部署別 / 監査委員事務局
監査委員事務局の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
監査委員事務局の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「監査委員の補助業務。定期監査、例月出納検査、決算審査などを担当」
制度の名前が並んでいるだけで、何をどこまでやったかが1行も入っていません。
読む側は、ここから「資料をそろえていた人」という像しか作れません。実際には、計画の案を作り、資料の求め方を決め、帳票と実態を突き合わせ、報告の原案を書き、是正されたかを確認していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは監査委員事務局の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は監査委員事務局からの転職先に書いています。
「公正不偏」と「秘密を漏らさない」が、書き方の両方の縛りです
書き方に入る前に、この部署の判断の性格を条文で押さえます。書類の芯にもなり、同時に制約にもなる部分です。
地方自治法第198条の3第1項は、こう定めています。
監査委員は、その職務を遂行するに当たつては、法令に特別の定めがある場合を除くほか、監査基準に従い、常に公正不偏の態度を保持して、監査等をしなければならない。
そして第2項が続きます。
監査委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
2つのことが書かれています。
1つ目は、「監査基準に従い、常に公正不偏の態度を保持して」。
基準に従うという点が要点です。その場の感覚ではなく、あらかじめ定められた基準に沿って判断することが求められています。企業の内部監査でも、監査基準や手続書に沿って実施することが前提です。同じ枠組みの中で働いてきたことになります。
2つ目は、「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」。
これは、職務経歴書にそのまま効いてきます。監査で見た個別の事案は、公表されている監査結果の範囲を超えて書けません。
つまり、この経歴の書き方は、「基準に沿って実務を回したこと」を厚く書き、「何を見つけたか」は公表範囲にとどめる、という形になります。
ここを外すと、守秘の線が甘い人として読まれます。逆に、この線を守ったまま厚く書けている書類は、それだけで信用されます。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では監査委員事務局に所属。監査委員の補助として、定期監査、例月出納検査、決算審査などを担当しました。
制度名が並んでいるだけで、規模も工程も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人、一般会計予算約◯億円)の監査委員事務局で◯年間、内部監査に相当する実務を担当しました。監査委員の判断のもと、年間の監査計画の立案、対象◯部署への定期監査(年◯件)、月次の出納検査(年12回)、決算および健全化判断比率の審査、指定管理者・補助金交付先への監査を担当し、報告書の原案作成から措置状況の確認・公表までを一貫して担当しています。監査基準に沿った手続の設計と、証憑による裏づけの確認が中心の業務でした。
入っているもの
- 規模(人口、予算規模、対象部署数、件数)
- 工程の広さ(計画から措置状況の確認まで)
- 判断の性格(基準に沿った手続、証憑による裏づけ)
冒頭で「内部監査に相当する実務」と言い切ってください。ここで「補助業務」と書くと、その後を読んでもらえません。
担当業務
制度名を並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・定期監査> ・例月出納検査> ・決算審査> ・住民監査請求の処理> ・監査結果の公表
良い例
> 【年間監査計画の立案】> 前年度の指摘事項、予算規模、契約件数、過去の事故の有無をもとに対象部署と実施時期を配分。すべてを毎年見ることはできないため、優先順位の考え方を文書化して運用。>> 【定期監査(年◯件・対象◯部署)】> 事前の資料の特定と徴求、往査、帳票と証憑の突合、規程と実態の照合、担当課へのヒアリング。差異が見つかった場合に、誤りか運用上の事情かを切り分けたうえで、指摘と意見を区分。>> 【例月出納検査(年12回)】> 現金・預金の残高と帳簿の照合、収入・支出の証憑の抽出検証。期日が固定されているため、資料の受領から報告までの日程を定型化して運用。>> 【決算審査・健全化判断比率の審査】> 決算書および附属書類の確認、財政指標の算定根拠の検証、審査意見の原案作成。>> 【措置状況の確認と公表】> 指摘・意見に対する措置の報告を受け、内容を確認し、公表資料を作成。是正が完了するまで追跡する運用を担当。>> 【住民監査請求(年◯件)】> 請求の受理の適否の確認、調査事項の整理、関係人からの事情聴取の設定、監査結果の通知と公表の原案作成。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。制度名ではなく、そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。監査の成果は、個別の事案を書けないという制約があるからです。
悪い例
> 複数の不適切な事務処理を発見し、改善につなげました。
何を発見したかは書けないうえに、工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:仕組みを作った
> 監査対象の選定について、前年度の指摘、予算規模、契約件数などをもとに優先順位をつける基準を文書化。担当者が交代しても同じ観点で選定でき、年間◯件の監査枠を配分する手順として定着させた。
型2:処理量とサイクルを示した
> 年◯件の定期監査、年12回の例月出納検査、決算審査、住民監査請求◯件について、いずれも期日内に報告を提出。指摘・意見あわせて年間◯件を報告し、うち◯件について措置完了を確認した。
型3:報告の質を変えた
