居住の支援、4番の保証、5番の自治体が顧客の会社です。この4つで見られるのは、入居の審査、家賃と収納、滞納への対応、入居者とのやり取りで、いずれも技術の判断ではありません。書くなら、「入居の募集と審査、家賃の決定、収納と滞納の整理を担当。修繕の技術的な判断は建築の担当が実施」と、自分の範囲を明示してください。線を引いた応募は、読まれます。
住宅の政策の担当で、入居者と接していません
5番と2番が中心になります。住生活基本計画、空き家の対策、耐震の補助、セーフティネットの登録の推進。これらは、計画と、補助金の実務と、民間の事業者との折衝です。書くなら、「住生活基本計画の改定を担当。市場の現況の分析、目標の設定、施策の組み立てを実施」という形です。とくに、民間の事業者を制度に乗せる仕事——登録の働きかけや、補助の説明——をしていた方は、不動産の会社に対して制度を説明できる人として読まれます。この役割は、業界の側でも足りていません。
何社くらい受けるものですか
方向を2つに絞って、各3社から5社が、この経歴では動かしやすい形です。理由は、方向ごとに書類の順番を変える必要があるからです。管理の会社には戸数と滞納を先に、支援の会社には福祉との連携を先に置く。2つまでなら、書類を2通用意すれば足ります。3つ以上に広げると、どれも中途半端な順番になりがちです。なお、受ける数より、順番のほうが結果に効きます。書類の書き方は住宅課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方までに整理しています。