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部署別 / 林務・水産課

林務・水産課の経験は民間で何と呼ばれるか

林務・水産課の経験は、求人票の言葉に直すとまったく別の名前で呼ばれています。

「森林の整備、水産業の振興に関する業務」

この書き方では、民間の採用担当には何も伝わりません。

実際にやっていたのは、他人の資産を、境界と権利を確かめながら、公共の目的のために動かすという仕事です。

しかも、その資産の多くは、所有者自身が現状を把握していません。

この記事では、庁内の呼び名を民間の言葉に置き換え、中核スキルを5つの工程に分けて整理します。

扱っているのは、「計画の対象になっている他人の土地」です

最初に、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。

森林法第5条第1項は、地域森林計画についてこう定めています。

都道府県知事は、全国森林計画に即して、森林計画区別に、その森林計画区に係る民有林(その自然的経済的社会的諸条件及びその周辺の地域における土地の利用の動向からみて、森林として利用することが相当でないと認められる民有林を除く。)につき、五年ごとに……

3つのことが、この一文に入っています。

  1. 計画を立てるのは、都道府県知事
  2. 対象は、民有林——つまり、他人の資産
  3. 五年ごとに見直される

そして、その計画の中で実際に動くのは、市町村の林務の担当です。

つまり、この仕事の構造はこうなっています。

誰の何
所有者資産(森林そのもの)
県計画(どの区域をどう扱うか)
市町村実務(所有者を探し、同意を取り、事業を実行する)

自分の資産でも、自分の計画でもないものを動かす。

これが、この部署の仕事です。

民間でいえば、他社が所有する土地や設備を、決められた枠組みの中で調達・活用する仕事——原料の調達、用地の取得、インフラの管理が、これにあたります。

「所有者と話をつけて、資産を動かす」という部分は、そのまま同じです。

民間での訳語

庁内での呼び名民間での呼ばれ方
森林の境界の確認用地の調査・境界の確定
不在村所有者の調査所有者の追跡・権利者の特定
森林経営管理制度の意向調査アセットの棚卸し・保有者への照会
森林の集約化用地の集約・仕入れ先の取りまとめ
間伐・造林の補助事業補助制度の設計と執行
林業事業体の支援協力会社・委託先の育成
林道の整備インフラの整備・工事の発注管理
開発行為の許可の事務許認可の実務・法令の調査
保安林の事務規制区域の管理
松くい虫・ナラ枯れの対策被害の管理・防除の計画
漁協・漁業権に関する調整団体との協議・権利関係の調整
種苗の放流・栽培漁業供給の計画・資源の管理

上から4行目までが、いちばん値の付く並びです。所有者を探して、境界を確かめて、まとめる——これは、用地の仕事そのものです。

中核スキルを5つの工程に分ける

この部署の中核は、「所有者が把握していない資産を、特定して、束ねて、動かすこと」です。

工程1:区分する(計画と区域を確定する)

地域森林計画の対象か、保安林か、都市計画の区域はどうか。この区分で、できることが決まります。

この工程に固有の制約があります。森林の境界は、現地で分かりません。測量されていない山林が多く、公図と現地が合わないのが普通です。隣の所有者との境界を、双方の立会いで確認するところから始まる場合もあります。

「資料上の区分」と「現地の実態」の両方を持っていないと判断できない——この点は、民間の用地の仕事とまったく同じです。

工程2:見つける(所有者を特定する)

この工程に固有の制約があります。所有者が、その地域に住んでいません。相続で権利が分かれ、都市部に住む相続人が、山を持っていること自体を知らないという状態が珍しくありません。

登記名義人が数代前のままという土地も出てきます。そこから相続人を追い、連絡を取り、意向を確認する。

これは、民間では専門の会社に外注する作業です。自分でやってきたなら、それは書ける経験です。

工程3:束ねる(集約化と経営管理権)

バラバラの所有者の山を、施業できる単位にまとめます。

この工程に固有の制約があります。一人でも同意しないと、団地がまとまりません。補助事業には面積の要件があるため、中央に位置する一筆の所有者が反対すると、周囲全体が動かなくなります。

だから、順番が重要になります。誰から話すか、どの順で回るか。これを設計できるかどうかで、成否が決まります。

民間の用地の取得でも、まったく同じことが起きます。

工程4:出す(補助事業と事業体の支援)

間伐、造林、路網、機械の導入。国と県の補助を組み合わせて、事業を実行します。

この工程に固有の制約があります。実行できる事業体の数と、人と機械に上限があります。予算が付いても、やる人がいなければ実行できません。しかも、天候によって作業できない期間があります。

つまり、「予算」ではなく「実行能力」が制約になる——これは、民間の施工や、供給の管理と同じ考え方です。

工程5:守る(保安林・病虫害・鳥獣・災害)

