部署別 / 農政課
農政課出身者が面接で必ず聞かれること
農政課から民間に移るとき、面接でいちばん多く来るのはこの形の質問です。
「農地が絡む案件、見ていただけますか」
これは、質問というより期待です。
不動産、建設、再生可能エネルギー、物流。農地が絡んだ瞬間に案件が止まるという経験を、どの会社もしています。そこを読める人を探しています。
なのに、多くの方が「許可の事務をしていただけです」と答えてしまいます。
この記事では、実際に聞かれる質問を7つ挙げて、避けたい答え方と、組み立て方を並べます。
書類の書き方は農政課の職務経歴書、行き先の絞り方は農政課から転職しやすい業界と職種に書いています。
法律が「調整」と呼んでいるもの
答え方の前に、この仕事の性格を条文で押さえます。
農業委員会等に関する法律第6条第1項第1号は、所掌事務をこう定めています。
農業委員会は、その区域内の次に掲げる事項を処理する。
一 農地法その他の法令によりその権限に属させられた農地等の利用関係の調整に関する事項……
「利用関係の調整」。
法律が、この仕事を「調整」と呼んでいます。
そして、ここが落とし穴です。
書類や面接で「調整をしていました」と言うと、何も伝わりません。民間では、「調整」は誰でも使う言葉だからです。
言うべきは、法律が「調整」と呼んでいるものの中身のほうです。
農地の利用関係の調整とは、具体的にはこの4つです。
- 誰が権利を持っているのかを確定させる(登記、相続、台帳、現況の突合)
- その権利を動かしてよいかを判断する(農地法の要件、立地の区分)
- 動かす相手を見つけて、条件を合わせる(出し手と受け手、賃料、期間、作付け)
- 周りの同意を取る(隣接、水利、集落、受益者)
この4つを分けて話せると、「調整」が「権利と合意の実務」に変わります。
面接では、必ずこの4つに分けてください。
質問1:「農政課では、どういうお仕事をされていたんですか」
避けたい答え方
> 農地法の許可の事務と、農業振興の補助金の担当をしていました。
「窓口の人」で固まります。
組み立て方
関門を運用していた、という形で置いてください。
> 農地は、売るのも貸すのも、許可がないとできません。その許可の事務を担当していました。権利の移動が年間◯件、転用の審査と県への進達が年間◯件です。中身としては、登記と台帳と現況が一致しない状態から、誰が権利を持っているかを確定させて、動かしてよいかを判断するという仕事でした。相続の登記が済んでいない農地が多いので、相続人の確認から始まる案件も年間◯件あります。
最後の一文が効きます。
相続未登記は、民間では手に負えない案件の代表です。そこを日常的に処理していた、と言えるかどうかが分かれ目になります。
質問2:「農地の許可って、何を見ているんですか」
相手は、判断の中身を知りたがっています。
組み立て方
要件を、自分の言葉で分解してください。
> 大きく2つに分かれます。権利を動かすだけなら農地法第3条で、見るのは「その人がきちんと耕作するか」です。農地以外のものにするなら第4条か第5条で、こちらは「その場所が転用してよい区域か」が中心になります。後者は、立地の区分によってほぼ結論が決まります。なので、申請が出てくる前の相談の段階で、見通しはかなり言えます。実際、事前の相談で無理だと分かる案件のほうが、申請として上がってくるものより多かったくらいです。
「事前に見通しが言える」——これが、民間がいちばん欲しい能力です。
時間を使ってから転用できないと分かるのが、開発の会社にとって最大の損失だからです。
質問3:「地権者が納得しないときは、どうしていましたか」
交渉の姿勢を見ています。
避けたい答え方
> 粘り強くお願いして、ご理解いただけるように努めました。
進め方が見えません。
組み立て方
「金額では動かない」という前提を、先に置いてください。
> 農地は、賃料の話だけでは動きません。多くの方が、先祖から預かった土地として見ています。なので、説明する内容が変わります。誰が借りるのか、その人は地域の人か、何を作るのか、周りの水や道にどう影響するか。この4つを先に揃えてから話すようにしていました。それでも動かない場合は、無理には進めません。時期を置いて、地域の状況が変わったときに、もう一度話すという形です。
「無理には進めない」と言えることが、かえって信用されます。
民間の用地の交渉でも、押して壊れる案件のほうが損失は大きいからです。
質問4:「相続が絡む土地は、どう処理したんですか」
この経歴で、いちばん値の付く質問です。手順で答えてください。
組み立て方
> まず、相続人の範囲を確定させます。戸籍をたどって、何人いるのかを確認するところからです。次に、連絡が取れる方から順に、状況を説明します。相続人の中には、その土地の存在自体を知らない方もいます。それから、全員の同意が必要な手続と、そうでない手続を分けます。必要な範囲を最小にしないと、年単位で止まります。この手順を一覧にして、誰が担当しても同じ順番で進められる形にしました。
「手順を一覧にした」まで言ってください。
属人的にやっていたのか、仕組みにしたのかで、評価が変わります。
質問5:「うちの案件も、見ていただけますか」
この質問が来たら、ほぼ関心を持たれています。
組み立て方
できることと、できないことを分けてください。