> 報告書の記載を「指摘」と「意見」に区分し、それぞれ根拠となる規程と条項を明示する形式に整理。あわせて、事実関係を事前に所管課へ確認する手順を入れたことで、報告後の照会が減り、措置の着手までの期間が短縮した。
型3が、この経歴でいちばん書きやすい形です。個別の事案に触れずに、報告の作り方だけで書けます。
数字の出し方
公表されている監査結果から取れる数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 監査対象の部署数・団体数 | 職務要約 | 監査計画で公表されていることが多い |
| 定期監査の年間件数 | 職務要約、担当業務 | 監査結果の公表資料から取れる |
| 例月出納検査の回数(年12回) | 担当業務 | 月次で回していた事実が効く |
| 指摘・意見の年間件数 | 実績 | 合計のみ。個別の内容は書かない |
| 措置完了の件数 | 実績 | フォローアップの証拠になる |
| 住民監査請求の件数 | 担当業務 | 件数のみ。請求人や内容は書かない |
| 一般会計の予算規模 | 職務要約 | 監査対象の規模が伝わる |
| 指定管理者・補助金交付先の監査件数 | 担当業務 | 委託先監査の経験として効く |
5行目の「措置完了の件数」が、いちばん差がつく数字です。指摘の件数だけを書く人は多いのですが、措置まで書く人は少ないためです。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 企業の内部監査 | 年間計画の立案と対象の選定 | 往査と証憑の突合 | 措置状況の追跡 |
| 内部統制の評価 | 規程と実態の照合 | 指摘と意見の区分 | 報告書の作成 |
| コンプライアンス・不正調査 | 住民監査請求の処理 | 事情聴取の設定と記録 | 結論の公表 |
| 経理・財務 | 例月出納検査(年12回) | 決算審査 | 証憑による裏づけ |
| 公会計・自治体向け企業 | 健全化判断比率の審査 | 公会計の理解 | 監査の実際を内側から知っていること |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
第198条の3第2項が定める「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」の側です。ここを守れる人かどうかも、書類から読まれています。
- 監査で見つけた個別の事案(公表されている監査結果の記載を超えて書かない)
- 指摘を受けた部署名や、担当者が特定できる記述
- 住民監査請求の請求人、請求の内容、関係人の氏名
- 事情聴取で得た供述の内容
- 公表前の監査結果や、監査中の案件
- 不正が疑われた事案の経緯(公表されていないもの)
- 監査委員個々の発言や、合議の過程
書けるのは、「手続の構造」と「公表されている集計」までです。
> ✕ 「◯◯課で、補助金の交付要件を満たさない支出を発見し、返還を求めた」> ○ 「補助金交付先への監査について、交付要綱と実績報告の突合を行い、要件の適合性を確認する手順を運用した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が設計した手続が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「監査委員の補助業務」と書く
冒頭で「内部監査に相当する実務」と言い切ってください。判断の主体は監査委員だと添えれば、正確さも保てます。
2. 制度名を並べるだけで終える
そこで何を判断していたかを1つずつ足してください。
3. 措置状況の確認を書かない
この経歴でいちばん効く一手です。指摘の件数だけでなく、措置完了の件数まで書いてください。
4. 書ける範囲を絞りすぎる
公表されている監査結果に載っている範囲なら書けます。先に一通り見てください。
5. 応募先ごとに並べ替えない
1番目を変えるだけで十分です。全部書き直す必要はありません。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第198条の3は、監査基準に従い、常に公正不偏の態度を保持して監査を行うこと、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないことを定めています
- 書き方の原則は、「基準に沿って実務を回したこと」を厚く書き、「何を見つけたか」は公表範囲にとどめることです
- 職務要約では、冒頭で「内部監査に相当する実務」と言い切ってください
- 担当業務は、制度名の一覧ではなく工程として書き、そこで何を判断していたかを足します
- 実績は、①仕組みを作った ②処理量とサイクルを示した ③報告の質を変えたの3つの型で書けます。③は個別の事案に触れずに書けます
- 措置完了の件数がいちばん差がつく数字です。指摘の件数だけを書く人は多く、措置まで書く人は少数です
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。監査委員事務局は扱う監査の種類が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば内部監査に応募するなら、健全化判断比率の審査は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
監査委員事務局の前にいた部署も書いたほうがよいですか
財政・会計・契約にいた方は、必ず書いてください。「監査で見る側と、見られる側の両方を知っている」という説明ができます。企業の内部監査でも、経理や業務の実務経験がある監査担当は重宝されます。ただし、時系列で全部並べるのではなく、「監査で何を見るべきかが分かる根拠」として接続させて書いてください。並べるだけでは、この関係が伝わりません。
監査基準は、書類に書いてよいですか
書けます。多くの団体が監査基準を公表しており、公表されているものは引用できます。書くなら、「監査基準に定める手続に沿って、事前の準備から報告までを実施した」という形で足りるので、条文の引き写しは不要です。むしろ、基準に沿って手続を設計した経験として書くほうが読まれます。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。