部署別 / 監査委員事務局
監査委員事務局の働き方と評価|一年の波と、成果が測りにくい理由
監査委員事務局の仕事には、成果を何で測るかが決まっていないという特徴があります。
指摘の件数が多いほうがよいのか、少ないほうがよいのか。
多ければ「よく見ている」とも「組織に問題が多い」とも読めます。少なければ「健全だ」とも「見落としている」とも読めます。どちらとも言えるため、件数は評価の指標になりません。
この記事では、一年の波と、成果が測りにくくなる構造、そして民間に移ったときに何が変わるかを整理します。不満の話ではなく、構造の話として読んでください。転職の場面で、自分の仕事をどう説明するかに直結します。
言い換えは監査委員事務局の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は監査委員事務局からの転職先、書類は職務経歴書、面接は面接で聞かれることに分けています。
自分たちの監査の横に、外部の監査が並んでいます
まず、この部署の一年に組み込まれているもう一つの仕事を条文で確認します。
地方自治法第252条の27は、こう定めています。
この法律において「外部監査契約」とは、包括外部監査契約及び個別外部監査契約をいう。
そして、包括外部監査契約について、第2条第14項及び第15項の規定の趣旨を達成するため、この法律の定めるところにより契約を締結するものと続きます。
自治体の監査は、監査委員だけが行うものではありません。
都道府県、指定都市、中核市などでは、包括外部監査が毎年度行われます。契約の相手方は、公認会計士、弁護士、税理士など、組織の外にいる専門家です。
つまり、この部署は、
- 自分たちで計画を立てて行う監査
- 外部の専門家が行う監査への対応と、結果の取りまとめ
の両方を扱っています。
ここが働き方に効いてきます。外部監査の実施時期は自分たちで決められないうえ、外部の監査人から資料の提供や調整を求められる立場にもなります。
そして、この経験は転職の場面で使えます。企業の内部監査も、会計監査人(監査法人)の監査と並走します。内部監査部門が監査法人の対応窓口になることは珍しくありません。外部の監査人と並走した経験がある人は、そのまま評価されます。
一年の波
年間の動きは、決算審査を最大の山として、定期監査が前後に配分される形になります。
| 時期 | 主な仕事 | 忙しさ |
|---|---|---|
| 4〜5月 | 年間監査計画の策定、前年度の措置状況の取りまとめ | 中 |
| 6〜7月 | 定期監査(前半)、包括外部監査のテーマ確定への対応 | 高 |
| 8〜9月 | 決算審査・健全化判断比率の審査。審査意見の作成 | 最も高い |
| 10〜11月 | 定期監査(後半)、指定管理者・補助金交付先の監査 | 高 |
| 12〜1月 | 包括外部監査の結果報告への対応、監査結果の公表 | 中 |
| 2〜3月 | 次年度の監査計画の準備、年度末の検査 | 中 |
| 毎月 | 例月出納検査(年12回) | 通年で固定 |
| 通年 | 住民監査請求、議会からの監査の要求 | 読めない |
いちばん重いのは8〜9月です。決算審査には期限があり、議会の認定に間に合わせる必要があります。しかも、健全化判断比率の審査も同じ時期に重なります。
そして、読めないのが住民監査請求です。請求があれば、受理から結果の通知まで期間の制約の中で処理する必要があり、予定していた監査がそのまま押し出されます。
もう一つ、例月出納検査が毎月あります。期日が固定されているため、どんなに他が立て込んでいても、月に一度は必ず回ってきます。
成果が測りにくいのは、指標の性質によるものです
監査委員事務局の成果が測りにくいのには、3つの構造的な理由があります。評価してもらえないという話ではなく、指標の性質からそうなるという話です。
1. 指摘の件数が、多くても少なくても説明できてしまう
冒頭に書いたとおりです。件数そのものは、良し悪しの方向を持ちません。
2. 改善の成果は、所管課に帰属する
指摘を受けて事務を直したのは所管課です。改善された状態は、所管課の成果として整理されます。監査は、そのきっかけを作ったにとどまります。
3. 対象部署と利害が一致しない位置に置かれている
これは制度上そう設計されています。監査は、独立して、公正不偏に行うものとされているからです。協力して同じ目標を追う関係ではないぶん、共同の成果として数えられる場面がありません。
この3つのうち、1つ目は自分で置き換えられます。
指摘の件数ではなく、「措置完了の件数」と「措置までの期間」を持っておくことです。
これは方向を持つ指標です。措置が完了したものが多く、期間が短ければ、監査が機能したと言えます。企業の内部監査でも、まさにこの指標が見られます。
民間に移ると変わる4つのこと
1. 成果が金額と是正率で測られる
企業では、指摘によって防げた損失、是正された割合、監査にかかった工数が見られます。「適正に実施した」では評価が止まります。
だから、措置完了の件数と期間を持っていることが、そのまま強みになります。
2. 報告先が経営になる
自治体では、監査委員が独立した機関として結果を公表します。企業では、経営や取締役会、監査役会に報告します。
