部署別 / 監査委員事務局
監査委員事務局の面接|聞かれることと、答え方の型
監査委員事務局の面接で、いちばん多く聞かれるのはこの質問です。
「指摘を出したときに、相手から反発されたことはありますか。どう対応しましたか」
内部監査の面接では、必ずと言っていいほど出ます。
理由は明快で、企業の内部監査でいちばん難しいのが、指摘を受け入れてもらうことだからです。正しいことを書いても、相手が動かなければ何も変わりません。
そして、この質問には、自治体の監査を経験している人のほうが答えやすいという事情があります。
この記事では、実際に出てくる質問を並べ、それぞれをどう答えるかを整理します。
言い換えは監査委員事務局の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は監査委員事務局からの転職先、書類は職務経歴書に分けています。
監査の入口が、組織の外にもあります
答え方の前に、この部署の特徴を条文で確認します。企業の内部監査にはない要素です。
地方自治法第242条第1項は、こう定めています。
普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求めることができる。
住民が、監査委員に対して直接、監査を求められます。
企業の内部監査は、年間計画に基づいて自分たちで対象を決めるのが基本です。外から「ここを調べてください」と言われることは、内部通報を除けばあまりありません。
自治体では、それが制度として常設されています。
つまり、この経歴の持ち主は、自分たちで選んだ対象を調べる監査と、外から申立てを受けて調べる監査の両方を経験しています。
面接では、これを分けて話してください。
> 計画監査と、外部からの申立てを受けた調査の両方を担当していました。後者は、企業でいえば内部通報を受けて調査するのに近い形です。
この一言で、コンプライアンス方向の評価が変わります。
質問1:「監査委員事務局では、どういうことをされていたんですか」
避けたい答え方
「監査委員の補助として、定期監査や例月出納検査、決算審査などを担当していました」。
制度名が並んでいるだけで、資料をそろえていた人という像で固定されます。
組み立て方
枠 → 規模 → 工程の順です。
> 御社でいうと内部監査にあたる仕事です。予算規模約◯億円の団体で、対象◯部署について年◯件の監査を担当していました。年間計画の立案から、資料の徴求、往査、帳票と証憑の突合、報告書の原案作成、そして措置状況の確認と公表までを一貫して担当しています。判断の主体は監査委員ですが、実務はこちらで組み立てていました。
最後の一文を必ず入れてください。判断の主体を正確に言ったうえで、実務の範囲を全部言う。これで、正確さと実績の両方が伝わります。
質問2:「指摘に反発されたとき、どう対応しましたか」
この経歴でいちばん強く答えられる質問です。
避けたい答え方
「規程に基づいて説明し、理解していただきました」。
間違いではありませんが、手続が見えません。
組み立て方
事前の確認 → 区分 → 根拠の明示の3段で話します。
> まず、報告に載せる前に、事実関係を所管課に確認する手順を入れていました。認識の食い違いを報告に載せてしまうと、そこで議論が止まり、是正そのものが進まないためです。そのうえで、「指摘」と「意見」を分けて書きます。指摘は是正が必要なもの、意見は改善が望ましいもので、根拠となる規程と条項を必ず明示します。それでも納得が得られない場合は、差異が「誤り」なのか「運用上の事情」なのかをもう一度切り分けました。規程どおりでない処理にも合理的な理由がある場合があり、そのときは指摘ではなく意見にします。全部を指摘にすると、報告自体が読まれなくなるためです。
「全部を指摘にすると読まれなくなる」という一言が効きます。監査の実務を知っている人の言葉だからです。
質問3:「何を見て、誤りや不正に気づくのですか」
実務の深さを測る質問です。
組み立て方
具体的な突合の対象を挙げてください。
> 単独の帳票を眺めても、気づけることは限られます。2つ以上のものを突き合わせたときに差が出ます。帳票と現物、規程と実態、予算と執行、契約書と検査調書、交付要綱と実績報告。たとえば契約であれば、仕様書と検査調書と支払の記録を並べて、書かれたとおりのものが納められ、それを確認した記録が残っているかを見ます。差が出た箇所については、なぜその差が生じたかを所管課に確認したうえで、誤りか運用上の事情かを判断していました。
「2つ以上を突き合わせたときに差が出る」という説明は、そのまま企業の内部監査でも通用する言い方です。
質問4:「会計の知識はどの程度ありますか」
経理・財務方向でも、内部監査方向でも出ます。
避けたい答え方
「公会計しか分からないので、企業会計は経験がありません」。
できないことだけが残ります。
組み立て方
経験の内容を具体的に言ったうえで、差分を認めます。
> 決算審査と、月次の出納検査を担当していました。現金・預金の残高を帳簿と証憑で毎月照合する作業と、決算書および附属書類の確認、財政指標の算定根拠の検証です。企業会計とは体系が違うため、そのままの知識としては使えません。ただ、数字の裏づけを帳票までたどるという習慣は同じだと考えています。企業会計については、日商簿記2級の学習を進めています。
「体系が違う」と自分から言うほうが、信用されます。そのうえで、共通する部分を1つ挙げるのが型です。
