部署別 / 林務・水産課
林務・水産課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
林務・水産課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「森林の整備、水産業の振興に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「山や海を見回っていた人」という像しか作れません。実際には、区域の区分を判断し、所有者を特定し、同意を取りまとめ、事業として成立させていたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは林務・水産課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は林務・水産課から転職しやすい業界と職種に書いています。
区域の区分で、できることが変わります
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
森林法第10条の2第1項は、開発行為の許可についてこう定めています。
地域森林計画の対象となつている民有林(第二十五条又は第二十五条の二の規定により指定された保安林並びに第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内及び海岸法……第三条の規定により指定された海岸保全区域内の森林を除く。)において開発行為……をしようとする者は……都道府県知事の許可を受けなければならない。
括弧の中を読んでください。
保安林は除く。保安施設地区も除く。海岸保全区域も除く。
つまり、同じ「山」でも、区分によって適用される条文がまったく違います。
| 区分 | 扱い |
|---|---|
| 地域森林計画の対象の民有林 | この条の許可(一定規模を超える開発) |
| 保安林 | 別の手続(解除が必要) |
| 保安施設地区・海岸保全区域 | さらに別の制度 |
| 計画の対象外 | 森林法の開発の許可は不要 |
ここが要点です。
この仕事は、「目の前の土地がどの区分に当たるか」を先に確定させる仕事です。
そして、この判断を間違えると、手続そのものが最初からやり直しになります。
民間でいえば、案件に着手する前の適用法令の確認——規制の調査そのものです。
書類には、この判断を何件、どう処理したかを書いてください。
- 扱った区分の種類(計画対象、保安林、都市計画の区域との関係)
- 開発行為の相談と進達の件数
- 区分の確認から結論までの期間
「森林の整備」ではなく、この3つです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所の林務・水産課に配属され、森林の整備と水産業の振興に関する業務を担当しました。
面積も、件数も、範囲も入っていません。
良い例
> ◯◯市(森林面積約◯ヘクタール、うち民有林約◯ヘクタール)の林務の部門において、森林の情報の管理と、所有者の特定、施業の集約を担当しました。森林経営管理制度に基づく意向調査を◯件実施し、不在村の所有者について登記からの追跡と連絡を行い、◯ヘクタールの集約につなげています。開発行為に関する相談と進達を年間約◯件扱い、区域の区分の確認から見通しの提示までを担当しました。あわせて、林業事業体◯社の施業の実績と保有する機械・人員の規模を把握し、補助事業の配分に反映しています。
入っているもの
- 森林面積という規模の背景
- 意向調査の件数と、集約した面積
- 開発行為の相談と進達の件数
- 事業体の実行能力の把握
4つ目が、この経歴で意外に効く一行です。原料を仕入れる側の会社が、いちばん知りたい情報だからです。
担当業務
「森林の整備」で丸めず、機能に分けて書いてください。
悪い例
> ・森林整備事業の事務> ・林道の維持管理> ・水産振興に関する事務> ・その他庶務
良い例
> 【森林の情報の管理】> 林地台帳の整備、所有者の情報の更新、境界の確認、施業の履歴の記録。測量されていない山林が多く、公図と現地が合わないため、立会いによる確認を前提とした運用を担当。>> 【意向調査と集約(意向調査◯件・集約◯ヘクタール)】> 所有者への意向の確認、不在村の所有者の追跡、経営管理権の設定に係る手続。一人でも同意しないと団地がまとまらないため、誰から順に話すかを設計して実施。>> 【補助事業と事業体の支援(年間◯件・総額約◯万円)】> 間伐、造林、路網、機械の導入に係る補助の要件の確認、申請、実績報告、検査。予算ではなく事業体の実行能力が制約になるため、施業できる面積から逆算して配分。>> 【開発行為・保安林(相談・進達 年間約◯件)】> 区域の区分の確認、開発行為の相談への対応、県への進達、保安林に関する事務。区分を誤ると手続が最初からやり直しになるため、相談の段階で区分を確定させる運用を担当。>> 【病虫害・鳥獣・災害】> 松くい虫やナラ枯れの被害の把握と防除、有害鳥獣の捕獲の体制、豪雨による林地の崩壊と林道の被災の調査。>> 【水産(漁協◯団体)】> 漁協との協議、漁業権が絡む工事の事前の調整、種苗の放流、漁港・漁場の整備、水産物の流通の支援。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を整理していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、面積として現れるからです。
悪い例
> 森林の適正な整備と水産業の振興に努めました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:動かなかった山を動かした
> 長く手入れがされていなかった区域について、林地台帳と現況の突合から対象を抽出。所有者◯人のうち、連絡先が不明だった◯人について、登記からの追跡と文書による照会を実施。同意の順序を設計して回り、◯ヘクタールの団地としてまとめ、補助事業の要件を満たす形にした。
型2:実行能力に合わせて配分を設計した
> 補助事業の配分について、管内の事業体◯社の人員・機械・過去の施業の実績から、年間に実行できる面積を推計。予算額ではなく実行できる量から逆算して計画を組み直し、年度末の未実施を◯件から◯件に減らした。
型3:区分の見立てを早くした
> 開発行為の相談について、区域の区分(計画対象、保安林、都市計画の区域)の確認の手順を一覧化。相談の初回で区分と必要な手続を示せる形にし、申請に至らない案件を早い段階で整理できるようにした。
