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部署別 / 水道局

水道局から民間に移ると働き方と評価はどう変わるか

水道局の働き方には、他の部署と違う点が1つあります。

扱っているものが、一度も止まったことがないということです。

浄水場は、できてから今日まで動き続けています。管路は、地下で今この瞬間も水を送っています。自分が配属される前から動いていて、自分が異動した後も動く。その途中の数年を、預かっているのがこの仕事です。

この記事では、一年の波、評価が見えにくくなる構造、民間に移ると変わる4点、在職中に残しておくべき記録の順に整理します。

言い換えは水道局の経験は民間で何と呼ばれるか、書類の書き方は水道局の職務経歴書|書き出しから実績の出し方までに書いています。

「良好な状態に保つため」と「長期的な観点から」が同じ事業者の義務です

働き方の話を、条文から始めます。水道法第22条の2です。

> 水道事業者は、国土交通省令で定める基準に従い、水道施設を良好な状態に保つため、その維持及び修繕を行わなければならない。> 2 前項の基準は、水道施設の修繕を能率的に行うための点検に関する基準を含むものとする。

「良好な状態に保つ」と書かれています。新しく作る話ではなく、すでにあるものを、保ち続ける義務です。しかも、点検の基準が法令の側で決められている。

そして、第22条の4には、こう書かれています。

> 水道事業者は、長期的な観点から、給水区域における一般の水の需要に鑑み、水道施設の計画的な更新に努めなければならない。> 2 水道事業者は、国土交通省令で定めるところにより、水道施設の更新に要する費用を含むその事業に係る収支の見通しを作成し、これを公表するよう努めなければならない。

この2つが、働き方の性格を決めています。

今日の点検と、数十年先の更新が、同じ事業者の義務です。しかも、更新の費用を含めた収支の見通しを公表するところまで求められている。扱う時間の幅が、行政の部署の中でいちばん広いと言ってよい部署です。

この幅が、負荷の正体でもあり、経験の厚みの正体でもあります。

一年の波

時期動き
4〜5月転入と転出に伴う開栓と閉栓の山、新年度の委託と工事の契約、検針と調定の周期の開始
6〜8月需要が増える時期。渇水への備え、水温の上昇に伴う水質の管理、施設の点検
9〜11月前年度の決算の認定に向けた説明、更新の工事の発注、経営の指標の整理
12〜1月寒冷地では凍結による管の破損と漏水の対応、翌年度の予算と工事の計画
2〜3月年度末の工事の完成と検査、次年度の委託の準備、転出に伴う閉栓の山

平らな月がありません。

しかも、この表に書けない仕事が、時期を選ばずに入ります。管の破裂、濁水、停電による設備の停止、断水の広報と応急の給水。予定に組み込めない仕事に、24時間の当番で備えているということです。

面接でこの波を説明するときは、「周期で回る定型の業務と、時期を選ばない事故の対応が、同じ体制に載っている」と言うと伝わります。

評価が見えにくくなる3つの構造

1. 成果が「何も起きなかったこと」として現れます

一年間、断水がなかった。それは、報告書に一行も書かれません。基準を満たした水が、毎日出た。それも、書かれません。

この構造に固有の事情もあります。水道の成果は、「あって当たり前」の側にあるということです。電気やガスと同じで、出ているときは誰も意識しません。だから、事故がなかった年ほど、記録が薄い。在職中に何年も担当して、思い出せるのは事故の年だけという方が多いのは、この構造のせいです。実際には、その間ずっと、点検と修繕で止めずに保っていた。その部分が、自分の中でも実績として数えられていない——ここが、この経歴の方が実績欄で損をする原因です。

2. 記録に残るのは、断水と濁水と苦情です

断水は、住民に広報され、報道されることもあります。濁水は、苦情として残ります。日々の点検は、残りません。

この構造に固有の事情もあります。水道の事故は、その日のうちに住民の生活に出るという点です。だから、1件の事故が、その年の記憶を占めてしまう。ところが、面接で話すべきなのは、事故ではなく、そこから変えた手順です。「点検の周期を見直した」「応急の給水の拠点を決め直した」「広報の手順を作り直した」——この形にすると、経験として受け取られます。

3. 判断が、基準と条例の名前で出ます

水質は基準で決まり、料金は条例で決まります。担当の名前は、どこにも出ません。

この構造に固有の事情もあります。水質の基準を満たしているのは当然とされ、満たし続けるために現場でしている判断——薬品の注入の量、ろ過の切り替え、原水の変化への対応——は、表に出ません。制度の名前で出るということは、苦情も制度に向くということで、担当を守る仕組みでもあります。ただし、この形に長くいると、「自分が決めた」と言うことに抵抗が出ます。面接では、基準の内側で、自分が判断した場面を1つ言えるようにしておいてください。

民間に移って変わる4点

1. 止められるようになります

これが、いちばん大きい変化です。民間のプラントや設備では、計画停止が事業の判断でできます。常時の供給が義務だった環境から移ると、楽に感じる方が多い部分です。

この変化には、注意点が1つあります。行き先によって、まったく変わらない場合があるということです。水道の運転を受託する会社に移れば、現場は同じ水道です。止められません。変わるのは、発注の側から受託の側に回るという立場だけ。「止められない環境から出たい」のか、「止められない環境で、立場を変えたい」のか。どちらを求めているかで、行き先が変わります。

