部署別 / 住宅課
住宅課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
住宅課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「市営住宅の管理に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「団地の窓口にいた人」という像しか作れません。実際には、数百から数千の世帯について、毎年、収入を確かめて家賃を決め直し、滞納があれば段階を踏んで対応し、修繕を回し、出ていただく場面まで扱っていたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは住宅課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は住宅課から転職しやすい業界と職種に書いています。
家賃は、毎年、世帯ごとに決め直します
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
公営住宅法第16条は、家賃の決定について、こう定めています。
> 公営住宅の毎月の家賃は、毎年度、入居者からの収入の申告に基づき、当該入居者の収入及び当該公営住宅の立地条件、規模、建設時からの経過年数その他の事項に応じ、かつ、近傍同種の住宅の家賃以下で、政令で定めるところにより、事業主体が定める。
ここが、書類の芯です。
毎年度。入居者からの収入の申告に基づき。世帯ごとに。
つまり、この経歴の方は、「顧客ごとに条件が違う料金を、毎年、全件洗い替えする運用」を回してきたことになります。しかも、同条第5項は、病気その他特別の事情がある場合に家賃を減免できるとも定めています。例外の判断まで、手元にあったということです。
民間で人を採る側から見ると、これは「大量の個別の条件を、期限内に、間違いなく処理し、例外も判断できる人」です。不動産の管理でも、料金を扱う事業でも、直接に評価される部分です。
職務経歴書には、この量と精度が見えるように書いてください。
職務要約
悪い例
> 住宅課において、市営住宅の管理業務に従事。入居者対応、家賃収納、修繕の手配等を担当。
これでは、規模も、判断の範囲も読めません。
良い例(管理の実務が長い方)
> 市営住宅◯団地、約◯戸の管理を担当。入居の募集を年◯回実施し、応募約◯件の資格審査と選考を担当。入居世帯約◯世帯について、毎年度の収入の申告の受付から家賃の決定、通知、変更の処理までを実施。滞納の整理を年間約◯件担当し、督促、分割の相談、法的手続きの準備、福祉部門への連携までを実施。
良い例(政策と計画が長い方)
> 住生活基本計画の改定を担当し、住宅の市場の現況の分析、目標の設定、施策の組み立てを実施。空き家の実態の調査◯件を実施し、利活用の補助の制度を設計。住宅セーフティネット制度について、貸主および不動産の事業者への説明を行い、登録の働きかけを担当。公営住宅等長寿命化計画の改定にも従事。
太字にしなくても、数字と制度の名前が入っているだけで読み方が変わります。戸数、世帯数、募集の回数、滞納の件数。この4つのうち、分かるものから埋めてください。
担当業務
「市営住宅の管理」で丸めず、6つに分けてください。
| 機能 | 書き方の例 |
|---|---|
| 募集と選考 | 年◯回の募集、応募約◯件の資格の審査、選考、入居の決定 |
| 家賃の決定 | 入居世帯約◯世帯の収入の申告の受付、家賃の算定、通知、減免の判断 |
| 収納と滞納 | 家賃の収納の管理、督促、分割の相談、法的手続きの準備、連携 |
| 建物の維持 | 住棟約◯棟の修繕、設備の更新、長寿命化計画に基づく工事の発注 |
| 退去と明渡し | 退去の受付、原状回復、収入が基準を超えた世帯への対応、建替えに伴う移転 |
| 住宅の政策 | 住生活基本計画、空き家の対策、耐震やリフォームの補助、セーフティネット |
この6つのうち、自分がやっていないものは書かなくて構いません。むしろ、やっていない機能を空欄にしたほうが、やった機能の密度が読まれます。
とくに、1番目から3番目は、民間の賃貸の管理とそのまま重なります。書く順番を、応募先に合わせて入れ替えてください。
注意したいのは、5番目の「退去と明渡し」です。ここには、収入が基準を超えた世帯への対応が入ります。公営住宅法第29条は、引き続き5年以上入居し、最近2年間引き続き政令で定める基準を超える高額の収入があるときは、期限を定めて明渡しを請求することができると定めています。つまり、「契約を続けられるかどうかを、毎年の状況で見直す」運用です。民間の賃貸には、この発想がありません。契約は、更新まで続きます。ところが、法人向けの賃貸や、社宅の管理、補助を伴う住宅では、資格の継続を確かめる運用が出てきます。その経験を持っている人は、多くありません。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、滞りなく回ったこととして現れるからです。
悪い例
> 入居者からの相談に丁寧に対応し、適切な管理に努めた。
これは、姿勢の話であって、実績ではありません。
良い例——3つの型
型1:手順を作った
> 滞納について、発生からの経過月数で対応の段階を区分し、どの段階で誰が何をするかを文書化。担当者ごとに違っていた対応を統一し、初期の連絡の遅れを解消。
型2:量を回した
> 入居世帯約◯世帯の収入の申告について、受付から家賃の決定、通知までの工程を年度内に完了。未申告の世帯に対する督促の手順を整備し、未申告の件数を前年より削減。
型3:住み方を変えた
> 建替えに伴い、◯世帯の移転を担当。高齢の世帯を優先して住み替えの順番を設計し、説明会◯回と個別の相談を実施して、期間内に移転を完了。
