部署別 / 産業振興課
産業振興課出身者が面接で必ず聞かれること
産業振興課から民間に移るとき、面接で必ず来るのはこの質問です。
「つないだ後は、どうなったんですか」
ここで答えられないと、それまでの話が全部「会っていただけ」になります。
訪問した社数も、聞き取りの項目も、接続した件数も、その後どうなったかが言えないと、活動の量の話で終わります。
この記事では、実際に聞かれる質問を7つ挙げて、避けたい答え方と、組み立て方を並べます。
書類の書き方は産業振興課の職務経歴書、行き先の絞り方は産業振興課から転職しやすい業界と職種に書いています。
努力する義務は、事業者の側にあります
答え方の前に、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。面接の答え全体の芯になる部分です。
中小企業基本法第7条第1項は、こう定めています。
中小企業者は、経済的社会的環境の変化に即応してその事業の成長発展を図るため、自主的にその経営及び取引条件の向上を図るよう努めなければならない。
努力義務を負っているのは、事業者の側です。
行政ではありません。
つまり、この仕事は「自分で動く気のある事業者を後押しする」ものであって、「動かない事業者を動かす」ものではない——法律が、そう組み立てています。
これは、面接でそのまま使えます。
民間の法人向けの仕事でも、相手に意思がないところに時間を使っても、成果は出ません。だから、「どこに時間を使い、どこに使わないか」を判断することが、仕事の中身になります。
産業振興課の人は、その判断を毎日していたはずです。
訪問先の中で、どこが動く先で、どこがまだ時期ではないか。限られた時間をどこに寄せるか。
これを、面接で言葉にできるかどうかが分かれ目です。
質問1:「産業振興課では、どういうお仕事をされていたんですか」
最初の質問で像が決まります。
避けたい答え方
> 市内の企業を訪問して、支援制度の案内や、産学連携の橋渡しをしていました。
「案内に回っていた人」で固まります。
組み立て方
担当の範囲を、数字で置いてください。
> 市内の製造業を中心に約◯社を担当していて、年間◯社を訪問していました。訪問では、業況・設備・人材・取引先の4つを項目にして聞き取り、記録を統一した形で残しています。そこから課題が明確になった先を、支援機関・大学・金融機関に接続していました。年間◯件つないで、うち◯件が制度の活用や共同の取組に進んでいます。
「担当セグメント → 訪問量 → 接続 → 歩留まり」という並びは、法人向けの仕事の活動管理と、まったく同じ形です。この順番で話すと、一発で伝わります。
質問2:「訪問して、何を話していたんですか」
ここが、この経歴でいちばん値の付く場所です。
避けたい答え方
> 支援制度のご案内をして、何かお困りのことはないかを伺っていました。
「御用聞き」に読まれます。
組み立て方
「渡せるものがない」という条件を、先に置いてください。
> 行政の立場では、渡せるものが限られています。補助金の案内と、つなぎ先の紹介だけです。値引きもできませんし、契約も結べません。なので、こちらが先に情報を持っていかないと、時間をもらえません。持っていくのは、同業他社の動き(個別の企業の話ではなく、業種全体の傾向)、制度の変更の予定、人材の状況、公募の時期です。「会うと何か得られる」という状態を作らないと、次の訪問がありません。
この説明ができると、「売るものを持たない状態で関係を作ってきた人」として読まれます。
民間の法人営業でも、最初の数回は同じことをします。
質問3:「つないだ後は、どうなったんですか」
冒頭に挙げた質問です。ここで止まると、活動量の話で終わります。
組み立て方
歩留まりと、追い方を話してください。
> 年間◯件をつないで、うち◯件が実際に進みました。残りは、条件が合わなかったり、時期ではなかったりで止まっています。進んだかどうかは、次に訪問したときに確認していました。というのも、つないだ後は当事者どうしの話になるので、こちらには情報が入ってこないからです。なので、接続した先は、3か月後をめどにもう一度訪問するようにしていました。止まった理由が分かると、次につなぐときの条件の整理が変わります。
「歩留まりが低い」ことを隠す必要はありません。
大事なのは、追いかけていたかどうかです。
質問4:「相手が動かないときは、どうしていましたか」
判断の基準を見ています。
避けたい答え方
> 粘り強く通って、関係を作ることを心がけていました。
時間の使い方を決められない人に読まれます。
組み立て方
「動かす対象ではない」という判断を、自分でしていたと言ってください。
> 動く気のない先を動かすことはできません。なので、訪問の中で「いま動く先」「時期が来れば動く先」「当面は動かない先」を分けていました。分ける基準は、設備の更新の時期、経営者の年代と後継者の状況、取引先の構成の変化の3つです。当面動かない先には、年に1回だけ訪問して状況を確認する。そのぶん、動く先に時間を寄せていました。
この答え方は、民間の法人向けの仕事で、そのまま求められる判断です。
「全部に同じ時間を使っていた」と答えると、そこで評価が止まります。
質問5:「数字の責任を負ったご経験は、ありますか」
正面から答えてください。
組み立て方
