部署別 / 商工観光課
商工観光課出身者が面接で必ず聞かれること
商工観光課から民間に移るとき、面接で必ず来るのはこの質問です。
「営業のご経験は、ありますか」
ここで「ありません」と答えると、それまでの話が全部薄くなります。
正確には、個別の事業者に営業をかけることが、立場として許されていなかっただけです。その制約の中で、商工団体と金融機関を経由して制度を届け、執行率を作ってきた——これは説明しないと伝わりません。
この記事では、実際に聞かれる質問を7つ挙げて、避けたい答え方と、組み立て方を並べます。
書類の書き方は商工観光課の職務経歴書、行き先の絞り方は商工観光課から転職しやすい業界と職種に書いています。
根拠は、「公益上必要がある場合」の一語だけです
答え方の前に、この仕事の性格を条文で押さえます。面接の答え全体の芯になる部分です。
地方自治法第232条の2は、こう定めています。
普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
これだけです。
補助金を出す根拠は、「公益上必要がある場合」という一語しかありません。対象も、金額も、条件も、法律には書かれていません。
つまり、「なぜこの事業者に、公金を出すのか」を、その都度こちらが説明するという構造です。
議会でも、監査でも、住民からの問い合わせでも、同じことを聞かれます。なぜ、その業種なのか。なぜ、その補助率なのか。なぜ、いまなのか。
これを毎回説明してきた、というのが、この仕事の中身です。
そして、この経験がそのまま面接で効きます。
民間の面接で聞かれるのは、「なぜ、その判断をしたのか」です。予算を配る理由を説明し続けてきた人は、この形式の質問に強いはずです。
にもかかわらず、多くの方が「上が決めたことなので」と答えてしまいます。
そこを、自分の判断として話し直すのが、この記事の中心です。
質問1:「商工観光課では、どういうお仕事をされていたんですか」
最初の質問で像が決まります。
避けたい答え方
> 中小企業向けの補助金の事務と、観光のイベントの担当をしていました。
「窓口で書類を受けていた人」で固まります。
組み立て方
枠の大きさと、執行の結果を先に置いてください。
> 中小企業向けの支援制度を、要綱の設計から公募、審査、精算まで一貫して担当していました。年間で◯件、総額約◯万円の枠を扱っていて、執行率は◯%です。事業者に直接営業ができない立場なので、商工会議所と金融機関を経由して届ける経路を作るのが、実際の仕事でした。あわせて、観光の誘客事業と、◯市町で構成する協議会の事務局を持っていました。
「枠を預かって、使われるところまで持っていった」という形にすると、事業を回していた人として読まれます。
質問2:「その補助金は、何のためにやっていたんですか」
この質問は、判断の根拠を見ています。
避けたい答え方
> 国の制度に合わせて、市でも同様の支援を行っていました。
「決められたことを流していた人」になります。
組み立て方
地域の条件から説明してください。
> 市内の事業所は◯割が小規模の小売と飲食で、設備の更新が進んでいないという状況がありました。設備が古いままだと、光熱費も人手もかかり続ける。そこで、設備投資に絞って補助率を厚くする設計にしています。逆に、創業の支援は近隣の市のほうが手厚かったので、そちらは重点から外しました。限られた枠なので、何をやらないかを決めるほうが先でした。
最後の一文が効きます。「やらないことを決めた」という話は、予算を預かる立場にいた人にしか言えません。
質問3:「事業者には、どうやって使ってもらっていたんですか」
ここが、この経歴でいちばん値の付く場所です。
組み立て方
「直接営業ができない」という制約を、先に置いてください。
> 行政は、特定の事業者に個別の営業をかけられません。公平性の問題があるので、届けるには必ず誰かを経由することになります。使っていた経路は、商工会議所と商工会の経営指導員、金融機関の渉外、業界の組合の3つです。ただし、案内を配ってもらうだけでは動きません。なので、経営指導員と渉外の担当者に直接説明する場を設けて、「どういう事業者に声をかけてほしいか」を具体に伝えるようにしました。それで申請が◯件から◯件に増えて、執行率が◯%になっています。
これは、民間の代理店を通じた販売と、まったく同じ設計です。
この説明ができると、「営業経験なし」という判断にはなりません。
質問4:「営業のご経験は、ありますか」
質問3と対になる質問です。正面から答えてください。
避けたい答え方
> 行政なので、営業という業務はありませんでした。
事実ですが、ここで止めると、それまでの話と切れます。
組み立て方
> 自分から売り込む形の営業は、立場として禁じられていました。個別の事業者に働きかけることができないからです。ただ、「自分では売りに行けない前提で、経由する相手に動いてもらう」という形の仕事は、ずっとやってきました。商工団体と金融機関に、どの事業者にどう声をかけてほしいかを説明して、実際に申請につなげる。これは、代理店を通じた販売に近いと思っています。新規に開拓する経験はありませんが、経路を設計して動かす経験はあります。
「ない」と「ある」を自分で線を引く。この答え方が、いちばん信用されます。
質問5:「相手を選べなかったんですよね」
採算の判断ができるかを見ています。
組み立て方
> 選べませんでした。要件を満たしている申請は、こちらの判断で断れません。なので、入口の要件の設計で調整するしかないという構造でした。たとえば、補助の対象経費を絞る、実績報告の要件を明確にする、交付の前に計画の内容を確認する。こういう形で、事業として成立しないものが入ってこないようにしていました。民間のように相手を見て断るという判断は、確かに経験がありません。ただ、条件の設計で母集団を作るという部分は、同じことをしていたと思います。
