部署別 / 環境課
環境課から転職しやすい業界と職種
環境課からの転職では、自分がどちらの仕事を長くやってきたかで行き先が変わります。
全国共通の制度を回す仕事か、その地域だけの課題を扱う仕事か。
この2つは、求人の種類がまったく違います。
この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。
言い換えは環境課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
「国の施策に準じた施策」と「区域の条件に応じた施策」
行き先を考える前に、この分かれ方の根拠を条文で押さえます。
環境基本法第7条は、地方公共団体の責務をこう定めています。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2つが並んでいます。
「国の施策に準じた施策」と、「区域の自然的社会的条件に応じた施策」。
前者は、全国どこでも同じ形をしています。廃棄物の処理、公害の規制、排出量の算定。法令と基準が全国共通なので、他の自治体でも、企業でも、同じ知識が通じます。
後者は、その地域にしかありません。どの川が汚れやすいか、どの地区で苦情が出るか、どの産業が排出源か、住宅と工場がどう隣り合っているか。
| 層 | 庁内でやっていたこと | 行き先の系統 |
|---|---|---|
| 全国共通の制度 | 廃棄物の処理、公害の規制、排出量の算定、アセスの手続 | 企業・処理業・コンサルのほう |
| 地域固有の課題 | 苦情の実情、地形と水系、産業の構成、住民との関係 | 自治体を顧客とする会社・地域の事業のほう |
前者を主にするなら、どこの会社でも通用します。
後者を主にするなら、その地域に関わる会社で、強い立場に立てます。
どちらが上ということではありません。ただ、書類の作り方が変わります。
向いている5つの方向
1. 廃棄物処理・リサイクルの企業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 委託の発注、許可の審査、搬入の管理、処理の実績の確認 |
| 求められる形 | 自治体からの受注、運営の管理、許可の維持、営業 |
| 入りやすさ | 高い。発注する側にいた人は、どこを見られるかを知っている |
書くときの注意。「業者を管理していた」ではなく、「何を見て、何を確認していたか」を書いてください。搬入量の記録、車両の台数、作業員の確保、契約に定めた水準の確認。この4つを挙げると、運営の実務を知っている人として読まれます。
この方向に固有の制約もあります。民間に移ると、今度は自分が許可を受け、検査を受ける側になります。行政が何を見るかを知っているのは有利ですが、「元の立場で話す」と、社内でも取引先でも浮きます。立場が入れ替わることを、先に自覚しておいてください。
2. プラント・環境設備・施設の運営受託
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 処理施設の運転の管理、維持補修の発注、搬入の調整、事故時の対応 |
| 求められる形 | 施設の運営、自治体への提案、維持管理の計画 |
| 入りやすさ | 高い。施設を持つ自治体の事情を知る人が求められる |
書くときの注意。施設の規模(処理能力、稼働年数)と、自分が扱った範囲を書いてください。運転そのものは委託でも、搬入の管理、補修の発注、停止時の対応は、行政側の仕事です。
3. 自治体を顧客とする企業(計画・脱炭素・環境の調査・アセス)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 計画の作られ方、指標の設計、進捗の説明、庁内の合意の取り方 |
| 求められる形 | 計画の策定の受託、排出量の算定、調査、提案 |
| 入りやすさ | 高い。行政の言葉と時期が分かることが、そのまま価値になる |
書くときの注意。「計画の策定に従事」ではなく、担当した分野と指標を書いてください。「◯分野の指標の設定と、年次の進捗の取りまとめ」という形です。
この方向に固有の制約もあります。受託の仕事は、年度の予算で動きます。春に公告が出て、秋から冬に成果をまとめる。つまり、繁忙の時期が、行政にいたときとほぼ同じです。変わるのは、複数の自治体を同時に持つことで、年度末の負荷が重なります。何件を同時に担当するのかは、面接で確認しておいてください。
4. 企業の環境管理・サステナビリティの部門
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 規制の側にいたこと。法令の読み方、届出の要否、測定の考え方 |
| 求められる形 | 法令の遵守の管理、届出、測定の手配、報告書の作成 |
| 入りやすさ | 中〜高。規制する側の経験は、社内では希少 |
書くときの注意。「指導をしていた」という書き方は避けてください。企業側から見ると、指導された側の記憶と結びつきます。書くなら、「基準との照合の実務」「届出の審査」という形です。同じことでも、印象が変わります。
この方向に固有の制約もあります。企業の環境管理は、一人か二人の部署であることが多いです。相談できる相手が社内にいない状態で、法令の改正を自分で追いかけることになります。行政では、上司も同僚も同じ制度を見ていました。そこが変わるので、外部の情報源(業界の団体、講習、行政の説明会)を自分で確保できるかが効いてきます。
5. エネルギー・再生可能エネルギー(地域との合意形成と許認可)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | アセスの手続、住民説明、苦情への対応、関係部署との調整 |
| 求められる形 | 事業の許認可、地域への説明、関係機関との協議 |
| 入りやすさ | 中。案件があるときに募集が出る |