保安林の管理、松くい虫やナラ枯れの防除、有害鳥獣、豪雨による林地の崩壊と林道の被災。

この工程に固有の制約があります。被害は、年単位で広がります。そして、防除の効果は、翌年にならないと分かりません。単年度で判断できないものを、単年度の予算で扱う——この難しさがあります。

民間の原料調達・用地の仕事と、どこが同じでどこが違うか

同じところ

  1. 他人の資産を扱う。自分のものではないので、必ず同意が要ります
  2. 境界と権利を先に確定させる。ここを飛ばすと、後で止まります
  3. 実行できる事業者の容量が、制約になる。発注先がなければ何も進みません

違うところ

  1. 所有者が、資産として見ていない。手放したいが売れない、という状態が多くあります
  2. 成果が数十年単位。植えてから伐るまで、数十年かかります
  3. 単価が市場で決まる。木材価格も、魚価も、こちらでは動かせません
  4. 担い手が減ることが前提。増える計画は、基本的に立てられません

1番目が、民間との最大の違いです。

民間の用地では、所有者は「売れる資産」として見ています。この仕事では、「管理が負担になっている資産」として見られていることが多くあります。

だから、交渉の中身が逆になります。買う話ではなく、「引き受けます」という話から入ることがあります。

この違いを説明できると、面接で構造を理解している人として読まれます。

評価が高くなりやすい4つの方向

1. 木材・住宅・製紙・バイオマス発電の原料調達

山側の事情を知っている人が、原料を仕入れる側にいることは、そう多くありません。誰が、どこで、どれだけ出せるかを知っていることが、直接効きます。

2. 再生可能エネルギー・不動産の用地

森林の開発行為の許可が絡む案件は、判断できる人がいません。林地開発の手続を知っていることが、そのまま価値になります。

3. 自治体を顧客とする企業(森林経営管理、地理情報、航空測量)

制度の運用と、現場の実態の両方を知っていることが求められます。意向調査の実務を知っている人は、この分野では即戦力です。

4. 水産の流通・加工・養殖

漁協との関係と、資源の管理の考え方が効きます。種苗の放流や、資源の管理に関わっていた経験は、養殖や資源に取り組む企業で評価されます。

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つまずきやすい点

1. 「森林の整備」と書く

「所有者の特定と、権利関係の整理」と書いてください。用地の仕事として読まれます。

2. 不在村所有者と境界の話を書かない

この2つが、難易度を伝える言葉です。

3. 林業と水産を同じ重さで書く

応募先に合わせて、前に出すほうを決めてください。

4. 「予算が足りない」で説明する

制約は、多くの場合「実行できる事業体の容量」です。そちらで書いてください。

5. 成果が出るまでの長さを、弱みとして話す

数十年の時間軸で計画を立ててきた——インフラや資源を扱う業種では、これが強みになります。

自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

よくある質問

林業の技術的な知識がないのですが、林業関係の会社に行けますか

現場の作業の技術は、求められていないことがほとんどです。木材や住宅、バイオマスの会社が中途で採るのは、原料を安定して確保する人や、制度を使える人です。どの山に、誰の所有で、どれだけの蓄積があり、道が入っているか。これを読める人は、現場の作業者とは別の技能を持っています。書くなら、「◯ヘクタールの民有林について、所有者の意向と施業の履歴を把握し、集約と事業の実行につなげた」という形です。「木を伐れます」ではなく、「山の情報を持っています」と書いてください。

水産の担当が中心でした。書けることはありますか

あります。水産の仕事は、漁協という団体を相手にした協議と、資源の管理が中心です。前者は、団体との合意形成の実務として書けます。漁業権が絡む案件では、漁協の同意が事業の成否を決めます。港湾の工事、洋上の発電、河川の工事。どれも、漁協との協議が必要です。この経験は、そうした案件を扱う会社で、直接必要とされます。後者は、上限のある資源を配分する考え方として書けます。「種苗の放流、漁獲の状況の把握、漁期や漁具の制限に関する協議」を並べてください。

林務と水産を両方担当していました。どう書き分けますか

通算の年数を前に出して、扱った対象で分けてください。冒頭に、「地域の資源の管理に通算◯年」と置き、そのうえで、「森林(民有林◯ヘクタール、所有者の特定と集約)」「水産(漁協◯団体との協議、資源の管理)」と分けます。共通しているのは、「他人が持つ資源を、公共の目的のために動かす」という構造です。それを1行で書いておくと、バラバラの経験に見えません。行き先の絞り方は林務・水産課から転職しやすい業界と職種に整理しました。

出典

  1. 森林法 第5条(地域森林計画)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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