部署別 / 産業振興課
産業振興課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
産業振興課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「地域産業の振興、企業立地、雇用対策に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「産業のイベントを担当していた人」という像しか作れません。実際には、地域の事業者を業種と規模で把握し、何十社も回り、課題を聞き、支援機関や大学や金融機関につないできたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは産業振興課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は産業振興課から転職しやすい業界と職種に書いています。
支援の対象は、法律で数字が決まっています
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
中小企業基本法第2条は、中小企業者の範囲をこう定めています。
この法律に基づいて講ずる国の施策の対象とする中小企業者は、おおむね次の各号に掲げるものとし……
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種……に属する事業を主たる事業として営むもの
そして、卸売業、サービス業、小売業について、それぞれ別の金額と人数が続きます。
つまり、支援の対象は、業種ごとに、資本金と従業員数という数字で線引きされています。
ここが要点です。
この仕事は、最初から「どの規模の、どの業種の事業者を相手にするか」が決まっているということです。
そして、民間の法人向けの仕事では、これを「担当セグメント」と呼びます。
書類でいちばん最初に見られるのは、そこです。
- どの業種を、何社
- どの規模(従業員数、資本金)の層を
- 何年、継続して
「地域産業の振興」ではなく、この3つを冒頭に置いてください。
それだけで、「法人向けの担当を持っていた人」として読まれます。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所の産業振興課に配属され、地域産業の振興と企業立地、雇用対策に関する業務を担当しました。
業種も、社数も、年数も入っていません。
良い例
> ◯◯市(事業所数約◯者、うち製造業約◯者)の産業振興の部門において、市内事業者への訪問と課題の把握、支援機関・大学・金融機関への接続を担当しました。対象は従業員◯人規模までの製造業を中心に約◯社で、年間◯社を訪問しています。聞き取りの項目を統一し、業種別の課題を年度ごとに比較できる形に整理しました。あわせて、産学連携(年間◯件)、合同説明会(参加企業◯社・学生◯人)、企業立地の相談(年間◯件)を担当しています。
入っているもの
- 対象の業種と規模(=担当セグメント)
- 担当していた社数と、年間の訪問社数
- 自分が作った整理の仕組み
- 接続や催事の件数
1つ目と2つ目が要点です。「誰を、何社、何年」——法人向けの仕事では、これが最初に見られます。
担当業務
「産業振興」で丸めず、機能に分けて書いてください。
悪い例
> ・中小企業の支援> ・企業誘致> ・産学連携の推進> ・雇用対策> ・その他庶務
良い例
> 【企業訪問と実態の把握(年間約◯社)】> 業種と規模で対象を分けた訪問、業況・設備・人材・取引先についての聞き取り、記録の整理。統計は数年前のものしか使えないため、公表資料と現場の聞き取りを突き合わせて判断する運用を担当。>> 【支援機関・大学・金融機関への接続(年間約◯件)】> 課題の整理、接続先の選定、条件(求める成果・期間・費用・権利の扱い)の事前の整理、引き合わせ、その後の状況の確認。特定の事業者を有利に扱えないため、選定の基準を先に文書化して運用。>> 【人材の確保(合同説明会:参加企業◯社・学生◯人)】> 企業の採用の状況の把握、学校との調整、合同説明会とインターンの運営、就労の支援。>> 【企業立地・設備投資(相談年間約◯件)】> 用地・インフラの容量・許認可の見通し・支援制度を一元的に整理して提示。庁内の関係部署との調整。>> 【販路の開拓(商談会:参加◯社、商談◯件)】> 出展の支援、商談会の企画、事前の組み合わせの設計、当日の運営、成立の確認。>> 【計画と統計】> 産業振興の計画の策定(◯か年計画の第◯章を担当)、統計の整理、実績の集計。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、事業者の側に立つからです。
悪い例
> 地域産業の振興に努め、市内企業の活性化に貢献しました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:関係を作って、接続を数字にした
> 市内の製造業約◯社について、業種と規模で対象を分け、年間◯社を訪問。聞き取りの項目を統一して、業況・設備・人材・取引先の4つで記録。課題が明確になった◯件を支援機関・大学・金融機関に接続し、うち◯件が制度の活用や共同の取組に進んだ。
型2:仕組みを作って、比較できるようにした
> それまで担当者ごとに様式が違っていた訪問の記録について、聞き取りの項目を統一し、業種別・規模別に集計できる形に変更。年度ごとの比較が可能になり、翌年度の支援策の重点を、感覚ではなく記録から決められるようにした。
型3:組み合わせを設計した
> 商談会について、参加企業を「求めているもの」と「出せるもの」で事前に整理し、組み合わせを設計したうえで当日の面談枠を配分。従来の自由な形式から変更し、参加◯社で商談◯件、うち◯件が継続の取引の話に進んだ。
型1が、この経歴でいちばん効く形です。「訪問した社数 → 接続した件数 → 進んだ件数」という並びは、民間の法人向けの活動管理と、まったく同じ形をしています。
型2も強いです。記録の様式を作り替えて、判断を変えたという話は、仕組みを設計できる人として読まれます。
数字の出し方
公表されている資料と、手元の記録から取ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 担当していた事業者の業種と社数 | 職務要約 | 担当セグメント。いちばん最初に見られる |
