部署別 / 福祉事務所・生活保護
福祉事務所・生活保護の働き方と評価|一年の波と、成果が数字にならない理由
福祉事務所の働き方には、他の部署にない前提があります。
担当する件数を、自分たちで決められないことです。
相談が増えれば、担当は増えます。「今年は受けられません」という選択肢がありません。
そして、一度担当すると、状況が変わるまで続きます。処理して終わる仕事ではなく、持ち続ける仕事です。
この記事では、一年の波と、成果が数字として表れにくい構造、そして民間に移ったときに何が変わるかを整理します。不満の話ではなく、構造の話として読んでください。転職の場面で、自分の仕事をどう説明するかに直結します。
言い換えは福祉事務所・生活保護の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は福祉事務所・生活保護からの転職先、書類は職務経歴書、面接は面接で聞かれることに分けています。
「決定し、かつ、実施しなければならない」と書かれています
まず、件数が外から決まる理由を条文で確認します。
生活保護法第19条第1項は、こう定めています。
都道府県知事、市長及び社会福祉法に規定する福祉に関する事務所を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。
「決定し、かつ、実施しなければならない」です。
2つのことが義務になっています。
1. 決定すること。要件に当てはまるかを判断し、結論を出す。
2. 実施すること。決定して終わりではなく、その後の実施まで担う。
そして、どちらも「しなければならない」です。
つまり、受けるか受けないかの裁量がありません。
民間の支援サービスであれば、受け入れの上限を決められます。手が回らなければ、順番待ちにすることもできます。
福祉事務所には、それがありません。
面接では、これを一度言ってください。
> 受け入れの上限を決められない中で、限られた時間をどう配分するかが仕事の中心でした。
「量が外から決まる業務を、配分の設計で回してきた」——これは、企業の支援事業やサポート部門でも、そのまま必要になる能力です。
一年の波
年間の動きは、収入の確認と、制度上の加算の時期を軸に、訪問が通年で走る形になります。
| 時期 | 主な仕事 | 忙しさ |
|---|---|---|
| 4月 | 人事異動に伴う担当の引き継ぎ、制度改正の反映 | 高 |
| 5〜6月 | 課税資料による収入の確認と、収入認定の一斉見直し | 最も高い |
| 7〜8月 | 一時的な扶助の申請、訪問計画の消化 | 中 |
| 9〜10月 | 訪問の消化、就労支援の本格化 | 中 |
| 11〜12月 | 年末に向けた相談の増加、冬季の加算の処理 | 高 |
| 1〜3月 | 年度末の処理、転居・就職に伴う変更の集中 | 高 |
| 通年 | 新規の相談(読めない)、緊急の対応、訪問 | — |
いちばん重いのは5〜6月です。前年の所得が課税資料として確定するため、収入の申告と突き合わせ、必要な世帯の決定を一斉に見直します。対象が多いので、通常の訪問と並行して進めることになります。
そして、4月にもう一つの山があります。人事異動で担当が入れ替わるため、引き継ぎが発生します。数十件から百件を超える世帯を、記録だけで引き継ぐことになります。
通年で読めないのが、新規の相談です。いつ、何件来るかは分かりません。しかも、緊急性が高い相談は、他の予定を押しのけて優先されます。
成果が数字にならないのは、指標の性質によるものです
福祉事務所の成果が評価に結びつきにくいのには、3つの構造的な理由があります。評価してもらえないという話ではなく、成果の性質からそうなるという話です。
1. 「保護の廃止」が、成果を表す数字にならない
保護が終わる理由は、就労による自立だけではありません。転出、他の制度への移行、世帯の状況の変化。廃止の件数を見ても、支援がうまくいったかは分かりません。
2. 件数が外から決まる
担当する世帯の数は、相談の数で決まります。多く担当したことは、努力の結果ではありません。
3. 効果が現れるまでが長く、担当が変わる
就労につながるまで、生活が安定するまでには、数か月から数年かかります。その間に人事異動があれば、誰の関わりが効いたのかは分かりません。
この3つのうち、1つ目と3つ目は、書き方で置き換えられます。
「廃止の件数」ではなく、「就労支援でつないだ件数と、就労に至った件数」を分けて持つことです。
そして、「自分が整理した仕組み」を書くこと。要因ごとの接続先の整理、訪問の頻度の区分、記録の様式。これらは、担当が変わっても残ります。
残るものを作った、という形なら、効果が現れるまでの長さに関係なく書けます。
民間に移ると変わる4つのこと
1. 担当件数が変わる
民間の支援事業では、一人が持つ件数が福祉事務所より少ないことが多いです。一件あたりに使える時間が増えます。
ただし、事業によっては件数が多い場合もあるので、逆質問で必ず確認してください。
2. 対象と範囲が、契約で決まる
民間では、受け入れの上限を決められ、支援の範囲も契約で定まります。
「どこまでが自分の仕事か」がはっきりするという点で、これは楽になる部分です。一方で、範囲の外にある問題を見つけても、手を出せないという場面が出てきます。
3. 成果が就職率や定着率で測られる