経営の関心に沿って対象を選ぶことが求められる場面が出てきます。独立性と、経営の関心。この2つのバランスを取るのが、企業の内部監査の難しさです。
3. 監査の対象が事業そのものに広がる
自治体の監査は、財務の執行と事業の管理が中心です。企業では、売上の計上、在庫、与信、購買、情報システムなど、事業の中身そのものが対象になります。
業務の理解が必要になるぶん、入ってからの学習量は増えます。
4. 周期が短くなる
上場企業では、内部統制の評価が毎年度あり、四半期ごとに進捗が問われることがあります。年度単位のサイクルに慣れていると、最初は速く感じます。
在職中に残しておくべき記録
転職を考え始めたら、在職中に手元に控えておくものがあります。辞めてからでは集めにくくなります。
| 残すもの | 使う場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 監査対象の部署数・団体数 | 職務要約 | 監査計画で公表されている |
| 定期監査の年間件数 | 職務要約、実績 | 監査結果の公表資料から取れる |
| 例月出納検査の回数(年12回) | 担当業務 | 月次で回していた事実が効く |
| 指摘・意見の年間件数 | 実績 | 合計のみ。個別の内容は書かない |
| 措置完了の件数と、措置までの期間 | 実績・面接 | いちばん効く。自分で控えるしかない |
| 住民監査請求の件数 | 担当業務 | 件数のみ |
| 包括外部監査への対応の経験 | 面接 | 外部監査人と並走した経験として使える |
| 一般会計の予算規模 | 職務要約 | 監査対象の規模が伝わる |
5行目が最重要です。措置までの期間は公表されていないことが多く、在職中に自分で控えておくしかありません。
そして、書いてはいけないものも確認しておきます。
- 監査で見つけた個別の事案(公表されている監査結果の記載を超えない)
- 指摘を受けた部署名や、担当者が特定できる記述
- 住民監査請求の請求人、請求の内容、関係人の氏名
- 事情聴取で得た供述の内容
- 公表前の監査結果や、監査中の案件
- 監査委員個々の発言や、合議の過程
公表されている資料に載っている範囲で書くのが原則です。
つまずきやすい点
1. 「監査委員の補助」で説明を終える
内部監査に相当する実務と言い切ってください。判断の主体は後から添えます。
2. 指摘の件数だけを持っている
件数は方向を持たない指標です。措置完了の件数と期間を控えてください。
3. 待ち時間を「進まなかった」と説明する
「他部署の対応に依存する工程を、期限内に収めてきた」と言い換え、待ち時間を減らす工夫を1つ足してください。
4. 包括外部監査への対応を書かない
外部の監査人と並走した経験は、企業の会計監査人対応と重なります。
5. 退職後の手続きを確認しないまま動く
退職手当や共済の扱いは在職期間で変わります。所属の人事担当課と共済組合で先に確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
どの経験がどの方向で値が付くかは、募集の出方で変わります。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第252条の27は、包括外部監査契約と個別外部監査契約を定めています。自分たちの監査の横に、外部の専門家による監査が並ぶのがこの部署の環境です
- 外部の監査人と並走した経験は、企業の会計監査人への対応と重なります
- 一年の山は8〜9月の決算審査と健全化判断比率の審査。例月出納検査は毎月固定で、住民監査請求は読めません
- 成果が測りにくいのは、件数が方向を持たない/改善の成果は所管課に帰属する/対象部署と利害が一致しない位置にあるという3つの構造によるものです
- 指摘の件数ではなく、措置完了の件数と措置までの期間を持ってください。これは方向を持つ指標です
- 民間に移ると、金額と是正率で測られる/報告先が経営になる/対象が事業そのものに広がる/周期が短くなるの4点が変わります
よくある質問
残業は多い部署ですか
団体や年によって違うため、一般化はできません。ただし、構造として、8〜9月の決算審査に集中すること、例月出納検査が毎月固定であること、住民監査請求が予定を押しのけることは、どこでも共通します。面接で聞かれたら、年度のサイクルに沿って偏ると説明するのが正確です。個別の職場の事情をそのまま話す必要はありません。
監査される側から歓迎されない立場は、民間でも同じですか
構造としては同じです。内部監査は、独立して判断する立場に置かれるため、対象部署と同じ目標を追う関係にはなりません。ただし、企業では「指摘して終わり」ではなく、改善の提案まで求められることが多く、関係の作り方が少し違います。面接では、事前に事実関係を確認する手順や、指摘と意見を分けて書く運用を話すと、関係を作れる人として読まれます。
異動して1年ですが、経歴として使えますか
使えますが、もう一年いたほうが材料は増えます。一年目は制度の理解と手続を覚えることに時間がかかり、「仕組みを作った」という実績が出にくいためです。二巡目に入ると、前年度の指摘を踏まえた計画が立てられるようになり、判断の質が変わります。判断の目安は、定期監査を一通り回し、決算審査を一度経験しているかです。書き方は職務経歴書に整理しています。