| 年間の訪問社数 | 職務要約、実績 | 活動量を示す中心の数字 |
| 接続した件数と、進んだ件数 | 実績 | 歩留まりが書けると評価が変わる |
| 産学連携の件数 | 担当業務 | 件数のみ。相手先は書けない |
| 合同説明会の参加企業数と学生数 | 担当業務 | 両側の数字を出す |
| 企業立地の相談件数 | 担当業務 | 成約は公表分のみ |
| 商談会の参加社数と商談件数 | 実績 | 成立件数まで書けると強い |
| 事業所数・製造品出荷額(地域全体) | 職務要約 | 公表されている。規模の背景として使う |
1行目から3行目が中心です。誰を・何社回って・何件つないで・何件進んだか。この並びが揃うと、法人向けの担当を持っていた人として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
自分の数字がどう読まれるかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 地域金融・地域商社 | 担当セグメントと訪問社数 | 接続と歩留まり | 業種別の課題の整理 |
| 人材サービス・採用支援 | 説明会の企業数と学生数 | 企業の採用の事情 | 学校との関係 |
| 自治体を顧客とする企業 | 計画の策定と担当した章 | 統計と現状の整理 | 予算と議決の流れ |
| 製造業・技術系商社 | 商談会の設計と成立件数 | 産学連携の条件の整理 | 企業の課題の翻訳 |
| 不動産・拠点開発 | 立地の相談件数 | 用地・インフラ・許認可の整理 | 庁内の調整 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
訪問で聞いた話は、立場があるから聞けたものです。
- 個別の企業の業況、決算、資金繰りに関すること
- 設備投資や新規事業の計画(公表前のもの)
- 人員の削減や、採用の停止に関すること
- 取引先の構成や、特定の取引に関すること
- 立地の検討をしている企業に関すること(公表前のもの)
- 産学連携で扱った技術の内容や、権利の帰属に関すること
- 特定の自治体の内部の状況や、部署の評判に関すること
書けるのは、「何社を、どう分けて、何を聞き、どこにつないだか」と「件数」までです。
> ✕ 「◯◯社の後継者不在の課題を把握し、金融機関と連携して事業承継につなげた」> ○ 「訪問の聞き取りの中で、経営者の年齢と後継者の状況を項目に加えて記録。該当が見込まれる先について、金融機関と支援機関への接続の手順を整理し、年間◯件を接続した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の企業ではなく、自分が作った仕組みが書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 担当セグメントを書かない
どの業種の、どの規模を、何社、何年。法人向けの仕事では、これが最初に見られます。
2. 訪問社数を書かない
活動量を示す中心の数字です。記録から拾えます。
3. つないだ後を書かない
歩留まりが書けると、評価がまったく変わります。在職中に控えてください。
4. 計画づくりを「策定に従事」で終える
担当した章まで書いてください。中期の事業計画の策定にあたります。
5. 個別の企業のことを書いてしまう
業況、計画、人員、取引先。すべて書けません。自分が作った仕組みで書いてください。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 中小企業基本法第2条は、支援の対象を、業種ごとに資本金と従業員数という数字で線引きしています
- つまり、最初から「どの規模の、どの業種を相手にするか」が決まっている仕事です。民間でいう担当セグメントにあたります
- 職務要約には、対象の業種と規模・担当社数と訪問社数・自分が作った整理の仕組み・件数の4つを入れてください
- 担当業務は、6つの機能に分けて書きます
- 実績は、①関係を作って接続を数字にした ②仕組みを作って比較できるようにした ③組み合わせを設計したの3つの型で書けます
- 「訪問社数 → 接続件数 → 進んだ件数」という並びは、民間の法人向けの活動管理とまったく同じ形です
よくある質問
訪問の記録が手元にないのですが、社数は書けますか
概数で構いません。ただし、根拠が言えるようにしてください。たとえば、「月に◯社程度を訪問し、年間で◯社前後」という形です。面接で聞かれたときに、訪問の頻度から説明できれば通ります。逆に、根拠のない数字を書くと、そこで崩れます。なお、訪問の記録は、多くの場合、課の中に残っています。異動する前であれば、自分が担当した分の件数だけでも確認しておいてください。業種の内訳まで分かれば、担当セグメントとして書けます。
産学連携で扱った技術の話は、どこまで書けますか
技術の内容は書けません。企業の非公開の技術であることが多く、権利の帰属にも関わります。書けるのは、自分が整理した条件のほうです。具体的には、「求める成果、期間、費用の分担、知的財産の扱い、秘密の保持」の5点を、引き合わせの前に双方に確認する手順を整理した」という形です。これは、民間の共同研究や業務提携の実務と、まったく同じ項目です。技術が分からなくても、この5点を揃えられる人は評価されます。書くのは、技術ではなく手順です。
産業振興課での在職が2年と短いのですが、書けることはありますか
2年でも、書けることはあります。この仕事は、1年目で全体の暦を覚え、2年目で自分の担当先ができるという進み方をします。つまり、2年目に入った時点で、自分の担当セグメントを持っているはずです。書くなら、「◯年目から市内の製造業◯社を担当し、年間◯社を訪問」という形で、担当を持った期間を明示してください。そのうえで、その中で自分が変えたことを1つ——記録の様式、聞き取りの項目、接続の手順——書ければ十分です。年数の短さは、担当を持っていた事実で埋まります。面接で聞かれることは産業振興課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。