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福祉事務所・生活保護の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
福祉事務所の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「生活保護受給世帯への訪問、相談、就労支援」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「相談に乗っていた人」という像しか作れません。実際には、常時数十件から百件を超える世帯を担当し、調査し、決定し、訪問の頻度を配分し、記録を残し、関係機関と調整していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは福祉事務所・生活保護の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は福祉事務所・生活保護からの転職先に書いています。
「資料の提供を求めることができる」——調査の権限があります
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯にもなり、同時に制約にもなる部分です。
生活保護法第29条第1項は、こう定めています。
保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条の規定の施行のために必要があると認めるときは、次の各号に掲げる者の当該各号に定める事項につき、官公署、日本年金機構若しくは国民年金法に規定する厚生労働大臣等に対し、必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社、次の各号に掲げる者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。
読み解くと、3つのことが分かります。
1. 調査には、法律上の権限がある。「お願い」ではありません。
2. 求める先が広い。官公署、年金の実施機関、銀行や信託会社、雇主まで含まれます。
3. 目的が限定されている。「保護の決定若しくは実施」などのために必要があると認めるときに限られます。
つまり、この仕事は、強い調査の権限を、限定された目的の範囲内で使ってきたということです。
これは、書類にそのまま効いてきます。
得られた情報は、極めて機微です。預貯金、収入、勤務先、家族の状況、健康の状態。どれも書けません。
書けるのは、「どういう手順で調べ、どう記録し、どう判断につなげたか」までです。
そして、この線を守ったまま厚く書けている書類は、それだけで信用されます。個人情報を日常的に扱ってきた人かどうかは、書類の書き方から読めるためです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では福祉事務所に所属。生活保護に関する相談、訪問、就労支援などを担当しました。
件数も、工程も、判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人)の福祉事務所で◯年間、生活保護の担当として常時約◯世帯を並行して担当しました。相談の受付から、資産・収入・扶養・他制度の調査、保護の要否と程度の決定、決定後の継続的な状況確認(年約◯回の訪問)、収入の変動に応じた決定の変更、就労支援、関係機関との調整までを一貫して担当しています。訪問の頻度は、世帯の状況に応じて区分を設けて配分していました。
入っているもの
- 件数(常時の担当世帯数、年間の訪問回数)
- 工程の広さ(受付から変更まで)
- 管理の設計(訪問頻度の区分と配分)
1つ目がいちばん効きます。「常時約◯世帯」と書くだけで、案件管理の規模が伝わります。
担当業務
「相談」「訪問」の一語で丸めず、工程として書いてください。
悪い例
> ・生活保護の相談、申請の受付> ・受給世帯への訪問> ・就労支援> ・関係機関との連携
良い例
> 【相談の受付と初回の見立て(年約◯件)】> 相談を受け、制度の対象になりうるかを判断。あわせて、年金・手当・貸付・医療・就労支援など、他に使える制度の可能性を確認し、該当するものを案内。>> 【調査と決定(年約◯件)】> 資産・収入・扶養・他制度の状況を、法令に基づく手続で確認し、保護の要否と程度を決定。決定に期限があるため、確認の順序を定め、判明した範囲で決定し、後から変更する運用を担当。却下する場合の理由の通知も担当。>> 【継続的な状況確認(常時約◯世帯・年約◯回の訪問)】> 定期的な訪問と面談、記録の作成。状況が動いている世帯と安定している世帯で訪問の頻度を区分し、限られた時間を配分する設計を運用。>> 【就労支援】> 就労が難しい要因を、健康・技能・生活のリズム・家族の事情に分けて整理し、順序を決めて関係機関へつなぐ。受け入れ先の開拓と、就職後の状況の確認まで担当。>> 【決定の変更・終了・返還】> 収入の変動に応じた決定の変更、状況の改善に伴う保護の廃止、過大支給が生じた場合の返還・徴収の処理。>> 【関係機関との調整】> 医療機関、介護の事業者、就労支援機関、教育、司法など、世帯の状況に応じて必要な機関と調整。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、個別の世帯の状況の変化として現れ、それを書けないからです。
悪い例
> 受給世帯に寄り添った支援を行い、複数の世帯の自立につなげました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:仕組みを作った
> 訪問の頻度について、世帯の状況(収入の変動、就労に向けた動き、健康の状態)を基準とした区分を整理し、年間の訪問計画として配分する形に整備。担当者が交代しても同じ基準で優先順位をつけられるようにし、訪問すべき世帯の漏れをなくした。
型2:件数で示した
> 常時約◯世帯を担当し、年間約◯件の訪問と、年約◯件の決定・変更の処理を実施。就労支援については、年約◯件を関係機関につなぎ、うち◯件が就労に至った。
