部署別 / 商工観光課
商工観光課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
商工観光課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「中小企業支援、企業誘致、観光振興に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「窓口と書類の受付をしていた人」という像しか作れません。実際には、地域の条件を読んで何をやるかを決め、制度を組み、届ける経路を作り、事業者に使ってもらい、精算まで通していたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは商工観光課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は商工観光課から転職しやすい業界と職種に書いています。
「区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し」
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
中小企業基本法第6条は、地方公共団体の責務をこう定めています。
地方公共団体は、基本理念にのつとり、中小企業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
「その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し」
ここが要点です。
国の制度をそのまま流すのではありません。自分の地域に何があるかを読んで、やることを決めるのが責務として書かれています。
製造業が多いのか、小売と飲食が中心なのか。後継者がいない事業者が多いのか、創業が少ないのか。観光の入込があるのか、通過されているだけなのか。
これを読んで、施策を選ぶ。
つまり、この仕事は「決められたことを回す仕事」ではなく、「何をやるかを決める仕事」です。
ところが、職務経歴書ではここが丸ごと抜けます。
書くべきは、「地域のどの条件を読んで、どの施策を選んだか」です。
- 小規模の小売が多く、設備の更新が進んでいなかったので、設備投資への補助を厚くした
- 創業の件数が近隣より少なかったので、創業時の家賃の支援を新設した
- 事業者の高齢化が進んでいたので、事業承継の相談につなぐ経路を作った
- 通過型の観光が中心だったので、滞在時間を延ばす事業に予算を寄せた
このうちの1つでも書けると、「制度を回していた人」から「施策を選んでいた人」に変わります。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所の商工観光課に配属され、中小企業支援、企業誘致、観光振興に関する業務を担当しました。
規模も、金額も、件数も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人、事業所数約◯者)の商工・観光の部門において、中小企業向けの支援制度の設計から公募・審査・精算までを一貫して担当しました。年間◯件・総額約◯万円の補助制度を扱い、執行率は◯%です。制度融資の相談を年間約◯件受け、金融機関・信用保証協会につなぐ実務を担当しました。あわせて、観光の誘客事業(年間入込客数約◯万人)と、◯市町で構成する広域の協議会の事務局を担当しています。
入っているもの
- 扱った制度の件数と総額
- 執行率
- 相談・申請の件数
- 広域の連携の担当(あれば必ず)
2つ目が要点です。執行率は、この経歴でいちばん効く数字です。枠を用意して、実際にどれだけ使われたか——民間でいえば、予算に対する実績の達成率にあたります。
担当業務
「中小企業支援」「観光振興」で丸めず、機能に分けて書いてください。
悪い例
> ・中小企業への補助金交付事務> ・制度融資に関する事務> ・企業誘致> ・観光イベントの運営> ・その他庶務
良い例
> 【支援制度の設計と執行(年間◯件・総額約◯万円)】> 対象・要件・補助率・上限額の設計、要綱の作成、公募、申請の受付と審査、交付決定、実績報告の確認、額の確定と支払。年度途中で要件を変えられないため、前年の実績と事業者数から申請の見込みを読んだうえで公募を設計。>> 【周知とチャネルの設計】> 広報紙、ウェブ、説明会に加え、商工会議所・商工会・金融機関を経由した案内。個別の営業ができないため、経由する相手に動いてもらう経路を設計し、執行率を管理。>> 【制度融資・金融支援(年間相談約◯件)】> 融資の相談、要件の確認、金融機関・信用保証協会への取次ぎ、利子補給・保証料補助の事務。>> 【創業支援・経営相談(年間◯件)】> 創業の相談、支援機関への接続、創業支援等事業計画に基づく関係機関との連携。>> 【企業誘致・立地(問い合わせ年間約◯件)】> 用地・建物・インフラ・優遇制度・許認可の情報を一元的に整理して提示。関係部署との調整。>> 【観光の誘客と広域連携(入込客数約◯万人、協議会◯市町)】> 誘客の企画、媒体の設計、観光協会・事業者との共同事業、広域の協議会の事務局。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を設計していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、制度が予定どおり執行されたこととして現れるからです。
悪い例
> 地域経済の活性化に努め、中小企業の振興に貢献しました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:届け方を変えて、執行率を上げた
> 設備投資への補助制度について、前年の申請が予定の◯割にとどまっていたため、周知の経路を見直し。広報紙とウェブに加えて、商工団体の経営指導員と金融機関の渉外に直接説明する場を設け、事業者への声かけを依頼。申請件数が◯件から◯件に増え、執行率が◯%から◯%になった。
型2:条件を組み替えて、使われる制度にした
> 利用の少なかった補助制度について、申請が少ない理由を、要件(対象経費の範囲、補助率、申請の時期)に分けて分析。対象経費に◯◯を加え、申請の受付を年◯回に分けることで、事業者の設備更新の時期に合わせられるよう変更。翌年度の申請が◯件に増えた。
型3:他と組んで、単独ではできない事業を作った
> 観光の誘客について、◯市町で構成する協議会の事務局を担当。各市町の予算と事務の負担を整理し、共同での媒体出稿と周遊の企画を実施。単独では出せない規模の露出を確保し、周遊の対象施設の利用が◯件増えた。
型1が、この経歴でいちばん効く形です。「届け方を変えて、数字を動かした」という話は、民間のパートナー営業やマーケティングで、そのまま同じことをします。