「経験がない」と正直に言ったうえで、代わりに何をしていたかを出す。この形なら、構造を理解している人として読まれます。
質問6:「うちで、何ができると思いますか」
応募先が売っているものに、自分の工程を当ててください。
| 応募先 | 当てる工程 |
|---|---|
| 自治体を顧客とする企業 | 予算・要求・議決・発注の時期を、月単位で言えること |
| 金融機関・保証協会 | 要件の確認と、事業者の相談を受ける実務 |
| 観光・DMO | 入込客数と媒体の設計、広域の事務局 |
| 事業者支援・補助金支援 | 要綱の設計と審査の側にいた経験 |
| 商業施設・まちづくり | 空き店舗と出店の件数、組合との調整 |
> 御社が自治体に提案しているのであれば、入って最初にできるのは、提案を出す時期の設計だと思います。11月に要求が固まって、2月の議決を経て、4月以降に発注が出る。この流れを外すと、どれだけ良い提案でも、その年度には乗りません。逆に、民間企業への新規開拓は経験がないので、そこは学ぶ側になります。
できないことを1つ添えると、できることの信用が上がります。
質問7:働き方と条件について
組み立て方
> 観光の行事は土日で、商工の公募と精算は年度の終わりに集中します。どちらも経験しているので、繁忙の波がある働き方には慣れています。確かめたいのは、繁忙期の人員の考え方です。
「波がある仕事に慣れている」は、イベントや事業の受託をしている会社では、そのまま評価されます。
働き方の違いは商工観光課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるかに整理しました。
逆質問で聞いておくこと
3つに絞ってください。
1. 「自治体が顧客の場合、提案から受注までの流れは、どなたが持っていますか」
自分が提案側に立つのか、受注後の運営だけを持つのかで、仕事がまったく違います。
2. 「事業者や顧客を、断ることはありますか。どの基準で決めていますか」
相手を選べる会社かどうかが分かります。選べる前提の職場では、断る判断も自分の仕事になります。
3. 「観光や地域の事業は、単年度の受託ですか。継続の案件ですか」
単年度の受託が中心だと、毎年ゼロから取り直す働き方になります。入ってからの想定が変わる部分です。
つまずきやすい点
1. 「上が決めたことなので」と言う
案を作り、根拠を揃え、説明して通したのは自分です。決裁と、案を作ることは別です。
2. 「営業経験はありません」で止める
「自分では売りに行けない前提で、経由する相手に動いてもらう仕事はしてきた」まで言ってください。
3. 執行率を言わない
枠に対してどれだけ使われたか。この経歴でいちばん効く数字です。
4. 商工と観光を同じ重さで話す
応募先に合わせて、主にするほうを決めてください。
5. 相手を選べなかったことを、弱みとして話す
入口の要件の設計で調整していたという形にすれば、構造の理解として読まれます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第232条の2は、「公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」とだけ定めています
- 根拠は一語だけ。だから「なぜ、この事業者に公金を出すのか」を、その都度説明してきたのがこの仕事です
- 「上が決めたことなので」と言わないでください。案を作り、根拠を揃え、説明して通したのは自分です
- 営業の質問には、「自分では売りに行けない前提で、経由する相手に動いてもらう仕事はしてきた」と答えてください
- 相手を選べなかったことは、入口の要件の設計で調整していたという形で説明できます
- 逆質問は、①提案から受注までを誰が持つか ②顧客を断ることがあるか ③単年度の受託か継続かの3つです
よくある質問
観光の担当が中心だった場合、面接の型は変わりますか
変わります。観光を主にする場合、聞かれるのは「集客の数字を持っているか」です。入込客数、イベントの来場者数、媒体ごとの反応、宿泊の状況、広域の事業の規模。この5つで答えてください。そして、補助金の話とは別の型になります。商工の支援制度の説明は、「枠を預かって配分した」という話ですが、観光は「人を集めた」という話です。両方を同じ面接で同じ重さで話すと、どちらの印象も薄くなります。応募先を見て、主にするほうを決めてから臨んでください。
「行政だから、成果を出さなくても許されたのでは」と言われたら
否定せずに、構造で答えてください。確かに、売上の目標はありませんでした。そこは事実として認めたうえで、「代わりに執行率がありました」と続けます。用意した枠が使われなければ、不用額として残ります。そして、不用額が大きければ、翌年の枠が減ります。つまり、「使われなかった」ことには、翌年の予算という形で結果が返ってきました。この説明ができると、数字の責任を負っていなかった人、という見方にはなりません。数字の種類が違っただけです。
補助金の不正や返還の対応をしたことは、話してよいですか
個別の事案は話せません。事業者が特定される可能性があるうえ、審査や調査の内容に踏み込むことになります。話せるのは、仕組みのほうです。たとえば、「実績報告の確認について、証拠書類の要件を様式に明記し、交付決定の段階で事業者に説明する運用に変更した」という形です。起きたことではなく、起きないようにするために変えたことを話してください。これは、民間の与信や検収の管理でそのまま求められる部分です。書き方は商工観光課の職務経歴書に整理しています。