部署別 / 林務・水産課
林務・水産課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるか
林務・水産課の働き方を説明するとき、多くの方がこう言います。
「季節によって、やることが変わります」
これは正確ですが、そのままでは伝わりません。
この部署の特徴は、同じ森林に対して、求められる役割が6つあり、そのどれが表に出るかが年によって変わることです。
そして、その役割の多くは、他の部署と共有されています。
この記事では、一年の波、評価が見えにくくなる構造、民間に移って変わる4点を整理します。
書き方は林務・水産課の職務経歴書、面接での答え方は林務・水産課出身者が面接で必ず聞かれることに書いています。
一つの森林に、6つの役割がかかっています
まず、この仕事の構造を条文で押さえます。
森林・林業基本法第2条第1項は、森林の有する多面的機能についてこう定めています。
森林については、その有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能(以下「森林の有する多面的機能」という。)……
並んでいるのは6つです。
| 機能 | 庁内で関わる部署 |
|---|---|
| 国土の保全 | 防災、土木、砂防 |
| 水源のかん養 | 上下水道、河川 |
| 自然環境の保全 | 環境 |
| 公衆の保健 | 公園、観光、教育 |
| 地球温暖化の防止 | 環境、企画 |
| 林産物の供給 | 林務(=この部署の本来の仕事) |
6つのうち、自分の部署が主に担うのは、最後の1つだけです。
残りの5つは、他の部署と共有されています。
ここが、この仕事の働き方を決めています。
同じ森林について、防災の部署からも、環境の部署からも、企画の部署からも照会が来ます。そして、どの視点で答えるかは、相手によって変わります。
しかも、どの機能が注目されるかは、年によって変わります。
大きな災害があった年は、国土の保全が前に出ます。脱炭素が議論されている年は、地球温暖化の防止が前に出ます。
説明するときは、この形で話してください。
> 同じ山について、防災、水道、環境、観光、脱炭素、林業という6つの立場から照会が来ます。それぞれ見る点が違うので、同じ情報を、相手に合わせて組み直して出していました。
「同じ情報を、相手に合わせて組み直す」——これは、民間でも常に求められる仕事です。
一年の波
季節で、動く内容が決まります。
| 時期 | 中身 | 重さ |
|---|---|---|
| 4月 | 体制の切り替え、事業計画の確定、意向調査の開始 | 重い |
| 5〜6月 | 造林と下刈りの季節(事業体が動く)、意向調査の実施 | 中 |
| 7〜8月 | 下刈りの繁忙、松くい虫の防除(時期が決まっている)、現地の確認 | 重い |
| 9〜10月 | 台風・豪雨の被害調査(林地の崩壊、林道の被災)、次年度の予算要求 | 最も重い |
| 11〜12月 | 伐採の季節、予算の査定への対応、次年度の計画 | 中 |
| 1〜3月 | 事業の完了検査、精算、次年度の申請、翌年度の事業の調整 | 最も重い |
山は3つです。
7〜8月(防除と現地)、9〜10月(被害調査と予算要求)、1〜3月(検査と精算)。
このうち、9〜10月は読めません。
災害が起きれば、他の予定をすべて止めて現地に出ます。林地の崩壊、林道の被災、漁港の施設の被害。そして、国や県への報告には期限があります。
この期間に固有の事情があります。被害の調査は、現地に行けるようになってからしか始められません。道が寸断されていれば、まず道の啓開を待ちます。つまり、報告の期限は決まっているのに、着手できる日は決められないという状態になります。だから、行ける場所から順に、被害の類型ごとに記録の様式を決めて回る——この段取りができるかどうかで、期限に間に合うかが決まります。
この話は、民間の災害対応や、復旧の案件を扱う会社で、そのまま通じます。
評価が見えにくくなる3つの構造
1. 成果が出るまでに、数十年かかる
植えた木が育つのは、数十年先です。間伐の効果も、十年単位で現れます。自分が担当した期間に、結果を見ることはありません。
種をまく人と、刈り取る人が、完全に別——これは、他の部署より徹底しています。
2. 「何も起きなかったこと」が成果になる
山が崩れなかった。これは、水源のかん養や国土の保全の機能が働いたということですが、何も起きていないように見えます。
逆に、崩れれば、そこだけが記録に残ります。
3. どの機能で評価されるかが、年によって変わる
災害の年は防災、脱炭素の年は吸収量、林業の振興が言われる年は生産量。同じ仕事をしていても、評価の軸が動きます。
自分の中に一本の軸を置きにくい——これが、手応えのなさを作ります。
ただし、この点は面接では逆に使えます。「複数の評価の軸が同時にあって、年によって重みが変わる中で仕事をしてきた」——これは、管理部門、品質、安全のように、複数の部門から評価される立場では、そのまま同じ状況です。どの軸で見られているかを読んで、出す情報を変えるという動き方は、そうした職種で日常的に求められます。
民間に移って変わる4点
1. 時間軸が、数十年から年単位になる
行政では、数十年先を見て計画を立てていました。民間では、事業年度で結果を見ます。
この変化は、大きく感じられるはずです。ただし、長い時間軸で考えられること自体は失われません。むしろ、インフラや資源を扱う業種では、それが必要とされます。
