財政課転職PUBLIC → PRIVATE 無料で相談する

部署別 / 交通・公営企業

交通・公営企業の経験は民間で何と呼ばれるか

交通局や公営企業の経験を、職務経歴書にどう書けばよいか。ここでつまずく方が多いのは、「公営」という言葉が、民間に「役所」として読まれるからです。

「交通局において公営企業の運営に従事」と書くと、役所の交通の窓口にいた人に読まれます。実際には、数百台のバスや数十編成の電車を毎日決まった時刻に走らせ、車両と施設を保ち、運賃を設計し、乗客を数え、路線ごとの収支を見て、事故が起きれば止める判断をしていたわけですが、それが伝わりません。

この記事では、民間での訳語と、中核スキルの分解を並べます。

「企業の経済性」と「公共の福祉」が同じ条文に書かれています

まず、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。地方公営企業法第3条です。

> 地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。

2つのことが、1つの文に書かれています。

「企業の経済性を発揮する」。そして、「公共の福祉を増進する」。

しかも、第2条は、この法律が適用される事業として、水道、工業用水道、軌道、自動車運送、鉄道、電気、ガスを列挙しています。バスも、地下鉄も、路面電車も、この中に入っています。

ここが、この経歴の性格を決めています。

つまり、この経歴の方は、「採算を取れ、しかし採算だけで決めるな」という条件で、事業を回してきたことになります。赤字の路線を、採算だけで切ることはできない。しかし、税で埋め続けることも許されない。その間で、毎年、決めてきた。

しかも、公営のバスは、道路運送法第4条のもとで、民間のバスと同じ許可を受けて走っています。同じ法律、同じ基準、同じ監査。違うのは、経営の主体だけです。

民間で人を採る側から見ると、これは「公共性の制約のもとで、事業の採算を管理してきた人」です。鉄道、バス、物流、施設の運営、公益の事業——同じ条件の事業は、民間にいくつもあります。

民間での訳語

行政での言い方民間での言い方
公営企業の運営事業の運営、独立採算の事業の管理
運行管理・ダイヤの編成オペレーションの管理、サービスの設計、需要に応じた供給の計画
路線の見直し・再編事業のポートフォリオの見直し、不採算部門の整理と再配置
車両の保守・更新設備の保全、資産の管理、設備投資の計画
運賃の改定料金の設計、価格の改定と認可の対応
乗客数の把握・需要の分析需要予測、データの分析、マーケティング
路線ごとの収支の管理部門別の損益管理、採算の管理
一般会計からの繰入れの協議補助の獲得、親会社との資金の調整
公営企業会計・決算財務会計、損益と資金の管理
運転士・乗務員の管理人員の配置、シフトの設計、労務の管理
安全管理・事故の対応安全の管理体制、危機の対応、再発の防止
沿線の開発・広告・関連事業付帯事業、収益の多角化

この表を職務経歴書にそのまま貼る必要はありません。ただ、自分がやっていたことに、民間で通じる名前が付いていることは、知っておいてください。

中核スキルを5つの工程に分ける

この経歴の中核は、「止められないサービスを、採算の中で毎日出す」ことです。5つの工程に分けます。

工程1:走らせる

ダイヤ、乗務員の配置、車両の割り当て。毎日、決まった時刻に、決まった本数を出します。

この工程に固有の制約があります。在庫が持てないということです。走らなかった便を、後で売ることはできません。需要に合わせて、供給を毎日出し切る。しかも、乗務員が1人欠ければ、便が1本消える。この条件で回してきた経験は、同じ性質を持つ事業——物流、飲食、施設の運営、医療——で、そのまま通じます。

工程2:保つ

車両の検査、施設の点検、更新の計画。数百台の車両を、法定の周期で検査しながら走らせます。

この工程に固有の制約があります。検査で車両を止めれば、その分だけ走らせる車両が減るということです。保全と運行が、同じ資産を取り合う。だから、何台を予備に持つか、いつ検査に入れるかを、運行と一緒に決める。この形の資産の管理は、運送、レンタル、設備を持つサービス業と共通しています。

工程3:売る

運賃、定期券、ICカード、広告、沿線の事業。乗ってもらって、初めて収入になります。

この工程に固有の制約があります。運賃を、自由に決められないということです。地方公営企業法第21条は、料金を「能率的な経営の下における適正な原価を基礎」とすると定め、改定には手続きが要ります。価格で勝負できない事業で、どうやって乗客を増やすか。ダイヤ、路線、接続、情報の出し方。価格以外の全部で売る。この経験は、規制された価格の中で売る事業——電力、ガス、通信、医療——で直接に効きます。

工程4:数える

公営企業会計、路線ごとの収支、一般会計との負担の区分。どの路線が、いくらの赤字か。それを、毎年出します。

この工程に固有の制約があります。赤字を、そのまま切れないということです。民間であれば、不採算の部門は縮小か撤退です。公営では、その路線に住む人の足を、どう保つかを先に考える。だから、「切る」ではなく、「減らす」「変える」「別の手段に置き換える」を、数字と一緒に組む。採算と公共性を同じ表に載せて判断する技術です。これは、民間でいえば、事業のポートフォリオの管理と、ステークホルダーへの説明に当たります。

工程5:守る

安全管理、事故の対応、災害時の運行。人を乗せている以上、安全が最優先です。

この工程に固有の制約があります。事故が起きれば、その日のうちに公表されるということです。しかも、運行を止める判断は、住民の足を止める判断です。止めれば苦情が来る。止めなければ危険が残る。その判断を、時間のない中でしてきた。この形の安全の管理は、製造でも、物流でも、施設の運営でも、そのまま求められます。

