部署別 / 農政課
農政課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
農政課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「農地の管理、農業振興に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「窓口で申請書を受けていた人」という像しか作れません。実際には、土地の権利が動くたびに、必ず通らなければならない関門を運用していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは農政課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は農政課から転職しやすい業界と職種に書いています。
農地は、売ることも貸すことも、許可がなければできません
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
農地法第3条第1項は、こう定めています。
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
並んでいるのは、所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借、賃借権。
要するに、農地の権利が動くほぼすべての形が、許可の対象です。
売るのも、貸すのも、無償で使わせるのも、許可がなければできません。
そして、許可を出すのは農業委員会——つまり、その事務を回していたのが、この部署です。
ここが要点です。
農地に関する取引は、必ずこの関門を通ります。通らなければ、権利の移転そのものが効力を持ちません。
つまり、この仕事は「取引が成立するかどうかを左右する審査」を運用していたということです。
民間でいえば、審査、与信、法務の確認と同じ位置にあります。
書類には、この関門を「何件、どう通したか」を書いてください。
- 年間の許可の申請の件数
- 受付から許可までの標準的な期間
- 不備が出やすい箇所と、それを減らすために変えたこと
「農地の管理」ではなく、この3つです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所の農政課に配属され、農地の管理と農業振興に関する業務を担当しました。
件数も、範囲も、規模も入っていません。
良い例
> ◯◯市(農地面積約◯ヘクタール、農家戸数約◯戸)の農政の部門において、農地に関する権利の移動と転用の審査を担当しました。農地法第3条の許可(権利の移動)を年間約◯件、第4条・第5条の転用に係る審査と県への進達を年間約◯件扱っています。あわせて、農地の利用の集積(年間◯ヘクタール)、農地台帳と現況の調査、土地改良事業の地元調整(受益者◯人)を担当しました。相続の登記が未了の農地について、相続人の確認から同意の取得までの手順を整理しています。
入っているもの
- 扱った許可の件数(3条と4条・5条を分けて)
- 農地面積・農家戸数という規模の背景
- 集積した面積
- 相続未登記への対応
4つ目が、この経歴でいちばん効く一行です。不動産や開発の会社では、ここが最大の難所になっています。
担当業務
「農地の管理」で丸めず、機能に分けて書いてください。
悪い例
> ・農地法に基づく許可事務> ・農業委員会の事務> ・補助事業の事務> ・その他庶務
良い例
> 【権利の移動の許可(第3条・年間約◯件)】> 申請の受付、要件の確認、現況の確認、農業委員会への付議、許可書の交付。登記・課税・台帳の情報が一致しないことが多いため、現況と関係者への確認を必ず経る運用を担当。>> 【転用の審査と進達(第4条・第5条・年間約◯件)】> 申請の受付、立地の区分の確認、周辺への影響の確認、書類の審査、県への進達。許可権者が県のため、申請者には標準的な処理期間を先に示して、計画を立てられるようにした。>> 【利用の集積・利用権の設定(年間◯ヘクタール)】> 出し手と受け手の把握、利用権の設定の手続、集積の計画への反映。所有者が賃料だけでは判断しないため、借り手の人物と作付けの内容を含めて説明する手順を整理。>> 【農地台帳と利用状況の調査】> 筆ごとの情報の更新、現況の確認、荒廃農地の把握と区分。現地の確認と台帳の突合を年◯回実施。>> 【補助事業と担い手の支援】> 国・県の補助事業の要件の確認、申請、実績報告、検査。認定農業者に係る事務。>> 【土地改良・鳥獣・被害の調査】> 受益者の同意の取りまとめ、工事の発注と進行の管理、鳥獣の被害の防除、災害時の農作物と施設の被害の調査と報告。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を整理していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、許可の件数として現れるからです。
悪い例
> 農地の適正な管理と農業の振興に努めました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:関門の処理を早くした
> 許可の申請について、不備で差し戻しになる箇所を1年分集計。上位◯件が、現況の確認資料と、相続人の同意に関するものだったため、申請前の相談の段階で必要な資料を一覧として示す運用に変更。差し戻しの件数が◯件から◯件に減り、受付から許可までの期間を◯日短縮した。
型2:止まっていた農地を動かした
> 利用されていない農地について、現地の調査と台帳の突合から対象を抽出。相続の登記が未了の◯件について、相続人の確認から同意の取得までの手順を整理し、◯件の利用権の設定につなげた。集積の面積は年間◯ヘクタール。
型3:合意を取りまとめた
> 土地改良事業について、受益者◯人の同意の取りまとめを担当。負担の額と工事の内容を、地区ごとに分けた説明会(計◯回)で示し、◯か月で同意を取得。予定どおりの着工につなげた。
型1が、この経歴でいちばん効く形です。「関門の通りを速くした」という話は、民間の審査や、契約の手続の改善と、まったく同じものとして読まれます。
型2も強いです。動かなかったものを動かしたという話は、遊休資産の活用として、不動産の分野で直接評価されます。
数字の出し方
