部署別 / 産業振興課
産業振興課から転職しやすい業界と職種
産業振興課からの転職で、方向を決めるときの分かれ目は1つだけです。
自分がやってきたのは、生産性の側か、需要の側か。
この2つで、行き先がきれいに分かれます。
そして、多くの方は両方をやっているのに、書類ではどちらか一方しか書いていません。
この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。
言い換えは産業振興課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
「高い生産性及び十分な需要を確保することにより」
行き先を考える前に、この分かれ方の根拠を条文で押さえます。
産業競争力強化法第2条第1項は、こう定めています。
この法律において「産業競争力」とは、産業活動において、高い生産性及び十分な需要を確保することにより、高い収益性を実現する能力をいう。
「高い生産性」と「十分な需要」。
2つが並んでいます。
そして、どちらか一方では足りないと書かれています。生産性が高くても需要がなければ収益にならず、需要があっても生産性が低ければ利益が残りません。
産業振興課の仕事も、この2つに分かれています。
| 側 | 庁内でやっていたこと | 行き先の系統 |
|---|---|---|
| 生産性の側 | 設備投資の支援、技術の相談、産学連携、人材の確保、省力化の支援 | 金融・技術・人材のほう |
| 需要の側 | 販路の開拓、商談会、展示会の出展支援、ビジネスマッチング、ブランドづくり | 営業・販売・マーケティングのほう |
自分がどちらを長くやってきたかで、書類の作り方が変わります。
そして、両方を経験しているなら、それは強みです。民間では、この2つは別の部署に分かれていることが多く、両方を見てきた人は多くありません。
向いている5つの方向
1. 地域金融機関・信用保証協会・地域商社
動きがいちばん近い方向です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 企業訪問、課題の聞き取り、支援機関への接続、業種別の状況の把握 |
| 求められる形 | 取引先を回り、課題を聞き、融資や本業の支援につなぐ |
| 入りやすさ | 高い。すでに同じ企業を訪問していることも多い |
書くときの注意。「企業訪問をしていた」だけでは足りません。訪問した社数、聞き取りの項目、つないだ件数、その後の状況まで書いてください。地域金融の渉外は、まさにその形で活動を管理しています。同じ形で書けば、仕事の中身が一致していることが伝わります。
2. 人材サービス・採用支援・学校との連携
人材の確保を担当していた場合の方向です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 合同説明会の運営、インターンの調整、学校との関係、企業側の採用の事情 |
| 求められる形 | 求人企業の開拓と支援、学校や求職者との接点づくり、イベントの企画運営 |
| 入りやすさ | 高い。企業側と学校側の両方を知っている人は少ない |
書くときの注意。「雇用対策」という言葉を使わないでください。民間では通じません。「地域の企業◯社と、学校◯校の間で、合同説明会(参加企業◯社・学生◯人)とインターンの調整を担当」と、両側の数字を出してください。
3. 自治体・産業支援機関を顧客とする企業
施策を作る側にいた経験が、そのまま提案に効きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 産業振興の計画づくり、統計の整理、事業の設計、予算と議決の流れ |
| 求められる形 | 自治体への提案、受託した調査や支援事業の運営 |
| 入りやすさ | 高い。行政の言葉と時期が分かることが価値になる |
書くときの注意。計画づくりに関わったなら、必ず書いてください。産業振興のビジョンや、総合戦略の産業の部分。これは、民間でいう中期の事業計画の策定にあたります。「計画の策定に従事」ではなく、「統計と企業への聞き取りから現状を整理し、◯か年の計画の◯章を担当」と書いてください。
4. 製造業・技術系商社の事業企画、販路の開拓支援
需要の側を担当していた場合の方向です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 商談会の企画運営、展示会の出展支援、バイヤーとの調整、マッチングの設計 |
| 求められる形 | 販路の開拓、展示会の運営、取引先の紹介、事業の企画 |
| 入りやすさ | 中。求人は業種によるが、経験の一致度は高い |
書くときの注意。商談会は「イベント運営」ではなく「商談の設計」として書いてください。何社と何社を、どの基準で組み合わせ、事前に何を揃えさせ、何件の商談が成立したか。ここまで書くと、マッチングの実務として読まれます。
5. 不動産・インフラ・拠点開発
企業立地を担当していた場合の方向です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 用地の情報、インフラの容量、許認可の見通し、庁内の調整 |
| 求められる形 | 立地の提案、用地の開発、拠点の展開、行政との調整 |
| 入りやすさ | 中。開発の案件を持つ会社では、行政との調整役として需要がある |
書くときの注意。「企業誘致」ではなく、「立地の検討に必要な判断材料を一元的に揃える役割」と書いてください。用地、インフラ、許認可の期間、支援制度。この4つを同時に出せることが、この経験の中身です。
合いにくい方向
1. 研究開発の専門職