民間の交通事業・サービス業と、どこが同じでどこが違うか

同じ点は3つあります。

違う点は4つあります。

違い行政(交通・公営企業)民間(交通・サービス業)
撤退の判断不採算でも、住民の足として残す判断が先に来る採算で撤退できる
価格の決め方適正な原価を基礎に、手続きを経て改定市場と原価で決める。規制業種は同様の制約あり
赤字の埋め方一般会計からの繰入れ。根拠の説明が要る他の事業の利益か、借入れ
利益の扱い経済性の発揮は義務だが、利益の最大化は目的ではない利益が事業の目的に含まれる

この4つのうち、移った後にいちばん効くのは、1番目です。撤退できない条件で、不採算の事業を回してきた経験は、民間でも希少です。採算で切れる環境に移ると、むしろ楽に感じる方が多い部分です。

もう1つ、効き方が大きいのは4番目です。公営企業は、経済性の発揮を法律で求められています。税で埋めればよい、という前提ではない。移った後は、ここに「利益」という項目が足される。ただし、足されるだけです。費用を積み上げて、収入と突き合わせて、資金の残高を見るという作業は、公営企業会計でやってきたことと同じです。まったく新しい考え方を学び直すわけではない——ここは、先に知っておくと構えずに済む部分です。

評価が高くなりやすい4つの方向

1. 民間の鉄道・バス・タクシーの会社

同じ許可、同じ基準で走っています。運行管理も、車両の保全も、そのまま通じます。

2. 物流・運送の会社

在庫の持てないサービスを、車両と人で毎日出す。構造が、ほぼ同じです。

3. 交通の計画を支援するコンサルタント・自治体向けの交通の事業者

路線の再編、需要の分析、地域の交通の計画。発注の側にいた経験が効きます。

4. 施設の運営・公益の事業

規制された価格の中で、価格以外で売る。電力、ガス、通信、指定管理の施設。

なお、この4方向は、求める経験が違います。1番と2番は、運行と保全の現場を見ます。3番は、計画と数字を見ます。4番は、料金の設計と公共性の説明を見ます。同じ交通局の経歴でも、運行か、車両か、経営の企画かによって、通りやすい方向が変わるということです。自分がどの工程を長くやってきたかを、先に整理しておいてください。

どの経験に値が付くのかから、相談できます。在職中でも、情報収集だけでも構いません。

つまずきやすい点

1. 「公営企業の運営に従事」で丸める

走らせる/保つ/売る/数える/守るの5つに分けてください。

2. 規模の数字を書かない

路線数、車両数、年間の輸送人員、乗務員の数。桁だけでも入れてください。

3. 路線の見直しを、事務として書く

事業の再編です。数字と説明の両方を担ったことが伝わる形にしてください。

4. 公営企業会計の経験を書き落とす

独立採算の事業の数字です。損益と資金を見ていたなら、そう書いてください。

5. 事故や災害の対応を、苦労話にする

止める判断と再開の判断を、基準に沿って運用していたと書いてください。

LINEで短く聞くこともできます

行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。

まとめ

よくある質問

事務職で、運行や車両の技術的なことは分かりません

それでも書けます。交通局の事務は、運賃の改定と認可の申請、路線別の収支の分析、一般会計との繰入れの協議、公営企業会計の決算、契約と入札、広告と関連事業、乗客からの苦情の対応など、技術以外の部分が広くあります。とくに、運賃の改定と認可の申請は、規制された価格を動かす手続きを知っているということで、民間の交通事業でも公益の事業でも、そのまま求められる経験です。書くなら、「運賃の改定の試算と認可の申請、路線別の収支の分析、公営企業会計による決算を担当。運行と車両の技術上の判断は技術職が実施」と、自分の範囲を明示してください。

病院事業や電気・ガス事業で、交通ではありません

書き方の骨は同じです。地方公営企業法は、水道、工業用水道、軌道、自動車運送、鉄道、電気、ガスに適用され、病院事業には財務の規定が適用されます。つまり、公営企業会計、料金の原則、一般会計との負担の区分、経済性と公共性の両立は、どの事業でも共通です。違うのは、工程1から5の中身です。病院なら「診る」「保つ」「請求する」「数える」「守る」、電気やガスなら「作る」「送る」「売る」「数える」「守る」。自分の事業に合わせて、5つの工程を置き換えてください。行き先も、病院なら医療法人や医療系の企業、電気・ガスなら民間の公益事業と、同じ構造の民間側がそのまま並びます。

民間への移管や共同の運行が進んでいて、先が不安です

その動きは、むしろ経験の価値を上げる方向に働いています。公営の交通事業が民間に移管される、民間の事業者と共同で運行する。いずれも、公営の側の事情と、民間の事業の両方が分かる人が必要になる動きです。受け入れる民間の側にも、移管を設計する自治体の側にも、その両方を持っている人は多くありません。不安の中身が「今の職場が続くか」であれば、それは別の話として考える必要がありますが、経験そのものが古くなるという心配は、この分野では当てはまりにくいと考えています。行き先の分け方は交通・公営企業から転職しやすい業界と職種に整理しています。

出典

  1. 地方公営企業法 第3条(経営の基本原則)・第2条(適用を受ける企業の範囲)・第21条(料金)|e-Gov法令検索
  2. 道路運送法 第4条(一般旅客自動車運送事業の許可)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

「自分の経験に、どこで値段が付くのか」から相談できます

在職中でも、情報収集だけでも構いません。応募する求人が決まっていない段階のほうが、むしろ整理する意味があります。ご利用はすべて無料です。