> 見立てはできます。立地の区分、周辺の状況、権利関係の複雑さ。この3つで、難易度と期間の目安は言えます。ただし、自治体によって運用が違う部分があります。とくに農業振興地域の区域の設定と、除外の取扱いは、その市町村の計画によります。なので、他の自治体の案件は、確認が必要です。確認の仕方は分かるので、どこに何を聞けばよいかは最初から動けます。
「どこに何を聞けばよいか分かる」——これが、外から来た人にはできない部分です。
質問6:「うちで、何ができると思いますか」
| 応募先 | 当てる工程 |
|---|---|
| 不動産・用地 | 仕入れの判断の前に、可否と期間の見通しを出す |
| 建設コンサル・土地改良 | 受益者の同意の取りまとめと、補助事業の手続 |
| 農業法人・食品 | 補助事業の申請と、用地の確保 |
| 金融機関 | 農業者の事業計画の確認と、補助事業との組み合わせ |
| 自治体を顧客とする企業 | 台帳と現況のデータの整備、計画の作られ方 |
> 御社の仕入れでいえば、入って最初にできるのは、検討中の候補地について、農地が絡むものを先に仕分けることだと思います。転用できない区域を早い段階で外せれば、そのぶん他の候補に時間を使えます。逆に、価格の交渉や、買収そのものの経験はないので、そこは学ぶ側になります。
できないことを1つ添えると、できることの信用が上がります。
質問7:働き方と条件について
組み立て方
> 委員会の総会が毎月あるので、その前後に事務が集中する働き方でした。締切が月単位で繰り返す形には慣れています。確かめたいのは、案件の期限が、どういう単位で決まるかです。
「月次の締切が繰り返す仕事に慣れている」は、契約や審査の職種でそのまま評価されます。
逆質問で聞いておくこと
3つに絞ってください。
1. 「農地が絡む案件は、年間どれくらいありますか」
この経歴が中心になるのか、たまに使う程度なのかが分かります。たまに使う程度なら、他の業務が主になります。
2. 「候補地の調査は、どの段階から関わりますか」
仕入れの前から見るのか、決まった後の手続だけかで、仕事がまったく違います。
3. 「許認可の見通しが外れたとき、どう扱われますか」
行政の判断は、こちらでは決められません。見通しが外れた場合の責任の置き方を、先に確かめておいてください。
つまずきやすい点
1. 「調整をしていました」と答える
法律が調整と呼んでいるだけです。権利の確定・可否の判断・条件の調整・同意の取得の4つに分けてください。
2. 事前の相談の話をしない
申請に至らなかった相談こそ、民間がいちばん欲しい見立てです。
3. 相続の処理を、個別の苦労話として話す
手順を一覧にしたまで言ってください。
4. 「許可を出していた」と言う
転用の許可権者は県です。線を引いて話すほうが信用されます。
5. 農業の知識がないことを気にする
求められているのは、権利と制度の側です。生産の技術ではありません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 農業委員会等に関する法律第6条は、この仕事を「農地等の利用関係の調整」と呼んでいます
- 「調整」とだけ言うと伝わりません。権利の確定・可否の判断・条件の調整・同意の取得の4つに分けてください
- 事前の相談での見立てが、民間がいちばん求めている能力です。件数を控えておいてください
- 相続が絡む案件は、手順を一覧にしたというところまで話してください
- 「許可を出していた」ではなく、転用の許可権者は県という線を、自分から引いてください
- 逆質問は、①農地が絡む案件の量 ②関わる段階 ③見通しが外れたときの扱いの3つです
よくある質問
民間に移ったら、元の職場に照会することになります。問題ありませんか
制度上の問題はありません。誰でも窓口に相談できますし、公表されている情報を確認するだけです。ただし、気をつける点が2つあります。1つは、在職中に知った非公開の情報を使わないこと。特定の農地の事情や、他の申請の状況などです。もう1つは、元の同僚に便宜を求めないこと。「知り合いだから早くしてほしい」は、相手を困らせます。むしろ、他の申請者より整った書類を出すほうが、結果的に速く進みます。この線を自分で守れることは、面接でも言っておくと安心されます。
農業委員会の委員と職員の違いを、面接で説明できますか
説明できるようにしておいてください。委員は、選任されて合議体を構成する立場で、許可の判断をするのは委員会です。職員(事務局)は、その事務を担い、申請の受付、要件の確認、議案の作成、議事録、許可書の交付を行います。この違いを説明できると、「合議体の事務局を回していた」という経験が正確に伝わります。民間の取締役会や、各種の委員会の事務局と同じ構造なので、内部管理の職種では、そのまま通じます。
転職の理由を、どう説明すればよいですか
「止める側から、進める側に回りたい」——この形が通りやすいです。農地法の仕事は、申請を審査して、要件に合わなければ通さないという役割を含みます。必要な役割ですが、自分で事業を進める立場ではありません。「制度の側を分かったうえで、今度は事業を成立させる側でその知識を使いたい」という言い方であれば、嘘がなく、応募先の関心とも一致します。注意点は、いまの仕事を否定しないことです。「規制する側は面白くない」と言うと、制度への理解を疑われます。