企業では、就職に至った件数、定着した期間が指標になります。「丁寧に支援した」では評価が止まります。
だから、就労支援の件数を持っていることが、そのまま強みになります。
4. 権限がなくなり、合意で進める
福祉事務所には、決定する権限がありました。民間では、相手の同意がなければ何も進みません。
ただし、生活保護法第27条も「自由を尊重し、必要の最少限度に」と定めています。もともと、権限を抑えて合意で進める訓練を受けているので、この切り替えは大きくありません。
在職中に残しておくべき記録
転職を考え始めたら、在職中に手元に控えておくものがあります。辞めてからでは集めにくくなります。
| 残すもの | 使う場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 常時の担当世帯数 | 職務要約 | 案件管理の規模がいちばん伝わる |
| 年間の訪問回数 | 職務要約、実績 | 概数で可 |
| 就労支援でつないだ件数と、就労に至った件数 | 実績 | 就労の方向でいちばん効く。分けて控える |
| 相談の受付件数(年間) | 担当業務 | 事業概要で公表している団体もある |
| 決定・変更の処理件数(年間) | 担当業務 | 同上 |
| 関係機関の開拓件数 | 実績 | 訪問した事業所数など |
| 担当地区の世帯数・保護率 | 職務要約 | 公表されている統計から取れる |
| 係の人数と、自分の位置づけ | 職務要約 | 指導的な立場なら必ず書く |
3行目が最も効きます。つないだ件数と、就労に至った件数は別の数字です。両方を控えておくと、「どれだけ動いたか」と「どれだけ実ったか」を分けて話せます。
そして、書いてはいけないものも確認しておきます。
- 世帯の状況、家族構成、家族関係
- 収入、預貯金、資産の内容
- 疾病、障害、健康の状態
- 勤務先や、就労に至った先の名称
- 相談の内容、面談で聞き取った事情
- 保護を却下した個別の事案
- 不正受給として処理した事案の詳細
- 特定の世帯が推測できる記述
書けるのは、「工程」と「件数」と「自分が整理した仕組み」までです。
つまずきやすい点
1. 「常に振り回されていた」と説明する
「割り込みが前提の中で、優先度の高い世帯への訪問が漏れないよう、計画を月単位で組み直していた」と言い換えてください。
2. 廃止の件数を成果として書く
廃止には自立以外の理由もあります。就労支援でつないだ件数と、就労に至った件数を分けて書いてください。
3. 「自分が整理した仕組み」を書かない
担当が変わっても残るものです。効果が現れるまでの長さに関係なく書けます。
4. 担当世帯数を控えていない
件数は個人情報ではありません。案件管理の規模がいちばん伝わります。
5. 退職後の手続きを確認しないまま動く
退職手当や共済の扱いは在職期間で変わります。所属の人事担当課と共済組合で先に確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
どの経験がどの方向で値が付くかは、募集の出方で変わります。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 生活保護法第19条は、保護を決定し、かつ、実施しなければならないと定めています。受けるか受けないかの裁量がありません
- 量が外から決まる業務を、配分の設計で回してきた——これが、この経歴の説明の核です
- 一年の山は5〜6月の収入認定の一斉見直しと4月の担当の引き継ぎ。新規の相談は通年で読めません
- 成果が数字にならないのは、廃止の件数が成果を表さない/件数が外から決まる/効果が現れるまでが長く担当が変わるという3つの構造によるものです
- 「つないだ件数」と「就労に至った件数」を分けて控えてください。そして、担当が変わっても残る仕組みを書いてください
- 民間に移ると、担当件数が変わる/対象と範囲が契約で決まる/就職率や定着率で測られる/権限がなくなり合意で進めるの4点が変わります
よくある質問
残業は多い部署ですか
団体や年によって違うため、一般化はできません。ただし、構造として、担当件数を自分たちで決められないこと、5〜6月に収入認定の見直しが集中すること、新規の相談や緊急の対応が予定を押しのけることは、どこでも共通します。面接で聞かれたら、量が外から決まるという構造を説明するのが正確です。個別の職場の事情をそのまま話す必要はありません。
民間の支援事業でも、担当件数は多いのですか
事業と会社によって大きく違います。就労移行支援のように、一人あたりの利用者数に目安がある事業もあれば、相談支援のように件数が多くなりやすい事業もあります。逆質問で「一人が担当する件数はどのくらいですか」と必ず聞いてください。この質問は、実務を知っている人の質問として読まれるので、聞くこと自体にも意味があります。
異動して1年ですが、経歴として使えますか
使えますが、もう一年いたほうが材料は増えます。一年目は、制度を覚え、担当を引き継ぎ、訪問を回すところまでです。二年目に入ると、前年に関わった世帯の変化を見ることになり、見立ての精度が変わります。書類にいちばん効く「就労支援でつないで、就労に至った件数」も、一年では数が揃いません。判断の目安は、担当を一年通して持ち、就労支援を自分で組み立てたことがあるかです。書き方は職務経歴書に整理しています。