型3も強いです。複数の組織の利害を合わせて一つの事業にした経験は、共同事業やアライアンスの職種で直接求められます。
数字の出し方
公表されている資料と、手元の事業報告から取ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 扱った制度の件数と総額 | 職務要約 | 規模を示す中心の数字 |
| 執行率 | 職務要約、実績 | この経歴でいちばん効く。決算資料から拾える |
| 申請・相談の件数(年間) | 担当業務、実績 | 捌いていた量が伝わる |
| 制度融資のあっせん件数 | 担当業務 | 金融機関に出すなら必須 |
| 創業支援の件数 | 担当業務 | 件数だけ。事業者名は書けない |
| 誘致の問い合わせ件数 | 担当業務 | 成約件数は公表分のみ |
| 入込客数・イベントの来場者数 | 職務要約、実績 | 公表されている |
| 広域の協議会の構成市町数 | 職務要約、実績 | 共同事業の規模として効く |
1行目と2行目が中心です。総額と執行率。この2つが揃うと、「枠を預かって動かしていた人」として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
自分の数字がどう読まれるかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 自治体を顧客とする企業 | 発注する側にいた経験 | 予算と決裁の時期 | 仕様と要綱の作り方 |
| 金融機関・信用保証 | 制度融資の相談件数 | 要件の確認と審査 | 事業者との関係 |
| 観光・DMO | 入込客数と媒体の設計 | 広域の協議会の事務局 | 事業者との共同事業 |
| 事業者支援・補助金支援 | 要綱の設計と審査の経験 | 不備が出やすい箇所 | 相談の件数 |
| まちづくり・不動産 | 空き店舗と出店の件数 | 商店街の組合との調整 | 中心市街地の計画 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
相手は事業者です。個別の情報は、すべて書けません。
- 補助金や融資を受けた事業者の名称、経営の状況
- 審査の内容、採択・不採択の判断の経緯
- 信用調査や、事業者の財務に関する情報
- 誘致の交渉をしている企業に関すること(公表前のもの)
- 公表前の計画、用地、優遇制度の見直しの検討
- 商店街や団体の内部の事情
- 特定の自治体の内部の状況や、部署の評判に関すること
書けるのは、「何を、どれだけ、どう設計して動かしたか」と「規模」までです。
> ✕ 「◯◯社の誘致にあたり、他市と競合したが、優遇制度の上乗せを提案して立地に結びつけた」> ○ 「企業の立地の検討に対し、用地・インフラ・優遇制度・許認可の情報を一元的に整理して提示する運用を担当。年間◯件の問い合わせに対応し、関係部署との調整の手順を整理した」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の交渉ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「中小企業支援」「観光振興」で丸める
制度の設計と執行/周知/金融/創業と相談/誘致/観光の6つに分けてください。
2. 執行率を書かない
この経歴でいちばん効く数字です。決算資料から拾えます。
3. 「補助金の交付事務」と書く
「制度の設計と執行」と書いてください。要綱を作ったなら、それは商品設計です。
4. 商工と観光を1通に混ぜる
主にするほうを決めてください。両方を同じ重さで書くと、どちらにも中途半端に見えます。
5. 個別の事業者のことを書いてしまう
事業者名、経営状況、審査の経緯、交渉中の案件。すべて書けません。手順と規模で書いてください。
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まとめ
- 中小企業基本法第6条は、「区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する」と定めています
- 決められたことを回す仕事ではなく、何をやるかを決める仕事です。だから書くべきは、「地域のどの条件を読んで、どの施策を選んだか」です
- 職務要約には、制度の件数と総額・執行率・申請と相談の件数・広域の担当の4つを入れてください
- 担当業務は、6つの機能に分けて書きます
- 実績は、①届け方を変えて執行率を上げた ②条件を組み替えた ③他と組んで単独ではできない事業を作ったの3つの型で書けます
- 「補助金の交付事務」ではなく「制度の設計と執行」。そして執行率と、それを動かすために変えたことを対で書いてください
よくある質問
制度を自分で設計したわけではなく、前からあるものを回していた場合は
そのままでは書けないので、「自分が変えた部分」を探してください。前からある制度でも、毎年どこかを見直しています。対象経費を足した、申請の時期を分けた、様式を簡素にした、周知の経路を増やした、説明会の回数を変えた。どれか1つは必ずあるはずです。書くなら、「既存の制度について、申請が伸びない要因を要件と周知に分けて整理し、◯◯を変更。申請件数が◯件から◯件になった」という形です。ゼロから作ったかどうかは問われません。何を見て、何を変えたかが問われます。
観光と商工の両方を担当していた場合、どう配分すればよいですか
応募先に合わせて、主従を決めてください。1通で両方を同じ重さで書くと、どちらの求人にも中途半端に見えます。現実的なのは、長くやってきたほうを主にして1通作り、もう一方は「あわせて担当」として3〜4行で添える形です。そのうえで、観光の求人に出すときだけ、順番を入れ替えた版を作ります。全部を書き直す必要はなく、職務要約と、担当業務の並び順を変えるだけで足ります。方向の選び方は商工観光課から転職しやすい業界と職種に整理しました。
イベントの運営しかしていない場合は、何を書けばよいですか
イベントの運営は、それ自体が独立した経験です。書くべきは、①来場者数 ②出店・参加した事業者の数 ③予算の規模 ④協賛や共催の相手 ⑤安全と中止の判断の基準の5つです。とくに⑤は、書かれていないことが多いのですが、民間のイベント運営で最も見られる部分です。「屋外の行事について、中止と決行の判断の基準と判断する時刻を定め、出店者と来場者に事前に周知する運用を整理した」と書けば、備えを設計できる人として読まれます。「賑わいを創出した」ではなく、件数と手順で書いてください。面接で聞かれることは商工観光課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。