書くときの注意。住民説明の経験は、必ず書いてください。この分野で案件が止まるのは、技術ではなく地域の理解が得られないときです。説明会を何回、何人規模で運営したかまで書くと、伝わります。
合いにくい方向
1. 個人向けの営業
相手が事業者や自治体でなくなると、この経歴の技術が使えません。
2. 短期の数字で評価される職種
止めないこと、落とさないことが仕事だった感覚とは、評価の形が違います。
3. 立ち上げ期の一人目
制度も手続もない環境で全部を作る役割です。この経歴は、既にある基準を読んで運用することに強いため、基準がない環境では時間がかかります。
4. 収集や処理の現場の作業職
発注する側にいたことと、現場の作業ができることは別です。体力と資格が前提の職種は、別の検討になります。
5. 研究・分析の専門職
測定や分析を専門とする職は、機器の実務経験が前提です。発注して結果を読んでいた立場とは、求められるものが違います。
役に立つ資格
取ってから動く必要はありません。応募しながらで構いません。
| 資格 | 効く方向 | 実際のところ |
|---|---|---|
| 公害防止管理者 | 製造業の環境管理、処理業 | この経歴といちばん相性がよい。規制の側で見てきた内容がそのまま範囲 |
| 廃棄物処理施設技術管理者 | 処理業、施設の運営 | 施設を持つ会社では要件になる。講習で取得できる区分がある |
| 環境計量士 | 測定、分析の会社 | 難易度は高い。測定の方向に進むなら効く |
| エネルギー管理士 | 製造業、エネルギー | 省エネの担当をしていたなら親和性がある |
| 日商簿記3級 | 処理業、施設の運営 | 事業の数字を見る方向では、懸念を先に消せる |
いちばん効くのは、公害防止管理者です。規制の側で見てきた内容が、そのまま試験の範囲にあたります。
求人を探すときの検索語
庁内の言葉で検索すると、求人が出てきません。
| 探している仕事 | 検索語 |
|---|---|
| 処理業・リサイクル | 産業廃棄物 営業/収集運搬 管理/リサイクル 事業企画 |
| 施設の運営 | プラント 運転管理/施設 維持管理/包括 運営 委託 |
| 自治体向け | 環境 コンサルタント/脱炭素 支援/環境影響評価/公共 調査 |
| 企業の環境管理 | 環境管理/EHS/法令遵守 環境/サステナビリティ 推進 |
| エネルギー | 再エネ 開発/地域 調整/発電所 許認可 |
「環境保全」「廃棄物処理」で検索しても、求人としては出てきません。上の言葉に置き換えてください。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
つまずきやすい点
1. 全国共通の制度と、地域固有の課題を分けずに書く
前者を主にすれば、どこでも通用します。後者を主にすれば、その地域で強くなります。
2. 「環境の専門知識がない」と考える
扱った法令の分野を並べてください。その数が、守備範囲として読まれます。
3. 「指導していた」と書く
企業側から見ると、指導された側の記憶と結びつきます。「基準との照合」「届出の審査」と書いてください。
4. 住民説明の経験を書かない
再エネや開発の分野では、ここで案件が止まります。回数と規模を書いてください。
5. 立場が入れ替わることを自覚しない
民間では、許可を受け、検査を受ける側になります。先に自覚しておいてください。
まとめ
- 環境基本法第7条は、「国の施策に準じた施策」と「区域の自然的社会的条件に応じた施策」の2つを定めています
- 前者を主にすればどこでも通用し、後者を主にすればその地域で強くなります
- 向いているのは、①処理・リサイクル ②プラント・施設の運営 ③自治体を顧客とする企業 ④企業の環境管理 ⑤エネルギーの5方向です
- 扱った法令の分野の数が、そのまま守備範囲として読まれます
- 資格は、公害防止管理者がこの経歴といちばん相性がよく、規制の側で見てきた内容が試験の範囲にあたります
- 「環境保全」では求人が出てきません。検索語を置き換えてください
よくある質問
廃棄物ばかりで、公害や温暖化はやっていません
廃棄物だけでも、行き先は十分にあります。むしろ、この分野は求人の数が多いほうです。処理業、リサイクル、施設の運営、収集運搬、自治体を顧客とする会社。どこも、自治体の事情を知る人を必要としています。書くときは、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」のどちらを扱っていたかを明示してください。市町村の担当なら一般廃棄物が中心のはずで、産業廃棄物は県の所管です。この線を自分で引いて書くと、制度を分かっている人として読まれます。
苦情の対応が中心で、専門の業務はしていません
苦情の対応は、この分野では専門の業務です。騒音、振動、悪臭、水質。それぞれ基準が違い、測定の方法も違います。そして、苦情の対応は、①聞き取り ②現地 ③測定 ④照合 ⑤指導 ⑥記録という工程で成り立っています。書くなら、「年間◯件の苦情に対応し、現地の確認と測定を実施。基準との照合のうえで対応を判断」という形です。とくに、「測定して基準内だったときに、どう説明したか」は、この仕事のいちばん難しい部分で、そこを説明できると、対応の技術として高く読まれます。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、この経歴は、全国共通の制度を主にするか、地域固有の課題を主にするかで、書類が変わります。1通で両方を狙うと、どちらにも寄り切らない書類になります。現実的なのは、主にするほうで1通作り、説明の型が近い2方向を並行して見る形です。たとえば、処理・リサイクルと、施設の運営は、どちらも「自治体が何を見るか」を聞かれるので、書類の作り直しが少なく済みます。書き方は環境課の職務経歴書に整理しています。