3つとも、「対応した」ではなく、「自分が設計した」で書かれています。
なお、3つの型のうち、いちばん強いのは型1です。理由は、手順は引き継がれるからです。自分が異動した後も、作った段階の区分は残ります。面接で、「その手順は、今も使われていますか」と聞かれることがあります。残っていると答えられる実績は、個人の頑張りではなく、組織に残る設計として読まれます。型2と型3は、その年の成果です。型1は、その後も効き続けた成果です。
数字の出し方
| 数えるもの | 書き方の例 | 注意 |
|---|---|---|
| 管理の戸数 | 市営住宅◯団地、約◯戸 | 公表されている数字を使う |
| 入居の世帯数 | 入居世帯約◯世帯 | 家賃の決定の対象の数 |
| 募集と応募 | 年◯回、応募約◯件 | 倍率は書かなくてよい |
| 滞納の整理 | 年間約◯件 | 個別の事情は書かない |
| 修繕の件数と額 | 年間約◯件、約◯万円 | 発注の実績 |
| 移転の世帯数 | ◯世帯、期間◯か月 | 団地の名前は書かない |
「約」を付けて構いません。正確な数字が出せないことよりも、桁が分かることのほうが大事です。
応募先で並べ替える
| 応募先の方向 | 上に置く機能 |
|---|---|
| 賃貸住宅の管理の会社 | 募集と選考/家賃の決定/収納と滞納 |
| 開発・建替えの事業 | 退去と明渡し/建物の維持/移転の実績 |
| 居住の支援・高齢者向け住宅 | 収納と滞納(連携の部分)/募集と選考/相談 |
| 家賃債務の保証・金融 | 収納と滞納/家賃の決定/審査の基準 |
| 自治体を顧客とする企業 | 住宅の政策/建物の維持/委託の仕様 |
同じ経歴でも、順番を変えるだけで読まれ方が変わります。中身を作り直す必要はありません。
書いてはいけないこと
| ✕ 書かない | ○ こう書く |
|---|---|
| 入居者の事情や、滞納の個別の経緯 | 事情の類型と、段階ごとの対応の手順 |
| 団地の名前と、そこで起きたこと | 団地の数と規模、実施した工程 |
| 収入や世帯の状況が分かる記述 | 制度上の区分と、審査の基準 |
| 「あの団地は対応が難しかった」 | 「対応の段階を区分し、初期の連絡の遅れを解消した」 |
| 明渡しの訴訟の中身 | 法的手続きの準備までを担当した、という範囲の記載 |
1行目と3行目は、とくに注意してください。住宅の仕事は、扱う情報が、生活そのものです。類型と手順で書く。これを守るだけで、守秘の意識がある人だという評価にもつながります。
つまずきやすい点
1. 「市営住宅の管理」で丸める
募集と選考/家賃の決定/収納と滞納/建物の維持/退去と明渡し/住宅の政策の6つに分けてください。
2. 滞納の件数を書かない
この経歴でいちばん評価される部分です。伏せないでください。
3. 家賃の決定を、事務として書く
毎年、全件を洗い替える運用です。量と期限を書いてください。
4. 移転の調整を書き落とす
住んでいる方がいる建物を動かした経験は、民間の建替えで直接に効きます。
5. 政策の経験を、管理の経験と混ぜる
計画と補助金の実務は、別の方向で評価されます。分けて書いてください。
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まとめ
- 公営住宅法第16条は、家賃は毎年度、入居者からの収入の申告に基づき、世帯ごとに決めると定めています
- つまり、住宅課は「顧客ごとに条件が違う料金を、毎年、全件洗い替える運用」を回しています
- 職務要約には、戸数・入居の世帯数・募集の件数・滞納の件数を入れてください
- 実績は、①手順を作った ②量を回した ③住み方を変えたの3つの型で書けます
- 書いてはいけないのは、個別の事情、団地の名前、世帯の状況が分かる記述です
- 滞納の整理の件数は、数えていないことが多いので、過去1年分だけでも数えてください
よくある質問
窓口と受付が中心で、判断はしていないと感じます
窓口こそ、判断の場です。入居の相談に来た方の状況を聞いて、どの制度に当たるかを見て、要件に届かなければ別の窓口につなぐ。これは、選別と振り分けの判断です。書くなら、「入居の相談を年間約◯件受け付け、資格の確認、必要書類の案内、他の制度への案内を実施」という形です。とくに、「他の制度への案内」は、居住の支援を手がける事業者では、そのまま業務の中心になります。窓口の件数と、扱った相談の類型を書いてください。
滞納の対応で、訴訟まで進んだ案件があります
「法的手続きの準備までを担当」と書けば足ります。訴訟の中身、相手の事情、金額は書かないでください。書くべきは、そこに至るまでに、どういう段階を踏んだかです。「発生から◯か月で文書による督促、◯か月で分割の相談、応じられない場合に法的手続きの準備」という形です。民間の管理の会社や保証の会社が知りたいのは、結果ではなく、段階の設計です。どこで線を引いていたかが、そのまま経験の中身になります。
建築職で、修繕と建替えが中心でした
その場合は、建物の側で書いてください。書くべきは、①管理していた住棟の数と戸数 ②長寿命化計画の策定や改定 ③年間の修繕の件数と金額 ④建替えに伴う移転の調整の4つです。とくに、④は、技術職でありながら住民と直接に調整してきた経験として読まれます。民間の建替えの事業では、この組み合わせを持つ人が足りていません。書くなら、「建替えに伴い◯世帯の移転を担当。住み替えの順番の設計、説明会◯回、個別の相談を実施」という形です。面接で聞かれることは住宅課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。