型3:連携の経路を作った
> 就労が難しい要因の整理に基づき、健康面は医療機関、技能は職業訓練、生活のリズムは就労準備の支援というように、要因ごとの接続先を整理。個別に探していた連携先を、要因から引ける形にまとめ、係内で共有した。
型3が、この経歴でいちばん書きやすい形です。個別の世帯に触れずに、自分が整理した仕組みだけで書けます。
数字の出し方
個別の事案に触れずに使える数字を選んでください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 常時の担当世帯数 | 職務要約 | 案件管理の規模がいちばん伝わる |
| 年間の訪問回数 | 職務要約、実績 | 概数で可 |
| 相談の受付件数(年間) | 担当業務 | 事業概要で公表している団体もある |
| 決定・変更の処理件数(年間) | 担当業務、実績 | 同上 |
| 就労支援でつないだ件数と就労に至った件数 | 実績 | 就労の方向でいちばん効く |
| 関係機関の開拓件数 | 実績 | 訪問した事業所数など |
| 係の人数と、自分の位置づけ | 職務要約 | 指導的な立場なら必ず書く |
| 担当していた地区の世帯数・保護率 | 職務要約 | 公表されている統計から取れる |
1行目と5行目が最も効きます。担当世帯数は規模を、就労支援の件数は成果の方向を示します。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 就労支援・人材サービス | 就労支援の件数と進め方 | 要因の整理と接続先 | 就職後の状況確認 |
| 相談支援・地域の機関 | 担当世帯数と継続管理 | 多機関連携 | 制度を横断した見立て |
| 医療・介護の相談 | 医療扶助・介護扶助の調整 | 医療機関との連携 | 退院・退所後の生活の設計 |
| 企業の人事・従業員支援 | 面談と記録 | 制度と手続につなぐ進め方 | 守秘の扱い |
| 金融・債権管理の相談 | 家計の聞き取りと収支の整理 | 返還・徴収の処理 | 優先順位のつけ方 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
第29条の調査権限で得た情報は、目的の範囲内でしか使えません。書類でも同じです。
- 世帯の状況、家族構成、家族関係
- 収入、預貯金、資産の内容
- 疾病、障害、健康の状態
- 勤務先や、就労に至った先の名称
- 相談の内容、面談で聞き取った事情
- 保護を却下した個別の事案
- 不正受給として処理した事案の詳細(手口が分かる記述はしない)
- 担当していた地区の中で、特定の世帯が推測できる記述
書けるのは、「工程」と「件数」と「自分が整理した仕組み」までです。
> ✕ 「精神疾患のある単身世帯について、通院に同行したうえで就労に至った事例がある」> ○ 「就労が難しい要因を健康・技能・生活のリズム・家族の事情に分けて整理し、要因ごとの接続先を定めて関係機関につなぐ手順を運用した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の事案ではなく、自分が設計した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「相談」「訪問」の一語で丸める
受付・調査・決定・継続管理・変更・連携という、性質の違う工程があります。
2. 担当世帯数を書かない
件数は個人情報ではありません。案件管理の規模がいちばん伝わる数字です。
3. 訪問の頻度の配分を書かない
ポートフォリオ管理と同じです。管理する側の能力として読まれます。
4. 就労支援の件数を落とす
就労の方向でいちばん効く数字です。つないだ件数と、就労に至った件数を分けて書いてください。
5. 個別の事案を書いてしまう
世帯の状況、疾病、家族関係、勤務先。すべて書けません。工程と仕組みで書いてください。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 生活保護法第29条は、保護の決定若しくは実施のために必要があると認めるときに、官公署・年金の実施機関・銀行・雇主などに資料の提供や報告を求められると定めています
- 強い調査の権限を、限定された目的の範囲内で使ってきた——だから、得た情報は書類に書けません
- 書けるのは、「工程」と「件数」と「自分が整理した仕組み」までです
- 職務要約には、件数・工程の広さ・管理の設計の3つを入れてください
- 実績は、①仕組みを作った ②件数で示した ③連携の経路を作ったの3つの型で書けます。③は個別の世帯に触れずに書けます
- 担当世帯数と、就労支援の件数が、規模と成果を示す中心の数字です
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。福祉事務所は扱う工程が多いため、全部書くと3枚を超えます。応募先に関係の薄いものは、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば就労支援の方向に応募するなら、返還・徴収の処理は1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
査察指導員や係長だった場合は、どう書けばよいですか
「チームの管理」として、担当者とは別に書いてください。担当者の人数、受け持っていた世帯数の合計、記録の確認の方法、判断が難しい案件の相談への対応、新任の育成。これは民間でいうチームマネジメントそのものです。担当者としての経験と混ぜずに、指導的な立場での業務として一段落を立てると、管理職の候補として読まれます。
面接で守秘義務の話になったら、どう答えますか
自分から先に言うのが有効です。「担当していた世帯の個別の状況はお話しできませんので、進め方の構造でお答えします」と最初に言えば、守秘の線を自分で引ける人として読まれます。むしろ、聞かれるままに個別の話をしてしまうほうが、評価を下げます。個人情報を扱う部署では、ここが見られています。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。