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部署別 / 商工観光課

商工観光課から転職しやすい業界と職種

商工観光課からの転職で、いちばん多い失敗は方向を1つに絞ることです。

この部署の経験は、商工(法人支援)と観光(集客)という、性質の違う2つを含んでいます。どちらを前に出すかで、通る求人がまったく変わります。

1方向だけを見て「通らない」と判断してしまうのは、もったいない話です。

この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。

言い換えは商工観光課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。

「区域の特性を生かした施策を、自主的かつ主体的に」

行き先を考える前に、この部署の立ち位置を条文で押さえます。

観光立国推進基本法第4条は、地方公共団体の責務をこう定めています。

地方公共団体は、基本理念にのっとり、観光立国の実現に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、自主的かつ主体的に、その地方公共団体の区域の特性を生かした施策を策定し、及び実施する責務を有する。

そして第2項が、こう続きます。

地方公共団体は、前項の施策を実施するに当たっては、その効果的な実施を図るため地方公共団体相互の広域的な連携協力に努めなければならない。

2つのことが書かれています。

1つ目は、「区域の特性を生かした施策を、自主的かつ主体的に」。国に言われたとおりにやるのではなく、自分の地域に何があるかを読んで、やることを自分で決める立場だということです。

2つ目は、「広域的な連携協力に努めなければならない」。

これは、観光という仕事の性質そのものです。観光客は、市の境界で行動を変えません。隣の市の温泉に泊まって、こちらの施設に来て、別の市の駅から帰る。だから、自分の区域だけで完結する施策は成立しません。

つまりこの部署は、「自分で決める」と「他と組まないと成立しない」を同時に持っています。

民間でいえば、エリアの戦略を立てる仕事と、他社との共同事業を回す仕事の両方です。

この2つが、行き先を決めるときの軸になります。

向いている5つの方向

1. 自治体を顧客とする企業(受託・コンサル・プロモーション)

いちばん近い方向です。観光振興の計画策定、プロモーションの受託、地域の活性化に関する調査、補助事業の運営支援。

項目内容
効く経験発注する側にいた経験。予算の時期、仕様書の書かれ方、決裁の通り方
求められる形提案書の作成、自治体への提案、受託した事業の運営
入りやすさ高い。行政の言葉が通じることが、そのまま価値になる

書くときの注意。「行政の事情が分かります」だけでは足りません。どの時期に何が決まるかを、月単位で説明できるかが見られます。「11月に要求が固まり、2月の議決を経て、4月以降に発注が出る」という形で、自分の自治体の流れを具体に書いてください。

2. 金融機関・信用保証協会・地域商社

事業者の申請を審査してきた経験と、金融機関を経由して制度を届けてきた経験の両方が効きます。

項目内容
効く経験要件の確認、書類の審査、事業者の相談対応、制度融資の実務
求められる形事業者の相談窓口、制度の案内、審査の補助、地域の事業者との関係づくり
入りやすさ中〜高。制度融資で日常的に関わっていた相手なら、話が早い

書くときの注意。「融資のあっせん」という庁内の言葉を使わないでください。「制度融資について、事業者の相談を受け、要件を確認し、金融機関と保証協会につなぐ実務を担当。年間◯件」と書けば、同じ仕事をしていたことが伝わります。

3. DMO・観光協会・宿泊/交通/レジャーの事業企画

観光側の経験を前に出す方向です。

項目内容
効く経験入込客数の把握、媒体ごとの反応、事業者との共同事業、広域の連携
求められる形誘客の企画、コンテンツの造成、事業者との調整、データの整理
入りやすさ中。求人の数は多くないが、経験の一致度は高い

書くときの注意。広域の連携を担当していたなら、必ず書いてください。条文が「広域的な連携協力に努めなければならない」と定めているとおり、複数の自治体や事業者と組んで一つの事業を作った経験は、この分野でいちばん求められるものです。「◯市町で構成する協議会の事務局を担当し、共同で誘客事業を実施」という形です。

4. 事業者支援(補助金の申請支援、中小企業向けのサービス)

制度を作る側から、使う側を支援する側に回る形です。

項目内容
効く経験要綱の読み方、審査で見られる点、不備が出やすい箇所
求められる形補助金の申請支援、事業計画の作成支援、事業者向けサービスの企画・カスタマーサクセス
入りやすさ高い。審査する側にいた人は、この分野では少数

書くときの注意。「採択されやすい書き方を知っている」とは書かないでください。審査の内部の話に踏み込むことになります。書けるのは、「公募要領と審査の観点は公表されており、それに沿って不備なく整える支援ができる」という範囲までです。

5. 不動産・まちづくり・商業施設の運営

商店街の振興や、中心市街地の活性化を担当していた場合の方向です。

項目内容
効く経験空き店舗の対策、テナントの誘致、商店街の組合との調整、イベントの実施
求められる形エリアマネジメント、テナントリーシング、施設の運営、地域との調整
入りやすさ中。開発の案件を持つ会社では、行政との調整役として需要がある

