部署別 / 林務・水産課
林務・水産課出身者が面接で必ず聞かれること
林務・水産課から民間に移るとき、面接で必ず来るのはこの形の質問です。
「山の持ち主って、どうやって見つけるんですか」
これは、雑談ではありません。
用地、再生可能エネルギー、原料の調達。どの分野でも、所有者が分からないせいで案件が止まっています。
そして、それを日常的に処理してきた人は、そう多くありません。
この記事では、実際に聞かれる質問を7つ挙げて、避けたい答え方と、組み立て方を並べます。
書類の書き方は林務・水産課の職務経歴書、行き先の絞り方は林務・水産課から転職しやすい業界と職種に書いています。
私有地に、公共の目的で制限をかける立場でした
答え方の前に、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。
森林法第25条第1項は、保安林の指定についてこう定めています。
農林水産大臣は、次の各号……に掲げる目的を達成するため必要があるときは、森林……を保安林として指定することができる。
そして、号として並ぶのが、水源のかん養、土砂の流出の防備、土砂の崩壊の防備といった目的です。
指定されると、その森林は、所有者のものであっても自由に伐れなくなります。
ここが要点です。
この仕事は、他人の資産に、公共の目的で制限をかける側にありました。
そして同時に、その制限の中で事業を成立させる側でもありました。
面接では、この両方を持っていることを伝えてください。
なぜなら、民間で求められるのは、まさにその両方だからです。
制限がどこにかかっているかを読める。そのうえで、その制限の中で通る道筋を描ける。
この2つが揃っている人は、外から採ろうとしても、なかなか見つかりません。
質問1:「林務課では、どういうお仕事をされていたんですか」
避けたい答え方
> 森林の整備と、補助金の事務をしていました。
「山を見ていた人」で固まります。
組み立て方
扱っていた対象と、通した工程を置いてください。
> 民有林約◯ヘクタールを対象に、所有者の特定から、意向の確認、施業の集約までを担当していました。森林経営管理制度の意向調査を◯件やっていて、そのうち登記名義人が亡くなっていた案件が◯件あります。その場合は、相続人の範囲を確認するところから始めます。あわせて、開発行為の相談と進達を年間◯件扱っていました。
「登記名義人が亡くなっていた」という一言を、最初のうちに入れてください。
用地の実務を知っている人なら、その一言で難易度が伝わります。
質問2:「山の持ち主は、どうやって見つけるんですか」
この質問が来たら、いちばん値の付く場所に入っています。
組み立て方
手順で答えてください。
> まず、林地台帳と登記を突き合わせます。そこで名義人が分かりますが、数代前のままということが珍しくありません。その場合は、戸籍をたどって相続人の範囲を確定させます。次に、連絡が取れる方から順に、文書で照会します。ここで、「自分が山を持っていることを知らなかった」という反応が返ってくることがあります。そのうえで、意向を聞きます。管理を続けたいのか、任せたいのか、分からないのか。この3つに分けて記録しておくと、次の年の動きが変わります。
「3つに分けて記録した」まで言ってください。
個別の苦労話ではなく、仕組みとして整理していたことが伝わります。
質問3:「この山、開発できますか」
実務の適性を見る質問です。その場で答えられなくて構いません。
組み立て方
判断の順序を示してください。
> 順番があります。まず、地域森林計画の対象かどうか。次に、保安林かどうか。保安林なら、解除の手続が必要で、これは相当に重いです。それから、面積の規模。一定の規模を超えると許可が要ります。加えて、都市計画や農地の区域との関係、土砂災害の区域の指定も見ます。この順で調べれば、可否と、どれくらいかかるかの見当は付きます。ただし、運用が自治体によって違う部分があるので、確認は必要です。
「順番がある」と言えることが、この質問の答えです。
そして、「確認は必要」と付け加えることで、断定しない姿勢も伝わります。
質問4:「木は、年間どれくらい出せるものなんですか」
原料の調達を扱う会社では、これが本題です。
組み立て方
供給側の容量で答えてください。
> 山の蓄積の量ではなく、出せる量で考える必要があります。管内に林業の事業体が◯社あって、それぞれ人員が◯人規模、機械を◯台持っています。年間に施業できる面積は、合計で◯ヘクタール程度でした。予算を付けても、この量を超えては実行できません。加えて、天候で作業できない期間があり、道が入っていない山は、そもそも出せません。なので、「どれだけあるか」より「誰が出せるか」で見ていました。
この答え方ができる人は、そのまま調達の計画を立てられます。
山側の事情を知らない調達の担当者が、いちばん困っている部分です。
質問5:「規制する側にいたことに、抵抗はありませんか」
この質問は、こちらの姿勢を見ています。
避けたい答え方
> 規制ばかりで、事業者の方には申し訳ないと思っていました。
制度への理解を疑われます。
組み立て方
> 保安林のように、私有地でも自由に伐れない区域があります。これは、水源や土砂の流出を守るためで、一度失われると戻せないものを守る仕組みです。なので、制限そのものには納得しています。ただ、制限がどこにかかっているかが分からないまま計画を進めて、後で止まる——これがいちばん損失が大きいと思っています。事業の側に入るなら、最初に制限を確認して、通る道筋を先に描く役割をやりたいと考えています。
