部署別 / 福祉事務所・生活保護
福祉事務所・生活保護からの転職先|向いている5方向と、合いにくい方向
福祉事務所からの転職で、いちばん多い遠回りはこれです。
「福祉」で求人を探す。
出てくるのは、介護や保育の現場職が中心になります。資格が前提のものも多く、案件管理と就労支援をしてきた経験が使われません。
この経歴の中心にあるのは、使える資源を洗い出し、順序を決めて、自走できる状態に持っていくという工程です。これに見合う求人は、「福祉」ではなく別の語で出ています。
この記事では、向いている5方向と、合いにくい方向、それに資格と検索語を並べます。
仕事の言い換えは福祉事務所・生活保護の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
「利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」を洗い出す仕事です
方向の話に入る前に、この仕事の中心にある工程を条文で確認します。
生活保護法第4条第1項は、こう定めています。
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
そして第2項は、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるとしています。
「利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」——この一文が、仕事の中心です。
つまり、この仕事は、先に保護を決めるのではなく、使えるものを全部洗い出すところから始まります。
- 資産(預貯金、不動産、保険、車、その他)
- 能力(働ける状態か、どこまで働けるか、何が障害になっているか)
- 扶養(親族からの支援が期待できるか)
- 他の制度(年金、手当、貸付、医療、介護、就労支援)
この4つを漏れなく確認し、使える順に使う。
これは、民間の支援の仕事でいう「アセスメント」そのものです。
人材サービスでも、医療や介護の相談でも、企業の従業員支援でも、まず現状を洗い出し、使える資源を特定し、順序を決めるところから始まります。
面接では、この工程を前に出してください。
> 支援を決める前に、資産・能力・扶養・他制度の4つを漏れなく確認し、使える順に組み立てる、という進め方をしていました。
「まず洗い出す」という訓練を受けている人は、支援の職種では強く読まれます。
向いている5つの方向
1. 人材サービス・就労支援
いちばん直線的につながる方向です。
働きたいが働けていない方に対して、何が障害になっているかを見立て、順序を決めて進める。就労移行支援、障害者雇用の支援、キャリア相談。工程が同じです。
| 見るべき求人 | 前に出す経験 |
|---|---|
| 就労移行支援・就労継続支援の支援員 | 就労支援、関係機関との連携、記録 |
| 障害者雇用・定着支援 | 健康や生活の状況を含めた見立て |
| 人材サービスのキャリア相談 | 面談、アセスメント、案件管理 |
とくに、就労が難しい方を担当してきた経験は、支援が必要な層を扱う事業でいちばん値が付きます。すぐ就職できる方の支援は、民間側にも経験者が多いためです。
もう一つ、この方向で効くのが「関係機関の開拓」の経験です。就労先を探すために事業所を訪ね、受け入れの条件を調整し、就職後も様子を確認する。これは、就労移行支援の事業所がやっていることとまったく同じです。訪問した事業所の数と、実際に受け入れにつながった件数を控えておいてください。
2. 医療・介護の相談職と、地域の支援機関
医療機関の相談部門、介護の事業者、地域包括支援センター、相談支援の事業所。
医療扶助や介護扶助の調整、関係機関との連携の経験が、直接つながります。
そして、制度を横断して見られることが強みになります。年金、手当、医療、介護、就労、住まい。この範囲を日常的に横断してきた人は、この領域でも多くありません。
3. 企業の人事・従業員支援
従業員の健康、家庭の事情、働き方の調整、休職からの復帰。企業でも、相談を受けて関係先につなぐ役割が置かれるようになっています。
面談の訓練と、記録の習慣と、制度の知識を持っている人は、この役割に向きます。
とくに、「話を聞くだけで終わらせず、制度と手続につなぐ」という進め方は、企業の相談窓口でまさに求められているものです。
4. 自治体を顧客にする企業・支援を担う法人
就労支援の受託、相談支援の受託、生活困窮者の支援に関する事業、福祉分野のシステム。
発注する側にいた経験に加えて、現場で何が起きるかを知っていることが提案の材料になります。
受託側に回ると、自分がいた現場を運営する側になります。手順の設計、人員の配置、記録の品質、発注者への報告。やってきたことが、そのまま業務内容です。
5. 金融・債権管理の相談部門
意外に見えるかもしれませんが、接続します。
多重債務の相談、返済条件の見直し、生活再建を前提とした回収。「払えないのか、払わないのか」を見極め、生活の状況を聞き取ったうえで条件を決めるという工程は、福祉事務所の仕事と構造が同じです。
家計の状況を聞き取り、収支を整理し、優先順位をつけるという訓練を受けている人は、この領域で貴重です。
合いにくい方向
正直に書いておきます。
1. 新規開拓の営業
見立てと継続管理で成り立つ仕事です。目標を持って新規に働きかける仕事とは、求められるものが変わります。既存の担当や、支援型の営業のほうが接続します。
2. 資格が前提の専門職