2. 「利益」の項目が足されます

公営企業は独立採算ですが、利益を増やすことは目的ではありませんでした。民間では、それが足されます。受注の額、原価、粗利。

ただし、足されるだけです。費用を積み上げて、収入と突き合わせて、資金の残高を見る。その作業は、公営企業会計でやってきたことと同じです。一般会計しか知らない行政の職員より、この移行はずっと小さい。先に知っておくと、構えずに済む部分です。

3. 速度が上がります

民間では、修繕の判断も、設備の更新の決定も、行政より短い期間で動きます。決裁の段階が少ないからです。

ただし、速度が上がる分、記録の重みは変わりません。水道局では、施設の台帳も点検の記録も、法令で作ることが決まっていました。残すのが仕事の一部だった。民間では、自分で残さないと何も残りません。「点検した記録を、次の判断の根拠として使う」——在職中に身に付けた作法は、速度が上がった環境でこそ効きます。

4. 選ぶ側から、選ばれる側になります

行政では、区域の中では事業者は1つでした。受託の会社、工事の会社、メーカーは、こちらが選ぶ相手でした。民間に移ると、自分が選ばれる側に回ります。公募に負ければ、その現場はなくなる。

ここは、行き先を選ぶときの分かれ目になります。この変化を、「発注の側の事情を知っている自分が、いちばん通る提案を作れる」と受け取れるか。受託の会社やメーカーは、まさにそこを期待して採ります。逆に、選ばれる側に回ること自体に抵抗があるなら、コンサルティングや他の公益の事業のほうが近い方向です。どちらが正しいということはありません。ただ、自分がどちらかを先に決めておかないと、面接の答えが揺れます。

自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。応募先が決まっていない段階のほうが、整理する意味があります。

在職中に残しておくべき記録

残すもの使い道注意
給水人口・給水戸数・管路の延長職務要約の冒頭に入れる公表されている数字を使う
担当した施設の名前と能力運転と保全の経験の証明施設の弱い部分は書かない
更新した管路の延長と金額実績欄の芯になる桁だけでも控える
事故の件数と、その後に変えた手順危機の対応の証明出来事ではなく、手順を残す
調定の件数と収納率の水準料金の実務の証明個別の滞納は書かない

数字は、異動すると取りにくくなります。在職中に、桁だけでも控えておいてください。

LINEで短く聞くこともできます

つまずきやすい点

1. 事故の年だけを思い出して、実績欄を薄くする

止めずに保っていた年数が、実績です。

2. 更新した延長と金額を控えずに異動する

この経歴でいちばん評価される数字です。

3. 当番と待機を、苦労話にする

24時間の体制を、周期の業務と同じ人員で回していたと書いてください。

4. 公営企業会計の経験を書き落とす

利益の項目が足されるだけで、数字の見方は同じです。そう書けば、移行の小ささが伝わります。

5. 施設の弱い部分を、面接で具体的に話す

公表されている範囲に置き換えてください。守秘の線を引けることは、それ自体が評価されます。

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まとめ

よくある質問

当番と待機が多く、この働き方を続けられるか不安です

それは、体制の問題であって、能力の問題ではありません。ただし、行き先によって、この点は大きく違います。水道の運転を受託する会社に移れば、当番の体制は同じです。変わるのは立場だけ。コンサルティングやメーカーの設計の部門に移れば、当番は原則としてなくなります。面接でこの話をするときは、「当番の体制を、どういう人数と周期で回していたか」を答えられるようにしてください。24時間の体制を設計して回してきたこと自体が、受託の会社では評価される場面があります。「当番から離れたい」のか「当番の体制を作る側に回りたい」のかを、先に決めておくと、行き先が絞れます。

断水の事故を経験しました。書いてよいですか

公表された範囲の概要までは書けます。「◯年に管の破損による断水が発生し、応急の給水と復旧の対応を担当」という形です。書けないのは、原因の詳細、施設の弱い部分、復旧の経路です。そのうえで、書くべきなのは、事故そのものではなく、その後に変えた手順です。「応急の給水の拠点と人員の配置を見直した」「広報の手順を作り直した」「点検の周期を変えた」。民間の設備の会社でも、事故の後に手順を変えた経験は、直接に効きます。一方で、施設の守りに関わる情報は、面接でも書類でも話せません。この線を守ることが、信頼の材料になります。

水道局が長く、他の部署の経験がありません

この分野では、それが不利になりにくいという特徴があります。理由は、受託の会社、工事の会社、メーカー、コンサルティングという行き先が、いずれも水道局の経験とそのまま重なるからです。幅の広さより、同じ分野を続けてきたことのほうが、読まれやすい経歴です。書くときは、年数で区切って、工程の変化を見せてください。「料金の担当◯年、その後、浄水場の運転管理◯年、直近は管路の更新の計画を担当」という形です。同じ分野の中で、扱う工程が変わってきたことが、幅として読まれます。行き先の選び方は水道局から転職しやすい業界と職種に並べています。

出典

  1. 水道法 第22条の2(水道施設の維持及び修繕)・第22条の4(水道施設の計画的な更新等)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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