「制度を否定しない」ことが、この分野では信用につながります。
行政側とやり取りする場面が必ずあるからです。
質問6:「うちで、何ができると思いますか」
| 応募先 | 当てる工程 |
|---|---|
| 原料の調達 | 出せる事業体の把握と、供給の計画 |
| 用地・再エネ | 区分の判断と、所有者の特定 |
| 自治体を顧客とする企業 | 意向調査の実務と、制度の運用 |
| 水産の流通・加工 | 漁協との協議の進め方 |
| 建設・インフラ | 地元との調整と、災害時の被害の把握 |
> 御社の候補地の選定でいえば、入って最初にできるのは、区分の確認を先にやって、進まない案件を早く外すことだと思います。保安林や、権利者が多数に分かれている山は、検討に入る前に分かります。逆に、価格の交渉や、契約の実務は経験がないので、そこは学ぶ側になります。
できないことを1つ添えると、できることの信用が上がります。
質問7:働き方と条件について
組み立て方
> 現地に出る仕事には慣れています。山の中も、漁港も行きます。確かめたいのは、現地に出る頻度と、その目的です。調査で行くのか、交渉で行くのかで、準備の仕方が変わります。
「現地に出ることを厭わない」は、この分野では明確な適性です。
働き方の違いは林務・水産課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるかに整理しました。
逆質問で聞いておくこと
3つに絞ってください。
1. 「候補地の選定は、どの段階から関わりますか」
入口から見るのか、決まった後の手続だけかで、仕事がまったく違います。
2. 「山側(または産地)との関係は、既にある取引先が中心ですか」
新規に開拓するのか、既存の関係を維持するのかで、必要な動き方が変わります。
3. 「許認可の見通しが外れたときは、どう扱われますか」
行政の判断は、こちらでは決められません。その場合の責任の置き方を、先に確かめてください。
つまずきやすい点
1. 「森林の整備をしていました」で始める
所有者の特定から集約まで、通した工程で話してください。
2. 連絡が取れなかった案件を「できなかった話」にする
どこで見切ったかが、実務能力の証明になります。
3. 「この山、開発できますか」に、答えを出そうとする
順番を示すのが正解です。確認が必要だと付け加えてください。
4. 供給を「蓄積の量」で答える
出せる量、つまり事業体の容量で答えてください。
5. 規制する側にいたことを、後ろめたく話す
制度を否定しない姿勢が、この分野では信用につながります。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 森林法第25条は、水源のかん養や土砂の流出の防備といった目的のために、森林を保安林として指定できると定めています
- つまり、他人の資産に、公共の目的で制限をかける側にいました。同時に、その制限の中で事業を成立させる側でもありました
- 制限を読める人が、制限の中で通る道筋も描ける——この2つが揃っている人は、外からは採れません
- 所有者の特定は、台帳と登記の突合 → 相続人の確定 → 文書での照会 → 意向を3つに分けて記録という手順で話してください
- 連絡が取れなかった案件をどこで見切ったかが、採算の感覚の証明になります
- 供給の質問には、「どれだけあるか」ではなく「誰が出せるか」で答えてください
よくある質問
民間に移ったら、元の職場に照会する側になります。問題ありませんか
制度上の問題はありません。公表されている情報の確認や、通常の相談は、誰でもできます。ただし、在職中に知った非公開の情報を使わないこと、元の同僚に便宜を求めないこと——この2つは、自分で線を引いてください。むしろ、整った書類を出すほうが、結果的に速く進みます。行政の側がいちばん困るのは、要件を確認しないまま持ち込まれる案件だからです。この線を守れることは、面接で言っておくと安心されます。
鳥獣の被害対策を担当していました。面接で使えますか
使えます。中身は、①被害の把握(場所、時期、作物、金額の推計)②防除の設備 ③捕獲の体制の維持 ④住民からの相談の4つです。とくに③は、報酬で動いていない協力者(狩猟をする方々)に、体制を維持してもらう仕事です。これは、民間でいうと、外部の協力者を確保して稼働を維持する仕事にあたります。体制の人数の推移を添えて話してください。なお、鳥獣の分野は、防護柵や捕獲の機器を扱う会社、被害の調査を受託する会社があり、この経験が直接効く求人もあります。
技術職として採用されたので、民間でも技術職になりますか
どちらもあります。現地の調査や施業の計画を扱う会社では、技術職として評価されます。一方、原料の調達や用地の職種は、技術職の枠ではないことが多いものの、技術の裏づけがあることが強みになります。山を見て蓄積の見当が付く、現地で危険を判断できる、道の入り方が読める——これは、調達でも開発でも直接役に立ちます。応募の際は、職種の枠にこだわらず、「現地を見て判断できること」と「制度の手続を通せること」の両方を書いてください。