産学連携に関わっていたことと、研究ができることは別です。技術の内容に踏み込む職種では、この経験が評価につながりません。
2. 個人向けの営業
相手が事業者でなくなると、この経歴の技術が使えません。企業の事情を読む力が、そのまま余ります。
3. 短期の数字で評価される販売職
月次の目標で評価される職種は、数年かけて関係を作ってきた感覚と合いません。
4. 立ち上げ期の一人目
制度も手続もない環境で、自分で全部作る役割です。この経歴は、既存の資源を組み合わせることに強いため、組み合わせる相手がいない環境では時間がかかります。
5. 製造・物流の現場の管理職
製造業を支援していたことと、製造の現場を回せることは別です。現場の経験が前提の職種は避けてください。
役に立つ資格
取ってから動く必要はありません。応募しながらで構いません。
| 資格 | 効く方向 | 実際のところ |
|---|---|---|
| 日商簿記3級 | 金融機関、地域商社、支援機関 | 事業者の決算を見る場面が増える方向では、懸念を先に消せる |
| 中小企業診断士 | 支援機関、金融機関、コンサル | 効果は大きいが時間がかかる。働きながら目指す形が現実的 |
| キャリアコンサルタント | 人材サービス、採用支援 | 人材の方向に出すなら分かりやすい裏づけになる |
| 宅地建物取引士 | 不動産、拠点開発 | 立地の経験を出す方向では効く |
| ITパスポート | 支援機関、自治体向け企業 | 必須ではないが、「情報の話が分かる」ことの最低限の印になる |
方向が決まっていないなら、日商簿記3級からで構いません。どの方向でも、無駄になりません。
求人を探すときの検索語
庁内の言葉で検索すると、求人が出てきません。
| 探している仕事 | 検索語 |
|---|---|
| 金融・地域商社 | 法人 渉外/取引先 支援/地域商社/事業性評価 |
| 人材・採用支援 | 採用支援 法人/キャリア アドバイザー/新卒 イベント運営 |
| 自治体向けの事業 | 公共 コンサルタント/調査 受託/地域産業 支援 |
| 販路・商談 | 販路開拓 支援/商談会 運営/展示会 企画/バイヤー |
| 立地・開発 | 用地 開発/拠点 開発/企業 誘致 民間 |
「産業振興」で検索しても、ほとんど出てきません。上の言葉に置き換えてください。
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つまずきやすい点
1. 生産性の側と需要の側を、分けずに書く
自分がどちらを長くやってきたかを決めてください。両方なら、それは強みとして書けます。
2. 「技術が分からないから無理」と決める
求められているのは翻訳のほうです。技術の内容に踏み込む必要はありません。
3. 「雇用対策」「産業振興」で書く
民間では通じません。両側の数字(企業数と、学生や求職者の数)で書いてください。
4. 計画づくりの経験を書かない
民間でいう中期の事業計画の策定です。担当した章まで書いてください。
5. 商談会を「イベント運営」として書く
商談の設計です。組み合わせの基準と、成立した件数まで書いてください。
まとめ
- 産業競争力強化法第2条は、産業競争力を「高い生産性及び十分な需要を確保することにより、高い収益性を実現する能力」と定めています
- 産業振興課の仕事も、生産性の側(設備・技術・人材)と需要の側(販路・商談・ブランド)に分かれます
- 向いているのは、①地域金融・地域商社 ②人材サービス・採用支援 ③自治体を顧客とする企業 ④製造業・技術系商社の事業企画 ⑤不動産・拠点開発の5方向です
- 合いにくいのは、研究開発の専門職/個人向け営業/短期の販売目標/立ち上げ期の一人目/製造の現場職です
- 技術の知識は求められていません。求められているのは、企業の課題を事業の言葉に翻訳して、解ける相手につなぐことです
- 「産業振興」では求人が出てきません。検索語を置き換えてください
よくある質問
企業訪問の件数が少ないのですが、それでも書けますか
件数より、深さで書いてください。年間の訪問が◯社と少なくても、同じ企業を数年にわたって継続して訪問していたなら、そちらのほうが価値があります。書くなら、「市内の主要な製造業◯社を、◯年にわたり継続して訪問。業況、設備の更新、人材の状況を年度ごとに整理し、支援制度や支援機関への接続につなげた」という形です。地域金融の渉外も、同じ相手を何年も担当します。「広く浅く」より「狭く長く」のほうが、この方向では強いことが多くあります。
産業振興課と商工観光課の両方を経験しています。どう書けばよいですか
通算の年数を前に出して、担当の中身を分けて書いてください。冒頭に、「地域の産業と事業者の支援に通算◯年」と置き、そのうえで、「支援制度の設計と執行(商工)」「企業訪問と産学連携、人材の確保(産業振興)」というように、機能で分けます。この2つを経験している方は、制度を作る側と、企業を回る側の両方が分かることになり、地域金融や支援機関では、かなり評価されます。ただし、両方を同じ重さで書くと、どちらも浅く見えます。応募先に合わせて、前に出すほうを決めてください。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、この経歴は、生産性の側と需要の側で、書類の作り方が変わります。1通で両方を狙うと、どちらにも寄り切らない書類になります。現実的なのは、主にするほうで1通作り、説明の型が近い2方向(たとえば地域金融と、自治体を顧客とする企業)を並行して見る形です。この2つは、どちらも「行政と企業の両方が分かる人」を探しているので、書類の作り直しが少なく済みます。書き方は産業振興課の職務経歴書に整理しています。