> 売上や契約の目標は、持っていませんでした。そこは経験がありません。ただ、訪問の社数、接続の件数、制度の申請の件数、説明会の参加企業数は、毎年の目標として置いていました。達成できなければ、翌年の予算の説明で問われます。なので、数字を追った経験はあります。種類が違うだけです。売上の目標については、入ってから覚える側になります。
「ない」と「ある」を自分で線を引く。この形が、いちばん信用されます。
質問6:「うちで、何ができると思いますか」
応募先が売っているものに、自分の工程を当ててください。
| 応募先 | 当てる工程 |
|---|---|
| 地域金融・地域商社 | 担当先を回って課題を聞き、支援先につなぐ動き |
| 人材サービス・採用支援 | 企業の採用の事情と、学校側の事情の両方を知っていること |
| 自治体を顧客とする企業 | 計画の作られ方と、予算・議決の時期 |
| 製造業・技術系商社 | 企業の課題を、解ける相手の言葉に翻訳すること |
| 不動産・拠点開発 | 用地・インフラ・許認可を一度に揃える段取り |
> 御社の取引先の開拓でいえば、入って最初にできるのは、既存の取引先を回って状況を拾い直すところだと思います。売るものを持たずに話を聞いてきたので、先に用件を出さずに状況を聞く形には慣れています。逆に、契約を取りに行く場面の経験がないので、そこは学ぶ側になります。
できないことを1つ添えると、できることの信用が上がります。
質問7:働き方と条件について
組み立て方
> 訪問が中心だったので、外に出ている時間が長い働き方には慣れています。確かめたいのは、担当する先の数と、訪問の頻度の目安です。年に1回回るのか、月に1回入るのかで、関係の作り方がまったく変わります。
この質問は、相手にとっても答えやすく、こちらの理解度も伝わります。
逆質問で聞いておくこと
3つに絞ってください。
1. 「担当する先は、既存の取引先が中心ですか。新規の開拓が中心ですか」
この経歴は、既存の先を深く回る形に強いです。新規の開拓が中心の職場だと、入ってからの落差が大きくなります。
2. 「成果は、何で測っていますか。訪問の量ですか、成約ですか」
測り方が分かると、自分の経験がどこまで通用するかが読めます。
3. 「担当先の割り振りは、どう決まりますか」
地域で割るのか、業種で割るのか、規模で割るのか。この経歴は、業種と規模で分けて担当してきた形に近いので、同じ割り方なら入りやすくなります。
つまずきやすい点
1. 「つないだ後」を答えられない
歩留まりと、追い方を用意してください。低くても構いません。
2. 訪問を1種類として話す
新規・継続・公募前の3つに分けてください。
3. 「粘り強く通いました」と答える
時間の使い方を決められない人に読まれます。分ける基準を話してください。
4. 「数字の責任はありません」で止める
訪問社数、接続件数、申請件数、参加企業数。目標として置いていたはずです。
5. 自分を「橋渡し役」とだけ説明する
条件を整理して引き合わせるところまでが仕事です。何を整理したかを言ってください。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 中小企業基本法第7条は、「中小企業者は……自主的にその経営及び取引条件の向上を図るよう努めなければならない」と定めています
- 努力義務は事業者の側にあります。この仕事は、動く気のある相手を後押しするものです
- だから、「どこに時間を使い、どこに使わないか」の判断が、そのまま面接の答えになります
- 話す順番は、担当セグメント → 訪問量 → 接続 → 歩留まり。法人向けの活動管理と同じ形です
- 訪問を3種類(新規・継続・公募前)に分けて説明できると、活動を設計していた人として読まれます
- 逆質問は、①既存か新規か ②成果の測り方 ③担当先の割り振り方の3つに絞ってください
よくある質問
「行政の看板があったから会えたのでは」と言われたら
そのとおりだと認めてください。否定すると、かえって印象が悪くなります。そのうえで、「だから、看板だけで会ってもらえる1回目と、2回目以降は別だと思っています」と続けてください。1回目は誰でも会えます。2回目に会ってもらえるかどうかが、こちらの持っていった情報の価値で決まります。そして、◯年にわたって同じ先を訪問し続けられたのは、その積み重ねの結果です。この答え方をすると、看板の話が、逆に自分の実力の説明に変わります。
補助金の審査に関わっていたことは、話してよいですか
関わっていた事実と、手順までです。「公募の設計、要件の確認、審査会への付議の事務を担当していました」——ここまでにとどめてください。採択・不採択の判断の内容、審査の議論、個別の申請の中身は話せません。この線を自分から引いて話すこと自体が、評価になります。なお、この経験は、民間の与信や、委託先の選定の実務と構造が近いので、そうした役割を含む求人では触れる価値があります。その場合も、話すのは手順の設計のほうです。
転職の理由を、どう説明すればよいですか
「事業者を支援する側から、事業をする側に回りたい」——この形が、この経歴ではいちばん通ります。理由は、嘘がないからです。行政の立場では、どれだけ関わっても、成果は相手のものになります。それを何年か続けると、自分で最後まで持ちたいと思うのは自然です。注意点は、いまの仕事を下げて言わないことです。「行政では限界がある」という言い方をすると、どこに行っても同じことを言う人に見えます。「支援の側で◯年やってきて、次は事業の側で同じ工程を持ちたい」——上げる形で言ってください。