看護、リハビリ、心理、社会福祉士が必須の相談職。資格がなければ就けません。福祉事務所の実務経験は評価されますが、資格の代わりにはなりません。
3. 企画・マーケティング職
個別の状況に応じて判断するのがこの経歴の強みです。多数に向けた打ち手を設計する仕事とは、求められる動き方が変わります。
4. 立ち上げ期の会社の支援事業一人目
制度と連携先がある前提で、それを使って組み立てるのが強みです。連携先そのものを一から作る場面では、前提が変わります。ただし、関係機関の開拓に関わった経験がある方なら、この限りではありません。
5. 短期の数字で評価される職種
この経歴の成果は、数か月から数年かけて現れます。月次の目標を積み上げる形の職種では、働き方の前提が変わります。
役に立つ資格
必須の資格はありません。ただし、方向によっては書類の通りやすさが大きく変わります。
| 資格 | 効く方向 | 補足 |
|---|---|---|
| 社会福祉士 | 相談支援、医療・介護、地域の機関 | 必須要件になっている求人が多い。優先度が最も高い |
| 精神保健福祉士 | 就労支援、医療機関 | 精神面の支援を扱う事業で強い |
| キャリアコンサルタント | 人材サービス、就労支援 | 就労支援の経験と組み合わせると効く |
| 産業カウンセラー | 企業の従業員支援 | 面談の訓練の裏づけになる |
| ファイナンシャル・プランニング技能士3級 | 金融・債権管理の相談 | 家計の整理を語れる |
優先順位をつけるなら、社会福祉士です。必須要件として書かれている求人が多く、ここで足切りになることがあります。福祉事務所での実務経験は受験資格に関わる場合があるので、在職中に条件を確認しておいてください。
求人を探すときの検索語
「福祉」だけで探さないでください。
| 見たい方向 | 検索語 |
|---|---|
| 就労支援 | 就労支援/就労移行/定着支援/職業相談 |
| 相談支援 | 相談支援/ケースマネジメント/生活支援/自立支援 |
| 医療・介護 | 医療相談/地域包括/ケアマネジメント/退院支援 |
| 企業の従業員支援 | 従業員相談/復職支援/健康経営/人事 労務相談 |
| 受託事業者 | 委託事業/生活困窮/自立相談支援/就労準備 |
| 金融・債権 | 家計改善/多重債務/返済相談/債権管理 |
「アセスメント」「個別支援計画」は、必ず業務内容の欄で確認してください。見立てて計画を立てる側かどうかが、この2語で分かります。
つまずきやすい点
1. 「福祉」で検索する
「相談支援」「就労支援」「ケースマネジメント」で探してください。
2. 「アセスメント」の記載を確認しない
見立てて計画を立てる側かどうかが、この語で分かります。
3. 就労支援の経験を落とす
民間でいちばん値が付く部分です。とくに、就労が難しい方を担当した経験は貴重です。
4. 制度を横断して見られることを書かない
年金、手当、医療、介護、就労、住まい。この範囲を日常的に横断してきた人は多くありません。
5. 方向を1つに絞りすぎる
就労支援と相談支援は、説明の型が近いので並行して見られます。
どの方向で値が付くかは、募集の出方で変わります。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 生活保護法第4条は、利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用することを保護の要件としています
- 資産・能力・扶養・他制度の4つを漏れなく確認し、使える順に組み立てる——これが民間でいうアセスメントです
- 向いているのは、①人材サービス・就労支援 ②医療・介護の相談職と地域の機関 ③企業の人事・従業員支援 ④受託事業者と自治体向け企業 ⑤金融・債権管理の相談部門の5方向です
- 合いにくいのは、新規開拓の営業/資格が前提の専門職/企画・マーケティング/立ち上げ期の一人目/短期の数字で評価される職種です
- 資格を1つ選ぶなら社会福祉士。必須要件として書かれている求人が多く、ここで足切りになることがあります
- 求人票は、業務内容に「アセスメント」「個別支援計画」が入っているかで見分けてください
よくある質問
社会福祉士を持っていないと、相談支援の仕事には就けませんか
求人によります。必須要件としている求人は確かに多いのですが、実務経験を評価する求人もあります。とくに、生活困窮者の自立相談支援や、就労準備の支援では、福祉事務所での実務経験が直接評価されることがあります。ただ、中長期でこの領域に進むなら、資格の取得を並行して考える価値はあります。在職中に受験資格の条件を確認しておいてください。
事務職として採用されたのに、福祉の経験として書いてよいですか
書けます。採用の区分が事務職であっても、実際に担当した業務が案件管理と相談支援であれば、それが経歴です。書類では、「一般行政職として採用され、福祉事務所に配属。生活保護の担当として常時◯件の世帯を担当」のように、採用区分と担当業務を分けて書いてください。曖昧にするより、そのほうが正確に伝わります。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、この経歴は「支援する側」と「管理する側」で求められるものが違うため、1方向に絞ると選択肢が少なくなります。就労支援と相談支援のように、説明の型が近い2方向を並行して見ておくと、書類の作り直しが少なく済みます。書き方は職務経歴書、聞かれることは面接に整理しています。