書くときの注意。「まちづくり」という言葉を、そのまま使わないでください。民間では意味が広すぎて伝わりません。「空き店舗◯件について、所有者と出店希望者の間に入り、◯件の出店につなげた」のように、件数で書いてください。

合いにくい方向

1. 個人向けの新規開拓営業

個人に売る仕事は、この経歴と接点がありません。相手が事業者ではないため、制度や条件を組み立てる技術が使えません。

2. 宿泊・飲食の現場の運営職

観光に関わっていたことと、宿泊業の現場を回せることは、別の技能です。「観光が好きだから」で選ぶと、入ってから合わないことがあります。

3. 立ち上げ期の一人目

制度も手続もない環境で、自分で全部作る役割です。この経歴は、決まった枠の中で最適を出すことに強いため、枠自体がない環境では、力が出るまでに時間がかかります。

4. 短期の販売目標で評価される職種

月次の数字で評価される職種は、単年度でも長いと感じてきた感覚とずれます。やれないわけではありませんが、入ってからの落差が大きい方向です。

5. 高度な専門性が前提の職

データ分析の専門職や、特定の技術が前提の職は、この経歴の幅が評価につながりません。広く見てきたことが、逆に浅く見られます。

役に立つ資格

取ってから動く必要はありません。応募しながらで構いません。

資格効く方向実際のところ
日商簿記3級金融機関、地域商社、事業者支援「数字が読める」ことの最低限の証明。事業者の決算を見る場面が増える
中小企業診断士事業者支援、金融機関、コンサル効果は大きいが、取得に時間がかかる。働きながら目指す形が現実的
総合旅行業務取扱管理者観光の事業側、DMO旅行商品を扱う会社では要件になることがある
宅地建物取引士不動産、まちづくり、商業施設土地・建物を扱う方向では効く
ファイナンシャル・プランナー2級金融機関あれば読まれる程度。必須ではない

いちばん費用対効果が高いのは、日商簿記3級です。事業者の決算書を見る場面がある方向では、「読めない」という懸念を先に消せます。

求人を探すときの検索語

庁内の言葉で検索すると、求人が出てきません。

探している仕事検索語
自治体向けの事業公共事業 提案/自治体 コンサルタント/地域活性化 企画
補助金の支援補助金 申請支援/事業計画 作成支援/中小企業支援
観光の事業側観光 企画/誘客 プロモーション/DMO/インバウンド 企画
金融・地域商社法人 渉外/中小企業 融資/地域商社 バイヤー
まちづくりエリアマネジメント/テナント リーシング/商業施設 運営

「商工」「観光振興」で検索しても、ほとんど出てきません。上の言葉に置き換えてください。

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つまずきやすい点

1. 方向を1つに絞る

商工と観光は別の仕事です。説明の型が近い2方向を並行して見てください。

2. 「まちづくり」「地域活性化」で書く

意味が広すぎて伝わりません。件数と金額で書いてください。

3. 広域の連携の経験を書かない

複数の自治体・事業者と組んで一つの事業を作った経験は、観光の分野でいちばん求められます。

4. 観光が好きだから、で観光を選ぶ

観光に関わる仕事と、観光業の現場は別です。どの工程をやるのかを確かめてください。

5. 求人の出方が少ない時期に諦める

観光の求人は季節と景気で出方が変わります。時期をずらして見てください。

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まとめ

よくある質問

観光の経験が1年だけでも、観光の方向に出せますか

出せますが、主にはしないほうが通ります。書類では、長くやってきたほう(多くの場合は商工の支援制度)を主にして、観光を「加えて」の形で書くのが現実的です。ただし、観光で何をやったかによっては、1年でも十分に効きます。たとえば、広域の協議会の事務局を担当した、媒体別の反応を測った、事業者と共同でコンテンツを作った——これらは1年でも語れる中身です。期間の長さより、どの工程まで持ったかで読まれます。逆に、イベントの当日の運営だけなら、それを主にするのは難しいと考えてください。

地元を離れたくないのですが、行き先はありますか

あります。この経歴は、地域に根を持つ仕事と相性がよいのが特徴です。地方銀行・信用金庫、信用保証協会、地域商社、地元の建設・不動産、地域のインフラ事業者、商工団体。どれも、その地域で事業をしている会社です。そして、地元の事業者と行政の両方を知っている人は、その地域でしか採れません。むしろ、東京の会社に出るより、地元のほうが希少性が高くなることがあります。「地元で探すと選択肢が少ない」と考えて動かないでいる方が多いのですが、この経歴に限っては、逆であることが多いです。

何社くらい受けるものですか

決まった数はありません。ただ、商工を主にするか、観光を主にするかで、書類が変わります。両方を1通で兼ねようとすると、どちらの求人にも中途半端に見えます。なので、主にするほうを決めて1通作り、もう一方は必要になったときに組み替える形が現実的です。説明の型が近い2方向(自治体向け企業と、金融機関・地域商社)を並行すると、作り直しが少なく済みます。書き方は商工観光課の職務経歴書に整理しています。

出典

  1. 観光立国推進基本法 第4条(地方公共団体の責務)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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