質問5:「外部からの申立てを扱った経験はありますか」
コンプライアンス方向で出ます。
組み立て方
手続の形で答えてください。
> 住民監査請求という、住民が直接、監査を求められる制度があります。年◯件を担当しました。流れとしては、まず請求として受理できるかの適否を確認します。対象が公金の支出や契約など、制度の範囲に入っているか、期間の要件を満たしているか。次に調査する事項を整理し、関係人からの事情聴取の設定を行い、監査結果の通知と公表の原案を作成します。個別の案件の内容は話せませんが、受理から公表までの手順は一通り担当しています。
「個別の案件の内容は話せませんが」と自分から言ってください。守秘の線を自分で引ける人として読まれます。ここは評価に直結します。
質問6:「うちで何ができますか」
応募先の方向によって、答えを完全に変えます。
| 応募先の方向 | 前に出すこと |
|---|---|
| 企業の内部監査 | 年間計画、往査、報告、措置状況の追跡 |
| 内部統制の評価 | 規程と実態の照合、指摘と意見の区分 |
| コンプライアンス・不正調査 | 申立ての受理から公表までの手続 |
| 経理・財務 | 月次の出納検査、証憑による裏づけ |
| 公会計・自治体向け企業 | 健全化判断比率、監査の実際 |
質問7:希望する条件について
給与や勤務条件の話も出ます。ここで長く話す必要はありません。
「現在の水準を基準に考えています」と伝え、具体的な調整は選考が進んでからにするのが一般的な進め方です。
なお、退職手当や共済の扱いは在職期間で変わる部分があります。手続きの前に、必ず所属の人事担当課と共済組合で確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
逆質問で聞いておくこと
1. 内部監査は、誰に報告しているか
社長なのか、取締役会なのか、監査役会・監査等委員会なのか。報告先が、独立性の実質を決めます。執行のトップにだけ報告する体制だと、執行に不利な指摘が出しにくくなります。監査委員事務局は独立性が法律で担保されていたので、ここは必ず確認してください。
2. 指摘に対する是正を、誰が追跡しているか
追跡していないと答える会社は、少なくありません。その場合、フォローアップの仕組みを作る側に回れます。この経歴の強みが最も活きる状況なので、悪い話ではありません。
3. 年間の監査計画は、どうやって対象を決めているか
前年度の指摘、事業の規模、過去の事故。選定の基準があるかどうかを聞いてください。基準がないまま毎年同じ部署を見ている会社もあります。その場合も、基準を作った経験が使えます。
つまずきやすい点
1. 「補助でしたので」から入る
実務を話し終えた後に添えてください。順番が逆だと印象が反転します。
2. 指摘の質問に、手続で答えない
事前の確認 → 区分 → 根拠の明示の3段で答えてください。
3. 「公会計しか分からない」で止まる
体系が違うと自分から言ったうえで、共通する習慣を1つ挙げてください。
4. 住民監査請求の中身を話してしまう
「個別の案件の内容は話せませんが」と自分から言うほうが、評価されます。
5. 措置状況の追跡を言わない
企業の内部監査で弱い部分です。こちらから言ってください。
答え方の組み立ては、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第242条は、住民が監査委員に対して直接、監査を求められると定めています。監査の入口が組織の外にもあるのが、この部署の特徴です
- 面接では、計画監査と、外部からの申立てを受けた調査の両方を担当していたと分けて話してください
- 最初の質問には、枠 → 規模 → 工程の順で答え、「判断の主体は監査委員だが、実務はこちらで組み立てていた」と添えます
- 「指摘に反発されたとき」には、事前の確認 → 指摘と意見の区分 → 根拠の明示の3段で答えます
- 「全部を指摘にすると、報告自体が読まれなくなる」という一言が、実務を知っている証拠になります
- 逆質問では、報告先/是正の追跡/監査対象の選定基準の3つを聞いてください
よくある質問
監査の経験が公的機関だけでも、内部監査に採用されますか
採用されています。企業の内部監査は資格を前提としない職種で、計画・往査・報告・追跡のサイクルを回した経験があるかどうかが見られます。公的機関での監査は、この4段階がそのまま揃っているため、経験として読まれます。むしろ、独立性が法律で担保された環境で監査をしてきたという点は、民間では得にくい経歴です。
面接で監査の具体例を求められたら、どこまで話せますか
公表されている監査結果の範囲までです。自分の団体が公表している監査結果に載っている内容であれば、誰でも見られる情報なので話せます。ただし、部署名や担当者が特定できる形にはしないでください。安全なのは、「◯◯の観点で突合を行い、差異が確認されたものについて、根拠の条項を示して指摘した」という、手続の形で話すことです。手続で話せることが、そのまま評価になります。
内部監査は1人体制の会社もあると聞きましたが、大丈夫ですか
確認しておくべき点ではあります。1人体制だと、計画から報告まで全部を1人で回すことになり、相談する相手がいません。ただ、監査委員事務局も少人数で複数の監査を回していることが多いので、人数そのものより、報告先と、監査計画を承認する仕組みがあるかを確認してください。逆質問で聞いておく3点に含めてあります。