型1が、この経歴でいちばん効く形です。「所有者を特定して、資産を動かした」という話は、用地の仕事そのものとして読まれます。
型2も強いです。供給側の容量から逆算して計画を立てたという話は、原料の調達で、そのまま同じことをします。
数字の出し方
公表されている資料と、手元の記録から取ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 森林面積・民有林の面積 | 職務要約 | 公表されている。規模の背景 |
| 意向調査の件数 | 職務要約、実績 | 制度の実務を通した証明。経験者が少ない |
| 集約した面積 | 職務要約、実績 | 動かした量を示す中心の数字 |
| 不在村所有者の追跡の件数 | 実績 | 用地方向で最も効く |
| 開発行為の相談・進達の件数 | 担当業務 | 許認可方向で見られる |
| 事業体の数と、施業できる面積 | 職務要約、実績 | 原料調達の方向では、ここがいちばん求められる |
| 補助事業の件数と総額 | 担当業務 | 事業側に出すなら必須 |
| 漁協の団体数 | 担当業務 | 水産方向では規模の目安になる |
2行目から4行目が中心です。意向調査・集約した面積・所有者の追跡。この3つが揃うと、「資産を特定して動かせる人」として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
自分の数字がどう読まれるかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 原料の調達(木材・バイオマス) | 事業体の実行能力の把握 | 集約した面積 | 所有者との交渉 |
| 用地・再エネ・不動産 | 開発行為の区分の判断 | 不在村所有者の追跡 | 進達と処理期間 |
| 自治体を顧客とする企業 | 意向調査の件数と手順 | 台帳と現況のずれ | 制度の運用 |
| 水産の流通・加工 | 漁協との協議 | 産地の事情 | 資源の管理 |
| 建設・インフラ | 林道と施設の発注 | 災害時の被害調査 | 地元との調整 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
所有者や漁業者の情報は、立場があるから見られたものです。
- 森林や漁業の権利者の氏名、相続の事情、家族関係
- 個別の山林の所在、地番、面積が特定できる書き方
- 開発を検討している事業者に関すること(公表前のもの)
- 補償や、漁協との協議における金額に関すること
- 漁協や林業事業体の内部の事情、経営の状況
- 公表前の計画、区域の見直しの検討
- 特定の自治体の内部の状況や、部署の評判に関すること
書けるのは、「どういう類型の案件を、何件、どういう手順で処理したか」と「面積」までです。
> ✕ 「◯◯地区の山林について、相続でもめていた所有者を説得し、集約に同意させた」> ○ 「登記名義人が死亡していた山林について、相続人の範囲の確認、文書による照会、意向の聴取という手順を整理し、年間◯件を処理できる形にした」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事情ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「森林の整備」で丸める
情報の管理/意向調査と集約/補助事業/開発行為/被害と災害/水産の6つに分けてください。
2. 不在村所有者の追跡を書かない
用地や不動産の分野では、ここがいちばん効きます。
3. 事業体の実行能力の把握を書かない
原料を仕入れる側の会社が、いちばん知りたい情報です。
4. 面積の小ささを気にする
見られているのは、どの工程まで自分で通したかです。
5. 個別の案件を書いてしまう
所有者、地番、相続の事情、協議の金額。すべて書けません。類型と手順で書いてください。
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まとめ
- 森林法第10条の2は、地域森林計画の対象の民有林での開発に許可を求め、保安林・保安施設地区・海岸保全区域を除いています
- つまり、同じ「山」でも区分によって適用される制度が違い、判断を誤ると手続が最初からやり直しになります
- 民間でいえば、着手前の適用法令の確認——規制の調査そのものです
- 職務要約には、森林面積・意向調査の件数と集約した面積・開発行為の件数・事業体の実行能力の4つを入れてください
- 実績は、①動かなかった山を動かした ②実行能力に合わせて配分を設計した ③区分の見立てを早くしたの3つの型で書けます
- 「不在村所有者」と「相続人の追跡」——この2語が、用地の分野での読まれ方を決めます
よくある質問
技術職(林業職)ですが、事務の経験として書いてよいですか
書けます。この分野の仕事は、技術と事務が分かれていません。現地の確認も、所有者との交渉も、補助の申請も、同じ人がやります。書くときは、「技術職として採用され、現地の調査から所有者との交渉、補助事業の申請までを一貫して担当」と、両方を通していたことを明示してください。むしろ、技術の裏づけがあることは強みです。山を見て蓄積の見当が付く、現地で危険を判断できる——これは、原料の調達や、開発の案件で、そのまま必要とされます。
水産の担当が短く、林務が中心でした。水産のことは書かなくてよいですか
短くても、1〜2行は入れてください。理由は、漁協との協議の経験が、思わぬところで効くからです。洋上の発電、港湾や河川の工事、海岸の整備。これらの案件は、漁業権が絡むと止まります。そして、その協議の進め方を知っている人は多くありません。書くなら、「漁協◯団体との協議、漁業権が絡む工事の事前の調整を担当」という1行で足ります。深く書く必要はありませんが、書いておくと、該当する案件を持つ会社の目に留まります。
補助事業の事務が中心で、現場にはあまり出ていません
それでも書けます。補助事業の事務は、要件の確認、申請、実績報告、検査という一連で、民間でいえば、補助金を活用する側でも、制度を運用する側でも必要とされる実務です。加えて、この分野の補助事業は、国と県と市が層になっていて、制度が複雑です。それを通してきたこと自体が、経験として書けます。書くなら、「国・県の補助事業について、要件の確認から申請、実績報告、検査までを年間◯件・総額約◯万円分担当」という形です。面接で聞かれることは林務・水産課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。