2. 評価の軸が、一つに固まる
6つの機能のどれで評価されるかが動くという状態から、会社の事業の数字という一本の軸に変わります。
分かりやすくなる、という面があります。やったことが、同じ物差しで測られるようになります。
3. 庁内の調整が、社外との調整に変わる
他の部署と共有していた仕事が、社外の相手との仕事になります。相手が変わるだけで、「立場の違う相手に、同じ情報を組み直して出す」という中身は同じです。
4. 現地に出る理由が変わる
行政では、調査と確認のために出ていました。民間では、仕入れ、交渉、施工の確認のために出ます。
現地を見て判断する習慣は、そのまま残ります。
変わらないのは、季節に縛られることです。造林も、伐採も、防除も、やれる時期が決まっています。この制約は、民間に移っても同じです。
どの方向なら自分の経験が効くかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
在職中に残しておくべき記録
辞めた後では、二度と取れません。
| 残すもの | なぜ必要か | どこから取れるか |
|---|---|---|
| 意向調査の件数(年度別) | 制度の実務を通した証明 | 事業の記録 |
| 集約した面積(年度別) | 動かした量を示す中心の数字 | 事業報告 |
| 所有者の追跡を行った件数 | 用地の方向で最も効く | 事務の記録 |
| 事業体の数・人員・機械・施業できる面積 | 原料調達の方向で最も求められる | 事業体との協議の記録 |
| 開発行為の相談・進達の件数 | 許認可の方向で見られる | 事務の記録 |
| 他部門からの照会の件数と種類 | 観点を組み直した経験の証明 | 自分で数えるしかない |
| 災害時の被害調査の件数と報告の期限 | 割り込みへの対応力 | 報告の資料 |
| 自分が変えたこと(年度別に3つ) | 実績欄の芯になる | 自分でメモするしかない |
4行目、6行目、最後の行が、後から作れないものです。
とくに事業体の実行能力は、協議の中で聞いた情報なので、記録が残っていないことが多くあります。
つまずきやすい点
1. 「季節でやることが変わる」で終える
6つの立場から照会が来て、組み直して答えていたという構造を話してください。
2. 他部門からの照会を、雑務として扱う
観点に合わせた再整理です。民間の提案や報告と同じ技術です。
3. 災害時の調査を書かない
着手できる日が決められないのに、報告の期限は決まっている——この段取りの話が効きます。
4. 成果が数十年先であることを、弱みとして話す
長い時間軸で計画を立ててきたことは、インフラや資源の業種では強みです。
5. 事業体の実行能力を記録していない
協議の中で聞いた情報なので、在職中でないと残せません。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 森林・林業基本法第2条は、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給という6つの機能を挙げています
- 自分の部署が主に担うのは、最後の1つだけ。残りは他の部署と共有しています
- だから、同じ森林について、6つの立場から照会が来て、相手に合わせて組み直して答える——これが日常でした
- 山は、7〜8月(防除と現地)、9〜10月(被害調査と予算要求)、1〜3月(検査と精算)の3つです
- 評価が見えにくいのは、①成果が数十年先 ②何も起きなかったことが成果 ③どの機能で評価されるかが年ごとに動くためです
- 民間に移ると、①時間軸が年単位に ②評価の軸が一つに固まる ③調整の相手が社外に ④現地に出る理由が変わるの4点が変わります
よくある質問
現場に出る仕事が体力的にきついのですが、内勤に移れますか
移れます。この経歴には、内勤で使える部分が十分にあります。台帳と登記の突合、所有者の追跡、制度の運用、補助事業の事務、計画の策定、他部門への説明資料。どれも、机の上の仕事です。書類でも、現地の話を前に出さずに、情報の整理と制度の運用を前に出すことで、内勤の求人に合う形に組み替えられます。とくに、自治体を顧客とする会社の調査・計画の部門は、現地の経験があることを前提に、内勤で整理をする仕事なので、この経歴とよく合います。
「何も起きなかったこと」を、どう実績として書けばよいですか
「起きなかった」ではなく、「備えとして何を整えたか」で書いてください。たとえば、「林道◯路線について、点検の周期と記録の様式を定め、危険箇所の一覧を年度ごとに更新する運用にした」という形です。結果ではなく、仕組みを書くということです。これは、民間の保全や、設備の管理でそのまま同じ書き方をします。「無事故でした」ではなく「点検の体制をこう作りました」——この置き換えを覚えておくと、評価が見えにくい仕事全般で使えます。
異動でこの部署を離れることになりそうです。何をしておくべきですか
4つの数字を、年度別に書き出してください。①意向調査の件数 ②集約した面積 ③所有者の追跡を行った件数 ④管内の事業体の数・人員・機械・施業できる面積。このうち、④は、協議の中で聞いた情報なので、どこにも整理されていないことが多いものです。しかし、原料の調達の方向では、これがいちばん求められます。加えて、自分が変えたこと——記録の様式、確認の手順、配分の考え方——を3つメモしておいてください。これは、どこにも記録されません。動くかどうかの判断は、その後で構いません。まず記録です。