公表されている資料と、手元の記録から取ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 第3条の許可の件数(年間) | 職務要約、担当業務 | 審査の量を示す中心の数字 |
| 第4条・第5条の審査と進達の件数 | 職務要約、担当業務 | 転用は不動産方向でいちばん見られる |
| 受付から許可までの期間 | 実績 | 「見通しを言える人」の証明。公表されている |
| 集積した面積(年間) | 職務要約、実績 | 動かした量が伝わる |
| 相続未登記の処理件数 | 実績 | 不動産方向で最も効く |
| 受益者の同意の人数と期間 | 実績 | 合意形成の実績として書く |
| 農地面積・農家戸数(地域全体) | 職務要約 | 公表されている。規模の背景 |
| 補助事業の件数と総額 | 担当業務 | 事業側に出すなら必須 |
1行目から3行目が中心です。件数と、期間。この2つが揃うと、「関門を運用していた人」として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
自分の数字がどう読まれるかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 不動産・用地 | 転用の審査件数と処理期間 | 相続未登記への対応 | 権利関係の調査 |
| 建設コンサル・土地改良 | 受益者の同意と期間 | 工事の発注と進行の管理 | 補助事業の手続 |
| 農業法人・食品 | 補助事業の件数と総額 | 担い手の支援 | 用地の確保 |
| 金融機関 | 認定農業者に係る事務 | 補助事業と融資の関係 | 集落の実情の把握 |
| 自治体を顧客とする企業 | 台帳と現況の調査 | 計画の策定 | 国・県への報告 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
申請の中身は、立場があるから見られたものです。
- 申請者や地権者の氏名、家族関係、相続の事情
- 個別の農地の所在、地番、面積が特定できる書き方
- 許可・不許可の判断の経緯や、委員会での議論
- 農業者の経営の状況、収入、負債に関すること
- 買い手や開発の計画(公表前のもの)
- 集落や団体の内部の事情
- 特定の自治体の内部の状況や、部署の評判に関すること
書けるのは、「どういう類型の案件を、何件、どういう手順で処理したか」と「期間」までです。
> ✕ 「相続でもめていた◯◯地区の農地について、相続人を説得して同意を取り付けた」> ○ 「相続の登記が未了の農地について、相続人の範囲の確認、連絡の方法、同意の取得の手順を整理し、年間◯件を処理できる形にした」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事情ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「農地法に基づく許可事務」で丸める
第3条(権利の移動)と、第4条・第5条(転用)を分けて書いてください。見られ方が違います。
2. 処理期間を書かない
「見通しを言える人」の証明です。公表されているので、盛る必要もありません。
3. 相続未登記の対応を書かない
不動産方向では、ここがいちばん効きます。
4. 合意形成を「調整」で済ませる
同意した人数と、要した期間。この2つで書いてください。
5. 個別の案件を書いてしまう
申請者、地番、相続の事情、委員会の議論。すべて書けません。類型と手順で書いてください。
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まとめ
- 農地法第3条は、所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借、賃借権——農地の権利が動くほぼすべての形に、農業委員会の許可を求めています
- つまり、農地の取引は必ずこの関門を通ります。これを運用していたのが、この仕事です
- 民間でいえば、審査・与信・法務の確認と同じ位置にあります
- 職務要約には、許可の件数(3条と4条・5条を分けて)・規模の背景・集積した面積・相続未登記への対応を入れてください
- 実績は、①関門の処理を早くした ②止まっていた農地を動かした ③合意を取りまとめたの3つの型で書けます
- 受付から許可までの期間は、外部から正確に言える人がいない数字です。必ず入れてください
よくある質問
農業委員会の事務局の仕事と、農政課の仕事は分けて書くべきですか
分けて書いてください。多くの自治体で兼ねていますが、農業委員会は独立した行政委員会です。事務局としての仕事は、総会の運営(議案の作成、招集、議事録)、委員に関する事務、許可申請の事前の審査の整理、農地台帳の管理。農政課としての仕事は、補助事業、担い手の支援、土地改良、鳥獣、被害の調査です。書き分けると、扱ってきた範囲の広さが伝わります。とくに合議体の事務局を回していた経験は、民間の取締役会や委員会の事務局と同じ構造として読まれます。
技術職(農業土木)で採用されています。事務職として書けますか
書けます。ただし、技術の部分を捨てないでください。農業土木の経験は、建設コンサルタント、土地改良区、施工管理の方向で、そのまま技術職として評価されます。事務職として出す場合も、「発注する側にいた」という形で使えます。書くなら、「土地改良事業について、計画の作成、地元の同意の取りまとめ、工事の発注と監督、補助事業の申請と精算までを担当」という形です。技術と事務の両方を通していることが、この経歴の分かりにくさであり、同時に強みです。どちらかに寄せず、工程で書いてください。
農地が少ない市で、件数が多くありません。どう書けばよいですか
件数が少ない場合は、範囲の広さで書いてください。農地が少ない自治体ほど、一人が見る範囲が広くなります。許可、転用、集積、台帳、補助事業、土地改良、鳥獣、被害の調査——これを一人または少人数で回していたなら、それ自体が実績です。書くなら、「農地面積◯ヘクタールの区域について、権利の移動から転用、集積、台帳の管理、補助事業までを単独で担当」という形です。「単独で」という一語を入れてください。これがないと、分業の一部だけを担当していた人に読まれます。面接で聞かれることは農政課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。